日本囲碁ニュース

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2023年12月27日 ]

一力、早碁オープン戦2度目の優勝

 第30期阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦(阿含宗特別協賛)の決勝戦が、12月24日、千代田区の日本棋院東京本院で打たれ、一力遼棋聖が井山裕太王座に白番中押し勝ち。5期ぶり2度目の優勝を果たした。歴代最多の6度目の優勝を期した井山は、3年連続の準優勝となった。序盤から戦いの様相となった本局は、井山が主導権を握り、一力は「形勢に自信がない時間帯が長かった」と振り返る。下辺の攻防が勝負のポイントとなった。大盤解説の山下敬吾九段は「一力さんの仕掛けが印象的。パッと見、黒がよく見えるのですが、一力さんは先まで見通せていた。黒は中央の白にこだわりたくなるのですが、罠だったかもしれません」と語り、一力も「中央の白7子を捨てて左上に回った段階では少し形勢がよくなったと思った」、井山も「下辺からの戦いが勝負所だと思い、いろいろ方針に悩んだ結果、実戦はいい選択ができなかった」と振り返った。その後は、的確な形勢判断で危なげなく井山を退ける内容で、「一力さんの充実ぶりが光る一局」と山下。一力は「一つ結果を残すことができたのは光栄に思いますが、日中決戦もありますし、また気を引き締めてやっていきたい。今年一年は、収穫もあり、課題もあり。ただ、一年を通して、その時持っている自分の力は出せたと思います。来年もやること自体は変わらない。引き続き一局一局精一杯やっていきたい」と抱負を語って一年を締めくくった。

井山、竜星戦5度目の優勝

 第32期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)の決勝戦が、東京都千代田区の竜星スタジオで打たれ、26日に放映。井山裕太王座が、芝野虎丸名人を降して2連覇を果たした。通算5度目の優勝回数は単独1位となる。両者の棋風通り戦いの碁となった本局は、井山が主導権を奪った後も最強に打ち進め、勝利につなげた。井山は「相性のいい棋戦だと思います」と笑顔を見せた。また、「今年は基本的にはいろいろ大きな舞台で戦え、充実した一年だったとは思います。ただ、大事なところで残念な結果に終わってしまったことも多かったので、また来年以降がんばりたいと思います」と語り、自身のSNSでは、「年末の2つの決勝戦は竜星戦が優勝、阿含桐山杯が準優勝でした。いろいろあった一年でしたが、今年感じた事を来年以降に活かしていければと思います」と抱負を投稿した。

テイケイ俊英戦は芝野と関が決勝へ

 25歳以下(第1回優勝の許家元九段と第2回優勝の一力遼棋聖は規定により出場できない)の棋士による、第3回テイケイグループ杯俊英戦(テイケイ株式会社他協賛)のA、Bリーグ戦が、12月21日から26日にかけて行われた。Aリーグは、芝野虎丸名人が5戦全勝で優勝。Bリーグは、関航太郎九段と広瀬優一七段が4勝1敗で並び、直接対決で勝利した関の優勝。両名が来年の決勝三番勝負に駒を進めた。芝野は3期連続で全勝での決勝進出。関は初の決勝の舞台に臨む。注目された女性陣は、Aリーグの仲邑菫三段が、芝野を追い詰めるも惜敗した後、大竹優七段、藤沢里菜六段らに完勝して3勝2敗。藤沢は2勝3敗で終わった。Bリーグの上野愛咲美五段は、同門のライバルでもある関と広瀬らに敗れ、2勝3敗の結果となった。

囲碁ニュース [ 2023年12月19日 ]

一力、天元奪還。三冠に

 第49期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第4局が12月6日に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」にて打たれ、挑戦者の一力遼棋聖が関航太郎天元に白番中押し勝ちを収め、3勝1敗で3期ぶりに天元位を奪還した。序盤、一力の気合いのハネから戦いに突入した本局は、攻守を入れ替えながらの険しい攻防が続いた。形勢も逆転を繰り返す難戦となったが、ヨセに入る時点でやや優勢に立った一力が関の焦りを誘う流れから、最後は投了に追い込んだ。一力は「秒読みになってから乱れた部分があり反省点も多い内容だが、自分なりには精一杯やれた」とし、シリーズを通して「午前中は自信のない時間が多かったので、そのあたりは課題かなと感じます」と振り返った。三連覇がかなわず無冠となった関は「課題が多いとは感じていたのですが、第2局、本局と、終盤でこんなに自分が乱れてしまい残念です」と肩を落とした。年始、「どんどんタイトルを獲っていきたい」と語った一力は、言葉通り、今年棋聖防衛に続いて、本因坊、天元を加えて自身初の三冠となった。一力は「結果を出せたことはよかったですが、改善点はいろいろあると思いますので、今後も気を引き締めてやっていきたい。国内はもちろん国際戦でも第一人者に恥じない成績を残したい」と将来を見据えた。

井山、カド番から連勝で王座防衛

 第71期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第5局が、12月8日に神奈川県秦野市の「陣屋」にて打たれ、井山裕太王座が挑戦者の余正麒八段に白番中押し勝ちし、防衛を果たした。井山は王座3連覇、通算9期とし、「名誉王座」の称号獲得まであと1期とした。序盤は、実利を先行する白番の井山に対し、余はじっくり腰を落としてヨセ勝負を目指した。中盤、ネット解説の林漢傑八段が「盤上のエンターテイナー」と形容する井山の積極的な手から、盤上は険しさを増し激戦となるが、「左辺の白の大石を生きたあたりでは、少し地合いでいけそうなのかな、と打っている時は思っていました」と井山。その後のヨセも巧みで差が広がったようだ。井山は「第2局、第3局と反省の多い負け方が続いたので、厳しいかなと思っていたのですが、なんとか結果を出せて、非常にうれしく思っています。余さんとは常に大変な戦いなのですが、今期はさらに厳しい戦いだったと思います」とシリーズを振り返った。敗れた余は「全力でやった結果なので…残念な結果になりましたが…やっぱり力不足でした」と振り絞るように語り、「第4局も、今日も、平常心で打てたと思います。また来年、この舞台に戻ってこられるようにがんばりたいと思います」と前を向いた。井山は今年、本因坊を失ったものの碁聖と王座を防衛し二冠を堅持した。来年の一力遼棋聖に挑戦する七番勝負(読売新聞社主催)は、1月11日に開幕する。

姉妹対決を制し、上野梨紗が挑戦権獲得

 仲邑菫女流棋聖への挑戦権をかけた第27期ドコモ杯女流棋聖戦(株式会社NTTドコモ協賛)の挑戦者決定戦が、千代田区の日本棋院東京本院で12月14日に打たれた。対戦カードは、上野愛咲美女流名人と上野梨紗二段。「38年ぶりの姉妹による挑戦者決定戦」ということでも注目が集まった。共に戦いを好む棋風だが、「戦い方のスタイルは違う」と梨紗は語る。序盤から白番の愛咲美が積極的に仕掛け、難解な戦いの碁がスタート。互いに険しい道を選びながらも互角の形勢が続いた。中盤、上辺の攻防で黒がややリードを奪ったようだ。その後、押し切る形で妹の勝利となった。局後のインタビューでは、梨紗が「全く実感がなく、勝てたことにまだビックリしています」、愛咲美は「今AIのグラフを見たのですが、自分の事件局面というか、評価値を下げた手が多くて、反省が必要だなと思いました」と語った。また、梨紗は、この勝利で今年46勝目をあげ、一力遼棋聖と並んで勝ち星トップ。今年の充実ぶりを示す数字でもある。来年開幕する挑戦手合は、初の10代同士、また、14歳の仲邑と17歳の梨紗の合計年齢31歳も史上最年少となる。仲邑からは、「梨紗さんとは同期入段で、研究会でも一緒に勉強してきました。タイトル戦で打てるのはとても楽しみです。自分の力を出し切れるようがんばりたいと思います」とのコメントが寄せられた。梨紗は「菫ちゃんとは5回対局して一度も勝てていない。勉強量の差があるかなと思ってきた」と語り、「お姉さんの分もがんばろう、という思いはありますか?」の問いに「それは全くないです」と一同を笑わせた後「ストレート負けだけはしないようにがんばりたいと思います」と笑顔で抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2023年12月13日 ]

第33回 国際アマチュア・ペア碁選手権大会

 12月2日、3日の両日、東京飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにて第33回 国際アマチュア・ペア碁選手権大会が開催され、日本国内地区予選を勝ち上がった16ペアと、海外15ヶ国・地域からの代表16ペア、計32ペア64名が出場とした。
 初日を終え、日本の6ペアと中国、韓国が2連勝となった。その中で藤原彰子・石村竜青ペア(関東甲信越)が3回戦で韓国ペアに勝利する大きな1勝を得た。
 決勝に勝ち進んだのは藤原・石村ペアと中国の陳思・王琛ペア。中国のペアは中国アマチュア界はトップの実力者。結果は中国ペアの勝利となった。藤原さんは昨年に続き最終戦での敗退となった。スイス方式の結果、藤原・石村ペアは3位となり、4回戦で敗れた倉科夏奈子・杉田俊太朗ペア(関東甲信越)が2位となり日本1位ペアとなった。
 本戦と並行して松田杯第8回世界学生ペア碁選手権大会が行われ、日本ペア3組を含む8ペアが出場した。決勝は中国対中華台北となり、こちらも中国ペアの優勝となった。
 3日には荒木杯ハンデ戦も開催され、棋力によりAブロックからCブロックに分かれ、96組192名が参加した。Aブロックでは日本のアマ強豪や中国、韓国からも参加ペアが見られた。各ブロックとも小さな子供達の姿も多くあった。
 また、恒例のベストドレッサー賞も開催されていることもあり、それぞれ華やかな衣装での参加が多かった。世界戦本戦や夜の親善対局では各国・地域の民族衣装が会場をより華やかにしていた。

囲碁ニュース [ 2023年12月5日 ]

王座戦は最終局へ

 井山裕太王座1勝、挑戦者の余正麒八段2勝で迎えた第71期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第4局が、11月30日に、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれた。余にとっては初タイトル奪取がかかる一番だったが、気迫が上回った井山が黒番中押し勝ちを収め、勝負は最終局に持ち越された。序盤、下辺に余が打ち込んでからの競り合いは互角に分かれた。戦場は上辺に移り、互いに反発し合い再び競り合いとなる。一時は、「白がうまくサバいたのではないか」の評が聞かれた。だが、上辺の黒地を消して地合いでは白がリードを奪ったものの、分断された二つの白はまだ完全には生きていない。ここから井山の「やっていくしかないと思っていた」という気迫の攻めが開始された。上辺の白につらい生きを強要して井山が逆転。さらに下辺の白も小さく生きることになり、黒が勝勢を築いた。最後は余が投げ場を求めた勝負手を放ったが、井山が攻めの手を緩めず右辺の白の大石を仕留めて決着をつけた。次局に向け、井山は「また改めてコンディションを整えて精一杯臨みたい」、余は「悔いの残らないように頑張りたい」とそれぞれ抱負を語った。防衛か奪還か。最終局は、12月8日に神奈川県秦野市の「陣屋」にて打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年11月28日 ]

一力、天元奪取にあと1勝

 1勝1敗で迎えた第49期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)の第3局が、11月22日に福岡県福岡市の「大濠公園能楽堂」で打たれた。結果は挑戦者の一力遼棋聖が、関航太郎天元に黒番中押し勝ち。前々期に失った天元位奪還まであと1勝と迫った。序盤は、黒が実利を取り白が中央に巨大な模様を張る展開となった。一力は「昼休憩のあたりでは、白の中央がまとまりそうで自信がなかった」、関も「そんなに悪くないかなと思っていた」と振り返る。だが、一力が消しの好点に回り、関が実利を取る方向に転換する。このあたりから、徐々にAⅠの評価値は黒の勝率をあげていった。関は上辺の黒の大石を切り離して攻めに向かったが、コウを決行したのが無理気味だったようだ。コウダテが疑問で、「実戦のフリカワリならいけそうかなと思った」と一力。関も「コウを解消されたあたりでは、ちょっと大変そう」とうなだれた。その後は一力が盤石。右辺の黒をコウにしてシノギの目途を立てたところで関が投了を告げた。関は、「中盤、一手一手よくわからなくて、そのあたりで判断を間違えたかなと思う。次局は切り替えてやっていきたいと思います」と反省と抱負を語った。一力は、「次局まで2週間あり、その間に国際戦もありますが、どちらもいい状態で臨めるようにがんばりたい」と気を引き締めた。注目の第4局は、12月6日に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」にて打たれる。

広瀬、初優勝

 30歳以下・七段以下の棋士によって争われる第18回広島アルミ杯・若鯉戦(広島アルミニウム工業株式会社特別協賛)の決勝戦が、11月26日に広島市で打たれた。今大会は第15回に藤沢里菜四段(当時)、第16回・17回に上野愛咲美四段(当時)が優勝して話題を集めた。今期は、女性棋士は加藤千笑三段が2回戦に進んだほかは、全員1回戦での敗退となった。決勝戦は、広瀬優一七段と小池芳弘七段の顔合わせ。広瀬が白番中押し勝ちを収め、本大会での初優勝を飾った。小池は3回目の決勝進出だったが、無念の結果となった。幼少期を広島で過ごした広瀬は、終局後のインタビューに応え「囲碁を始めたきっかけの場所で、若鯉戦は特別な棋戦です」と語り、「初めてのタイトル(新人王)から5年たち、成績が低い時期もありましたが、続けてきて結果も出てよかった。さらに上を目指して精進したい」と喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2023年11月16日 ]

余、初タイトルにあと1勝

 井山裕太王座に余正麒八段が挑戦している第71期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)は、1勝1敗で迎えた第3局が11月14日、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」にて打たれた。序盤は黒番の余が工夫した手から左下の白に攻勢をかけつつ足早に打ち進めた。対して井山が左辺で厳しく踏み込む手を放ち、一気に険しい戦いに突入した。左下に、黒の大石の死活がかかるコウが残る。互いにこのコウをにらみながらの難しい局面が続いた。ついに井山がコウを仕掛けたが、「タイミングが時期尚早だった」と立会人の結城聡九段。余がコウを解消し、代償として右下の黒を捕獲したはずだったが、右下の黒にはコウの手段があり、ここで形勢は大きく黒に傾いた。その後、井山は必死の追い上げを見せたが、余の見事な返し技で井山を投了に追い込んだ。余は悲願のタイトル獲得まであと1勝に迫った。追い込まれた井山は「最近はこういう状況ばかり。経験値があるので」と次局への闘志を見せた。第4局は11月30日に、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれる。

