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大会・イベント

日本囲碁ニュース 2016

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。

日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2016年12月26日 ]

年末回顧2016

 今年ほど囲碁界が大きく動いた年は長い歴史の中でも例を見ないだろう。
 まずは3月のアルファ碁ショック。グーグル傘下の人工知能開発企業ディープマインド社がディープラーニングの手法を取り入れ開発したAI搭載の囲碁ソフト「アルファ碁」は脅威の強さでイ・セドル九段との5番勝負に4勝1敗で勝利した。この対戦を観戦した人は世界でおよそ2億8千万人(2016年4月時点)ということからもその注目の大きさがうかがえる。10年、20年と経ってみなければこのインパクトの本当の大きさは分からないが、間違いなく何かが大きく変わった瞬間だった。
 そして4月、井山裕太棋聖が史上初の七冠を達成した。昨年六冠となり、今年に入って棋聖を防衛しつつ、残る十段の挑戦権を獲得すると伊田篤史八段を3勝1敗で破ったのだ。超人的な強さを周囲は「手がつけられない」と表現していたが、まさにその通り。どんな対局でも必ず最後は勝ってしまう、マジックでも見ているような気持ちにさせられた。
 7月には謝依旻女流名人も快挙を成し遂げた。今年新設された扇興杯女流最強戦で優勝し、5つある女流棋戦を独占したのだ。長年第一人者としてトップをひた走ってきた謝の強さを改めて感じた。
 「独占」の後には「誰が崩すか」に自然と注目が集まる。10月、女流本因坊戦では藤沢里菜三段が昨年のリベンジを果たしタイトルを奪取。そして11月、名人戦では高尾紳路九段が挑戦し、7局目までもつれる大熱戦の末に勝利。七冠の一角を崩して10期ぶりの名人へと返り咲いた。
 今年は「本当にこれらがすべて1年で起こったのだろうか」と疑いたくなるほど大きな出来事が次から次へと起こったが、とりわけAIの存在感が増したのが大きかったと思う。11月には国産のAIソフト「DeepZenGo」が趙治勲名誉名人と3番勝負で対戦。敗れはしたものの1勝を挙げ、着実に人間に迫っていることを証明した。来年3月には「ワールド碁チャンピオンシップ」が行われるが、そこには井山を含む世界のトップ棋士に加え、DeepZenGoが参戦することがすでに決まっている。AIの衝撃はまだ終わっていない。AIはどのような進化を遂げるのか。そして人間はAIの巻き起こす変化にどのように向き合っていくのか。2017年、タイトル戦はもちろんだが、そちらの動向にも注目していきたい。

囲碁ニュース [ 2016年12月21日 ]

ジャーナリストクラブ賞 アルファ碁受賞

 新聞社の囲碁担当者など、メディア関係者が一年を通して最も活躍した個人、団体に送る「第34回ジャーナリストクラブ賞」の授賞式が16日、東京・日本棋院で行われ、同賞を「アルファ碁」の開発チームが受賞した。グーグル傘下の人工知能開発企業ディープマインド社が開発した囲碁ソフト「アルファ碁」は3月に韓国のイ・セドル九段と対戦し、4勝1敗で勝利。囲碁でコンピューターが人間を上回るのは最低でも10年は早いと言われていた従来の常識を覆した。上記の業績に伴い、囲碁の認知度を上げるのに大きく貢献したこと、登場以降、棋士の間でもその手法が取り入れられるなど棋界に与えた影響が大きいことなどが主な受賞理由。
 授賞式には同チームのエンジニア、トマ・ユベールさんが出席して表彰状や記念品を受け取ったほか、同社の最高経営責任者デミス・ハサビスさんが「受賞を大変光栄に思う」とビデオメッセージを寄せた。同賞が国外の個人、団体に授与されるのは今回が初めて。

囲碁ニュース [ 2016年12月14日 ]

井山天元防衛!

 井山裕太天元(27歳)の2勝1敗で迎えた第42期天元戦五番勝負第4局が12月12日に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われた。挑戦者の一力遼七段(19歳)は早くからポスト井山として注目されていた逸材で、現在も棋聖戦Sリーグに在籍するなど強いと言われる若手の中でも頭一つ抜き出た存在。そのため、本シリーズは10月から11月にかけて行われた王座戦(挑戦者:余正麒七段=21歳)と並んで新世代の到来なるかと注目を集めていた。
 結果は井山の白番中押し勝ち。3勝1敗で天元を防衛した。先月、高尾紳路九段(当時)に名人を奪われ、七冠は崩れたものの、その後王座、天元と続けて防衛し六冠を堅持。規格外の強さは健在だった。
 年明け、1月14日からは河野臨九段を挑戦者に迎えた棋聖戦七番勝負が始まる。次に井山からタイトルを奪うのは誰なのか。こちらも目が離せない。



牛 女流棋聖挑戦へ!

 第20期ドコモ杯女流棋聖戦の挑戦者決定戦が12月8日、東京都千代田区で行われ、牛栄子初段が宮本千春初段に黒番5目半勝ちをし、挑戦権を獲得した。
 牛は千葉県出身の17歳。昨年中部総本部で入段し、現在は名古屋に住んでいる。非常に勉強熱心で、入段後めきめきと力を付けてきた。本棋戦で初段が挑戦するのは初めて。不動の女王謝依旻女流棋聖にどこまで迫れるか、注目の挑戦手合三番勝負の第1局は年明け1月19日、神奈川県平塚市「ホテルサンライフガーデン」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年12月7日 ]

国際アマチュア・ペア碁選手権大会

 華やかで国際的な祭典、第27回国際アマチュア・ペア碁選手権大会が12月3日、4日の二日間にかけて、飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで開催された。5回戦のリーグ戦で、今年は21カ国・地域32組64人が出場。ヨーロッパやタイなどの東南アジア諸国は急速に力を付けてきており、各所で白熱した戦いが繰り広げられた。各国の実力差は年々縮まってきていると感じる。
 その中で優勝したのは韓国の金秀英さん・朴鐘昱さんペア。最終戦で台湾の白昕卉さん・黄偉さんペアを破り、韓国勢13連覇の大記録に貢献した。日本勢の中で最も上位に食い込んだのは「パンダネットペア碁チャンピオン枠」から出場した下田和美さん・田辺聰さんペア。「お互いの弱点をカバーしあえた」と息の合ったプレーで4勝1敗、4位に入賞した。



世界学生ペア碁選手権大会 日本初優勝!

 一昨年新設された世界学生ペア碁選手権大会が今年第3回を迎え、国際アマチュア・ペア碁選手権大会と同時開催された。13カ国・地域16組32人による4回戦のリーグ戦。第1回、第2回とも優勝は韓国勢だったが、今年は日本勢が大躍進。優勝決定戦は藤原彰子さん(早稲田大学)・平野翔大さん(立命館大学)ペア対大関稔さん・阿久津千尋さん(中央大学)ペアの日本勢対決となった。優勝は藤原さん・平野さんペア。チームプレーというペア碁ならではの難しさに苦労した点もあったようだが、「優勝できてよかった」と藤原さん。日本ペア初優勝の快挙を成し遂げた。


*国際アマチュア・ペア碁選手権大会および世界学生ペア碁選手権大会の模様は下記URLで詳しく掲載しています。ぜひご覧ください。 http://www.pairgo.or.jp/amateur/27th/

囲碁ニュース [ 2016年12月2日 ]

来春新棋戦 AIも参加

 日中韓の代表各1名とAI搭載の囲碁ソフトが戦う新棋戦「ワールド碁チャンピオンシップ」が2017年3月に日本棋院関西総本部で開催されることが日本棋院から発表された。
 日本からは井山裕太六冠、AIからは先月趙治勲名誉名人と対戦したDeepZenGoが参加。中韓の代表は現在調整中だが、第一人者が出場することは確実と見られる。対戦形式は総当たりリーグ3回戦で、同星となった場合はプレーオフで優勝者を決める。日程は3月21日から23日の3日間(プレーオフは24日)、大会期間中は常時大盤解説会が行われる予定だ。
 井山六冠対世界のトップ、井山六冠対AI、囲碁ファンなら誰もが見てみたいと思うだろう。どのような棋譜が生まれるのか、来春が待ち遠しい。



女流棋聖戦 挑決はフレッシュ対決

 第20期女流棋聖戦の準決勝、宮本千春初段対星合志保初段、鈴木歩七段対牛栄子初段が12月1日に行われ、宮本と牛がそれぞれ挑戦者決定戦に進出した。宮本は関西総本部所属の22歳、牛は中部総本部所属の17歳、どちらが勝っても女流タイトル初挑戦のフレッシュ対決だ。
 女流棋界は長年謝依旻女流名人がけん引していて、今なおその実力は圧倒的だが、最近は藤沢里菜女流本因坊を筆頭に若手の実力が伸びてきている。両者とも大きな実績こそないが、ここまで勝ち上がってきたということがすでに実力を証明していると言えよう。ここで勝って一気に飛躍できるか。今後の棋界を占う意味でもどちらが挑戦者となるか注目だ。



囲碁ニュース [ 2016年11月25日 ]

井山 王座防衛!

 井山裕太王座に余正麒七段が挑戦する第64期王座戦五番勝負の第3局が18日、宮城県仙台市「茶寮宗園」で行われ、井山が白番中押し勝ちを収めた。これにより井山は3勝0敗で防衛。3日に名人を失った直後だったが六冠を堅持し第一人者の貫禄を見せつけた。
 余は今期が七大タイトル初挑戦。3局を通して井山を相手に優位に打ちまわした局面があったものの一歩及ばず、ほろ苦い初陣となった。



趙治勲 AIに勝利!

 趙治勲名誉名人に和製AIの「DeepZenGO」がハンディ無しの19路盤で挑む第2回囲碁電王戦3番勝負が19、10、23日の日程で行われ、趙が2勝1敗で勝利した。
 驚異的な棋力向上を果たしたDeepZenGOは序盤に大局観のある華麗な打ち回しを見せ周囲を驚かせた。しかし意外なことに後半にミスを連発。2局目はAIが勝ったものの1、3局は逆転負けを喫した。一方趙は途中劣勢に立たされる局面もあったが、最後まで集中力を切らさなかった。実力はかなり拮抗しているように見えたが、趙の精神力がAIを上回った結果と言えるだろう。



囲碁ニュース [ 2016年11月18日 ]

河野 棋聖初挑戦!

