日本囲碁ニュース (名人戦)
日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。
囲碁ニュース [ 2023年11月7日 ]
芝野名人初防衛

第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局が、11月2、2の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて打たれ、芝野虎丸名人が逆転で黒番中押し勝ちを収め、名人戦初防衛(通算3期目)を果たした。井山裕太王座の通算9期目となる名人位奪還はかなわなかった。一日目は、3連敗に続く2連勝の勢いのまま、井山がリードを奪った。左上の黒模様の中、無理気味かと思われた白の策動は、妙手のツケから荒らしに成功する。AIの評価値も白に大きく傾き、芝野は「このあとは、7局目のためにしっかり打とうと気持ちを切り替えた」と振り返る。だが、二日目に入り、「午前中に井山さんのペースが乱れた感じはありましたので、若干元気は出ていた」と芝野。新聞解説の河野臨九段も「一日目は井山さんの技が冴えまくっていましたが、芝野さんも決め手を与えず、難しくしています。まだ白がリードしてはいるものの、勝負はわかりません」と見守った。その後も芝野がじわじわと追い上げ、ヨセで抜き去った。井山は「一日目の午後以降は形勢の悪くない状態が続きました。でも、勝ちまで見通せないまま持ち時間を消費し、終盤で正しい選択をできなかったことが勝敗に直結した。実力です」と敗戦を語り、「少しの期間休養し、また次に向かっていければと思います」と気持ちを入れ替えた。二冠を堅守した芝野は、翌日のインタビューに応え、「実感はわきません。内容的に課題が見えているので、ホッとした気持ちより反省点が多い。来年は、(内容も充実させ)いい状態で堂々とこうしたインタビューを受けられたらと思います」と引き締まった表情で語った。
囲碁ニュース [ 2023年10月31日 ]
井山挑戦者、2勝を返す

第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は、芝野虎丸名人が開幕3連勝した後、追い詰められた挑戦者の井山裕太王座が「カド番の鬼」の本領を発揮している。10月12、13の両日、大阪府守口市の「ホテルアゴーラ大阪守口」で打たれた第4局は、序盤、白番井山の左辺のツケから碁が動き、井山の厳しいコウ仕掛けからリードを奪うと、二日目も封じ手から井山の鋭い手が続いた。劣勢を意識した芝野が勝負手を放つが反撃にあい、中央の黒の大石が仕留められる。92手という短手数で井山が中押し勝ちを収めた。第5局は10月23、24の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれた。一日目は黒番の井山が左辺の白を攻めながら地合いでリードを奪い、AIが白の勝率「90%」台を示すほど、形勢が傾いた。芝野も「大変な形勢かと思っていた」と振り返る。二日目に入り、井山が「シノギ方があまりよくなかった」と反省した左下の黒石への攻めを見つつ、芝野が局面を難しくして粘りを見せた。「3コウ無勝負か」という局面も訪れる複雑な戦いとなったが、最後は井山が冷静に勝負を決めた。シリーズの流れは、2勝を返した井山に傾くのか。芝野が流れを呼び戻すのか。芝野が「期間が少しあくので、また調整して集中して打てたらと思います」、次局に向け、井山は「まずはコンディションをしっかり整えて臨みたい」と意気込みを語った。第6局は11月2、3の両日に神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて打たれる。
囲碁ニュース [ 2023年9月26日 ]
芝野名人、3連勝