藤沢女流本因坊防衛

 藤沢里菜女流本因坊の防衛か、上野梨紗二段の初戴冠か。注目を集めた第42期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負(共同通信社主催)の第5局が、11月15日、日本棋院東京本院で打たれた。黒番の藤沢は、序盤から少しずつポイントをあげていった。さらに左下の白を取り込んで大きなリードを奪い、そのまま逃げ切るかと思われた。だが、そこから上野が魅せた。勝負手を次々と繰り出し必死についていく。藤沢が勝負を決めるべく上辺の白を取りに向かうが、ここで上野の勝負手が成功し、上辺が鮮やかに生還すると、半目を争うヨセ勝負となった。YouTube解説の首藤瞬八段らは「藤沢さんは動揺しているはず」と語り、現地の検討陣も「どちらが勝ってもおかしくない」と大熱戦を見守った。最終盤は、藤沢が精神力の強さを見せた。左上でコウを仕掛ける見事なヨセの手を打ち、「ここで勝ちを意識した」と振り返る。上野はコウ争いの中で少しずつ損を重ね、コウ材も尽き、無念の投了を告げた。4連覇(通算7期目)を果たした藤沢は、無冠も覚悟したと語り、「でも無冠になると国際戦に出場できないので…よかったです」と安堵の笑顔を浮かべ、大善戦の上野は「いろいろ足りない部分も感じ、勉強になりました」と朗らかに語った。

囲碁ニュース [ 2023年11月15日 ]

第20回囲碁殿堂入り

 日本棋院において囲碁殿堂表彰委員会が開催され、中村道碩、牧野伸顕、加藤正夫の3名の殿堂入りが発表された。
 中村道碩は一世本因坊算砂の弟子で、算砂より譲られ二人目の名人碁所になっている。囲碁家元四家の一つ井上家の元祖とされ、徳川幕府より50石を与えられている。
 牧野伸顕は大久保利通の次男で政治家。囲碁界の大同団結により大正13年、大多数の棋士が集まり日本棋院が誕生するが、そのとき初代日本棋院総裁に選ばれる。
 加藤正夫は木谷実門下の棋士で石田芳夫、武宮正樹とともに木谷三羽烏と呼ばれた。殺し屋のニックネームがあり、力で相手の大石を仕留める棋風が知られている。王座11期獲得など通算47のタイトルを獲得。平成16年には日本棋院理事長に就任、日本棋院の改革に取り組むも同年に死去。名誉王座の称号を贈られる。

赤旗名人戦 硯川さん優勝

 第58回しんぶん赤旗名人戦全国大会が11月11日、12日の両日、東京都渋谷区の日本共産党本部で行われた。優勝者はプロの公式戦新人王戦への出場資格を得る。
 昨年の優勝者の小野慎吾さん(招待)が初日で敗れる中、決勝に勝ち上がったのは小野さんを破った斉藤文也さん(東京)に勝利した硯川俊正さん(神奈川)と全国大会で準優勝経験多数の赤木志鴻さん(奈良)の対戦となり硯川さんが見事勝利した。赤木さんは「また準優勝か」と肩を落としていた。
 硯川さんは元院生のトップで、プロ試験でもあと一歩までいった実力者。まだ20代でありプロであれば新人王戦に出ていてもおかしくない年齢である。新人王戦ではかつて共にプロを目指した仲間との対戦になってくる。

囲碁ニュース [ 2023年11月7日 ]

芝野名人初防衛

 第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局が、11月2、2の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて打たれ、芝野虎丸名人が逆転で黒番中押し勝ちを収め、名人戦初防衛(通算3期目)を果たした。井山裕太王座の通算9期目となる名人位奪還はかなわなかった。一日目は、3連敗に続く2連勝の勢いのまま、井山がリードを奪った。左上の黒模様の中、無理気味かと思われた白の策動は、妙手のツケから荒らしに成功する。AIの評価値も白に大きく傾き、芝野は「このあとは、7局目のためにしっかり打とうと気持ちを切り替えた」と振り返る。だが、二日目に入り、「午前中に井山さんのペースが乱れた感じはありましたので、若干元気は出ていた」と芝野。新聞解説の河野臨九段も「一日目は井山さんの技が冴えまくっていましたが、芝野さんも決め手を与えず、難しくしています。まだ白がリードしてはいるものの、勝負はわかりません」と見守った。その後も芝野がじわじわと追い上げ、ヨセで抜き去った。井山は「一日目の午後以降は形勢の悪くない状態が続きました。でも、勝ちまで見通せないまま持ち時間を消費し、終盤で正しい選択をできなかったことが勝敗に直結した。実力です」と敗戦を語り、「少しの期間休養し、また次に向かっていければと思います」と気持ちを入れ替えた。二冠を堅守した芝野は、翌日のインタビューに応え、「実感はわきません。内容的に課題が見えているので、ホッとした気持ちより反省点が多い。来年は、(内容も充実させ)いい状態で堂々とこうしたインタビューを受けられたらと思います」と引き締まった表情で語った。

女流本因坊戦、最終局へ

 藤沢里菜女流本因坊が1勝、挑戦者の上野梨紗二段が2勝で迎えた第42期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負(共同通信社主催)の第4局が、11月7日、千代田区の日本棋院東京本院で打たれた。序盤は白番の上野がややリードしていたが、着実にポイントを上げながら藤沢がリードを奪い返す。黒が実利で先行し、白が下辺の黒への攻めを睨んだところで昼食休憩となった。藤沢は「先の長い碁になりそうと思っていた。自信があったわけではない」、上野は「自信があったわけではないが、いい勝負かなと思っていた」と振り返る。昼食休憩後、上野は下辺の黒に襲いかかるが、ここで藤沢が、立会人の蘇陽国九段らが「素晴らしい」と称賛した「二間」を放ち、鮮やかにシノぐと、勝負はほぼ決したようだ。上野も「『二間』がいい手というお話が今ありましたが、そこに打たれたら(白からの手段が)何もないなと思いました」と脱帽した様子だった。以降はつけ入る隙を与えず藤沢が黒番中押し勝ち。シリーズのスコアを2勝2敗のタイに戻し、勝負は最終局にもつれ込んだ。藤沢は「体調を整えて、自分の力を出し切れるようにがんばりたい」、上野も「体調管理につとめて、臨みたい」とそれぞれ抱負を語った。第5局は、11月15日、同じく日本棋院東京本院で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年10月31日 ]

井山挑戦者、2勝を返す

 第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は、芝野虎丸名人が開幕3連勝した後、追い詰められた挑戦者の井山裕太王座が「カド番の鬼」の本領を発揮している。10月12、13の両日、大阪府守口市の「ホテルアゴーラ大阪守口」で打たれた第4局は、序盤、白番井山の左辺のツケから碁が動き、井山の厳しいコウ仕掛けからリードを奪うと、二日目も封じ手から井山の鋭い手が続いた。劣勢を意識した芝野が勝負手を放つが反撃にあい、中央の黒の大石が仕留められる。92手という短手数で井山が中押し勝ちを収めた。第5局は10月23、24の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれた。一日目は黒番の井山が左辺の白を攻めながら地合いでリードを奪い、AIが白の勝率「90%」台を示すほど、形勢が傾いた。芝野も「大変な形勢かと思っていた」と振り返る。二日目に入り、井山が「シノギ方があまりよくなかった」と反省した左下の黒石への攻めを見つつ、芝野が局面を難しくして粘りを見せた。「3コウ無勝負か」という局面も訪れる複雑な戦いとなったが、最後は井山が冷静に勝負を決めた。シリーズの流れは、2勝を返した井山に傾くのか。芝野が流れを呼び戻すのか。芝野が「期間が少しあくので、また調整して集中して打てたらと思います」、次局に向け、井山は「まずはコンディションをしっかり整えて臨みたい」と意気込みを語った。第6局は11月2、3の両日に神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて打たれる。

余、名局で半目制す

 井山裕太王座の先勝で迎えた第71期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第2局が、10月27日、京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で打たれ、挑戦者の余正麒八段が白番半目勝ちを収めた。白番の余が右辺の黒模様に深く打ち込んで戦いが始まった。右辺からの攻防が一段落した時点では井山がリードを奪ったが、その後に、余が逆転。互いに反発し合う大ヨセに入り、井山の猛追で半目勝負となったが、最後に余が抜け出した。余は「まずは1勝をあげることができてよかった」と安堵の表情を見せ、井山は「これからも重要な対局が続くが、良い状態で臨みたい」と次局の抱負を語った。シリーズの天王山となる第3局は、11月14日、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」にて打たれる。

志田、初優勝

 第6回SGW杯中庸戦(株式会社セントグランテW協賛)の本戦が、10月28、29日に行われ、志田達哉八段が優勝を決めた。本棋戦は、日本棋院所属の31歳以上60歳以下、かつ七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯、SGW杯中庸戦の優勝経験がない棋士が出場し、予選を勝ち上がった棋士16名が本戦に進む。28日に1、2回戦、29日に3、4回戦が行われ、3勝同士の優勝決定戦は、共に今年好調の志田と安達利昌七段の顔合わせとなった。志田はヨセを得意とする本格派。その強さが全面に出て、1手30秒(1分の考慮時間10回)の中、わずかなリードを守りきり、勝利を掴んだ。最終結果は、スイス方式により2位が溝上友親九段。安達とベテランの小県真樹九段が3位入賞を果たした。

囲碁ニュース [ 2023年10月24日 ]

上野梨紗、初戴冠にあと1勝

 藤沢里菜女流本因坊に、急成長中の17歳、上野梨紗二段が挑戦する第42期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負(共同通信社主催)が、進行している。第1局は10月12日に岩手県花巻市の「佳松園」で行われ、上野が逆転で先勝。上野は「第2局も楽しんで打ちたい」と若者らしく抱負を語り、敗れた藤沢は「ところどころで読みが雑だった」と反省した。4日後の16日、鳥取県湯梨浜町の「望湖楼」で打たれた第2局は藤沢が中盤でポイントをあげ、押し切って1勝を返した。どちらがリーチをかけるのか。シリーズの流れを決める注目の第3局は、21日に香川県坂出市の「坂井グランドホテル」で打たれた。序盤は、藤沢の模様と上野の実利という両者の棋風とは逆の展開となった。その後、上野が勝負所の戦いでリードを奪い、ネット解説の鶴山淳志八段が「完璧」と評する見事な収束で2勝目をあげた。「梨紗さんは、「第19回アジア競技大会」で世界のトップと戦い自信をつけたのではないか」(小林覚九段)、「とにかく内容が素晴らしい」(棋士多数)と上野への賞賛の声が多い。勢いに乗った上野が初のタイトルを手にするのか、藤沢が地力を見せ、切り替えて巻き返すのか。第4局は、少し時間をおき、11月7日に、日本棋院東京本院にて打たれる。

天元戦、一力が1勝を返す

 関航太郎天元が先勝して迎えた第49期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)の第2局が、10月17日、北海道札幌市の「ホテルエミシア札幌」で打たれ、挑戦者の一力遼棋聖が逆転で白番中押し勝ちを収めた。序盤、左辺の攻防で関がリードを奪った。「想定より厳しくこられ、苦しくなった」と一力は振り返る。その後も関は優勢を維持し続けるが、一力が勝負手からコウを仕掛けて盛り返し、細かいヨセ勝負に突入した。AIはわずかながらも黒リードを示していたが、残り1分の秒読みの中で、関の足並みが乱れたようだ。一力の鋭い狙いが黒の弱点を捉え、最後は黒石を取り込んで関を投了に追い込んだ。一力は「とりあえず、一つ勝ててホッとしました」と安堵の表情を見せ、関は「終盤にミスが多かったので、そのあたりを修正していきたい」と無念さをぬぐいきれない表情で語った。第3局は、11月22日に福岡県福岡市の「大濠公園能楽堂」で打たれる。

王座戦開幕。井山先勝

 井山裕太王座に余正麒八段が挑戦する第71期王座戦挑戦手合五番勝負(日本経済新聞社主催)が開幕した。第1局は10日20日に東京都港区の「グランドプリンスホテル新高輪」で打たれ、井山が白番中押し勝ちを収めた。序盤は黒番の余が実利を先行し井山が上辺に厚みを築く展開。その後、黒の消しに井山が反発し競り合いとなる。わずかに白がリードして、険しいヨセ勝負に入るが、終盤の攻防の中、余に錯覚があり一気に勝負が決した。新聞解説の山下敬吾九段は「碁盤全体を見て白の厚みを生かした、井山王座らしい一局だった」と評し、ネット解説の孫喆七段は「ヨセに入ってから、井山さんはノーミス。強かった」と振り返った。余は、つらい負け方から気持ちを立て直すことができるか。第2局は10月27日に京都市の「ウェスティン都ホテル京都」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年10月21日 ]

アマチュア・ペア碁 関東代表決まる

 10月15日、東京市ヶ谷の日本棋院において、第33回国際アマチュア・ペア碁選手権大会関東甲信越ブロック大会が開催され、16ペアが世界大会出場を目指し戦った。
 昨年の関東甲信越ブロック優勝ペア、国際大会日本1位(世界大会2位)ペアは、内田祐里さん、藤原彰子さんという女流アマ優勝経験者であるが、今回はそれぞれ男性ペアの都合がつかずペアを変えての参加となった。そんな中、連勝で勝ち上がったのが、昨年も代表になった谷結衣子・大関稔ペア、倉科夏奈子・杉田俊太朗ペア、毎年参加を続けているベテランの吉田美穂・窪庭孝ペア、今年初めてペアを組んだ松本実優・小山光晶ペア。
 決勝に進んだのは、昨年に続き安定した成績を見せる谷・大関ペアと初参加ながら常連ペアを倒して勝ち上がってきた松本・小山ペアである。決勝は途中、大関さんが頭を抱えるシーンもあり、松本・小山ペアがしっかりと勝ち、初参加で初優勝となった。谷・大関ペアは昨年に続き決勝で初参加ペアに敗れた。関東では二年続けて、個人では実力者として知られているがペア碁大会は初めてという同士のペアが優勝となった。
 関東甲信越ブロックは上位5ペアが世界大会の出場権を獲得する。今年の代表は上記4ペアに、藤原彰子・石村竜青ペアが関東甲信越代表となった。関東代表は初参加の実力者同士ペア、代表常連ペア、久々の代表となったペアと様々。石村さんは「代表戦の方は初参加。昨年世界大会2位になった方とペアなのでプレッシャーがあった」、吉田・窪庭ペアは「10年以上ぶりぐらいの代表かなあ」と嬉しそうであった。
 各ペアが出場する第33回国際アマチュア・ペア碁選手権大会は12月2日、3日に開催される。

囲碁ニュース [ 2023年10月11日 ]