 第41期棋聖戦の挑戦者決定変則三番勝負第2局が11月14日、日本棋院で行われ河野臨九段が張栩九段を破り井山裕太棋聖への挑戦権を獲得した。河野は天元3連覇など実績十分の実力者だが、棋聖挑戦は初めてとなる。

 棋聖戦は昨年から方式が大きく変わり、4つのリーグ【S・A・B・C】の優勝者とSリーグの準優勝者によるパラマス式トーナメントで挑戦者が決定する。トーナメントの頂点である挑戦者決定戦はSリーグ優勝者に1勝のアドバンテージがある変則三番勝負。つまり、上位リーグほど挑戦権獲得までの勝ち星数は少なくて済むが、逆に言えば下位リーグにいても勝ち進みさえすれば挑戦権を獲得できる可能性があるシステムということだ。今期のパラマス式挑戦者決定トーナメントの出場者は上位リーグから順にS優勝・河野、S準優勝・山下敬吾九段、A優勝・張、B優勝・結城聡九段、C優勝・志田達哉七段。結果は結城がC優勝の志田に勝って駒を進めたが張に敗退。張は結城に続いて山下を破り挑戦者決定戦に進出。挑戦権はS優勝の河野とA優勝の張によって争われることになった。

 挑戦者決定変則三番勝負第1局はギリギリのヨセ合いの末、張が黒番半目勝ちを収めた。続く第2局でも形勢不明のまま難解なヨセ合いに突入。神経を使う攻防が続いたが、今度は河野がわずかに上回り白番1目半勝ちで挑戦権を獲得した。

 河野は先月行われた阿含桐山杯で趙治勲名誉名人を破り優勝するなど好調だ。また2014年に碁聖、名人と相次いで井山に挑戦した際には敗れはしたものの碁聖で2勝3敗、名人で2勝4敗とあと一歩のところまで追いつめた。棋聖戦七番勝負は来年1月に開幕予定だ。井山対河野、早くも名勝負の予感がする。

囲碁ニュース [ 2016年11月11日 ]

AI囲碁のこれから

 3月に起きたアルファ碁の衝撃から約8ヶ月、囲碁AIの活動がますます活性化してきている。7月8日には日本の詰碁AI「パンダ先生」対世界のトップ棋士による詰碁の早解き競争、「パンダ先生チャレンジマッチ」が行われAI側が圧倒。そして11月9日、ニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴが和製の囲碁AI、DeepZenGoが棋士と対局できるレベルに棋力が向上したとして、趙治勲名誉名人との3番勝負を11月19、20、23日の日程で行うことを発表した。

 囲碁・将棋ソフトのプログラマーとの親交が深く囲碁AIに精通している棋士、大橋拓文六段は11月9日、東京都千代田区「如水会館」で「AIの挑戦」と題した講演会を行い、囲碁AIの現在と今後の展望について語った。その中で印象的だったのは、AIによって新しい手が発見されたり、活用することで人間の棋力が向上したり、ポジティブな面がある一方で、棋士の存在意義を根底から揺るがす劇薬にもなりうるということだ。これは抽象的な問題だけでなく具体的な問題でもある。先立って人間より強いソフトが市販されている将棋界では「対局時のスマホ不正使用」が問題となった。真偽は別として、人間より強いソフトがあるということは不正の可能性を常に疑われる環境にあるということ。きちんと対策しなければ棋譜の価値すら疑われてしまう。

 AIがもたらすインパクトはそれほどまでに大きい。しかしながら、大橋六段はそれらを考慮した上で「振り回され過ぎてはいけない」と話す。「AIは確かに強いけれど、勝つ可能性が高い手を選んでいるのであって、最善を打っているのではありません。つまり囲碁を完全に解析したわけではないのです。恐れ過ぎず、冷静に向き合う必要があります」

 もはや人間を凌駕する囲碁ソフトが一般的になるのは時間の問題と言える。そうなったらどんなことが起こるのか、その現象にどのように向き合うべきなのか。大橋六段が言うように振り回され過ぎず冷静に今から議論する必要があるだろう。(記事・品田渓)

囲碁ニュース [ 2016年11月4日 ]

高尾名人! 七冠崩れる

 3勝3敗で最終局までもつれ込んだ第41期名人戦挑戦手合七番勝負がついに決着した。11月2日、3日に山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われた第7局で挑戦者の高尾紳路九段が井山裕太名人に白番2目半勝ちを収め、10期ぶり2度目の名人に返り咲いたのだ。
 本シリーズは井山が開幕3連敗を期すという波乱の幕開けとなった。内容もミスがあり井山らしくないものだったためこのままストレートで決まるかと思われたが、その後しぶとさを見せ3連勝。両者は昨年と2010年、2回名人戦で対戦しているがいずれも4勝0敗で井山が勝っていること、歴史的に3連敗の後3連勝すると勢いに乗って最終局を制する例が多いことなどを考慮すると、第6局が終わった時点では井山に分があるかと思われた。しかし本局の高尾は充実していた。序盤でリードを奪うとその後も手厚く打ち回し堂々の勝利。何度も敗れてきた相手から大きな1勝を挙げた。
 井山は4月に十段を獲得して以来、本因坊、碁聖を防衛し七冠を保持していたが、今回敗れたことで六冠となった。なお、将棋の羽生善治さんも七冠となってから3棋戦目で敗れている。偶然の一致かもしれないが、同じタイミングで七冠が崩れたことに何か因縁めいたものを感じる。
 これから余正麒七段が挑戦する王座戦、一力遼七段が挑戦する天元戦と重大対局が続く。井山が六冠を死守すればしばらく井山一強時代が続くだろう。しかし余、一力が高尾の後に続けば一気に群雄割拠の時代に突入しかねない。今まさに時代の趨勢を占う重要な時期を迎えていると言えるだろう。

囲碁ニュース [ 2016年10月28日 ]

藤沢 女流本因坊奪取!

 謝依旻女流本因坊に藤沢里菜三段が挑戦する第35期女流本因坊戦第4局が24日、東京・日本棋院本院で行われ、藤沢が黒番中押し勝ちした。これにより藤沢は3勝1敗でタイトルを奪取。2期ぶりに女流本因坊に返り咲いた。
 藤沢は2014年に向井千瑛五段を破り、15歳9か月という史上最年少記録で女流本因坊となった。しかし昨年、謝を挑戦者に迎えた防衛戦は開幕2連勝するもその後3連敗を喫し涙をのんだ。
 「昨年はミスや錯覚が多かったと思います。この一年、どうしたらミスや錯覚がなくなるかを考え、意識していました」と藤沢。たしかに、今回の藤沢は最初から最後まで冷静かつ慎重だった。昨年の敗戦を生かし、1回りも2回りも成長して戻ってきたようだ。
   一方謝は5つの女流タイトルを独占していたがその一角を崩される形となった。局後に記者から感想を求められるとかすれた声で「5局目まで打ちたかったけど、それが今の実力なので」と悔しさをにじませた。今回のシリーズは歴史に残る名勝負だったと言えるだろう。藤沢に軍配が上がったが、謝の内容も充実していて、双方が工夫した手に工夫した手を返す見ごたえのある駆け引きが展開された。本シリーズは幕を閉じたが、謝・藤沢時代はここから始まりそうだ。



名人戦 決戦は第七局へ

 井山裕太名人に高尾紳路九段が挑戦する第41期名人戦の第6局が26、27日に静岡県河津町「今井荘」で行われ、井山が黒番中押し勝ちした。本シリーズは高尾が開幕3連勝で井山をカド番に追い込むという波乱の幕開けとなった。ついに七冠が崩れるかと思われたが、そこから井山がしぶとさを見せ、気が付けば3勝3敗。決戦は最終局に持ち越されることになった。第7局は11月2、3日に山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年10月24日 ]

王座戦開幕 井山先勝!

 井山裕太王座に余正麒七段が挑戦する第64期王座戦五番勝負が17日、大阪府大阪市「ウェスティンホテル大阪」で開幕し、井山が白番1目半勝ちを収めた。余は21歳、七大タイトル初挑戦だ。前期王座戦や今年の十段戦で挑戦者決定戦に進出するなど、近年強いと言われる若手棋士の中でも特出した活躍を見せている。開幕戦は惜敗したが、五番勝負は始まったばかりだ。第2局は11月7日に兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」で行われる。



天元も井山 開幕戦勝利!

 井山裕太天元に一力遼七段が挑戦する第42期天元戦が21日、三重県志摩市「賢島宝生苑」で開幕し、井山が黒番中押し勝ちした。一力(19歳)は早くからポスト井山として注目を集めてきた英才。先日行われた竜星戦では決勝で井山に勝利し優勝している。
 井山は現在、名人、王座、天元と3棋戦の防衛戦を同時進行で戦っている。このまま井山が七冠を維持するのか、それとも誰かが崩すのか。崩すとしたらベテラン高尾紳路九段なのか、あるいは新世代の余正麒七段、一力なのか、興味は尽きない。天元戦の第2局は11月11日北海道小樽市「小樽朝里クラッセホテル」で行われる。今週26、27日に第6局を迎える名人戦、11月7日の王座戦とともに目が離せない。

囲碁ニュース [ 2016年10月13日 ]

からたち幼稚園に学ぶ 囲碁普及

テラ碁ヤの様子

 今回は難しい普及の現場で、素晴らしい成果を上げている兵庫県尼崎市にある「からたち幼稚園」の取り組みを紹介したい。

 一般的に普及の難しさは次の3点に要約されているように思う。①教える人がいない、②継続できない(イベントだと参加して終わってしまう。学校などで行った場合、卒業後はやらなくなる)③強くならない(その場でルールは覚えてもそれ以外にやる機会がない)。囲碁をやりたい人だけがくる教室とは違い、普及はほとんどの人がはじめは興味がない状態から始まる。そして、仮に興味を持ってくれても、そこから教室に移行するのはかなりハードルが高く、なかなか囲碁を一生の趣味にするところまではいかない。

 「からたち幼稚園」が画期的な点はこの「普及の難しさ」をすべてクリアしているところにある。まず、広く囲碁を知ってもらうためにすべての年中、年長の児童に毎週囲碁の授業を行っている。授業で興味を持った子は放課後にある「テラ碁ヤ」で地域ボランティアの方の指導のもと、囲碁に触れることができる。また、この「テラ碁ヤ」は卒園後も参加可能という点が特徴だ。これにより、小学生になっても続けることができる。そしてより本格的に囲碁を勉強したい子は土曜日の「囲碁道場」に通うことができる。こちらは日本棋院関西総本部と提携していて、棋士が指導にあたっている。このように一つの幼稚園で「授業」→「放課後教室」→「囲碁教室」の3重構造を持っていて、しかもそれが園内だけではなく卒園生にも開かれているのだ。

 「からたち幼稚園」が理事長の小西理(さとる)さんの発案によって、最初にこの取り組みを始まったのは10年以上も前のこと。年々子どもの競技人口が増え、今では市内の大会参加者は大人より子どもの方が多いほどだ。立ち上げ当初からこの取り組みに関わっている水戸夕香里三段は「これが可能になったのは、園の先生方、地域の方、棋士がそれぞれどうしたらうまくいくかを考え、連携してきたからです」と話す。園の先生はルールを覚えて子どもたちが遊びの一環で囲碁ができるようにし、園児が大会に参加する際は引率するなど背後からサポートする。地域ボランティアの方は日常の中で囲碁に触れる場を支える。棋士は専門的な知識で棋力の底上げに貢献する。三者の連携がこの仕組みを支えているということがよくわかる。

 もちろん「からたち幼稚園」は特出した普及の成功例であって、実際に取り組むとなると様々な制約があって難しい面もある。しかし「連携」という点については学ぶべきところが大きいのではないだろうか。たとえ100人にルールを教えても、その人たちが囲碁を続けてくれなければ競技人口は増えない。継続するために必要な受け皿をどうやって担保していくか。そのことを考える上で「からたち幼稚園」はとても重要なことを教えてくれていると思う。

(記事:品田渓)

囲碁ニュース [ 2016年10月7日 ]

大西 新人王に!