芝野虎丸名人に井山裕太王座が挑戦している第48期名人戦七番勝(朝日新聞社主催)の第3局が、9月19、20の両日に愛知県田原市の「角上楼」で打たれた。2連敗と苦しいスタートの井山は、序盤から積極的な打ち回しを見せたが、局後には「気になる手を打ってしまった」とやや後悔があったことを語った。その後の右辺の戦いも「判断がどうだったか。一手一手微妙だったのですが、出来上がった図はやや不満というのはありました」と振り返る。二日目、封じ手は「勝負手」と呼ばれる左辺の白への打ち込みだった。芝野は意外そうな表情を浮かべたという。芝野は「一日目から見慣れぬ形になり、ずっとわからなかった」とし、「いけそうかなと思ったのは、(2日目に)左辺の黒石を切断した最後の段階」と語った。その切断の手段を井山は見ていなかったという。以降を井山は「最後も一応攻め合い含みにはなったのですが、白には余裕のある図が多かった」と脱帽。芝野が中押し勝ちで3連勝とし、防衛にあと1勝と迫った。局後、井山は朝日新聞のYouTubeの生配信に出演し、下島陽平八段の質問に答えながら本音で対局を振り返り、話題となった。下島八段の「このシリーズどうしましょう? 苦しい展開ですけれど、ここで終わる井山裕太ではない」と問われ、「そうできるようになんとか。もう少し盛り上げたい」と抱負を語った。芝野が一気に防衛を決めるのか、井山の巻き返しが始まるのか、第4局は、10月12、13の両日、大阪府守口市の「ホテルアゴーラ大阪守口」で行われる。
囲碁ニュース [ 2023年9月5日 ]
芝野名人、開幕2連勝
芝野虎丸名人の先勝でスタートした第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第2局が、9月2、3の両日に、鹿児島県霧島市の「霧島神宮」にて打たれた。一日目は挑戦者の井山裕太王座が主導権を握った。黒番の芝野が、左上の白模様の中で動き始めたところで井山が封じ、一日目が終了した。右上の黒もまだはっきりとは生きておらず、AIの白の勝率は90%に近い数字を示し、芝野も「はっきり苦しい形勢」と振り返った。二日目、井山が猛然と左上の黒を取りかけに向かい、局面は険しさを増していく。芝野は「実戦のように全部取りにくるとはあまり思っておらず、取られたらしょうがないかな、シノギは簡単ではないかなと思って打っていた」、井山も「黒のシノギは簡単ではないように思えた。必ずしも取らなくても、どこかで得ができれば地合いでも勝負できるというつもりだった」と振り返る。白が有利と思われた難解な攻防の中、芝野が井山の読み筋をはずす好手を放った。YouTube解説の林漢傑八段も「相手を迷わせ悩ませる手」と称賛。次に打たれた井山の手が敗因となったようだ。井山が秒読みに突入した時点で、芝野は40分以上持ち時間を残しており、攻守が逆転する。逆に芝野が中央の白石を仕留めて勝負を決めた。連勝の芝野は「もちろんいい成績でこれたのはよかったですけど、これからまた長い戦いですので、次に向けてがんばりたいと思います」と語り、苦しいスタートとなった井山は「特にやることは変わらないので、これからも悔いのないように戦いたい」と静かに語った。井山の巻き返しはなるか――。第3局は、9月19、20の両日に愛知県田原市の「角上楼」で打たれる。
囲碁ニュース [ 2023年8月29日 ]
芝野名人、初戦完勝

芝野虎丸名人に井山裕太王座が挑戦する第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)が開幕した。第1局は、8月24、25の両日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で打たれ、白番の芝野が中押し勝ちを収めた。立ち上がりは、黒番の井山のペースだった。上辺に模様を張り、白に入らせた後、あえて手を抜き大場に先着する打ち回しからは、攻めに自信ありと見受けられた。だが、読み落としがあったようだ。上辺の折衝のなか、芝野に好手があり、流れが変わる。逆に右上の黒の大石が取られ、形勢も逆転した。二日目に入り、芝野の鋭い好手が続いた。右上の損を挽回できないまま、午前中のうちに、AIの示す白の勝率は「90%」を超えた。その後も、井山は粘り、必死に勝機を求めたが、芝野が隙を与えず堂々と寄り切り、井山を投了に追い込んだ。YouTube解説の鈴木伸二八段は「黒が一度優勢に立ってから、白にチャンスらしいチャンスはなかった。芝野さんの名局と言っていいと思う」と振り返った。防衛に向けて幸先のよい白星をあげた芝野は「二日目に入って、よくなったかと思いました。一つ勝ててよかったです」と控え目に語り、井山は「次局以降を悔いのないように頑張ります」と気持ちを切り替えた。第2局は、9月2、3の両日、鹿児島県霧島市の「霧島神宮」で打たれる。
囲碁ニュース [ 2023年8月1日 ]
名人戦挑戦権は井山の手に
芝野虎丸名人への挑戦者をかけ、第48期名人戦(朝日新聞社主催)の挑戦者決定プレーオフが、7月30日に千代田区の日本棋院東京本院で行われた。7勝1敗でリーグ戦を終えた一力遼棋聖・本因坊と、井山裕太王座・碁聖による決戦だ。本因坊戦、碁聖戦と続き、両雄の顔合わせは7月だけで6局目となった。黒番一力の優勢の時間が長かった。中央の白の大石をほぼ仕留め、黒勝勢かとも思われたが、下辺の折衝で一力の判断ミスがあったようだ。中央の白が息を吹き返す。黒には半分取る道があり、そちらを選べば優勢を維持していたそうだが、一力は全てを取りにいき、井山がシノギ切る。AIの黒の勝率は、文字通り急降下した。その後も険しい局面は続いたが、左辺がコウになった時点で、井山は勝ちを意識したと振り返る。コウダテは白に多く、一力が投了を告げた。来期から「本因坊」が序列3位ではなくなるため、一力にとっては棋聖・名人・本因坊の「大三冠」となる最後のチャンスだったが、夢はかなわなかった。一力は「期するところはありましたが、読みの精度を欠いていたので、仕方ないと思います」と無念のコメント。井山は「昨年名人位を失ってから、七番勝負に戻ることを大きな目標にしてきた。大きな舞台に戻れることは、非常に光栄です」と声を震わせた。芝野が初防衛を果たすのか、井山が返り咲くのか。挑戦手合七番勝負の開幕戦は、8月24、25の両日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われる。