天元戦開幕。関が先勝

 関航太郎天元に一力遼棋聖が挑戦する第49期天元戦(新聞三社連合主催)の挑戦手合五番勝負が開幕した。第1局は10月10日に愛知県岡崎市の「龍城神社」で打たれ、関が白番中押し勝ち。三連覇に向け好スタートをきった。3期連続で同一カードとなった今シリーズに、両雄はそれぞれ特別な思いを込める。一力にとって、関は負け越している数少ない棋士の一人。当然ながらリベンジを期していることだろう。関は昨年同様「天元だけは誰にも渡さない」の強い決意がある。序盤は、白番の関がややリードを奪うが、上辺の黒模様を大きくされ、白のカタツキからサバキに向かった結果を「予想していた展開よりだいぶ食いつかれて、苦しくした」と振り返る。その後、戦場が移りながら攻防が続く。判断が難しい左辺のコウを、白が解消して左辺の黒を取ったあたりで白がわずかに逆転したようだ。その後、大ヨセで「右下に一手かけた手で、中央の白の消しに向かうべきだった」と一力。白に囲われた時点で、白のリードが確定した。関は「今日はあまりいい内容ではなかったので、次はいい碁が打てるようにがんばりたい」、一力は「中盤以降、まずいところが多かったので、すぐにまた(次局が)ありますので、切り替えてやっていきたい」と、それぞれ反省と抱負を語った。第2局は、10月17日に、北海道札幌市の「ホテルエミシア札幌」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年10月3日 ]

日本、銅メダル2つ

 第19回アジア競技大会に、囲碁競技が組み込まれ、9月24日から10月3日まで、男子個人戦、男子団体戦、女子団体戦が中国杭州で行われた。日本からは、男子個人戦に一力遼九段と芝野虎丸九段の2名、男子団体戦に一力、芝野、井山裕太九段、関航太郎九段、佐田篤史七段、女子団体戦に藤沢里菜六段、上野愛咲美五段、上野梨紗二段が出場し、男子団体戦と女子団体戦で銅メダルを獲得した。9月24日から28日にかけて行われた男子個人戦は、一力がベスト4に進出したが、準決勝で柯潔九段(中国)、3位決定戦で申眞諝九段(韓国)に敗れ、メダル獲得はならなかった。3位決定戦の直後、一力は「チャンスを見いだせないまま終わってしまった」と悔し涙を見せた。芝野は準々決勝で柯潔九段(中国)に敗れた。優勝は、許皓鋐九段(中華台北)。申眞諝九段(韓国)、柯潔九段(中国)という強敵を下しての見事な金メダルだった。団体戦は男女ともに9月29日から10日3日に行われ、男子は韓国が優勝、中国が二位。女子は中国が優勝、韓国が二位という結果だった。日本女子チームは準決勝で中国に1勝2敗で惜敗。藤沢は「終わった直後は結果を受け入れられませんでした」と悔しい気持ちを語ったが、チームで気持ちを立て直し、中国香港に勝利してメダル獲得につなげた。日本男子チームは準決勝の韓国戦に0勝5敗を喫したが、続く3位決定戦では、予選で1勝4敗のスコアで敗れた中華台北に4勝1敗とし、雪辱を果たした。芝野は「個人戦から苦しい対局が続いてしまいましたが、最後に勝ててよかった」、井山は「韓国戦では技術面やコンディショニングなど、課題を感じることが多かったです。難しい状況の中、最後中華台北に勝てたことはよかった」と振り返った。

囲碁ニュース [ 2023年9月26日 ]

芝野名人、3連勝

 芝野虎丸名人に井山裕太王座が挑戦している第48期名人戦七番勝(朝日新聞社主催)の第3局が、9月19、20の両日に愛知県田原市の「角上楼」で打たれた。2連敗と苦しいスタートの井山は、序盤から積極的な打ち回しを見せたが、局後には「気になる手を打ってしまった」とやや後悔があったことを語った。その後の右辺の戦いも「判断がどうだったか。一手一手微妙だったのですが、出来上がった図はやや不満というのはありました」と振り返る。二日目、封じ手は「勝負手」と呼ばれる左辺の白への打ち込みだった。芝野は意外そうな表情を浮かべたという。芝野は「一日目から見慣れぬ形になり、ずっとわからなかった」とし、「いけそうかなと思ったのは、(2日目に)左辺の黒石を切断した最後の段階」と語った。その切断の手段を井山は見ていなかったという。以降を井山は「最後も一応攻め合い含みにはなったのですが、白には余裕のある図が多かった」と脱帽。芝野が中押し勝ちで3連勝とし、防衛にあと1勝と迫った。局後、井山は朝日新聞のYouTubeの生配信に出演し、下島陽平八段の質問に答えながら本音で対局を振り返り、話題となった。下島八段の「このシリーズどうしましょう? 苦しい展開ですけれど、ここで終わる井山裕太ではない」と問われ、「そうできるようになんとか。もう少し盛り上げたい」と抱負を語った。芝野が一気に防衛を決めるのか、井山の巻き返しが始まるのか、第4局は、10月12、13の両日、大阪府守口市の「ホテルアゴーラ大阪守口」で行われる。

史上初、女性新人王誕生

 第48期新人王戦(しんぶん赤旗主催)決勝三番勝負の第2局が、9月22日、日本棋院東京本院で打たれた。1局目を制した上野愛咲美女流名人が、「ハンマー」と称される攻めの棋風で相手の石を召し取り、姚智騰六段に白番中押し勝ち。この瞬間、史上初の女性新人王が誕生した。敗れた姚は、「結果は残念。この経験を大切に、もっと強くなりたい」と語った。局後には記者会見が行われた。上野は、「一昨年、決勝の第3局で負けてしまい悔しかったのですが、今回リベンジでき、強い相手に勝って新人王になったのはうれしい」と喜びを語った後「(藤沢一就八段門下で幼い頃から切磋琢磨してきた)関君(関航太郎九段)、広瀬君(広瀬優一七段)が新人王を獲って、『あれ、どうして自分だけ?』と思っていて、そろそろかなと」と、ライバルの刺激があったことを明かした。また、記者からの「ご自身が女流棋士全体を引っ張っていこうという気持ちはありますか?」の質問に、「普通に突っ走っていきたいです」と答え周囲を笑わせた。「女性だから不利という思いは?」の質問には「全くありません」と笑顔で応じ、「今はまだ実力が足りませんが、伸びしろはあり、努力すれば(一般の)タイトルを獲る可能性は普通にあると思います」と語り、歴史が塗り替えられたことを印象づけた。

囲碁ニュース [ 2023年9月22日 ]

プロ棋士主催の囲碁大会 つるりん杯

 9月10日、東京市ヶ谷の日本棋院において、つるりん杯団体戦が行われた。つるりん杯は鶴山淳志八段と林漢傑八段のコンビが仕掛けた大会。日本棋院の1階と2階が埋め尽くされる約300人の参加となった。審判長には安田明夏初段。
 大会を行うにあたって、チラシ作りや参加者募集の呼びかけ、碁会所をまわりポスターやチラシ配り等も鶴山、林両プロが行った。当日の運営も行い、多くのファンとの交流する姿も見られ盛況であった。
 大会の方ではアマトップクラスから級位者まで実に幅広い棋力の方が参加した。宝酒造が協賛ということもあり、子供の参加はできなかったが年代層も幅広かった。
 無差別クラスではこの大会のために韓国から来日したチームもあった。「まず大会に出ることを決め、それから日本の観光コースを決めました」という韓国チームには韓国棋院の元研究生(日本でいう院生)も参加していた。結果としては李章元さん率いる大熊義塾に敗れ2位となったが選手3名とも楽しかったと語った。
 最多出場となったのは横浜囲碁サロン桃源会で無差別からクラス別まで9チームのエントリーがあり、無差別クラス2ではそのうちの1チーム(主将は全国優勝経験のある土棟喜行さん)が、クラス別でも1チーム優勝している。
 これまで棋士が主催するイベントはあったが、裏方で作業をするということはあまり無かったかもしれないが、ここ最近ではそういったことが増えてきていると思う。第2回のつりりん杯も企画したいとのことであり注目したい。

囲碁ニュース [ 2023年9月19日 ]

上野(愛)、史上初の女性新人王に王手

 第48期新人王戦(しんぶん赤旗主催)決勝三番勝負の第1局が、9月12日に千代田区の日本棋院東京本院で打たれ、上野愛咲美女流名人が姚智騰六段を黒番中押しで降した。上野は一昨年に続いて二度目、姚は初の同棋戦決勝三番勝負進出となる。上野は一度築いたリードを維持し続け、劣勢を意識した姚が挑んだ戦いにも的確に応じて、ほぼ完勝の内容。局後には「序盤からずっとよくわからず、攻め合いやコウの判断をしてたのですが、自信はありませんでした。途中からは、間違えなければ少しいいのかなと」と振り返った。敗れた姚は「もう少し踏ん張れる場面があったかもしれませんが…(上野さんは)思っていた通りの強さ。隙がない。昨年も一局当たったのですが負けていて、一局くらいは勝ちたいです」と笑顔でインタビューに応え周囲を和やかにした。これに上野は「ほめていただけると思わなかったのでビックリです」と応じ、「次も頑張ろうと思います」と抱負を語った。後日、姚は、チャンスを逃した局面を「実戦は『あと一歩』よりもうちょっと足りない感じかな」と独特の言い回しで振り返り完敗を認めた後に、「三番勝負は初めてで、2回負けなければ負けないので相当自信があったのですが、いざ1回負けてみると、もう崖っぷち」と、明るい人柄そのままに、やはり笑顔だった。姚が巻き返すか、上野が連勝し史上初の女性新人王誕生となるか、注目の第2局は、9月22日、日本棋院東京本院で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年9月5日 ]

芝野名人、開幕2連勝

 芝野虎丸名人の先勝でスタートした第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第2局が、9月2、3の両日に、鹿児島県霧島市の「霧島神宮」にて打たれた。一日目は挑戦者の井山裕太王座が主導権を握った。黒番の芝野が、左上の白模様の中で動き始めたところで井山が封じ、一日目が終了した。右上の黒もまだはっきりとは生きておらず、AIの白の勝率は90%に近い数字を示し、芝野も「はっきり苦しい形勢」と振り返った。二日目、井山が猛然と左上の黒を取りかけに向かい、局面は険しさを増していく。芝野は「実戦のように全部取りにくるとはあまり思っておらず、取られたらしょうがないかな、シノギは簡単ではないかなと思って打っていた」、井山も「黒のシノギは簡単ではないように思えた。必ずしも取らなくても、どこかで得ができれば地合いでも勝負できるというつもりだった」と振り返る。白が有利と思われた難解な攻防の中、芝野が井山の読み筋をはずす好手を放った。YouTube解説の林漢傑八段も「相手を迷わせ悩ませる手」と称賛。次に打たれた井山の手が敗因となったようだ。井山が秒読みに突入した時点で、芝野は40分以上持ち時間を残しており、攻守が逆転する。逆に芝野が中央の白石を仕留めて勝負を決めた。連勝の芝野は「もちろんいい成績でこれたのはよかったですけど、これからまた長い戦いですので、次に向けてがんばりたいと思います」と語り、苦しいスタートとなった井山は「特にやることは変わらないので、これからも悔いのないように戦いたい」と静かに語った。井山の巻き返しはなるか――。第3局は、9月19、20の両日に愛知県田原市の「角上楼」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年8月29日 ]

芝野名人、初戦完勝

 芝野虎丸名人に井山裕太王座が挑戦する第48期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)が開幕した。第1局は、8月24、25の両日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で打たれ、白番の芝野が中押し勝ちを収めた。立ち上がりは、黒番の井山のペースだった。上辺に模様を張り、白に入らせた後、あえて手を抜き大場に先着する打ち回しからは、攻めに自信ありと見受けられた。だが、読み落としがあったようだ。上辺の折衝のなか、芝野に好手があり、流れが変わる。逆に右上の黒の大石が取られ、形勢も逆転した。二日目に入り、芝野の鋭い好手が続いた。右上の損を挽回できないまま、午前中のうちに、AIの示す白の勝率は「90%」を超えた。その後も、井山は粘り、必死に勝機を求めたが、芝野が隙を与えず堂々と寄り切り、井山を投了に追い込んだ。YouTube解説の鈴木伸二八段は「黒が一度優勢に立ってから、白にチャンスらしいチャンスはなかった。芝野さんの名局と言っていいと思う」と振り返った。防衛に向けて幸先のよい白星をあげた芝野は「二日目に入って、よくなったかと思いました。一つ勝ててよかったです」と控え目に語り、井山は「次局以降を悔いのないように頑張ります」と気持ちを切り替えた。第2局は、9月2、3の両日、鹿児島県霧島市の「霧島神宮」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年8月28日 ]

アマ本因坊戦全国大会 大関さんアマ名人本因坊に

 8月26日、27日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において第69回全日本アマチュア本因坊決定戦全国大会が行われ、各都道府県の代表及び招待選手63名がアマチュア本因坊を目指し戦った。
 予選リーグはどこも拮抗し、白熱した戦いとなった。そんな激戦の中、ベスト8に勝ち上がったのは、アマ名人の大関稔さん(神奈川)を筆頭に、昨年優勝の栗田佳樹さん(招待)、学生本因坊の川口飛翔さん(招待)、優勝経験のある村上深さん(東京)、アマ名人三番勝負進出の夏冰さん(京都)、そして星合真吾さん(東京)、杉田俊太朗さん(長野)、優勝多数の平岡聡さんを破った山下寛さん(大阪)という顔ぶれである。
 誰が優勝としてもおかしくない中を勝ち進んだのは、大関さんと栗田さん。両者は全国の決勝やアマ名人三番勝負、世界アマ日本代表決定の名人対本因坊の一番勝負など、数々の重要対局を争ってきた現在の日本アマ碁界の両輪である。
 結果は、難しい勝負を大関さんが制し、4年ぶり3度目の優勝となった。これで4連覇を果たしたアマ名人と合わせて、アマ名人本因坊の二冠に輝いた。そして、世界アマチュア選手権の代表決定戦は名人と本因坊の決定戦で行われることから、二冠となった大関さんが来年の世界アマ日本代表に決定。意外にも大関さんは初の日本代表であり、念願の日本代表となった。
 惜しくも準優勝だった栗田さんは5大会連続の決勝進出であった。

囲碁ニュース [ 2023年8月11日 ]

日本代表チーム、アジア競技大会に向けて強化合宿

 今年、中国・杭州で開催される「第19回アジア競技大会」には、囲碁がマインドスポーツ競技の一つして採用され、男子個人戦(9月24日~28日)、男子団体戦と女子団体戦(いずれも9月29日~10月3日)の3競技が行われる。日本からは囲碁競技の国内統一団体として2019年10月に発足した「一般社団法人全日本囲碁連合」から、男女8名の選手の派遣が決まっている。大会に向け、8月8日と9日の2日間、日本代表選手全員による囲碁強化合宿が「味の素ナショナルトレーニングセンター」で実施され、9日に記者会見と公開練習が行われた。合宿では、今大会で採用される「中国ルール」の説明、今大会と同じ条件(持ち時間など)での練習対局、AIを使ってのライバル選手の研究などの他、選手村での過ごし方や食事の講習会、アンチドーピングの講習会など、「アジア大会」に特化した内容が盛り込まれた。また、多忙な選手全員が集まり、大会に向けて団結し士気を高める目的もあったという。記者団からの質問に応じた選手8名の大会への抱負を以下にまとめてご紹介する。