 第41期新人王戦本戦トーナメントを勝ち上がった谷口徹二段と大西竜平二段による三番勝負第2局が9月30日、日本棋院で行われた。結果は第1局を先取した大西の黒番中押し勝ち。これにより大西は2連勝で新人王となった。
 大西は16歳6か月で優勝。これは一力遼七段の17歳3か月を塗り替える最年少記録だ。局後感想を求められると「今まで応援してくれた人たちに少し恩返しができたかなとホッとしている。一力さんの記録を超えたといっても、今現在は一力さんの方がはるかに強い。これからも気を引き締めて頑張ります」と謙虚に語った。

史上最年少で新人王となった大西二段
終局直後の対局室



名人戦 井山1勝返す

 井山裕太名人に高尾紳路九段が挑戦する第41期名人戦第4局が10月4日から5日にかけて兵庫県宝塚市「宝塚ホテル」で行われ、井山が黒番中押し勝ちを収めた。
 本シリーズは開幕から高尾が3連勝し、井山は早々にカド番に追い込まれた。4月に夢の7冠を達成し、その後も本因坊戦を4勝1敗、碁聖戦を3勝0敗で防衛するなど圧倒的な強さを誇っていた井山だけに多くの人にとってこの展開は予想外だったに違いない。内容も後半にミスが出るなど「らしくない」ものであり、突然の変調を心配する声が上がっていた。
 しかし本局は本来の強さを存に分発揮した内容だったと言える。調子を取り戻しつつある井山が連勝するか、それとも高尾が10期ぶりの名人に返り咲くか、1局1局に目が離せない。第5局は12、13日に静岡県熱海市「あたみ石亭」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年9月29日 ]

ジャステック杯国際新鋭対抗戦

 2016ジャステック杯国際新鋭対抗戦が9月23日から25日にかけて東京都千代田区で開催された。日日本、中国、韓国、台湾による25歳以下の若手限定の団体戦で、各国が持ち回りで主催する。1チーム8人(男性6人、女性2人)のリーグ戦。勝つと3点、引き分け1点、負けなら0点が加算され、最終的に勝点が最も多いチームの優勝となる。日本チームは主将から順に伊田篤史八段、平田智也七段、余正麒七段、孫喆四段、六浦雄太二段、芝野虎丸二段、牛栄子初段、上野愛咲美初段が参加した。
 日本チームは1回戦で韓国に引き分け、2回戦で台湾と対戦。ここでも引き分け、最終戦の中国にも引き分けた。勝ちがなかったのは残念だが、これまで圧倒的な力の差を見せつけられてきた韓国、中国に引き分けたのは大きな戦果と言える。結果は中国が2勝0敗1引き分けで勝点7を獲得し優勝。韓国が1勝1敗1引き分けで勝点4を得たために全部引き分けだった日本は勝点1の差で3位に終わった。
 4年前に日本が主催した際には日本チームは最下位に沈みその後は3大会連続で3位が続いていた。団長の小林千寿六段は「結果はまた3位でしたが今までとは全然内容が違います」と話す。「これで自信をつけ、さらにグンと伸びてほしい」。少しずつ、しかし着実に日本の若手は着実に世界に迫っていると実感した。

囲碁ニュース [ 2016年9月20日 ]

名人 高尾連勝!

 井山裕太名人に高尾紳路九段が挑む第41期名人戦第2局が14、15日の二日間にかけて行われ、高尾が白番中押し勝ちを収めた。高尾はこれで開幕2連勝。第31期以来の復冠がいよいよ現実味を帯びてきた。
 逆に井山は開幕2連敗ということになる。他を寄せ付けない盤石の打ち回しでタイトルを堅持していただけに心配の声が上がる。内容も後半にミスが出るなどいつもの井山らしくない。もう一局負けるとカド番となり、防衛はかなり難しくなる。次局で勝利し悪い流れを断ち切れるかが大きな勝負どころとなるだろう。
 第3局は20、21日に静岡県沼津市「千本松・沼津倶楽部」で行われる。タイトルの行方を左右する大一番。対局の模様は、朝日新聞社「ねっとde碁!」(提携:パンダネット)で中継している。気になる方はぜひご覧いただきたい。



女流本因坊 謝先勝!

 謝依旻女流本因坊に藤沢里菜三段が挑む第35期女流本因坊戦が13日、岩手県花巻市「佳松園」で開幕した。激闘の末、黒番の謝が藤沢の大石を仕留めて勝利。女流5タイトルを独占する女王の貫禄を見せつけた。
 謝と藤沢の番勝負は昨年に引き続き2度目となる。昨年は史上最年少女流本因坊となった藤沢の初防衛戦に第一人者の謝が挑戦者として立った。藤沢が開幕から2連勝し、その瞬間は誰もが藤沢の防衛かと思ったが、そこから謝が持ち前の粘り強さを発揮し3連勝。見事な逆転劇でタイトルを奪取した。今年はどのようなシリーズになるのか。注目の第2局は26日、鳥取県東伯郡三朝町「依山桜岩崎」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年9月15日 ]

余 王座戦初挑戦!

 第64期王座戦の挑戦者決定戦が8日、日本棋院東京本院で行われ、余正麒七段が高尾紳路九段に白番中押し勝ちし、七大タイトル初の挑戦権を手に入れた。余は昨年も挑戦者決定戦まで勝ち上がり、復冠を目指す井山裕太棋聖と対戦。優勢を築いたが終盤、井山の執念に魅入られるように後退し悔し涙を飲んだ。今回の挑戦手合五番勝負はそのときの雪辱戦でもある。充実した内容で七冠を維持する井山にどう戦うのか。見ごたえのあるシリーズになりそうだ。



本因坊就位式 号は文裕

 第71期本因坊就位式が9月9日、大阪府大阪市「ザ・リッツ・カートン大阪」で行われた。井山裕太本因坊は今期防衛したことで、5連覇を果たし永世本因坊の資格を取得。これを機に本因坊の「号」を名乗ることを発表した。
 発表された号は「文裕(もんゆう)」。シリーズが始まる前、本因坊家ゆかりの寺である寂光寺へ行き、大川住職に相談して決めたと言う。大川住職は由来について「文は文殊菩薩から取っている。文殊は知恵、菩薩は悟りの境地である如来に向かって進む求道者のこと。井山さんには文殊菩薩の大きな知恵をいただき、囲碁道に入っていただきたいという思いを込めた」と解説。井山は号を「とても気に入っている」と話し、その理由を「最初の囲碁の師匠である祖父、鐵文(てつふみ)の名前が入っているから」と説明した。

号の由来を話す大川住職
号を発表する井山本因坊

囲碁ニュース [ 2016年9月5日 ]

名人戦 高尾先勝!

 第41期名人戦七番勝負が8月30、31日に東京都文京区「ホテル椿山荘」で開幕し、挑戦者の高尾紳路九段が井山裕太名人に黒番中押し勝ちした。井山名人は4月に七冠獲得して以来、本因坊、碁聖を防衛し七冠保持記録を伸ばしている。勢いに乗った高尾九段が連勝するか、それとも井山名人が巻き返すか、第2局は9月14、15日に愛知県田原市「和味の宿 角上楼」で行われる。



天元戦 一力初挑戦!

 第42期天元戦五番勝負の挑戦者決定戦が9月2日、日本棋院東京本院で行われ、一力遼七段が山下敬吾九段に白番4目半勝ちし、七代タイトルの初挑戦を決めた。一力七段はポスト井山として注目されていた一人で、新人王戦優勝やNHK杯準優勝などの実績がある。現在19歳4ヶ月、天元戦挑戦手合出場者としては最も若く、七大タイトル出場者の中では井山裕太八段(当時・19歳3ヶ月)の名人挑戦に次ぐ年少記録となる。
 「10代で七代タイトル挑戦を一つの目標にしていたので、それが達成できてホッとしている」と一力七段。井山天元については「隙がなくて強い。特に挑戦手合ではそういうイメージがある」と話した上で「そういう舞台で打てるのは嬉しい。どうなるかわからないけれど挑戦者になった勢いのまま頑張りたい」と抱負を語った。
 井山天元の碁は激しく妥協を許さないことで有名だ。一方、一力七段も自身で「迷った時には厳しい手を選ぶところは井山先生と近いところがある」と話すように、戦いを恐れず積極的に仕掛けていくタイプだ。その2人が正面からぶつかるのだから、おのずと戦いの碁になるに違いない。絶対王者井山天元が次世代を担うスター、一力七段をどう迎え撃つのか楽しみだ。

終局直後の対局室【幽玄の間】
挑戦に向け抱負を語る一力七段

囲碁ニュース [ 2016年8月26日 ]

大関さんアマ本因坊に 学本・アマ本同時制覇!