 一力遼九段(男子個人戦と男子団体戦に出場)「先に始まる個人戦の自分と芝野さんの成績によって団体戦の意識も変わると思うので、個人戦は重要だと思っています。全員強敵という意識はしていますが、全く手が届かないと感じる棋士はいませんので、十分チャンスはあるかなと思っています。国際大会でいい結果を残すことが、囲碁界の発展にもつながると思っており、責任も感じますし、自分自身やりがいも感じています」

 芝野虎丸九段(男子個人戦と男子団体戦に出場)「団体戦は、非常に頼れるメンバーに恵まれまして、いい精神状態で打てるのではないかと思います。まずはメダル獲得。そして金メダルを目指してがんばりたいと思います。個人戦は、もちろんかなり厳しいとは思いますけど、可能性がないとは思わないので、一局一局集中するだけかなと思います」

 井山裕太九段(男子団体戦に出場)「私は前回の2010年の広州アジア大会にも出場させていただきましたので、そのときの経験を今回チームに役立てることができればと思っています。スポーツ大会ということで、普段見ていただけない方にも囲碁に触れていただく機会でもあり、いいアピールをしたいなと思います。それぞれがベストのパフォーマンスをする。それが一番チャンスが広がることだと思いますので、まずは自分たちのベストを尽くすことが最低条件だと思っています」

 関航太郎九段(男子団体戦に出場)「ライバルチームは、こちらの3名(一力、芝野、井山)の対策は練ってくると思うので、あまり注目も意識もされていない棋士がどれだけ勝てるかが重要だと思っています。一つでも勝ち星をあげることが目標です」

 佐田篤史七段(男子団体戦に出場)「私は唯一予選から勝ち上がりました。世界に挑むのは特別な方だけという意識が棋士の中でも大きいと感じておりまして、もし自分が結果を出せたら、日本棋士全体の『世界に挑む』という空気が変わると思っていて、それは自分にしかできないことだと思っているので、それをモチベーションにがんばっていきたいと思っています」

 藤沢里菜六段「前回の2010年は入段した年でして、先輩方が出場されているのを見ていつか出たいなと思っていたので、今回出させていただけてとても光栄に思っております。上野姉妹という強いメンバーと一緒に団体戦に出場するのですけれども、私が勝つことができれば、金メダルも夢ではないと思っているので、それまでにしっかり準備して精一杯がんばりたいと思います」

 上野愛咲美五段「今回の大会では世界のトップの方々にお会いできるのと、対局させていただけるのがとても楽しみです。いつも以上に研究などをしっかりして、対局前はしっかり縄跳びを飛んで、今回もがんばろうと思います」

 上野梨紗二段「一人だけ予選で選んでいただき、すごくうれしいです。世界戦のこんなに大きな舞台は初めてなんですけど、里菜先生と姉という心強いメンバーなので、自分が足を引っ張らないように、体力をつけたり、たくさん勉強してがんばりたいと思います」

囲碁ニュース [ 2023年8月11日 ]

余、棋聖戦Aリーグ優勝

 棋聖戦は、進行の早いAリーグが全日程を終え、余正麒八段が優勝を決めた。優勝に絡む最後の2局 ―― 余×鈴木伸二七段戦と伊田篤史九段×孫喆七段戦は8月10日に打たれた。余と孫が5勝1敗で並んでいたが、同星の場合はリーグ内順位が上位の余が優勝となる。余が負け、孫が勝った場合のみ孫が優勝するという状況だった。余×鈴木戦は大阪市の関西棋院で打たれ、序盤に鈴木の後悔の手があったようだ。リードを奪った余が逆転の隙を与えずそのまま寄り切った。伊田×孫戦は千代田区の日本棋院東京本院で打たれた。こちらも序盤に伊田が下辺でポイントをあげた。終盤に伊田に失着があり孫が追い上げたが、わずかに届かず伊田の半目勝ちとなった。余は、挑戦者決定トーナメント進出を決め、前期陥落したSリーグへの昇格も決めた。孫は優勝には届かなかったが来期は初のSリーグ参戦となる。「正直、Sに上がれるとは思ってなかったのですが、せっかくのチャンスなので一局一局大事に打ちたいと思います」と抱負を語った。Aリーグからは2名が昇格し、2名が残留。4名が降格となる。伊田は、2勝3敗という苦しい星だったが、最後の2局で余、孫を破って実力者ぶりを見せ、逆転で残留を決めた。

囲碁ニュース [ 2023年8月1日 ]

井山碁聖3連覇

 井山裕太碁聖が挑戦者の一力遼棋聖に2連勝して迎えた第48期碁聖戦五番勝負(新囲碁連盟主催)の第3局が、7月28日、千代田区の日本棋院東京本院で行われた。井山は20日に一力に本因坊位を奪われたが、24日の名人戦リーグで許家元九段を破り、自身のツイッターで「また新たなスタートが切れて良かったです」と気持ちを切り替えている。その精神力は井山の強さを支えるものだろう。本局も、本因坊戦同様、互いに反発し合う立ち上がりから難戦となり、険しい攻防が下辺から中央へと波及していった。共に最強手を追及する棋風だが、判断を誤ると「打ち過ぎ」となる。黒番の一力がやや優勢の状況でヨセに入ったが、上辺で放った強気のハネに井山が切りから反発して流れが変わった。一見、中央の黒と左辺の白を取り合うフリカワリで決着したかに思われたが、左辺の白はしぶとい形だった。井山が左辺を動き、コウの形に持ち込んだところで、一力が投了を告げた。井山は3連勝のストレートで防衛を果たし、3連覇とした。また通算9期の碁聖位は、小林光一名誉碁聖の記録に並ぶ快挙でもある。井山は「一つ結果を残せてホッとしています。きわどい勝負ばかりでしたが、自分なりに精一杯やれたかなと思います」と振り返った。昨年に続いて3連敗の結果に終わった一力は「今年も見せ場がないまま終わってしまいましたが、実力かなと感じます。またこの舞台に立てるように、一つ一つ頑張っていきたい」と語った。

名人戦挑戦権は井山の手に

 芝野虎丸名人への挑戦者をかけ、第48期名人戦(朝日新聞社主催)の挑戦者決定プレーオフが、7月30日に千代田区の日本棋院東京本院で行われた。7勝1敗でリーグ戦を終えた一力遼棋聖・本因坊と、井山裕太王座・碁聖による決戦だ。本因坊戦、碁聖戦と続き、両雄の顔合わせは7月だけで6局目となった。黒番一力の優勢の時間が長かった。中央の白の大石をほぼ仕留め、黒勝勢かとも思われたが、下辺の折衝で一力の判断ミスがあったようだ。中央の白が息を吹き返す。黒には半分取る道があり、そちらを選べば優勢を維持していたそうだが、一力は全てを取りにいき、井山がシノギ切る。AIの黒の勝率は、文字通り急降下した。その後も険しい局面は続いたが、左辺がコウになった時点で、井山は勝ちを意識したと振り返る。コウダテは白に多く、一力が投了を告げた。来期から「本因坊」が序列3位ではなくなるため、一力にとっては棋聖・名人・本因坊の「大三冠」となる最後のチャンスだったが、夢はかなわなかった。一力は「期するところはありましたが、読みの精度を欠いていたので、仕方ないと思います」と無念のコメント。井山は「昨年名人位を失ってから、七番勝負に戻ることを大きな目標にしてきた。大きな舞台に戻れることは、非常に光栄です」と声を震わせた。芝野が初防衛を果たすのか、井山が返り咲くのか。挑戦手合七番勝負の開幕戦は、8月24、25の両日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われる。

囲碁ニュース [ 2023年7月25日 ]

一力新本因坊誕生

 歴史が動いた。一力遼棋聖が、本因坊文裕(井山裕太本因坊)の12連覇を阻止し、初の本因坊位を獲得。二冠となり、名実共に第一人者となった。第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第7局は、7月19、20の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」で行われた。井山は、1勝3敗から2連勝し、さらに直前に打たれた碁聖戦五番勝負の第2局でも一力を倒し、シリーズの流れを制したかと思われた。その勢いのまま、本局1日目は、黒番の井山が優勢を築き、井山が封じた。AIが示す10を越える候補手の全てが「勝率95%」前後の数字を出していたほどだ。一力は「負けを覚悟した」と振り返っている。だが、勝負は単純ではない。両雄の心理面が大きく作用したように思われる。井山は打ち掛けの晩に「封じた手より、もっとよい手に気づいてしまった」という。その後悔が微妙に影響したかもしれない。逆に一力は、「気持ちを切り替え、二日目は雑念なく集中できた」と語った。封じ手は、誰の予想にもない左上の小ゲイマジマリへのツケ。新聞解説の伊田篤史九段は、「黒は上辺の白模様を荒らしさえすれば勝ちやすい形勢です。ただ井山さんは、右辺の黒に寄り付かれるのを心配されたのだと思います。その判断がどうだったのか…」と首を傾げた。その後、左上は井山の読み筋通りに進行するが、上辺の白模様が大きくなっていき、左上の攻防が一段落した時点では、形勢は逆転していた。以降は一力が井山を寄せつけなかった。井山の必死の勝負手にも的確に応じ、井山を無念の投了に追い込んだ。連覇が止まった井山は「よくここまで続けてこれたなという思いはありますが、それはそれ。今回の結果は受け止めなくてはなりません。実力を蓄えて再出発したい」と前を見据えた。一力は、「ホッとしている。最終局で勝てたことは自信になる」と語り、一夜明けた翌朝のインタビューでは「棋士仲間や大勢の方からお祝いのメッセージをいただき、少しずつ実感が湧いています」と笑顔で喜びを語った。

牛が女流最強位連覇

 第8回扇興杯女流囲碁最強戦(センコーグループホールディングス株式会社協賛)の決勝戦が、7月23日、滋賀県東近江市の「迎賓館あけくれ」で行われ、牛栄子女流最強が上野愛咲美女流二冠を破り二連覇を果たした。トーナメント方式での連覇は難しく、今回の牛の二連覇は大会史上初となる。序盤は上野がリードを奪った。だが、上野が左辺で利かそうとした手に、牛が受けずに反発したところから流れが変わる。上野は左上に連打するが、牛の読みが勝り一気に逆転した。その後、上野は次々と勝負手を繰り出して盛り返すが、牛も機敏に打ち回して中央一帯の攻防が一段落した時点では牛が優勢を築いた。その後、逆転は難しく、242手まで、白番の牛が中押し勝ちを収めた。牛は「今年に入って一番負けてしまっている時期が続き、まさか今回優勝できるとは思っていませんでした。本当に私にとって扇興杯は運のいい棋戦だなと思いました。毎年こちらで対局できることをこの上ない幸せだと思っておりますので、来年もこちらで打てるようにがんばりたいです」といつもながらの綺麗な日本語で喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2023年7月19日 ]

アマ名人戦全国大会

 7月1日、2日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において第17回朝日アマチュア囲碁名人戦全国大会が行われ、各都道府県の代表及び招待選手が大関稔アマ名人への挑戦を目指し戦った。
 招待選手が順調に勝ち上がる中、宮岸黎明さん(石川)が、昨年の全国優勝者柳田朋哉さんを破りベスト8に進出した。その他にも学生招待の硯川俊正さんを2回戦で破った竹田幸一さん(広島)がベスト8に進んだ。
 強豪が多い中でもアマチュア本因坊であり、世界アマ選手権の日本代表決定戦で大関アマ名人を破った栗田佳樹さん、現役の学生で学生囲碁界トップの川口飛翔さんの2名が特に注目を集めていた。両者ともにベスト8に勝ち上がったが、栗田さんは平野翔大さん(招待)に、川口さんは夏冰さん(招待)にそれぞれ敗れた。準決勝ではその両者が対戦し、夏さんが決勝進出を果たした。
 決勝の相手は世界アマ日本代表経験のある森川舜弐さん(愛知)。ともにアマ名人では初の決勝進出である。結果は夏さんが勝利し全国初優勝となった。夏さんは少年少女囲碁大会で優勝はあるものの一般大会ではベスト4やベスト8が多く初の優勝。ベスト8では20代ばかりであったが最年長である。
 大関アマ名人との三番勝負は7月29日、30日に東京市ヶ谷の日本棋院にて行われる。夏さんは「せっかくだから3局教えてもらいたい」と語ったが、心の中ではアマ名人奪取を狙っているだろう。全国大会の会場には大関アマ名人も挑戦者が誰になるのか観戦に来ていた。

囲碁ニュース [ 2023年7月18日 ]

本因坊戦、最終局へ

 第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第6局が、7月11、12の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われた。第5局までの難戦に違わぬ超難解な戦いの碁となるが、最後は本因坊文裕(井山裕太本因坊)が読み勝ち、逆転で、挑戦者の一力遼棋聖に白番中押し勝ちを収めた。井山は1勝3敗と追い詰められてから2連勝。決戦は最終局にもつれ込んだ。1日目は、右下の黒を取り込んだ井山がやや打ちやすい形勢となる。だが一力も左上で巻き返しをはかり、決め手を与えぬまま打ち掛けた。2日目は、井山が左上の白を逃げ出して、判断の難しい難解な攻防に突入。戦いは中央へと波及していった。左上と中央でそれぞれ井山に有望な進行もあったようだが、これを選択せず、AIは黒優勢を示した。新聞解説の孫喆七段は「左下の黒模様が30目黒地になれば黒勝ちです。30目はできそうですね」と評した。盤上に黒の弱い石はなく、白は左上と中央に、まだはっきり生きていない石を抱えていた。さらに、持ち時間は一力が1時間以上多く残している。控室は「新本因坊誕生か」という空気に包まれた。だが、井山は長考の末に、下辺で、検討陣が誰も予想していなかった手を繰り出した。一力が長考に沈み、まず、残り時間が並んだ。下辺は特大のコウとなるが、一力はこれを放置して左上に襲いかかる。立会いの山下敬吾九段が「ええ!」と思わず大声をあげ、控室は騒然となった。この後、井山は左上をシノギ、両者秒読みの中、下辺の超難解な攻防が再開。互角の戦いに思われたが、一力が見ていない手があったようだ。これが、直後の(AIに指摘されなければわからない)敗着を招き、井山が鮮やかに技を決めて一力を投了に追い込んだ。第7局は、19、20の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」で行われる。

井山碁聖、防衛にあと1勝

 本因坊戦の激戦から2日あけた7月15日、両雄は舞台を変え、第48期碁聖戦五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第2局で相まみえた。対局場は石川県金沢市の「北國新聞会館」だ。序盤は両者のここ数局同様に早いペースで打ち進められ、互いに模様を広げた。中盤に入り、白番の一力が黒模様に深く打ち込むと、互いの石が絡み合う険しい攻防に突入していった。中央で井山の攻めが上回り、白石数子を取り込む形で治まりリードを奪うと、一力の猛追を的確に退けて、黒番中押し勝ちとした。立会いの武宮正樹九段は「最初から最後まで難解で、勝ち切った井山碁聖はすごいが、一力棋聖も最後まで土俵を割らず素晴らしい熱戦だった」とコメントした。2連勝で3連覇(通算9期目)にあと1勝と迫った井山は「中央の戦いで打ちやすくなった。第3局もコンディションを整えて精一杯やりたい」と淡々と語り、一力は「中央の戦いでもっといい打ち方はあったと思う。そのあたりを修正して、次局に臨みたい」と巻き返しを誓った。第3局は、28日に、東京都千代田区の日本棋院東京本院にて打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年7月11日 ]

碁聖戦開幕。井山先勝

 井山裕太三冠と一力遼棋聖の重厚対決が続いている。6月27日は、井山裕太碁聖に一力遼棋聖が挑戦する第48期碁聖戦五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第1局が、大阪市北区の日本棋院関西総本部で打たれた。一力は、前週の本因坊戦で3勝目をあげて井山を追い詰めている。その勢いのまま勝利を収めるのではないかと予想されたが、結果は井山の快勝となった。序盤、左上の攻防は、見慣れぬ形ながら「さすがに両者の見事な応酬」と解説の瀬戸大樹九段が称賛。両者は、黒番の一力がやや打ちやすそうという感想で一致していたが、直後、左辺に向かった手を「中央の攻めに向かうべきだった」と一力が悔やむ。井山が中央を厚くして形勢は互角だが、この後悔が、一力の焦りを呼んだようだ。左下の攻防で、一力は最強手を選ぶが、これが裏目に出て井山がじわじわとリードを広げ、さらに中央の攻防でも一本取って勝負を決めた。一力は「この碁はいいところがなかった」と完敗宣言。井山は「険しいながらも、それなりに戦えているのかなと思っていた」と振り返った。第2局は、7月15日に、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われる。
 両者は、本局の2日後、29日に名人戦リーグでも顔を合わせた。一力が熱戦を制して井山に土をつけ、両者6勝1敗。こちらの挑戦者争いからも目が離せない。井山は、自身のSNSに「途中楽しみの多い局面と感じていましたが、良い選択ができませんでした。厳しい日程が続きますが、引き続きベストを尽くしたいと思います」と投稿している。

井山、カド番の強さを発揮し、本因坊戦2勝目

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)が挑戦者の一力遼棋聖に1勝3敗と追い詰められて迎えた第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第5局が、7月4、5の両日、京都市の「寂光寺」で打たれた。布石は、白番、一力が研究の手順を進めた。これに井山が力強く応戦し、上辺で早くも険しい攻防に突入する。難解ながら、ほぼ互角に分かれ、「さすがの両者」と検討陣が感心した。本局は左辺がポイントとなった。広く模様を広げた一力が、井山の打ち込みを迎え撃つ。一方、井山は左辺の弱い石を「攻めてこい」とばかりに、手を抜いて実利を先行し、一力の攻めと井山のシノギという展開になった。井山が左辺の大石を巧みにシノぐと、一力は右下の白に焦点を定める。だが、井山が盤石に右下もシノギきって優勢を確定させた。197手まで、逆転のチャンスなしとみて、一力が投了を告げた。井山は「コンディションを整えて、次局も精一杯戦います」、一力は「しっかり振り返って、次に臨みたい」と語った。多忙な両者は1日あけた7日に、井山が棋聖戦Sリーグ(対許家元九段)、一力が王座本戦2回戦(対河野臨九段)を戦い、それぞれ勝利を収めている。本因坊戦の第6局は、11、12の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2023年6月27日 ]

一力、本因坊まであと1勝

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)が、2連敗の後に1勝を返して迎えた第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第4局が、6月20、21の両日、大阪府守口市の「ホテルアゴーラ大阪守口」で行われた。終局が午後9時4分、350手に及ぶ大熱戦は、挑戦者の一力遼棋聖が黒番半目勝ちを収め、本因坊奪取まであと1勝とした。一力は第3局に敗れ17連勝が止まった後、本局までの2局にも敗れ3連敗中だったが、「調子はまた上がっている」と宣言して本局に臨んだ。1日目は、左上の鋭い仕掛けから一力がリードを奪うものの、右上の攻防で井山が巻き返す。2日目は、中央の攻防で井山に判断ミスがあったのか、緩着があり、一力が逆転する。AIの勝率は黒の「90%」台を示し、そのまま押し切るかと思われた。だが、終盤に入り、今度は一力に錯覚があったのか、ミスが出てコウが生じる。AIの勝率も一気に白に傾いた。以降は、両者秒読みの中、コウ争いが絡む壮絶なヨセ勝負に突入した。一力のコウダテに好手があり、逆に井山にはミスが続いたようだ。中央にもコウが生じ形勢は不明に。両者一つずつコウを解消した時点ではわずかに井山がリードしていたが、その後に井山のミスを捉えた一力が逆転を果たし、逃げ切った。一力が一気に本因坊奪取を決めるのか、「カド番の鬼」とも呼ばれた井山が必死の巻き返しを見せるのか。注目の第5局は、7月4、5の両日、京都府京都市の「寂光寺」にて行われる。ちなみに両雄は、6月27日の碁聖戦五番勝負第1局、29日の名人戦リーグでも顔を合わせる。

囲碁ニュース [ 2023年6月20日 ]

上野、女流立葵杯防衛

 上野愛咲美女流立葵杯に藤沢里菜女流本因坊が挑戦する第10期会津中央病院・女流立葵杯(一般社団法人温知会協賛)の挑戦手合三番勝負が、6月17日から19日に、福島県会津若松市の「今昔亭」で行われた。3局共に、日本女流界のトップ2にふさわしい大熱戦の末、上野が防衛を果たした。3日間で一気に決着のつく短期決戦は、対局者にはハードスケジュールだが、ファンには魅力的だ。17日に打たれた1局目は藤沢が、18日の2局目は上野が制して、19日の最終局を迎えた。中央で複雑かつ難解な攻防となり、ここで上野が読み勝ったようだ。その後は逆転を許さず、上野が黒番中押し勝ちを収めた。敗れた藤沢は、SNSで「最終局は、中央に錯覚があって残念な内容となってしまいましたが、これも実力なのでまた次に活かせるようがんばりたいと思います」とコメント。2連覇の上野は、「1局目は、おそらく逆転負け。コウの判断ができなかったり、里菜先生のヨセの力を見せられて、勉強になる一局でした。2局目も、コウがたくさん発生して難しい碁だったのですが、なんとか勝つことができました。3局目までいけるとは思ってなかったので、今日は打てるだけでとても嬉しい気持ちでした。今日の碁は、序盤から全然わからなくて、途中も何度か錯覚しそうになる難しい碁だったのですが、形がなんとなく黒にうまくできていて、運よく防衛することができました」と熱戦を振り返り、「今回はベスト4に妹(上野梨紗二段)も勝ち上がり、会津に一緒に来ることができ、妹も喜んでいて、ご飯や温泉や空気のよさに感動していました。私も今朝、散歩していたら自然がパワーをくれる感じがしました。会津では袴を着れるのも嬉しいですし、フルーツもいただけるようなので、来年も力をつけてがんばろうと思います」と喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2023年6月13日 ]

本因坊文裕、1勝を返す

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に一力遼棋聖が挑戦している第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第3局が、6月6、7の両日、東京都千代田区の「神田明神」で打たれた。ここまで2連勝の一力は、他棋戦と合わせ17連勝中だったが、井山は「一力さんが今充実しているのは間違いない」としながらも、「(2連敗とはいえ)徐々に良くなっている部分もあり悲観はしていない。こういう苦しい状況でしか得られないものがあります」と、平常心で本局に臨んだ。序盤は、黒番の井山の厚みと一力の実利という展開になった。井山が下辺の白を切断し、前2局同様、険しい戦いに突入した。一力は下辺の攻防を「感触は悪くなかった」と振り返り、戦いが中央に波及したところで1日目が終了した。2日目、井山の封じ手は、中央の戦いをにらみながら、左上に迫る一着だった。中央の白と左上の白を分断する井山の作戦が成功した形となり、黒が逆転する。その後、ヨセ勝負に持ち込むか、戦いで決着をつけるかの岐路で、井山は危険を伴う後者を選択。上辺の白をコウにし、コウ材の多い黒が上辺を仕留めて勝勢になると、一力の必死の勝負手を的確に退け、249手まで黒番中押し勝ちとした。一力は「中盤にミスが多かったので、そのあたりを反省して次局につなげたい」と語り、井山は「内容はともかく、一つ勝てたのはよかった」と笑顔を見せた。一力が3勝目をあげ、本因坊奪取にあと1勝と迫るのか、井山がスコアをタイに戻すのか。注目の第4局は、6月20、21の両日に、大阪府守口市の「アゴーラ大阪守口」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2023年6月9日 ]

関東甲信越静囲碁大会

 第65回関東甲信越静囲碁大会が6月3日、4日の両日、長野県で行われた。本大会は関東甲信越静の各都県が毎年会場を持ち回りで行い、コロナで中止後、3年ぶりの開催となった。3日は前日からの大雨の影響で交通機関に乱れがあり、静岡県チームに遅れが出るなどあったが無事開催された。今大会では栃木県と群馬県の参加者が集まらず欠場となった。 近年ではアマ名人の大関稔さん、アマ本因坊の栗田佳樹さんを擁する神奈川県が圧倒的な成績を誇っていたが、両者ともに都合がつかず欠席となり、神奈川、埼玉、千葉が優勝を争う展開となった。 全勝で2日目に挑んだのは神奈川の2チーム。若手を中心に組まれた神奈川Aは石村竜青さんが主将を務める。ベテランで構成された神奈川Bは窪庭孝さんや佐々木慶さんという若手が活躍する以前には何度も神奈川県代表になったメンバーである。 神奈川Aは千葉Bとの対戦になった。千葉はAがベテラン、Bが若手で構成されており、近年の活躍ではBチームの方が活躍しているように思われる。中川道さん、丹羽準也さん、渡辺達也さんという学生囲碁界でも活躍したメンバーを擁していたが、3-2で神奈川Aが勝利した。もう一方は神奈川Bと埼玉Aの対戦となった。埼玉Aは日野大地さんを主将に実力者が揃っている。5-0で埼玉Aが勝利し決勝となった。 優勝決定戦の神奈川A対埼玉Aは3-2で埼玉Aが勝利した。神奈川の連覇を阻止し、埼玉が久々の優勝を手にした。

囲碁ニュース [ 2023年6月1日 ]

一力、充実の2連勝

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に一力遼棋聖が快勝して開幕した第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第2局が、5月28、29の両日、秋田県能代市の「旧料亭金勇」にて行われた。両者は深い読みから次々と積極手を繰り出し、局面が複雑化していく中、最後は一力の判断力が上回り、井山を投了に追い込んだ。「序盤から一手一手が難しかった」と一力、「力みすぎ、一日目の午後は苦しいのかなと思っていた」と井山は振り返った。だが、井山の封じ手から流れが変わり、白番井山の優勢な局面が訪れた。盤上は互いの弱い石が絡まり合う超難解な戦いが続き、中央下辺側の白が取られるが、中央上辺側の大石同士がコウになる。ここで、大石を捨て(コウを譲り)、ヨセ勝負に切り替えた一力の判断力が素晴らしかった。井山の「大石は取れたのですが、左上を連打されて、よく見たら大変な形勢になったと思った。その前に、もう少しいい図がなかったかとは思うのですが、微妙なことが多すぎてわからなかった」というコメントからも難戦ぶりが伺える。黒番中押し勝ちで2連勝とした一力は「途中いろいろ判断に緩みがあったので、そのあたりをしっかり振り返って次局に臨みたい」、井山は「開幕局よりは自分なりに打てた感触があるので、自分なりに準備して次に向かっていきたい」と語った。「緩まずに、最後まで最強に攻め切ることが自分らしさ」と語る一力だが、本局では形勢判断の正確さも見せ、充実ぶりが伺える。公式戦16連勝の記録も、どこまで伸びるか注目だ。第3局は、6月6、7の両日、東京都千代田区の「神田明神」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2023年5月29日 ]

東京23区囲碁大会

 第10回東京23区囲碁大会が5月21日、市ヶ谷の日本棋院において行われ、16区に合同チーム2つを合わせた18チームで争われた。今大会は一般5名内1名を65歳以上のシニア、女性1名、30歳以下の青年1名、子供2名の計9名で行われる。
 3回戦が行われ、全勝対決は、毎回安定した成績の文京区と2回戦で合同チームの川口飛翔さんを破り5-4で制した千代田区、早稲田大学のメンバーを中心にした新宿区と江東区という組み合わせになった。それぞれ文京区と新宿区が制し、勝ち数の関係で文京区の優勝となった。
 文京区は主将が体調不良で欠席したことで1人少ない8人で戦うことになった。副将には女流アマ優勝経験のある藤原彰子さん、昨年度学生大会2つ準優勝の曹睿梟さん、青年の部には高校時代に活躍した佐藤英一郎さんといった強力な布陣。最終戦の千代田区戦は8-1の勝利だった。
 新宿区は主将、副将は早稲田大学のレギュラーでメンバーの大半が早稲田の学生である。昨年も全勝ではあったが勝ち数により2位だった。
 チーム数の関係で、2連勝の世田谷区と1敗の渋谷区が最終戦を行うことになり、世田谷区が勝てば全勝が3つになるという状態であったが、渋谷区が勝利している。
 今大会で10回となることで、過去10大会の成績を合わせたグランドチャンピオンが表彰され、世田谷区がグランドチャンピオンに輝いた。今大会は最終戦で惜しくも敗れたが過去に優勝経験もある強豪チームだ。

囲碁ニュース [ 2023年5月23日 ]

一力、本因坊戦開幕局に快勝

 12連覇を期す本因坊文裕(井山裕太本因坊)に一力遼棋聖が挑戦する第78期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社など主催)の第1局が、5月18、19の両日、静岡市の「浮月楼」で行われた。お伝えしたように、来期から五番勝負となる本因坊戦にとって、節目のタイトル戦でもある。5月15日に打たれた天元戦本戦準決勝で、対井山戦の連敗を止めた一力は、今年24勝4敗(13連勝中)の勢いに自信も加えて初戦に臨み、井山の大石を仕留める圧巻の会心譜で、164手まで白番中押し勝ちを収めた。ネット解説の高尾紳路九段が、「井山さんは、おそらく局後にAIを使って検討するでしょうが、その際、一力さんのAI候補手との一致率に愕然とするのではないか」と心配するほど、一力の正確な読みと厳しさが印象づけられた一局だった。井山は「今の自分の力なりの碁ではあったので、特に後悔するところはありません」と淡々と振り返り、一力は「まずは一つ勝ててホッとしました。次局に向けてしっかり準備したい」と語った。「自分はこれまで、初戦の勝敗がタイトル獲得か否かに大きく関係している。その意味でも初戦に重きを置く」と語っていた一力にとっては、意味ある一勝だ。第2局は、5月28、29の両日、秋田県能代市の「旧料亭金勇」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2023年5月9日 ]