対局会場

 第62回全日本アマチュア本因坊決定戦全国大会が20、21日の二日間にかけて開催され、47都道府県の地区代表55人とアマ本因坊ら9人の招待選手、計64人がアマチュア囲碁の最高峰を目指し競った。その中で、見事初優勝を飾ったのは学生本因坊の大関稔さん(招待・21歳)。大関さんは6、7日に学生本因坊戦で優勝したばかり。今回の優勝によりW本因坊となった。これは2006年優勝の村上深さん以来の快挙となる。
 決勝戦は同大会3位入賞の実績を持つ趙錫彬さん(愛知・34歳)との対戦となった。序盤は白番の趙さんにやや有利な展開かと思われたが、思わぬ失着から一転、大関さんの優勢に。その後、趙さんの猛追を受け形勢不明の混戦に陥ったが、最後は大関さんが半目を残し辛くも逃げ切った。「大会全体を通しては結構内容よく打てて満足しているけれど、決勝戦は緊張して固くなってしまった」と大関さん。優勝については「目標にしていたけれど、実際に優勝してみると本当に優勝できるとは思わなかったなと思う。すごく嬉しい」と素直に喜びを表現した。
 アマ本因坊になるとプロ・アマ本因坊対抗戦に出場することになる。大関さんは昨年、学生王座戦で優勝し、今年2月に「学生王座特別対局」で井山裕太王座と対戦した。これを受けて「年に2回も井山先生に挑戦できるのはプロでもめったにないこと。すごく嬉しいし、楽しみ」と意気込みを話した。
 3位以下の入賞者は次の通り(敬称以下略)。3位・石村竜青(神奈川・21歳)、4位・金子賢(新潟・29歳)


決勝戦の模様(左・大関さん、右・趙さん)
入賞者記念撮影
(前方左から石村さん、大関さん、趙さん、金子さん)

囲碁ニュース [ 2016年8月18日 ]

名人戦 高尾挑戦!

 第41期名人戦で七冠を有する井山裕太名人に挑戦するのは高尾紳路九段に決まった。リーグで村川大介八段に1敗を喫したが、残りを全勝し7勝1敗で終えて単独首位に。安定した強さを発揮した。
 昨年に引き続き好調の高尾だが、対井山にはなかなか勝てていない。昨年の名人戦では0勝4敗のストレート負け。今年5、6月に行われた本因坊戦では、初戦を勝利するもその後4連敗で退けられた。もはや人間離れした強さを見せる井山だが、高尾はその井山と戦うことのできる数少ない棋士だ。蓄積された鬱憤を晴らすべくリベンジに燃えているに違いない。
 第1局は8月30、31日に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われる。



女流本因坊戦 藤沢挑戦!

 第35期女流本因坊戦の挑戦者決定戦が8月8日、日本棋院東京本院で行われ、藤沢里菜三段が鈴木歩七段に白番中押し勝ちし、謝依旻女流本因坊への挑戦権を獲得した。
 藤沢は2014年に向井千瑛五段からタイトルを奪取。史上最年少の女流本因坊に輝き大いに話題となった。しかし昨年最強の挑戦者、謝と戦い2勝3敗で惜しくも敗れ、無冠に転落。悔し涙を飲んだ。
 謝は今年に入って5つある女流棋戦を独占するなど他を圧倒しているが、藤沢にとっては昨年の借りを返す大きなチャンスだ。両者一歩も引かない名勝負が繰り広げられることは間違いない。
 第1局は9月13日に岩手県花巻市「佳松園」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年8月12日 ]

学生本因坊・女子学生本因坊

 第60回全日本学生本因坊決定戦と第52回全日本女子学生本因坊決定戦が6、7日、東京・日本棋院で開催された。最近は一般大会で十代の優勝者が誕生するほど若いアマチュア選手が強い。そのため、本大会のレベルは史上まれにみるハイレベルな戦いとなった。
 【学生本因坊】各地区予選を勝ち上がった32人によるトーナメント戦。優勝したのは学生王座と学生十傑の2冠を獲得した実力者の大関稔さん(専修大・2年)。今年アマ名人戦で優勝した平野翔大さん(立命館大・1年)を決勝戦で破り、昨年準優勝だった雪辱をみごと果たした。
 【女子学生本因坊】24人の各地区代表を4ブロックに分けブロック優勝者によるトーナメント戦を行う。優勝したのは女流アマ2連覇の実績を持つ藤原彰子さん(早稲田大・1年)。決勝戦で同じ早稲田大の野村美奈さん(1年)を破った。藤原さんは「最近調子がわるかったので、優勝できて嬉しい」と喜び、今後の抱負を問われると「男子を含めた学生大会でも頑張りたい」と力強く語った。



第33回世界青少年囲碁選手権

 日本では「世界青少年囲碁選手権」という大会を知っている人は少ないかもしれない。この大会は中国がスポンサーの青少年を対象とした世界戦で、院生も参加できるのが特徴だ。そのため、かつての中国ナンバー1の柯潔九段と日本のエース一力遼七段が直接対決したこともある。
 今年は孔令文七段の尽力により東京・日本棋院で開催された。12歳以下の年少組、16歳以下の年長組に分かれ、それぞれ各国地域代表12人によるリーグ戦を行い上位4名がトーナメント戦へ進出する。年少組は韓国のYeom Jiwoongくん、年長組は中国の蒋其潤くんが優勝。日本代表では年少組に参加した日野勝太(院生)が3位入賞と健闘した。

囲碁ニュース [ 2016年8月2日 ]

井山 碁聖5連覇!

 井山裕太碁聖に村川大介八段が挑戦する第41期碁聖戦五番勝負第3局が7月28日に大阪府大阪市「日本棋院関西総本部」で行われ、井山が黒番中押し勝ちをおさめた。これにより井山は3勝0敗で防衛。5連覇を達成し、「名誉碁聖」を名乗る資格を得た。名誉碁聖は5連覇もしくは通算10期で与えられる称号で、井山は大竹英雄九段、小林光一九段に続き史上3人目。6月に得た永世本因坊(26世本因坊)と合わせて2つ目の名誉称号資格となった。
 スコアの上では井山の3勝0敗だったが、シリーズを通して村川の内容は決して悪くなかった。むしろ充実していたように思う。特に第3局では競り合いで井山に読み勝ち、大優勢を築いた。それでも勝てなかったのは井山の勝ちを手繰り寄せる技術が突出していたからだろう。形勢がいい時にはたたみかけるように強手を連発して勝勢に導き、形勢が悪い時にはしぶとくチャンスをうかがい、敗勢に追い込まれると針の穴のような抜け道を見つけ手にする。七冠の強さを改めて確認したシリーズだった。
 今月中には名人戦の挑戦者が決まり、30日からは4連覇をかけた七番勝負が始まる。本因坊、碁聖に続き名人も防衛するか、あるいは挑戦者が井山の牙城を崩すのか。こちらも注目だ。

囲碁ニュース [ 2016年7月26日 ]

謝 女流5タイトル同時制覇!!

 現在女流棋戦は5つある。古くから馴染みのある女流本因坊戦、女流名人戦、女流棋聖戦の3棋戦と2014年に創設された会津中央病院杯、そして今年から始まった新棋戦、扇興杯女流最強戦(センコー株式会社協賛)だ。
 謝依旻女流本因坊は第1回扇興杯女流最強戦が始まる前にすでに女流4タイトルを独占しており、新棋戦で優勝すると全女流タイトルを手中にすることになるため非常に大きな注目を集めていた。
 順調にベスト4に勝ち残ると7月15日に行われた準決勝で青木喜久代八段を破り決勝へ。もう一方の山で藤沢里菜三段を下して勝ち上がってきた向井千瑛五段と17日、決勝戦を戦い、難解な碁を見事競り勝った(292手完、白2目半勝ち)。女流5タイトルを同時制覇したことについて謝は「結果を残せてうれしい」と素直に喜ぶ。井山裕太棋聖の七冠に続き、謝も歴史に残る偉業を成し遂げた。
 14歳で入段し、17歳1か月で初タイトル(女流プロ最強戦2008年終了)を獲得、2011年には女流本因坊、女流名人、女流棋聖を手中にし、女流3冠となった。順風満帆の棋士人生だが、試練もあった。2012年に女流棋聖を失い、翌2013年に取り戻すも今度は女流本因坊を失冠。さらにその年、棋士になって初めて年間成績での負け越しを経験した。謝の不調がささやかれていた頃は折しも藤沢里菜三段など新世代が台頭してきた時期と重なり、謝一強時代はこれで終わりかと思った人は少なくないだろう。
 しかし謝は不屈の精神力を見せつけた。昨年、女流本因坊を藤沢から奪取してから女流棋聖、女流名人を防衛。会津中央病院杯では昨年決勝で敗れた雪辱を晴らし、今回、新棋戦の初代女王に輝いた。持ち前の粘り強さと抜群の勝負勘に磨きをかけてさらに強くなった謝の今後に目が離せない。

囲碁ニュース [ 2016年7月13日 ]

ペア碁ワールドカップ2016東京

 男女がチームを組み交互に着手するペア碁はプロアマ問わず世界中で親しまれており、これまで多くのペア碁大会が開かれてきた。その中でも「ペア碁ワールドカップ2016東京」(日本ペア碁協会など主催)は参加者、規模、来場者数など、あらゆる点で規格外の盛り上がりを見せたのではないだろうか。
 東京都、渋谷ヒカリエで7月9、10日の2日間にわたって盛大に開催された本大会の最大の特徴はペアの男女ともが各国の第一人者であるという点だろう。出場者は日本の謝依旻女流本因坊・井山裕太棋聖ペア、中国の於之瑩五段・柯潔九段ペア、韓国の崔精六段・朴廷桓九段ペアを含む12か国地域16ペア36人。誰もがベストメンバーと認めざるを得ない豪華な顔ぶれだ。
 会場では随時、趙治勲名誉名人らによる大盤解説会が行われたほか、対局会場に自由に出入りし直接棋士が打っている姿を見ることもできた。日本で世界のトップ棋士に会う機会はめったにない。ここぞとばかりに多くのファンが詰めかけ、会場は終日満員。2日間でのべ4000人以上が来場し、トップ棋士による夢の共演を楽しんだ。
 日本の謝・井山ペアは特に観客から熱烈な応援を受けていたがベスト4進出をかけた2回戦で韓国の崔・朴ペアに敗退。井山は「(謝さんは)これ以上ないパートナーで楽しかった。それだけにもっと打ちたかった」と残念そうだった。日本からは他に王景怡二段・村川大介八段ペア、向井千瑛五段・一力遼七段ペアが出場したが、2回戦までに敗退した。決勝は中国の於・柯ペア対中華台北の黒嘉嘉七段・陳詩淵九段ペア。中国ペアが高い技術力と息の合ったプレーで中華台北ペアを退け、堂々の優勝を飾った。

http://www.pairgo.or.jp/pgwc/2016/ (大会の詳細はこちらから)