一力、テイケイ杯俊英戦を制す

 棋聖対名人の注目の大一番———25歳以下の棋士が参加する第2回テイケイ杯俊英戦(テイケイ株式会社協賛)の決勝三番勝負の第2局が、5月6日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。ここまでの経緯は、予選を勝ち上がった12名が2リーグに分かれて総当たり戦を行い(優勝者は次期から出場できないため、前期優勝の許家元九段は出場していない)、Aリーグでは芝野虎丸名人が、Bリーグでは一力遼棋聖が、それぞれ5戦全勝で優勝を決め、決勝三番勝負に進出。4月1日に行われた第1局は、一力が芝野を降した。第2局は、序盤で黒番の一力が厚みを作り、白番の芝野が実利で先行する展開に。一力の「(黒も不満はないが)地は白に頑張られているので、判断はできなかった」、芝野の「不満はないと思っていたが、黒はかなり厚いのでこのあと次第かなと」という両者のコメントからは、判断が難しいながらも互角の形勢だったことが伺える。その後、一力の積極的な手から、右辺の折衝が険しくなる。芝野が白を生きにいった判断が、やや疑問だったようで、黒も逃げ出せたために外側の白が薄くなった。続く一力の鋭い攻めに対して、芝野はただ生きるだけでは不満と見て、黒地を減らしながらの生きを目指した。最後は上辺の黒との攻め合いにもつれる際どい戦いとなったが、一力が正確に攻め切り、白の大石を仕留めて勝ち切り、ストレートで優勝を飾った。局後の芝野は「結果はもちろん残念です」と言葉少なにコメントし、一力も「攻め方や左上の決め方が最善ではなかった」と反省の弁を残した。一力と芝野の対戦成績は昨年までは9勝9敗と並んでいたが、今年に入ってから一力が7勝2敗と差をつけた印象だ。また、絶好調の一力は、この勝利で11連勝とし、5月8日に打たれた名人リーグでも勝利し、連勝を12に伸ばしている。

囲碁ニュース [ 2023年5月2日 ]

棋聖戦Sリーグ開幕

 一力遼棋聖への挑戦権をかけた第48期棋聖戦(読売新聞社主催)のSリーグが開幕した。初戦は4月27日、本因坊文裕(井山裕太本因坊)と山下敬吾九段のカードが組まれた。黒番の井山が序盤から白模様を根こそぎ荒らす力強い打ち回しを見せるが、しぶとい山下も簡単には土俵を割らない。その後、山下の勝負手から難解な戦いに突入し、腕力勝負となる。最後は井山が正確な読みでシノギ切り、中押し勝ちを収めた。井山は直前に開設した自身のツイッターで「不用意な一手から一気に難しくしてしまいましたが、ギリギリ凌げていたのは幸運という他ありません」と振り返っている。すでに開幕しているAリーグでは、余正麒八段が3連勝、B1リーグでは大竹優七段が3連勝、B2リーグでは呉柏毅五段が3連勝とそれぞれ単独トップを走っている。また、ファーストトーナメント予選の準決勝で二十四世本因坊秀芳(石田芳夫二十四世本因坊)、予選決勝(4月20日)でマイケル・レドモンド九段を破った辻華二段が、女性棋士としては6人目となるCリーグ入りを決めている。今期のCリーグには、前期残留の藤沢里菜五段と辻二段、二人の女性棋士が参加することになる。

囲碁ニュース [ 2023年4月25日 ]

芝野、十段位奪還

 許家元十段の1勝、挑戦者の芝野虎丸名人の2勝で迎えた大和ハウス杯第61期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第4局が、4月20日、東京都千代田区の日本棋院本院で行われた。近年の若手対局の傾向どおり、序盤は早いペースで進み、形勢は互角だった。白番の許の積極的な手を芝野が冷静にかわした直後、許が右下で利かそうとした手が失着だったようだ。手を抜いて左下の大場に向かった芝野が一気にリードを奪った。中央の大場にも回り、右下がコウになるものの、コウが決着した時点では黒勝勢だという。その後、ほとんどつけ入る隙を与えぬ打ち回しで、225手まで、許を投了に追い込み、芝野が3期ぶりに十段に復位した。敗れた許は「全力は尽くしたとは思います。フルセットまではいきたかった」と言葉少なに語った。名人とあわせ二冠となった芝野は「第2局、第3局は苦しい碁だった。本局は運がよかった」とシリーズを振り返り、「これからもたくさんタイトルを獲りたい気持ちはあります。まだまだ強くならないといけないなと思う」と抱負を語った。さらに、昨年名人を奪還した時から、「『次に無冠になったらやめてやる』というくらいの気持ちでやっています」と、自信と力強い決意を明かした。

囲碁ニュース [ 2023年4月20日 ]

レジェンド対決を趙が制す

 60歳以上の棋士とテイケイ杯女流レジェンド戦ベスト4の棋士が参加する第2回テイケイ杯レジェンド戦(テイケイ株式会社協賛)の決勝戦が、4月8日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。決勝に勝ち上がったのは、趙治勲名誉名人と小林覚九段。過去に棋聖戦七番勝負を3期連続(第19期から21期)戦って以来の、両雄のタイトルをかけた決戦となった。序盤、趙が研究の手が繰り出すなど見所満載の本局は、互角のまま進行し、黒番の趙の実利対小林の模様という碁形となる。その白模様に趙が荒らしに入ると、得意のシノギで優勢を築きそのまま押し切る形となった。209手まで、趙が黒番中押し勝ちし、初優勝を飾った。また、通算獲得タイトル数を76とし、自身の持つ最多記録を更新した(2位は井山裕太本因坊の71)。

一力、本因坊戦挑戦者に

 井山裕太本因坊への挑戦権をかけた第78期本因坊戦リーグ(毎日新聞社主催)の最終一斉対局が、4月13日に東京都千代田区の日本棋院東京本院で打たれた。注目の一戦は、ここまで6連勝の一力遼棋聖と5勝1敗の芝野虎丸名人の直接対局。芝野が勝てば1敗で並び、両者のプレーオフに進むという状況だった。序盤は互いに研究が尽くされ、早いペースで進行した。黒番の芝野のやや無理気味な仕掛けから難しい局面となった。一力は「中盤の時点では、そんなに自信はなかった」と振り返る。だが、終始的確な打ち回しで芝野の攻めを振り切り、152手まで、一力が白番中押し勝ちを収め、2期連続の挑戦権を全勝で獲得した。一力は、前期の4連敗という苦い経験を「棋聖戦七番勝負にかけすぎ、充電しきれないまま本因坊戦に臨む形となってしまった。七番勝負を1年に何回も戦う体力が、あの時はついていなかった」と振り返る。そして「今期の本坊戦七番勝負は、自分にとってはかなり特別な意味を持つ戦いになる。盛り上げられるようにがんばりたい」と抱負を語った。今期でいったん幕を下ろすことになる「二日制・七番勝負の本因坊戦」という意味でも注目のシリーズとなる。第1局は、5月18、19の両日、静岡市の「浮月楼」で行われる。

上野女流名人誕生

 藤沢里菜女流名人に、上野愛咲美女流立葵杯が挑戦する博多・カマチ杯第34期女流名人戦(一般社団法人巨樹木の会、(株)トータル・メディカルサービス、(株)メディカルテンダー協賛)の挑戦手合三番勝負は、4月14日に第1局、17日に第2局が、いずれも東京都千代田区の日本棋院本院で打たれた。第1局は、終始手厚く優勢に打ち進めていた藤沢の初めてのミスを上野が突いて流れを変え、上野が力強く逆転勝利した。この勢いに乗った形で、第2局は序盤から上野が研究の布石で優勢を築き上げた。藤沢が地力を見せ、じわじわと追い上げ形勢は互角となったが、終盤に再び上野がリードを奪い、黒番中押し勝ちとした。上野は初の女流名人位を獲得し、女流立葵杯と合わせ女流二冠となった。また、女流5タイトルを全て一度は制し、女流グランドスラムを達成した。ヨセの勉強に力を入れてきたと語っていた上野は、成果を見事に結果につなげた。2局ともに終盤勝負を制し「昔だったら2局とも負けていた」と自信をのぞかせた。6連覇がかなわなかった藤沢は、「後半に反省点が多かったシリーズですが、自分の力は出し切れたと思います」と振り返り、「来期はリーグ戦からの戦いで(挑戦者までは)気が遠くなりますけど、しっかり力をつけ一局一局がんばっていきたい」と語った。

囲碁ニュース [ 2023年4月12日 ]

芝野、十段奪還にリーチ

 許家元十段に芝野虎丸名人が挑戦している大和ハウス杯第61期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第3局が、4月6日、長野県大町市の「ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん」で行われた。芝野先勝に続き、3月23日に打たれた第2局で許が1勝を返して、本局から「三番勝負」となる。序盤は互いに研究が深く、早いペースで進行した。中盤から白番の芝野が右辺の黒模様に仕掛けていき、激しい攻防に突入する。許が右上を華麗にサバいて右辺に大きな黒地を形勢したかと思われたが、芝野は虎視眈々と中央の黒の大石を狙っていた。許が悔やんだ薄い一手を機に、芝野が襲いかかりペースを握った。中央の黒の大石はコウになり、結局、中央と下辺の大フリカワリとなるものの、その後に白が右辺をセキにして、白の地合いでのリードがはっきりした。246手まで、芝野が白番中押し勝ちとなった。局後の許は「中央の黒はシノげそうだと感じていたのですが、思っていたよりも危なかった」と振り返った。芝野は「白のチャンスが多そうな碁でしたが、読み切れていたわけではなく、終盤で正しく打てていないところが多かったので、そこを修正し、集中して次に臨みたい」と語った。許が再び星を戻すのか、芝野のタイトル奪還となるのか。注目の第4局は、4月20日、東京都千代田区の日本棋院東京本院にて行なわれる。

本因坊戦、実施方式の変更

 日本棋院と関西棋院は、4月7日、毎日新聞社主催の「本因坊戦」の実施方式を変更することを発表した。優勝賞金は2800万円から850万円となり、棋戦序列は3位から5位に。タイトル戦は2日制の七番勝負から1日制の五番勝負となり、挑戦者の決定方式も、8人によるリーグ戦から16人によるトーナメント戦となる。七大棋戦の中で最も歴史ある1939年設立の本棋戦の大幅な縮小変更に、囲碁界には大きな衝撃が走った。時代の波を痛切に感じるとともに、新たな時代を創るきっかけにもなってほしい。

囲碁ニュース [ 2023年4月11日 ]

ジュニア本因坊 長尾くん優勝

 3月18日、19日の両日、第26回花まる学習会杯ジュニア本因坊戦の全国大会が東京千代田区の毎日ホールで行われた。今大会は小中学生の区切りが無く、各地区の代表32名が各5回戦の熱戦を繰り広げた。
 全勝対決は昨年優勝の樋口駿くん(中2)と長尾想太くん(小6)の二人。長尾くんが勝利し初優勝となった。小中学生が同じ舞台で戦うため中学生の方が多く上位を占める中、小学生での優勝となった。長尾くんは両親がともに学生時代に活躍した強豪である。
 ジュニア本因坊戦は第21回からこどもチャンピオン戦と二つにわかれたが、それ以降での小学生の優勝は初である。小学生では第1回の井山裕太3冠(当時小3)など過去に4人である。

こどもチャンピオン戦全国大会

 3月25日、26日の両日、京都府聖護院御殿荘においてボンド杯争奪第26回全日本こども囲碁チャンピオン戦全国大会が行われた。今大会は中学生、小学生が24名ずつそれぞれに分かれて5回戦を行う。
 小学生の部では1週間前にジュニア本因坊となった長尾想太くんを破った刈谷研くん(東日本)と女子で4連勝した野中優希さん(東日本)の全勝対決となり、刈谷くんが優勝を果たした。刈谷くんは小6で、低学年の頃は院生経験のある実力者である。夏の少年少女囲碁大会では全国準優勝だった。
 中学生の部では伊東信義くん(北海道)と坂下悠太くん(沖縄)という北海道、沖縄の全勝対決となった。結果は坂下くんの勝利し初優勝となった。

囲碁ニュース [ 2023年3月27日 ]

世界アマ 栗田さん代表

 3月18日、東京市ヶ谷の日本棋院幽玄の間において大関稔アマ名人と栗田佳樹アマ本因坊による世界アマチュア選手権日本代表決定戦一番勝負が行われた。現在のアマチュア囲碁界をリードする両者であるが、世界アマの日本代表はどちらも今まで経験がない。両者はアマ強豪が集まる研究会でもよく対局をする仲で、大会でも十数局対戦しているが成績はほぼ五分だという。
 本対局では、上辺で大関アマ名人が受けさせにいった手に対して栗田アマ本因坊が受けずに薄みを突き、流れを引き寄せた。局後、大関アマ名人は「受けさせてから戻るつもりだった。それほど厳しいとは思っていなかった」と後悔。その後に大関アマ名人に見落としがあり、栗田アマ本因坊が優勢になった。まだ難しい場面もあったが栗田アマ本因坊が手堅く勝利を収めた。
 栗田アマ本因坊は現在大学院生で就職活動中だという。「忙しい時期ではありますが、せっかくの機会なので充実して臨みたい」と世界戦への抱負を語った。大関アマ名人は「前回に続きこの場に臨んだが負けてしまった」と悔しさを見せた。今年全国大会で再戦を誓う場面も見られた。
 栗田アマ本因坊が参加する世界アマチュア選手権は2023年に中国で開催予定となっているが、日程や会場、リアル対局かオンラインかの詳細も決まっていない。また、世界アマ代表を決めるアマ竜星戦がコロナの影響で中止となっていたため、2年連続でアマ名人対アマ本因坊による決戦となったが、今年はアマ竜星戦が開催されるとのことである。

囲碁ニュース [ 2023年3月22日 ]

関、NHK杯初優勝

 第70回NHK杯テレビ囲碁トーナメント(日本放送協会主催)の決勝戦が3月19日に放映。関航太郎天元が一力遼棋聖に白番半目勝ちを収め、初優勝を決めた。関は第67回に出場した時は2回戦で敗れている。3年ぶり、2度目の出場となる今回は、逞しく成長し、一気に頂点までかけあがった。一力は9回連続出場のうち、7回決勝に進出し、2連覇(通算3回優勝)中と早碁の強さを示しているものの、3連覇はならなかった。序盤、一力が左上で思い切った仕掛けを見せたが、関に立ち回られリードを許した。その後は、解説の本因坊文裕(井山裕太本因坊)の言葉を借りると「いろいろなところでコウができて、どんどん変化していったのですが、基本的には白の関天元が巧みにリードを保って終盤に入っていった」。途中、普段はあまり見せない一力の厳しい表情も映った。とはいえ、一力の一流の粘り強さから、中盤以降、次第に差は詰まり、半目勝負となる。終盤、下辺の折衝で一力に逆転のチャンスがあったが、これを逃し、関が半目逃げ切った。「お互いの良さが出た決勝戦にふさわしい大熱戦」(井山本因坊)だった。一力は「残念な気持ちはありますが、自分なりに精一杯やった結果なので仕方ない」と無念のコメント。関は「大変な相手ばかりだったので、まさかこんな結果を残せるとは思わなかった。(賜杯が)すごく重みがあります。早碁棋戦は苦手としていて、それを課題にずっと勉強してきたので、一つこういう形として残せてうれしいです。今期のNHK杯ですごく成長できたと思います」と喜びを語った。

上野が女流名人戦挑戦者

 藤沢里菜女流名人への挑戦権をかけた、博多・カマチ杯第34期女流名人戦リーグが、全日程を終えた。7名によるリーグ戦・第7ラウンドのうち、3月13日に打たれた上野愛咲美女流立葵杯と謝依旻七段の一戦は、上野が優勝をかけ、謝が残留をかけた大一番。これに上野が勝利し、全勝でゴールして、4月14日から始まる三番勝負に名乗りをあげた。上野は「このメンバー相手に全勝できたのは自信になります。里菜先生と打てるのは楽しみ。ヨセを強化して臨みたい。三局打てるように頑張ります」と喜びと抱負を語った。3月16日には、最終局の仲邑菫女流棋聖と上野梨紗二段の対局が打たれ、仲邑が勝利。1敗で2位という結果に、仲邑は「(挑戦者となった)昨年よりリーグの成績は悪くならなくてよかったです。来年はもっと力をつけて挑戦者を目指したいと思います」、上野(梨)は3勝3敗で残留となったが「今期は最後、姉に助けてもらったようなものなので(もし、冒頭の対戦で謝が勝っていたら謝が残留。上野(梨)は、同星で順位も同じ牛栄子扇興杯と残留プレーオフを打つことになっていた)、来期は、姉の力を借りずに済むようにがんばります」と、それぞれ抱負を語った。謝、鈴木歩七段、小林泉美七段が陥落し、今期は世代交代が鮮明な結果となった。

囲碁ニュース [ 2023年3月7日 ]

十段戦開幕。芝野先勝

 3連覇を期す許家元十段に、芝野虎丸名人が挑戦する大和ハウス杯第61期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)が開幕した。両者の対戦成績は許から見て12勝13敗とほぼ拮抗している。注目の第1局は、3月7日に、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」にて打たれた。じっくり腰を落とした立ち上がりから、黒番の許が左辺の白模様を荒らしてリードを奪った。だが、中央の白を攻めつつ厚みを築く間に、芝野が右辺の大場に連打して形勢は逆転。許は下辺の白に迫り、判断が難しい局面となる。芝野は一度をコウを譲るが、白はまだ死にきっておらず、許が二度目のコウを仕掛けた際、誘いに乗らずに半分捨てたのが好判断だった。その後は、勝負手を繰り出し猛追する許に、芝野が冷静に応じて逃げ切った。266手まで、白番中押し勝ちとし、十段奪還に向けて好発進だ。芝野が連勝し王手をかけるのか、許が巻き返すのか。第2局は、3月23日に、滋賀県長浜市の「Hotel & Resorts NAGAHAMA」にて行われる。ちなみに、芝野は本局の翌日、棋聖戦第6局の対局地、熱海に向かった。かなりハードなスケジュールだったが、過去に張栩九段や井山裕太三冠も乗り越えてきた、トップ棋士の宿命でもある。

一力棋聖初防衛

 一力遼棋聖3勝、芝野虎丸名人2勝で迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第6局が、3月9、10の両日、静岡県熱海市の「熱海後楽園ホテル」にて行われた。第5局に快勝し、2日前の十段戦で勝利した芝野がそのまま勢いに乗るのか、一力がこの一番で決めるのか……注目を集めた頂上決戦は、意外な結末となった。序盤、下辺の攻防で芝野に判断ミスがあり、一日目の早い午後の時点で一力が大きなリードを奪う。その後も、一力は手を緩めず、最強に戦って芝野を投了に追い込んだ。芝野にとっては無念の一局となった。局後の芝野は「このシリーズは、内容的にミスが多く、苦しい碁も多かったので、結果は仕方ない……実力不足だったと思っています」と静かに語った。これまで他棋戦でも「防衛」経験のなかった一力には、大きな成果となった。局後「結果出せたことにホッとしています。どの碁も紙一重の勝負でした。第4局に勝てたことが、シリーズの流れとしても大きかったと感じています」と振り返った一力。数日後に改めて取材した際は「皆さんにおめでとうと言われ、ようやく実感がわいてきました。今回の防衛は、大きな目標に向かっての通過点で、これからが大事だと思っています」と語った。

囲碁ニュース [ 2023年3月7日 ]

芝野、一力棋聖に1勝を返す

 一力遼棋聖が、防衛にあと1勝として迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が、3月2、3の両日、千葉県勝浦市の「三日月シーパークホテル勝浦」にて行われた。挑戦者の芝野虎丸名人は、対局前に語った「(1勝3敗という)星は気にせずに」という言葉どおり、落ち着いた打ち回しを見せ、黒番中押し勝ちで1勝を返した。一日目は、右下の難解な攻防を、両者の見事な応酬で互角に分かれる。その後、一力が左下に強気に仕掛け、芝野が「ならば」と応戦したところで、一力が封じた。二日目に入り、封じ手以降は、白番一力の打つ手が難しく、芝野が自然に打ち回しながらポイントを重ねていった。左上で芝野が生きる前に放った様子見が、一力の読みになかった手だったようだ。これに焦りを覚えた一力は、勝負手を放った。この手で我慢して普通に応じていれば、白優勢ながらまだまだ勝負の行方はわからなかったという。一力の勝負手はやや無理気味で、これを自然に咎めた芝野が、その後の一力の猛攻もかわして決着をつけた。「判断でまずいところが出てしまった」と反省した一力は「切り替えて次局に臨みたい」と語った。第6局は、3月9、10の両日、静岡県熱海市の「熱海後楽園ホテル」にて行われる。

崔精が初優勝。上野(愛)は3位

 「SENKO CUPワールド碁女流最強戦2023」(センコーグループホールディングス株式会社特別協賛)が、3月3日から5日に渡り、東京都江東区の「ホテル櫂会」にて対面式で開催され、韓国の崔精九段が、中国の周泓余六段との決勝戦を制し、初優勝を飾った。崔は「史上最強の女性棋士」と言われ、韓国国内の一般棋戦での活躍はもとより、昨年、三星火災杯世界囲碁マスターズでは、2回戦で一力遼九段を破った後も勝ち進み、女性棋士として初めて世界戦決勝に進出した衝撃が記憶に新しい。だが、第5回を数える今大会では、昨年も謝依旻七段に敗れるなど優勝経験がなかった。大会前日に同地で行われたレセプション・組み合わせ抽選の席で、崔はすべて日本語で「久しぶりにお会いできてとてもうれしいです。スポンサーの皆様、ありがとうございます。ですが、私はここを制覇しにきました。本当の私の力を見せたいと思います」とあいさつし、有言実行した。日本勢は、昨年の第7回扇興杯女流囲碁最強戦(同株式会社特別協賛)のベスト4に勝ち上がったメンバーが出場した。藤沢里菜六段は初戦で崔に敗れ、仲邑菫三段は準決勝で崔に惜敗。牛栄子四段は1回戦で、上野愛咲美四段は準決勝で、それぞれ周に敗れた。昨年優勝した上野は、仲邑を降し、三位に入賞し「また来年決勝に進出したい」。仲邑は「強い先生とたくさん打て、勉強になった。(崔九段に勝つまでは)まだまだ遠いです」と話した。崔は、対局時の厳しい表情とは一転、終始穏やかな笑顔で「優勝できてとてもうれしい。どの碁も難しかったが、昨日の仲邑菫三段との対局はとても思い出深い。対局の中で悪い流れの状況もあり、全体的にきつい試合でした」と語った。

囲碁ニュース [ 2023年2月28日 ]

囲碁AⅠの弱点が露呈

 イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙が、2月18日、アメリカのアマチュア、Kellin Pelrine氏が、囲碁AI「KataGo」を圧倒したと報じ話題になっている。ITベンチャーの「FAR AI」社が、「KataGo」と自社開発のAIとを百万回対戦させて見つけた攻略法を用いたという。この報だけを耳にすると、人間の囲碁の力がAⅠを上回ったと思う方がいるかもしれないが、そうではない。「元々、AIは死活が苦手だということは棋士はみんな知っていました。それが、今回顕在化しただけ。今回の攻略法も氷山の一角かもしれません。ですから、囲碁界よりもAI界の大ニュースです」と、AIに詳しい大橋拓文七段は語る。今回発見された「攻略法」はさほど難しくはないが、「KataGo」以外の全てのAIにも通用する。だが、いわゆる「悪い手」を何手も打つ手法なので、AIを混乱させることはできるものの、人間には全く通用しない。「ただし、AI界にとっては大問題でしょう」と大橋七段。「解決には2種類あり、根本的に死活を理解させることができればいいのですが、すごく技術革新がないとけっこう厳しいと思います。もう一つは応急処置ですが、『悪い手』によって負けたデータを大量に与え、これでは負けると認識させる方法しかないはずで、そうなると、『悪い手』の評価値が上がり、AIの棋力としてはすごく弱くなると思うんです」。今後のAI開発チームの対応が、注目される。

囲碁ニュース [ 2023年2月24日 ]

世界学生王座戦 金承遠選手(韓国)優勝

 2月21日から22日にかけて、東京市ヶ谷の日本棋院において第21回世界学生囲碁王座戦が行われた。コロナ後、3年ぶりの開催となる。大会前日の20日には、レセプションも行われ各国の選手が交流と決意表明を行った。16名の選手が参加し、日本、韓国、中国、中華台北はそれぞれ2名(男女1名ずつ)が出場している。今回は中国のみオンラインでの参加となった。
上位四ヶ国が順当に勝ち上がるかと思われたが、タイのウィチリッチ選手が1回戦で韓国の羅選手(女性)、2回戦で中華台北の陳選手(男性)を破り注目を集めた。ウィチリッチ選手は他の国の選手たちとお祝いに出かけたそうである。
3回戦では日本の川口飛翔選手が中国を、韓国の金承遠選手がタイを破り、最終全勝対決となった。最終戦は地が足りないと判断した川口選手が稼いで頑張り、中央のシノギ勝負に賭けたが、金選手が適切に大石を仕留め優勝となった。川口選手は「頑張らずに中央に手を戻してヨセ勝負にしている方が最後までもつれたかもしれない」と判断を悔やんでいた。
優勝が韓国、2位が日本、3位が同率で中国と中華台北になった。3位の中国代表高選手は女性1位も併せて入賞となった。
日本の女性代表の田中ひかる選手は「2勝が目標だったので力はだしきれたかなと。普段は強い女性と打つ機会があまりないので良い刺激になった」
優勝の金選手は「代表として優勝出来てうれしい」と語った。

囲碁ニュース [ 2023年2月21日 ]

一力、故郷で3勝目

 一力遼棋聖の2勝、挑戦者の芝野虎丸名人の1勝で迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第4局が、2月16、17の両日、宮城県仙台市の「宮城県知事公館」にて行われた。仙台は一力の出身地ということもあり、大盤解説会場には、200人ものファンが集まり熱戦を見守った。黒番の一力が、最近は実戦例が少ない高い中国流を敷いてスタート。深い研究が予想されたが、おそらく芝野が研究の進行をはずし、右下の攻防で早くも白が優勢を築いた。だが、芝野に逸機の手があり、一力が機敏に好手で返してピンチを逃れる。互いに生きていない石がいくつもある難戦の中、一力が封じて一日目を終えた。二日目は、芝野が右下の白、続いて右辺の白を捨てて左辺一帯に巨大な白模様を広げ、黒のシノギ勝負の展開となる。「一手一手が難しい」と新聞解説の許家元十段は語り、AIの評価値も揺れ動き続けた。白には勝機が何度かあったものの「読み切れなかったので仕方ない」と芝野。「読み切れてはいなかったのですが」と振り返る一力が、難解な戦いを制して中押し勝ちを収めた。一力は、「地元で結果を出せてよかった」と安堵した様子だった。立会の山下敬吾九段は、ここまでのシリーズを「結果は一力さんの3勝1敗と傾いていますが、第3局を除いては、どちらが勝ってもおかしくない拮抗した勝負が続いています」と語った。一力が一気に防衛を決めるのか、芝野が巻き返すのか。注目の第5局は、3月2、3の両日に、千葉県勝浦市の「三日月シーパークホテル勝浦」にて行われる。

鈴木歩・山下敬吾ペアが優勝

 囲碁界のオールスターゲーム、第29回「プロ棋士ペア碁選手権2023」(公益財団法人日本ペア碁協会主催)が、2月11、12の2日間にわたり、東京都「恵比寿 ザ・ガーデンホール/ザ・ガーデンルーム」にて開催された。タイトルホルダーと賞金ランキング上位者から男女16名ずつが選ばれる本大会は、棋士の間でも「出場すること自体が難しい、夢の大会」と語られる。14年ぶりとなる開催会場には多くのファンが集まり、熱戦を見守った。また、併催イベントとして、1、2回戦に敗れた棋士たちによる「シャッフルペア碁対局」(12日)、第15回関東ジュニアペア碁大会(11日)も賑やかに開催された。 ペア碁ならではのドラマが次々と生まれる中、ベスト4に勝ち上がったのは、牛栄子扇興杯・余正麒八段ペア、鈴木歩七段・山下敬吾九段ペア、辻華二段・河野臨九段ペア、青木喜久代八段・大西竜平七段ペア。決勝には、鈴木・山下ペアと辻・河野ペアが勝ち上がった。初出場の辻は「出場が決まってから、河野先生の碁を並べ、今までにないくらい勉強した」という。大盤解説の趙治勲名誉名人と二十四世本因坊秀芳(石田芳夫九段)が何度も「強い!」と絶賛する活躍ぶりで、河野も「一人で打つより一貫した碁が打てた」と振り返る。対する鈴木・山下ペアは、「後半に息が合い」、3局全て逆転勝ち。決勝戦は「今度こそ負けを覚悟した」と鈴木が振り返るが、やはり、後半にじわじわと追い上げ、ついに相手のミスを捉えて大逆転勝利となった。鈴木は「これまで準優勝が6回もあるのですが、優勝は2回目。前回は張栩先生とペアでした。やはり四天王は永遠に偉大だと思います」と会場を沸かせた。山下は「先日母を亡くしまして…でもこの二日間は碁盤に向かったら集中でき、母も見守ってくれていたんじゃないかなと思います。本当に優勝というものからすごく遠ざかっていまして、このタイミングで優勝できたというのは本当に自分にとってすごくうれしい」と、涙ぐみながら喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2023年2月7日 ]