第2回戦謝・井山ペア対崔・朴ペア
大盤解説会




パンダ先生チャレンジマッチ

パンダ先生チャレンジマッチ

 皆さんは「パンダ先生」をご存じだろうか。「パンダ先生」とは2003年に実用化された(株)パンダネットが開発した詰碁の正解手順を示してくれる詰碁AIソフトだ。7月8日、「ペア碁ワールドカップ2016東京」の開催に先立って、日本を代表する詰碁作家(河野臨九段、大場惇也七段、大橋拓文六段)が出題した難問を解くスピードと正確さを「ペア碁ワールドカップ2016東京」に出場する世界のトップ棋士12組と「パンダ先生」が競う「パンダ先生チャレンジマッチ」が行われた。
 問題は全部で6問出され、それぞれペアで協力して解く。ただし早押しでブザーを押した最初の5人しか解答することはできない。最初に解答すると5ポイント、2番目は4ポイントと点が加算されていくが、間違えるとマイナス2ポイントの減点がある。
 予想以上の難問だったのか、解答権を得たペアが次々と誤答。全6問が終わり1問でも正解することができたのは韓国の呉侑珍二段・崔哲瀚九段(2問正解・6点)、中国の於之瑩五段・柯潔九段ペア(1問正解・3点)、日本の謝依旻女流本因坊・井山裕太棋聖ペア(1問正解・0点)の3組だけだった。そんな中「パンダ先生」の強さは圧倒的で、なんと24点を獲得。全13組のトップに立った。
 印象的だったのは問題を出している詰碁作家も参加している棋士も、それを見ている観客もとても楽しそうだったということだ。審判長を務めた二十四世本因坊秀芳の「世界のトップが苦戦している姿を見ることができて楽しかった。違った意味での碁の楽しみ方を教わったと思う」という言葉どおり、今回の試みは新しい囲碁の楽しみ方を提示していたと思う。

囲碁ニュース [ 2016年7月1日 ]

碁聖戦開幕 井山先勝

初手を打つ井山碁聖

 井山裕太碁聖に村川大介八段が挑戦する第41期碁聖戦第1局が6月25日、静岡県浜松市で開幕し、黒番の井山が中押し勝ちをおさめ、初戦を白星で飾った。
 浜松市で碁聖戦が行われるのは10年ぶり。今回会場となった「ホテル九重」は10年前にも会場となった由緒あるホテルで浜名湖近くの温泉街にあり、対局室からは風光明媚な浜名湖を望むことができる。本局の誘致に合わせて24日から26日にかけて浜名湖の美しい風景と囲碁を楽しめる「舘山寺囲碁まつり」が開催されたこともあり、町全体が囲碁を楽しんでいるようだった。
 今年の注目は何といっても井山の七冠を誰が崩すかだろう。村川は今年に入ってから好調で、井山も「最近の村川さんは充実している」と認めている。井山七冠と各棋戦で大活躍の村川の対戦とあって本局の注目度は極めて高く、大盤解説会の抽選申し込みは10年前の倍に上った。
 両者とも工夫を凝らし序盤から未知の世界に入った。途中、村川の強手があり白ペースの碁形と見られていたが、井山が圧倒的な読みの力を発揮しいつの間にか形勢不明の大乱戦に。最後は競り合いで白の大石が死に、村川の投了となった。
 「日が空くので気持ちを切り替えて一生懸命打ちます」と村川。巻き返しを図る第2局は7月18日に石川県金沢市で行われる。

対局会場となったホテル九重
懇親会には出世大名家康くんも駆け付けた


瀬戸大樹八段と平岡由里子さんによる大盤解説会
舘山寺囲碁まつり_指導碁風景


舘山寺囲碁まつり_対局風景



 

丙級リーグ 日本チーム優勝!

 中国丙級リーグに参戦していた日中友好チームが7勝2引き分けで首位に立ち、乙リーグへの昇格を決めた。
 中国リーグは4人1組の団体リーグ戦で、甲級・乙級・丙級と階級ごとに分かれており、一番上が甲級リーグとなっている。日本は3番目の丙級リーグに参戦した。メンバーは主将から順に伊田篤史八段、一力遼七段、余正麒七段、許家元三段。丙級リーグとはいえ国際戦で日本勢が振るわない中、優勝できたことは大きな成果だ。乙級リーグはさらに層が厚く国際戦で活躍する棋士が数多く在籍するため厳しさは増すが、日本を背負って立つ若手4人にはさらなる活躍が期待される。

囲碁ニュース [ 2016年6月23日 ]

会津中央病院杯 謝初優勝!

 第3回会津中央病院杯の決勝戦が6月17、18 日の二日間にかけて福島県会津若松市で行われ、謝依旻女流本因坊が青木喜久代八段に白番4目半勝ちし、初優勝を飾った。
 本棋戦は女流棋戦では唯一決勝戦を2日制で行うのが大きな特色。持ち時間は昨年よりも1時間多い、各6時間で行われた。謝は昨年も決勝戦の舞台で戦っているが、持ち時間6時間の碁は初めて。青木は過去に大手合で6時間の碁を経験しているものの二日制の碁は初めてだった。それでも、両者とも戸惑うことなく充実の打ち回しを見せ大いにファンを魅了した。
 謝はこれにより女流本因坊、女流名人、女流棋聖に加えて会津中央病院杯の称号を得て、5つある女流棋戦のうち4つの棋戦で頂点に立つと同時に自身の持つ女流棋士史上最多タイトル獲得記録を24に更新。残る1棋戦、扇興杯女流最強戦でもベスト4に残っており、こちらも注目が集まる。4月には井山裕太棋聖が史上初の七大タイトル同時制覇を成し遂げ話題を席巻した。女流棋界における絶対的な女王、謝も女流5棋戦の同時制覇を虎視眈々と狙っているに違いない。

囲碁ニュース [ 2016年6月16日 ]

世界アマ 中国の白さんが優勝

 第37回世界アマチュア囲碁選手権戦が6月5日から8日にかけて中国江蘇省無錫市で行われ、世界54の国・地域の代表選手が参加した。その中で、中国代表の白宝祥さんが8回戦のリーグ戦を全勝し、優勝を果たした。白さんは第32回以来2度目の優勝となる。2位は金基伯さん(韓国)、3位は許家埕さん(中華台北)。
 日本代表の平岡聡さんは2度の優勝経験がある実力者だが、第2戦で中華台北、第7戦で中国に敗れ、6勝2敗で5位に終わった。
 3位まではアジア勢が占めたが、4位にウクライナ、6位にハンガリー、7位にセルビア、8位にルーマニアが入り、ヨーロッパ勢も活躍した。

対局風景
日本代表の平岡聡アマ


6回戦:中国代表と韓国代表の全勝対決が行われた
優勝した中国の白宝祥アマ


1位から3位が記念撮影
入賞者記念撮影:左から4位から10位

囲碁ニュース [ 2016年6月10日 ]

井山裕太九段 七冠達成のお祝い

 前人未到の七冠を達成した井山裕太九段を囲む「井山裕太 七冠達成お祝いの会」が東京都千代田区「帝国ホテル」で行われた。会には将棋で七冠同時制覇を達成した羽生善治三冠や俳優の辰巳琢郎さんをはじめ多くの著名人が駆けつけ、井山に一目会おうと大勢のファンも詰めかけた。
 七冠への道のりは長く、大変なものだった。特に一昨年、六冠から四冠に後退した際には井山自身も「七冠は無理かもしれないと思った」と言う。関係者もファンも井山が歩んできた道のりの険しさを知っているがゆえに、井山が「さらに精進して、精一杯自分の信じる一手を打ち続けていきたい」と挨拶すると会場中から温かい拍手が起こった。
 羽生三冠が祝辞で「七冠達成の偉業は井山さんにとってだけではなく、囲碁界全体にとっておめでたいこと。これからも長く長く活躍していってほしい」と述べたように、今回の偉業は囲碁界全体が注目されるきっかけでもある。井山という大黒柱のもとで若手が成長し、日本囲碁界がいっそう魅力的になっていくことを期待したい。

日本棋院 和田紀夫理事長の挨拶
羽生善治三冠の祝辞


花束贈呈
井山裕太七冠の謝辞


井山七冠と羽生三冠
新聞社など関係者との記念撮影


鏡開き
師匠の石井邦生九段と井山七冠


吉原由香里六段、井山七冠、辰巳琢郎さんによるミニトーク
井山七冠と滝裕子社長

囲碁ニュース [ 2016年6月3日 ]

扇興杯女流最強戦

 第1回扇興杯 女流囲碁最強戦(主催・日本棋院、協賛・センコー株式会社)のベスト4が6月2日、出そろった。今年から新設された女流棋戦で、優勝賞金が800万円と、2014年に創設された会津中央病院杯(700万円)を上回る大型棋戦だ。女流最強位にトーナメントを勝ち上がった挑戦者が挑む挑戦手合方式だが、第1回目となる今期は本戦トーナメントの優勝者がタイトルを獲得する。
 ベスト4に勝ち残ったメンバーは謝依旻女流本因坊、青木喜久代八段、向井千瑛五段、藤沢里菜三段といずれも女流囲碁界を代表する実力者。準決勝、決勝は滋賀県東近江市で7月に行われる予定だ。



会津中央病院杯

 第3回会津中央病院杯の本戦トーナメントが5月21、22日の2日間で行われ、謝依旻女流本因坊と青木喜久代八段がそれぞれ決勝に進出した。謝は現在、女流本因坊、女流名人、女流棋聖の3冠を有しており、圧倒的な存在感を示している。対する青木は1986年入段の大ベテラン。衰え知らずの剛腕で本戦トーナメントでは藤沢里菜三段、王景怡会津中央病院杯者と優勝候補の若手2人を破って勝ち上がってきた。謝と青木は今年の3月に女流名人戦挑戦手合で刃を交えたばかりでもあり、青木は雪辱を誓っているに違いない。決勝戦は持ち時間6時間の2日制で、6月17、18日に福島県会津若松市で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年5月25日 ]

碁聖戦 村川挑戦者に

検討で笑顔を見せる村川八段

 第41期碁聖戦の挑戦者決定戦が5月18日に行われ、村川大介八段(25歳)が山下敬吾九段(37歳)に白番4目半勝ちをおさめ、井山裕太碁聖への挑戦権を手に入れた。
 村川八段と山下九段の対戦成績は山下九段の9勝2敗(5月17日時点)だった。特に棋聖戦の挑戦者決定戦では2013年から3期連続で戦っており、そのいずれの局でも山下九段が勝利している。村川八段にとっては分の悪い相手と言えるが、粘り強く戦い勝利を引き寄せた。
 井山碁聖とは同じ関西で年齢も近いことから仲が良い。昨年の王座戦以来3回目となる挑戦手合に「井山さんと打てるのは楽しみ。王座を取られた時よりもいい碁を打ちたい」と抱負を語った。挑戦手合は6月25日静岡県浜松市で開幕する。



本因坊戦 井山タイに

井山本因坊1勝1敗のタイに

 第71期本因坊戦第2局が5月23、24日の二日間にわたって兵庫県尼崎市で行われ、井山裕太本因坊が白番中押し勝ちをおさめた。井山本因坊が1勝を返したことで1勝1敗のタイに。ますます目が離せないシリーズになってきた。
「前局よりも納得のできる碁が打てた。次局でも納得のできる碁を打てるように頑張りたい」と井山本因坊。第3局は秋田県能代市で6月2、3日に行われる。

囲碁ニュース [ 2016年5月19日 ]

第六回東京23区対抗囲碁大会

 地域コミュニティの崩壊が社会問題になっている今、囲碁で地域をつなげようというユニークな大会がある。それが東京23区対抗囲碁大会。「地域の輪・世代の交流」というテーマで6年前から開催されている。
 参加したのは名前の通り東京23区と区長会チームを含めた計24チーム。メンバーは9人で原則在住及び在勤、在学の人の中から選ばれる。内訳は一般5人(65歳以上を含む)、女性1人、青年1人、子ども2人と世代ごとに選ばれるのが特徴的。本大会の審判を務めた林漢傑七段は「色々な世代が集まってチームを作るというのも楽しそうですね」と目を細めた。
 各区熱戦を繰り広げる中、優勝したのは世田谷区だった。3連勝で迎えた最終戦で、同じく3連勝の新宿区を5勝4敗で破った。主将の谷口洋平さんは「僕は負けてしまったのですが、チームメイトが頑張ってくれました。世田谷区に住んでいてよかったです」と笑顔で語った。
 同様の試みは近県の埼玉県、千葉県、神奈川県にも広がっているという。囲碁はもともと老若男女を問わず、誰もが楽しめる世代間交流に適したゲームだ。時代のニーズとも相まって、囲碁の社会的な役割は今後大きくなっていくに違いない。

囲碁ニュース [ 2016年5月12日 ]

本因坊戦 高尾白星スタート

大勢の取材陣に取り囲まれる対局者

 井山裕太本因坊に高尾紳路九段が挑戦する第71期本因坊戦七番勝負の開幕戦が本因坊秀策の生誕地である広島県尾道市で9、10日に行われた。両者工夫を凝らした内容で、序盤から振り替わりに次ぐ振り替わりの難解な読み合いに。細かいヨセ勝負にもつれ込んだが、負けを読み切った井山本因坊が投了し高尾九段の白番中押し勝ちとなった。
 今期本因坊戦は井山本因坊にとっては永世本因坊の称号(五連覇・二十六世)をかけたシリーズであると同時に七冠達成後初の防衛戦でもある。一方の高尾九段は本因坊3連覇の実績があるベテランで、昨年の名人戦と天元戦でも井山本因坊と対戦している。両棋戦とも井山本因坊の圧倒的な力の前にストレートで敗退したが、今年は非常に好調だ。
 前評判では心技体どこを取っても隙が無いと言われる井山本因坊相手だけに高尾九段が不利と見る声が多かったが、高尾九段が先勝したことで勝負の行方が分からなくなってきた。早くも名シリーズになる予感がする。注目の第2局は5月23、24日に兵庫県尼崎市「本興寺」で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年4月27日 ]

第3回グロービス杯

 日本主催の20歳未満の若手を対象とした国際棋戦、グロービス杯世界囲碁 U-20が4月21日から24日にかけて開催され、中国の李欽誠初段が初優勝を果たした。
 出場したのは日中韓と中華台北、欧州、北米、アジア・オセアニア地域から集まった計16人。日本からは国内予選を勝ち上がった一力遼七段、孫喆四段、許家元三段、六浦雄太二段、芝野虎丸二段、大西竜平初段の6人が出場した。日本勢でグループリーグ(4人1組のリーグ戦。各グループ2人が枠抜け)を抜け、ベスト8に進出したのは許と芝野の2人。芝野は李に敗れベスト8で姿を消したが、許は韓国の李東勲五段、中国の楊鼎新三段を破り決勝に進む活躍を見せた。
 昨年の第2回グロービス杯では日本勢は全員ベスト8で姿を消すという厳しい結果だっただけに、今回の結果は日本としては上出来だったと言える。しかし、許は一力が優勝した第1回でも準優勝しており、しかもその際、今回優勝の李に準々決勝で勝っている。本人にとっては悔しい結果だっただろう。許はまだ18歳。来年こそと心に誓っているに違いない。

囲碁ニュース [ 2016年4月21日 ]

十段戦 井山7冠誕生!!

大勢の取材陣に取り囲まれる対局者

 午後5時21分、伊田篤史十段が投了すると、数十人もの取材陣が対局室(日本棋院本院・幽玄の間)へ大挙して押し寄せた。井山裕太棋聖が十段返り咲きを果たすとともに、悲願の7冠を達成した瞬間だった。どんな状況でも変わらず冷静なのが井山の持ち味。この時も感想を求められると、偉業を成し遂げた直後にも関わらずいつものように淡々と対局を振り返り、「ここ数年目標にしてきたことなので嬉しいです」と控えめに語った。一方の伊田は「ミスが多くて…、全然ダメです」と声を詰まらせた。
 井山が初めて史上初の6冠になったのは、2013年、棋聖戦挑戦手合で張栩九段を破った時だった。次は7冠と周囲の期待は高まり、井山自身もこのとき初めて7冠を意識したという。しかし、そこからの道のりは険しかった。その年の十段戦で結城聡九段にタイトルを奪われ、5冠に後退。その後、山下敬吾九段から名人位を奪うも、一昨年、残るタイトルである十段戦の挑戦者決定トーナメントの準々決勝で小林覚九段に敗れると、王座(挑戦者・村川大介八段)、天元(挑戦者・高尾紳路九段)と相次いで失冠。4冠にまで後退した。昨年、驚異的な精神力で立て直すと持っているすべてのタイトルを防衛。王座、天元、十段の挑戦者決定トーナメントを勝ち上がり、すべてで挑戦者となった。そしてその結果はご覧のとおりだ。
 7冠となってなお「自分はまだまだ未熟、もっと成長できる」と語る。日本の低迷が続く中、世界戦での活躍を期待する声も大きい。囲碁の7冠は今まで誰も見たことがなかった。井山ならこの先も想像を超える何かを見せてくれるに違いない。

 終局後に7冠達成の記者会見が行われた。様々な質問が寄せられたが、その中から主だったトピックスを下記にまとめた。

【7冠達成した感想】
ここ数年目標にしてきたことなので個人的には嬉しい。ただ、熊本の地震で大変な思いをしている方が多くいらっしゃるので、素直に喜べる心境にはなれないが、そういう方たちにも少しでもいいニュースとして受け止めてもらえれば…。

【これまでの道のりを振り返って】
6冠になってから7冠を意識し、目標にするようになったが、戦っていく中でその大変さを身をもって知った。特に6冠から4冠に後退した時は自分自身もう7冠は無理かと思った。(それだけに)今こうしていることが信じられないという気持ちが強い。

【なぜ強いのか】
まずい手を打つのは仕方ない。一喜一憂しないで今、この局面をどう打つべきかを考えるようにしている。その切り替えの良さは自分の長所だと思う。

【今後の目標】
究極の目標は世界で一番強くなりたいということ。今は中韓に1人ではなく、たくさん強い人がいて、本当の意味のトップレベルにはまだ劣ると思っている。自分にはまだまだ未熟な点があると感じていて、それは逆に言うと成長する余地があるということ。少しでも成長していきたい。

【将棋棋士、羽生善治名人について】
全盛期にどれだけ強いかということも大事だが、(羽生さんは)これだけ長く強さを維持しているということを特に尊敬している。囲碁は世界でも日本でも若返りが進んでおり、そうなるのは大変だと思うが、少しでも近づきたいと思っている。

【世界戦について】
出場できるチャンスが少ない状況だったが、チャンスがないわけではなかった。現状では期待に添えているとは言えない。世界戦も日本が頑張らないと盛り上がらないと思う。頑張って貢献していきたい。

【アルファ碁について】
興味深く観戦していた。棋士なら強い相手と打ちたいというのは自然と湧き上がる気持ち。そういう意味で個人的に対戦してみたいという気持ちはある。

総勢100人以上の取材陣が集まった
様々な質問が寄せられる

囲碁ニュース [ 2016年4月15日 ]

十段戦 伊田1勝返す!

 伊田篤史十段に井山裕太棋聖が挑戦する森ビル杯第54期十段戦挑戦手合五番勝負第3局が14日、長野県大町市で行われ、伊田十段が黒番中押し勝ちを収めた。
 今期十段戦の注目度は最高潮に達していた。なぜなら井山棋聖は現在7大タイトルのうち6冠を保持しており、十段を奪取すると史上初の7冠となるからだ。そしてシリーズが始まり第1局、第2局を井山棋聖が勝利。あと1勝で7冠というところまで来ていた。圧倒的な力で君臨する井山棋聖だけに、本シリーズは3連勝で奪取するのではというムードも漂っていたが、伊田十段が意地を見せた。ギリギリのところで1勝を返し、伊田十段は心の底からホッとしたに違いない。局後の検討では笑みがこぼれたが、コメントを求められると「まだカド番なことは変わらない。次局も精一杯頑張るだけです」と表情を引き締めた。
 井山棋聖は挑戦手合で18連勝中だったが、これで連勝記録はストップ。しかし井山棋聖は「いつかは止まる。自分としては上出来です」とさばけた様子。「(本局は)いつも通り打ちたい手を打っていたが、力が及ばなかった。(次局も)自分らしく戦うだけです」と話した。
 第4局が行われるのは20日(水)、日本棋院東京本院。大注目の本シリーズはまだまだ続く。

終局直後の対局室。報道陣が大勢詰めかけた。
小林覚九段と万波菜穂三段による大盤解説会。
大盛況で満席となった。

囲碁ニュース [ 2016年4月6日 ]

プロ棋士続々 新宿こども囲碁教室

 次世代を担う若手棋士を次々と輩出している教室がある。それは新宿こども囲碁教室だ。全体の生徒数は約200人、その中でプロを目指している生徒が20人以上。主宰する藤沢一就八段は16年前に教室を立ち上げて以来、昨年本因坊リーグ入りを果たした本木克弥七段や今年NHK杯で準優勝した寺山怜四段をはじめ、数多くの若手棋士を育ててきた。そして今年4月、新たに2人のプロ棋士、上野愛咲美初段(14歳)、広瀬優一初段(14歳)を送り出す。多くの棋士を育てる原動力は何なのか。藤沢八段に改めて振り返ってもらった。

 Q教室を始めたきっかけは何か
 2つあります。一つは日本が世界戦で勝てなくなったこと。特に富士通杯(2011年に24回で終了)で第10回を境に日本の棋士の優勝がなくなったのは衝撃的で、何かしなくてはという気持ちにさせられました。もう一つの要因は『ヒカルの碁』です。囲碁を習いたい子どもがグッと増えたので受け皿が必要だと感じました。