一力棋聖、会心譜の2勝目

 一力遼棋聖、挑戦者の芝野虎丸名人が1勝ずつあげて迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第3局が、2月3、4の両日、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われた。序盤、白番の一力が、上辺と左下で、研究の手を打ち下ろす。その左下で芝野が仕掛け急戦となった。下辺に波及した戦いの中、芝野が読み落とした一力の好手があり、フリカワった結果は、一見、白の大石を取った黒が有利のようだが、先手を取った白がリードを奪った。白が左上に先着すると、左辺一帯の白模様が雄大になり、さらに黒のシノギが難しい。2日目も、芝野は必死に活路を求めたが、一力が最強に的確に応じて黒を仕留め勝負が決した。134手まで白番中押し勝ち。15時53分という早い終局となった。シリーズ2勝目をあげた一力は、左上の黒を取りかけに向かった局面を、「白も難しくて、よくわかってはいなかったのですが、直接的にまずい図は見えなかったので、やってみようかなと思いました」と振り返り、「七番勝負はまだまだ先が長いですので、また、2週間後に向けてしっかり準備したいと思います」と語った。芝野は「(下辺の攻防で)一手だけうっかりしてしまいまして、下辺の分かれははっきりまずく、形勢としてはだめにしてしまった」とし、左上のシノギについても「チャンスがなかった」と完敗を認めるコメント。だが「本局は少しまずい内容になってしまいましたけど、また切り替えて、準備して、次もがんばりたいと思います」と抱負を語った。第4局は、2月16、17の両日、宮城県仙台市の「宮城県知事公館」にて行われる。

仲邑、史上最年少タイトルホルダー

 多くの棋士、報道陣が見守る中、歴史が塗り替えられた。第26期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)三番勝負の第3局が、2月6日、東京都千代田区の日本棋院にて行われ、挑戦者の仲邑菫三段が上野愛咲美女流棋聖に白番中押し勝ちを収めた。13歳11カ月でのタイトル獲得は、藤沢里菜女流本因坊の持つ15歳9カ月を大きく更新する史上最年少記録となる。仲邑は昨年、女流名人戦三番勝負に挑戦し藤沢にストレート負け。扇興杯女流囲碁最強戦の決勝では勝勢となりながら牛栄子女流扇興杯に逆転負け。3度目の挑戦で念願の初タイトルを奪取した。序盤から戦いの連続だった。一手30秒という短い考慮時間の中、右下の攻防は上野が読み勝ち、黒が大優勢を築く。だが、その後の中央戦がコウになると、コウ争いの中、仲邑が逆転。読みの力と形勢判断力が問われる難戦を、最後は黒の大石を生かして、大所に連打し勝利を確かなものにした。「ずっと戦いの碁で読み合いの勝負でしたが、集中できた」と仲邑。10歳でプロ入りした当初「中学生までにタイトルを獲りたい」と話したことは「覚えてません」と笑い、「でもタイトル獲得は大きな目標だったので、こうしてタイトルを獲れたことは自信になりました」と喜びを語った。昨年の扇興杯決勝で敗れてからは「後半に失速したので、後半の勉強をしました。2局目で最後に半目勝てたときは、少し後半が強くなったのかなと思いました」とシリーズを振り返り、「藤沢先生、上野先生に実力的に追いつくにはまだだいぶ時間がかかると思う」と謙虚に話しつつも、佳境に入っている女流名人戦の挑戦者争いを「楽しみです」と自信をのぞかせ、「世界で戦える棋士になりたい」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2023年1月31日 ]

仲邑大逆転で最終局へ

 上野愛咲美女流棋聖が先勝して迎えた第26期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)三番勝負の第2局が、1月26日、東京都千代田区の日本棋院で打たれ、挑戦者の仲邑菫三段が大逆転の末、白番半目勝ちを収めた。第1局の序盤で優勢を築かれた上野は、本局では徹底した実利作戦を決行した。一方、第1局の中盤以降、上野の「ハンマー」攻めを受け大石を取られた仲邑は、戦いになるのを「警戒しすぎ」、厚く打ったものの「甘すぎて相当悪かった」と振り返る。上野はさらに白の勢力圏だった左辺、左下を荒らし、はっきり優勢を築いた。だが、ここから仲邑が追い上げた。右辺で巧みに石を捨て中央に地をつけると形勢は互角に。その後も最善を尽くしヨセで抜き去った。敗れた上野は「楽観が全て。安全運転ならいいのですが、ただの緩み」と敗因を語って反省しきり。仲邑は「自分の力を信じて打てました」と笑顔を見せ、「第3局は勝ち負けよりも、自分の打ちたい手を打って、持っている力を出せるようにがんばりたい」と語った。後日の情報によると、上野は「局後に(3時間以上)詰碁をして、親友の茂呂有沙二段とご飯を食べたら(敗戦は)ふっきれました」とのこと。この前向きな上野が3連覇を成すのか、仲邑が史上最年少のタイトルホルダーとして歴史に名を刻むことになるのか。注目の第3局は、2月6日、東京都千代田区の日本棋院にて行われる。

大激戦を制し、芝野が十段戦挑戦者に

 許家元十段への挑戦権をかけた激戦に次ぐ激戦についに決着がついた。第61期大和ハウス杯十段戦(産経新聞社主催)の挑戦者決定戦が、1月30日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。芝野虎丸名人は、準決勝で相性のよい余正麒八段を破り、本因坊文裕(井山裕太本因坊)は総手数364手で整地をすると盤上が全て埋め尽くされるという大激戦の末に一力遼棋聖を降して、それぞれ決勝に勝ち上がってきた。棋聖と名人を失冠し序列3位となった井山は、一力戦に続いての上京。ネットで観戦できる時代になってから対局場での観戦棋士が減る傾向にある中、井山人気からだろう、報道陣だけでなく大勢の棋士が日本棋院に集まり決戦を見守った。序盤は黒番の井山が実利を先行し優勢を築いたかに見えたが、右辺一帯の白模様がまとまると、検討陣は「白持ち」。AIの勝率も「白90%」を越える数字を示した。だが、芝野の上辺の荒らしに井山が抵抗し、難解な「二段コウ」に。AⅠの数字は乱高下し、一時は「黒99%」を示した。互いに秒読みの中、最後に抜け出した芝野が白番3目半勝ちを収めた。芝野は「終盤はずっと負けを覚悟していた。勝てたと思ったのは本当に最後の最後」と熱戦を振り返った。3連覇を目指す許と三期ぶりの復位を期す芝野の五番勝負は、3月下旬に開幕の予定だ。

囲碁ニュース [ 2023年1月24日 ]

芝野名人、タイに戻す

 一力遼棋聖が先勝して迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第2局が、1月20、21日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて行われ、挑戦者の芝野虎丸名人が難戦を制し白番中押し勝ちとした。序盤は、黒番の一力がやや優勢に打ち進め、左上の白にコウの手段を残した。ただ、「一力さんは後悔しているのではないか」と検討陣が推察する一手があり、コウを仕掛けにくい状況となる。左上を保留し、黒が右辺に仕掛けたところで、芝野が封じ、一日目を終了した。封じ手は最強の応手で、ここから芝野の反撃が開始された。左上のコウを残したまま、右辺もコウになり、右辺の攻防が下辺、中央へと波及していく超難解な戦いが延々と続いた。下辺の白と左下の黒を取り合う大フリカワリの後も形勢はほぼ互角だったが、一力はやや悲観していたようだ。その後の下辺の攻防で最強手を繰り出し続ける中、わずかなミスが出て、これを捉えた芝野がリードを奪い、左上の白が生きる間に黒が損をし、差が開いたという。これで、スコアは1勝1敗のタイとなった。一力は「次まで2週間あくので、切り替えてがんばりたい」、芝野は「1局目に続いて本局もあまり内容はよくなかったと思うが、次までに時間があるので、しっかり準備して臨みたい」とそれぞれ抱負を語った。第3局は2月3、4の両日に、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われる。

女流棋聖戦開幕。上野が白星発進

 21歳の若きタイトルホルダー、上野愛咲美女流棋聖に、13歳の仲邑菫三段が挑戦する第26期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)三番勝負の第1局が、1月19日、神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」にて行われた。上野は昨年も、全棋士で勝ち星1位(54勝20敗)、広島アルミ杯若鯉戦二連覇、SENCOCUP優勝など目覚ましい活躍を見せたが、仲邑の急成長ぶりもこれに劣らない。仲邑を誘って研究会を主宰している一力遼棋聖は「昨年の4月くらいまでは、打っていても負ける感じはしなかったのですが、最近はずっといい勝負という内容が多い。国内の10代の棋士では菫ちゃんが強くなった。この一年でさらに」と語っている。さて本局は、序盤は仲邑が優勢を築いた。左下の折衝で上野が悔いた手順前後に的確に応じ、白の形を崩しつつ、右辺の黒模様を盛り上げる。だが、ここから上野が挽回した。右辺の黒のヒラキにツケ、仲邑を悩ませた後、巧みな打ち回しでポイントを上げ、上辺の白模様も盛り上げた。仲邑が白模様に臨み勝負をかけたが、最後は「ハンマー」の異名をもつ上野らしく、絡み攻めから黒の左上の大石を仕留めて勝負を決した。上野が一気に防衛するのか、仲邑が巻き返すのか。注目の第2局は1月26日に東京都千代田区の日本棋院にて行われる。

囲碁ニュース [ 2023年1月18日 ]

東日本大学OB・OG 慶應4連覇

 1月15日、東京市ヶ谷の日本棋院にて東日本大学OB・OG対抗戦が行われた。コロナ後3年ぶりの開催となり、33チームが参加となった。本大会は各校13人で1チームとしているが、大学によっては人数が集まらないところもあるため5人制のブロックもある。13人制ではAブロックにこれまでの実績により上位12チーム、Bブロックに下位13チームとして、5人制が8チームとなった。
どこも現役の頃やOB戦でも伝統の一戦といったところが多かったが、Aブロックでは3連勝同士で慶応義塾大学と早稲田大学の決勝となった。これまで3連覇している慶應も、打倒慶應を目指している早稲田も若手が中心となった。ともにコロナにより中止されていた3年の間に卒業したメンバーが多く、慶應では坂倉健太さんや中島光貴さん、早稲田では星合真吾さんや石田太郎さんといった現役時代に活躍したメンバーである。早慶戦は7-6で慶應が制し4連覇となった。3位は東京大学となった。
Bブロックではともに圧倒的な成績で勝ち上がった東北大学と日本大学による全勝決戦となった。東北大学は主将の平岡聡さんを中心にしたチームで、最終戦では平岡さんが日本大学の主将石村竜青さんに半目勝ちするなどして優勝となった。2位は勝ち星の差で北海道大学となった。3回戦で北海道大学は平岡さん破るなど上位を打ち抜いたが9-4で東北大学の勝利となった。3位が日本大学。
5人制のCブロックでは大関稔さんを主将にした専修大学が全て5-0の完全優勝を果たした。メンバーもトップクラスが多く、13人集まれなかったのが惜しいと言える。

囲碁ニュース [ 2023年1月16日 ]

棋聖戦開幕。一力棋聖先勝

 新春の大舞台、第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕した。この舞台に10年出場し続けていた井山裕太本因坊にかわり、一力遼棋聖に芝野虎丸名人が挑戦する新時代の始まりでもある。注目の第1局は、1月12、13の両日に、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われた。握って芝野が黒番。序盤は研究熱心な両者らしく早いペースで打ち進められたが、右辺の攻防が険しくなるとペースダウン。互いに長考が続き、芝野が左上に戦線を拡大させたところで、一力が封じて一日目が終了した。新聞解説の林漢傑八段は「決着のついていない戦場が各所に残っており、読みと判断が難しい局面です」と評した。二日目に入ると、芝野の仕掛けに的確に冷静に応戦しながら一力がリードを広げていった。芝野は中央の白に狙いを定め、一力が「どうぞ取れるものなら取ってください」と応じ勝負所に入った。大盤解説会場では、大橋拓文七段らが「今の黒の手は手筋。白が危ないのではないか」と大逆転をほのめかし、控室でも、立会の小林光一名誉棋聖ら検討陣が「やはり、難戦になるんだねえ」と見守った。コウが絡む難解な局面だったが、持ち時間を残していた一力がしっかり読み切ってしのぎ、勝負を決した。大事な初戦を制した一力は「封じ手のあたりは自信がなく、中央の攻防も読めていなかった。実戦で残っていたのは運がよかったと思います」と振り返り、「気を引き締めてやっていきたい」と抱負を語った。芝野は「(二日目の途中から)チャンスを待つ打ち方を選んだのですが、チャンスはなかった気がします」。その後、大盤解説会場に移動し、ファンの前では「七番勝負は6回目ですが、今日で第1局は6連敗ということで、いつものことと切り替えて頑張りたい」と会場の笑いを誘っていた。16日、一力は井山との十段戦の本戦準決勝、芝野は関航太郎天元との碁聖戦本戦1回戦が組まれている。共にタイトなスケジュールの中、第2局は1月20、21日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2023年1月3日 ]

上野、2年連続最多勝

 あけましておめでとうございます。
 日本棋院は、昨年2022年の公式対局を12月26日に終え、28日、年間最多勝、最多対局、勝率1位、連勝記録1位の棋士を発表した。最多勝は、上野愛咲美女流立葵杯(54勝20敗)が対局数と共に2年連続で1位となった。最多勝、対局数いずれも、2位は藤沢里菜女流本因坊(51勝22敗)、3位は仲邑菫三段(48勝22敗)、4位は一力遼棋聖(47勝21敗)、5位は芝野虎丸名人(44勝19敗)という結果で、上位3名を女性棋士が占めた。3名は、一般棋戦の他に女流棋戦、若手棋戦が加わるアドバンテージがあるものの、活躍ぶりは特筆に値すると共に、今年のさらなる活躍にも期待がかかる。12月26日に、碁聖戦本戦1回戦で伊田篤史九段に白番中押し勝ちし、昨年最終戦を白星で飾った藤沢は「過去最多の対局を打たせていただき、1年を通して精一杯頑張れたと思う。体力面、精神面の課題も感じ、今後少しずつ高めていき、目の前の一局一局に丁寧に取り組み、一歩でも前進していきたい」と語った。勝率1位は小池芳弘七段(.7593)。小池は自身のツイッターで「今年は大事なところで負けが続きましたが、ちょっとだけ報われた気分です」と初の1位にコメントした。連勝記録は、16連勝した許家元十段が初の1位となった。

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