 Q教室ではどんな指導をしているのか
 プロを目指す子には「自分で考え、自分の思う最善を打て」と繰り返し伝えています。自分では意識してこなかったのですが、これは父、藤沢秀行が言っていたことです。正解の手を教えるということはせずに、その子がどんな構想でその手を選んだかを重視します。何となく打った手なら厳しく叱咤しますが、自分なりの考えがあったのならそれを尊重します。

 Q今の日本の状況をどう見るか
ひと昔前に比べて、希望があると思っています。今は若手の層が厚い。その証拠に毎年のように10代、20代前半でリーグ入りする若手が出てきています。それは少し前なら考えられなかったことです。
 
 Q新初段に期待することは何か
努力を続けてほしいと思います。そして、国際戦で活躍してほしいですね。

棋譜を並べる藤沢八段。「新初段の2人も強いよ」と笑顔。

新宿こども囲碁教室URL http://park22.wakwak.com/~kodomo.igo/contents/annai.htm


囲碁ニュース [ 2016年3月30日 ]

ジュニア本因坊戦

 中学生以下の日本一を決める、ゆうちょ杯第19回ジュニア本因坊戦(主催・毎日新聞社)の全国大会が3月24、25日に東京都港区「メルパルク東京」で行われた。歴代優勝者には井山裕太棋聖や金沢真七段をはじめ、そうそうたる顔ぶれが並ぶハイレベルな大会だ。参加者は全国16地区大会で勝ち上がった34人と推薦で選ばれた4人の計38人。6回戦のリーグ戦(スイス方式)を行い、最も勝ち点が多い者の優勝となる。
 5回戦を終え、全勝で勝ち残ったのは青木裕孝くん(東日本・中3)と大須賀聖良さん(東日本・小6)だった。青木くんは昨年11月まで院生をしており、その実力は折り紙つき。「今後もプロを目指したい」と話す。大須賀さんも「将来の夢はプロ棋士」で、長期の休みを利用して韓国へ囲碁留学するなど本格的に取り組んでいる。全勝対決を制し見事初優勝を飾ったのは青木くん。「碁の内容が悪くギリギリの勝負だった」と思うような碁が打てなかった悔しさをにじませつつも、優勝については「うれしい」と素直に喜んだ。
 一方、敗れた大須賀さんは勝ち点により4位に。優勝の目があっただけに悔しそうだったが、2位・今分太郎くん(関西・中3)、3位・北芝礼くん(中部・中1)と軒並み中学生が上位を占める中で入賞したのは立派。大須賀さん自身も「自分的にはよくやった方」とにっこりした。

最終局は全勝同士の対決となった。
(左・青木くん、右・大須賀さん)
入賞者は以下の通り、1位・青木くん、2位・今分くん、3位・北芝くん、4位・大須賀さん、5位・林朋哉くん(東日本・中3)、6位・森田拳くん(関西・中1)、同率6位・五十嵐成也くん(新潟・中2)、8位・吉田航平くん(中部・中1)



囲碁ニュース [ 2016年3月23日 ]

棋戦優勝者選手権戦 趙初優勝!

 棋戦優勝者選手権戦はその名のとおり、前年の各棋戦優勝者が勢ぞろいするNHK杯方式の早碁棋戦。第3回を迎える今回は10人の棋戦優勝者とファン投票で選出された1人を加えた、計11人によって争われた。出場者は井山裕太棋聖、伊田篤史十段、趙治勲九段(囲碁マスターズカップ)、羽根直樹九段(王冠)、結城聡九段(竜星)、許家元三段(新人王)、寺山怜四段(広島アルミ杯)、余正麒七段(おかげ杯)、謝依旻女流本因坊、王景怡二段(会津中央病院杯)、熊本秀生三段(ファン投票)。1、2回戦はインターネット対局で行われ、準決勝、決勝は19日、日本棋院で行われた。
 準決勝は井山と許、趙と余の組み合わせ。趙と許がそれぞれ勝ち上がり、決勝は大ベテランと若手の対決になった。現在若手の勢いはすさまじく、一般棋戦でも若手が上位に食い込むのはもはや当たり前。中でも許は頭一つ抜けた存在だ。しかし趙は難しい競り合いを制し許に勝利。今年還暦を迎えるとは思えないような若々しい打ちぶりで初優勝を果たした。

囲碁ニュース [ 2016年3月17日 ]

謝 女流名人9連覇

 謝依旻女流名人に青木喜久代八段が挑戦する第28期女流名人戦の最終局が16日、日本棋院本院で行われ、白番の謝が半目勝ちで防衛、9連覇を達成した。
 本局は大きなフリカワリを含む難解な碁で、最後までどちらが勝つかわからない細かいヨセ勝負が繰り広げられた。局後に謝が「これまでの2局の内容が良くなかったので結果はどうあれ最終局は内容良く打とうと思った。実際に(今までの中では)難しい碁になった」と話した通り、双方が死力を尽くした大熱戦となった。
 一方の敗れた青木は半目負けを確認すると、呆然とした様子でしばらくは一言も発することができなかった。3局とも内容が良かっただけに、ショックが大きかったのだろう。記者から全体を通しての感想を求められると「いい碁を勝ちきれなかった」と声を絞り出すようにして答えるのがやっとのようだった。
 持ち前の勝負強さをいかんなく発揮した謝は、これにより女流本因坊、女流名人、女流棋聖の三冠を堅持。自身が持つ女流タイトル連覇記録を9に伸ばした。



大島さん 女流アマ初優勝

 第58回全日本女流アマチュア囲碁選手権大会が3月12、13日の二日間にわたって開催され、秋田代表の大島玲奈さんが東京・千葉代表の呉理沙さんを破り、初優勝を果たした。大島さんは今年の女流棋士特別採用試験の本選に進出した強豪。

囲碁ニュース [ 2016年3月10日 ]

十段戦 開幕!

 伊田篤史十段に井山裕太棋聖が挑戦する第54期十段戦挑戦手合五番勝負が8日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で開幕した。6冠を保持する井山が十段を奪取すると七大タイトルのすべてを独占する七冠となるため注目度は非常に高く、開幕したばかりにも関わらず大勢の報道陣が集まった。
 黒番の伊田十段が右辺に厚みを築いたが、白番の井山棋聖も足早に左辺を連打し、序盤は模様の張り合いに。長期戦になるかと思われたが、終盤近くで伊田にミスがあり、井山の白番中押し勝ちとなった。終局後、次局に向けての抱負を求められると、伊田は「自分らしく打てれば」と意気込みを語り、井山は「星の上ではリードしているが、まだ先は長い。精一杯打つだけです」と気持ちを新たにしていた。第2局は23日、三重県湯の山温泉「湯元グリーンホテル」で行われる。

大勢の報道陣が詰めかけた
終局直後の両対局者



女流名人戦タイに 最終局へ!

青木挑戦者タイに

 謝依旻女流名人に青木喜久代八段が挑戦する第28期女流名人戦挑戦手合三番勝負の第2局が十段戦第1局の翌日、9日に同会場で行われ、青木が黒番中押し勝ちを収めた。これにより、スコアは1-1のタイへ。勝負の行方は最終局へ持ち込まれた。
 謝女流名人は現在、女流本因坊、女流名人、女流棋聖の3タイトルを独占している。ベテランの青木が謝の牙城を崩すのか、最終局は16日、東京・日本棋院本院で行われる。

囲碁ニュース [ 2016年3月2日 ]

世界学生王座 10年ぶり日本優勝!

笑顔でインタビューに応じる大関さん

 第14回世界学生囲碁王座戦(日本経済新聞社、パンダネット、全日本学生囲碁連盟共催)が2月23、24の2日間にわたって東京都中央区で開催され、日本代表の大関稔さん(専修大学)が初優勝を飾った。日本の優勝は2006年以来10年ぶりとなる。
 本大会の出場者は12カ国・地域16人の代表選手で、リーグ戦で4回戦を行う。3回戦を終えた時点で3戦全勝していたのは、大関さんと中華台北男子代表の鍾承恩さん。最終戦で両者による優勝決定戦が行われた。
 ハイレベルな戦いを充実した内容で勝利した大関さんは「今自分に勢いがあると感じていたので、今年はチャンスだと思っていた。楽しんで打てているし、うまく力を発揮できていると思う」と満足げな表情。言葉通り、昨年は学生本因坊準優勝、学生十傑優勝、学生王座優勝と抜きんでた成績を収め、今年に入っても阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦で王立誠九段を破るなどの活躍を見せている。
 次の目標を聞くと「まずはアマ名人戦。学生大会も学生本因坊は優勝できていないのでそちらも優勝を目指したい」と力強い。今後も大関さんの活躍から目が離せない。

囲碁ニュース [ 2016年2月24日 ]

井山 棋聖4連覇!

 井山裕太棋聖に山下敬吾九段が挑戦する第40期棋聖戦七番勝負、第4局が17、18日に北海道帯広市「北海道ホテル」で行われ、井山棋聖が黒番中押し勝ちを収めた。これにより井山棋聖は4-0のスコアで棋聖を防衛、4連覇を果たした。3月に開幕する十段戦で史上初の七大タイトル独占に挑む。
 本来ならタイトルを奪取・防衛するだけでも大変なはずだ。ところが、井山は昨秋の名人戦、王座戦、天元戦をすべてストレートで勝利。相手は名人戦・高尾紳路九段、王座戦・村川大介王座(当時)、天元戦・高尾紳路天元(当時)、そして棋聖戦・山下と顔ぶれを見るといずれも今日の棋界を代表する棋士ばかり。現在挑戦手合16連勝中。一人次元の違うところにいると思わざるを得ない。
 一昨年末に王座、天元を失って4冠に後退した。しかし、昨年に入り持っていたすべてのタイトルを防衛し、失った2タイトルを奪還。6冠に復帰し、残るタイトルは十段のみとなっていた。
 伊田篤史十段との挑戦手合は3月8日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で開幕する。伊田は昨年、NHK杯優勝、十段獲得と目覚ましい活躍をした今伸び盛りの21歳。対するは6冠を携える最強の挑戦者井山。見応えあるシリーズになること間違いない。

囲碁ニュース [ 2016年2月19日 ]

プロ棋士ペア碁選手権

 プロ棋士同士でペアを組む、プロ棋士ペア碁選手権(主催:日本ペア碁協会)が6日、日本棋院で開幕し、準決勝までが行われた。出場したペアは前年度優勝の小山栄美六段・羽根直樹九段ペアの他、抽選会で決まった青木喜久代八段・井山裕太棋聖ペアら15組。トップ棋士ばかりの豪華なラインナップとなった。
 ペア碁は個人の技術以上に、息の合ったチームプレーが重要。強い者同士が組んでも単純な足し算にはならないところが面白い。小山・羽根ペアや、青木・井山ペアなど、優勝候補が早々に姿を消す中、決勝に勝ち上がったのは王景怡会津中央病院杯・村川大介八段ペアと向井千瑛五段・一力遼七段ペア。王・村川ペアはどちらも20代、向井・一力ペアは20代と10代のペアとフレッシュな対決となった。注目の決勝は3月25日に囲碁将棋チャンネルで放映される。

詳細は下記HPからご覧いただけます。
http://www.pairgo.or.jp/pro/2016/



プロアマペア碁2016

 プロアマペア碁は今年から始まった新しい試みで、プロ棋士とアマ強豪が組むというもの。アマチュア同士、プロ棋士同士のペア碁選手権はあるが、プロ棋士とアマチュアが組むことは珍しい。出場したのは高尾紳路九段ら男性棋士8名と、謝依旻女流本因坊ら女流棋士8名、そしてアマ強豪の男女各8名の計32人。抽選会により16ペアが決められた。
 決勝に勝ち上がったのは鈴木歩七段と昨年のアマチュア本因坊で優勝した芝野龍之介さんのペアと、女流アマ優勝の実績がある小田彩子さんと王銘琬九段のペア。決勝戦では黒番の鈴木・芝野ペアが力強い打ち回しで白の大石を召し取り、初優勝を飾った。

詳細は下記HPからご覧いただけます。
http://www.pandanet.co.jp/event/proama_pairgo2016/

囲碁ニュース [ 2016年2月12日 ]

井山 棋聖3連勝!

 井山裕太棋聖に山下敬吾九段が挑戦する第40期棋聖戦七番勝負第3局が1、2日に鳥取県米子市「華水亭」で行われ、井山が白番中押し勝ちを収めた。井山は第1局で白番中押し勝ちし、第2局では劣勢に追い込まれつつも終盤で怒涛の追い上げを見せて黒番2目半勝ち、そして本局と、開幕3連勝。棋聖防衛まであと1勝に迫った。
 一方の山下は3期連続の挑戦で、昨年、一昨年ともに3連敗スタートから1勝を挙げている。山下が粘り強さを見せるか、それとも井山がストレートで決めるか、注目の第4局は17、18日に北海道帯広市「北海道ホテル」で行われる。



謝 女流棋聖4連覇!

 第19期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負第2局が1日、東京市ヶ谷で行われ、謝依旻女流棋聖が吉原由香里六段に黒番2目半勝ちを収めた。これにより謝は女流棋聖を防衛、4連覇を果たした。
 謝は2006年に女流最強戦(2008年に第10期で終了)を17歳1カ月で優勝すると翌年には女流本因坊、翌々年には女流名人を獲得。そして2010年、梅沢由香里女流棋聖(当時・現在は吉原)からタイトルを奪い、女流3冠に輝いた。その後タイトルの一角を崩されることもあったが、安定した強さで現在は再び女流本因坊、女流名人、女流棋聖の女流3冠を手中にしている。

囲碁ニュース [ 2016年2月3日 ]

囲碁ソフト 欧州棋士破る!

 グーグルの研究チームが1月27日、開発した人工知能(AI)のコンピューターソフト「アルファ碁」が欧州のプロ棋士(ファン・フイ二段、2013年~15年欧州王者)と対戦し、5戦全勝したとイギリスの科学誌ネイチャー電子版で発表した。従来のソフトは9路盤で棋士と互角に戦えたとしても、19路盤ではアマチュア四、五段程度と棋士のレベルには遠く及ばなかった。
 チェスは1997年にIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」が当時の世界チャンピオン、ゲイリー・カスパロフ氏を破り、将棋でも電王戦【棋士5名対ソフト5種類による団体戦(第2回以降)】に象徴されるようにソフトが人類と肩を並べるところまで来ている。その点、囲碁は19×19と盤が広く変化が多いためソフトの棋力向上が遅れ、「人間最後の砦」と言われてきた。それだけに、今回の発表がもたらした衝撃は大きい。
 成果の背景には、飛躍的なAI技術の進歩がある。近年の囲碁ソフトは膨大なシュミレーションをランダムに行う「モンテカルロ法」が主流だったが、開発チームはこれにデータや経験を自ら学習するプログラムを加え、コンピューター自身が局面の評価を行い、着手を選択できるようにした。これによって読んでも無駄な候補手を排除し、より効率的に手が読めるようになったことが、大幅な棋力アップにつながったようだ。
 「アルファ碁」は3月に、世界最強と言われる韓国の李セドル九段に挑戦する予定。人類の意地とプライドをかけた大一番だけに、囲碁ファンのみならず世界中の注目を集めることになりそうだ。

囲碁ニュース [ 2016年1月27日 ]

井山 十段挑戦へ!!

 7大タイトルのうち6冠を保持している井山裕太棋聖が、3月に開幕する十段戦五番勝負の挑戦者に名乗りを上げた。
 挑戦者決定戦は1月21日、日本棋院関西総本部で井山と余正麒七段によって争われた。白番の余が中盤で華麗な打ち回しでリードを奪い、日本棋院東京本院で盛んに行われていた検討では井山の勝ちは絶望的と思われていた。しかし、終盤に一瞬の隙をついて逆転。黒番中押し勝ちで挑戦権を手にした。
 井山は棋聖戦挑戦手合の最中で、現在のスコアは井山の1勝0敗。棋聖の防衛に成功すれば、いよいよ7冠制覇へ挑戦することになる。現在十段を保持しているのは伊田篤史八段だ。21歳と井山より下の世代で、一昨年の本因坊戦では初のリーグ入りで初挑戦をして井山と戦っている。その時には1勝4敗で退けられたが、昨年はNHK杯優勝、十段獲得と順調に実績を積み重ねている。どんな勝負が繰り広げられるのか今から楽しみだ。



女流棋聖戦 開幕!!

 謝依旻女流棋聖に吉原由香里六段が挑戦する第19期ドコモ杯女流棋聖戦の開幕戦が1月21日、神奈川県平塚市で行われ、謝が白番半目勝ちを収めた。謝は女流本因坊、女流名人、女流棋聖の3冠を保持する第一人者。吉原は第10期から第12期まで女流棋聖を3連覇した実績があり、7期ぶりの返り咲きを目指す。

囲碁ニュース [ 2016年1月21日 ]

棋聖戦 井山先勝!

 井山裕太棋聖に山下敬吾九段が挑戦する第40期棋聖戦の開幕戦が1月14、15日に福島県会津若松市で行われた。結果は井山の白番中押し勝ち。充実した内容で四連覇に向けて好スタートを切った。
 井山はまさに絶好調。他を寄せ付けない圧倒的な力で君臨している。昨年6冠(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖)に復帰し、残る十段戦でも挑戦者決定戦に駒を進めた。十段戦の挑戦手合が始まるのは3月。今週行われる十段戦挑戦者決定戦に勝ち、さらに棋聖を防衛すると井山棋聖は前人未到の7冠に挑戦することになる。
 一方の山下は昨年、棋聖戦に始まり本因坊戦、碁聖戦と3度にわたって井山棋聖に挑戦している。しかし、棋聖戦で最終局に持ち込むもあと一歩のところで惜しくも敗退。その後も、本因坊戦で1勝4敗、碁聖戦で1勝3敗とタイトル奪取はならなかった。棋聖戦は一昨年から3期連続での挑戦だけに、今年こそはと気合が入っているに違いない。
 七番勝負は始まったばかり。第一人者の井山が貫録を示すか、それとも山下が三度目の正直でリベンジを果たすか、第2局目以降も目が離せない戦いになりそうだ。 

囲碁ニュース [ 2016年1月13日 ]

大河・朝ドラで囲碁シーン

 囲碁を嗜む歴史上の偉人は多い。今年始まった大河ドラマ「真田丸」の主人公、真田幸村もその一人だ。囲碁にまつわる話を集めた古典『欄柯堂棋話』には父、昌幸とのやり取りが残っている。その内容は、昌幸は戦の最中にも関わらず囲碁を一向にやめる気配がなく、その様子を見ていた幸村が「このような時にいいのですか?」と尋ねた。すると父は「黒と白の石を敵味方に見立てて策を練っているのだ」と諭し、幸村は父の言葉を深く心に止めるというもの。ドラマ内では17日(日)に放送予定の第2話でさっそく囲碁のシーンが出てくるという。

 朝の連続テレビ小説「朝がきた」でも囲碁のシーンがあった。このドラマは大同生命の元祖である加島屋を切り盛りしてきた、広岡浅子をモデルに制作された。当時の女性としてはかなり棋力が高かったようで、朝日新聞の企画で喜多文子名誉八段(明治から昭和にかけて活躍した女流棋士。「日本囲碁界の母」と称される)と対戦した棋譜が残っている。その貴重な棋譜は大同生命の特設ページで見ることができる。企画では広岡浅子役(黒)を長島梢恵二段、喜多名誉八段役(白)を万波奈穂三段が務め、日本棋院「幽玄の間」で一手一手並べて再現した。広岡浅子の人柄を垣間見ることができる非常に興味深い内容なので、気になる方はぜひご覧いただきたい。

URL:http://kajimaya-asako.daido-life.co.jp/ 【大同生命の源流 加島屋と広岡浅子】

囲碁ニュース [ 2016年1月7日 ]

阿含・桐山杯日中決戦 井山優勝!

 日本と中国の阿含・桐山杯優勝者が対決する第17期阿含・桐山杯日中決戦が昨年12月25日に中国・成都市で行われ、井山裕太六冠(棋聖・名人・本因坊・王座・天元・碁聖)が黄雲嵩四段に白番中押し勝ちを収めた。黄四段は昨年5月に第2回グロービス杯で優勝するなど、勢いのある若手棋士だが、井山六冠が充実した内容で日本の第一人者としての存在感を十二分に示した。日本の優勝は2002年に趙治勲九段が兪斌九段を破って以来、実に13期ぶりとなる。



1月5日 打ち初め式

 1月5日、「囲碁の日」に2016年の打ち初め式が行われ、大勢のファンと日本棋院の棋士が集まり親睦を深めた。
 日本の囲碁をめぐる状況は決して明るいものではない。囲碁人口の減少、世界戦での不振、日本棋院の財政赤字と課題は多い。それらの現状を鑑みて日本棋院は昨年、創立90周年を迎えたことを節目に、10年後を見据えた「100周年ビジョン」を作成。和田紀夫理事長は冒頭の挨拶で「100周年ビジョン」について言及し、「今年は普及、世界戦強化、財務基盤の確立など、ビジョンに向けて着実に改革にあたる年」と宣言した。

新年の挨拶を述べる和田理事長
恒例の公開対局では謝依旻女流三冠(女流本因坊、女流名人、女流棋聖)と藤沢里菜が対戦。白熱した内容で会場を沸かせた。

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