日本囲碁ニュース
日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。
囲碁ニュース [ 2017年12月22日 ]
年末回顧
今年は井山裕太に始まり井山裕太に終わったと言っても過言ではない。昨年名人を奪われ七冠から六冠に後退した井山だったが、保持しているタイトルを全て防衛。さらに名人リーグ全勝で挑戦者に躍り出ると高尾紳路九段を4勝1敗で下して二度目の七冠に返り咲いた。国内での存在はまさに圧倒的。各棋戦突出した才能を持つトップ棋士がそれぞれ死力を尽くして挑んだが、井山はことごとく退けた。特に驚くべきはその内容だ。碁は勝負事である以上、勝つことを目標に打たれるわけだが、井山の場合は少し違うように思う。「勝つ」ではなく「善く勝つ」とでもいうのだろうか。美学と呼ぶには勝負に即しているが、だからといって勝ちにこだわり過ぎない絶妙なバランス感覚で、独創的かつ美しい棋譜を残している。
普通は七冠達成が頂点だ。しかし井山は究極の目標を達成した後の方がむしろ強くなっている。二度目の七冠を成し遂げた後、主要国際棋戦であるLG杯の準決勝で世界ナンバー1と言われる柯潔九段を破り決勝に進んだ。来年には謝爾豪五段との決勝戦三番勝負が行われる。頂点を極めてもなお成長し続ける井山がこの先どんな未来を描くのか楽しみでならない。
若手の活躍も目立った。一力遼八段は今年、王座、天元、棋聖の挑戦権を獲得。十段の本戦トーナメントでもベスト4に残っており、ひょっとすると井山と4棋戦連続二十二番勝負を行う可能性がある。王座、天元はストレート負けを喫したが、この番勝負で飛躍的に成長し、井山を脅かす存在になる可能性は大いにある。他にも本因坊、名人でリーグ入りを果たした芝野虎丸七段、阿含桐山杯で初優勝を飾った六浦雄太七段など、才能ある十代棋士が次々と出てきている。
女流は謝依旻六段と藤沢里菜三段の戦いが熱かった。謝が持っていたタイトルを藤沢が次々と奪い一時は世代交代かと思われたが、女流本因坊戦で謝が勝負強さを発揮してタイトルを奪取。2強時代の到来を強く印象付けた。
昨年囲碁界を震撼させたAI囲碁ソフトの発展も続いている。特に人間の棋譜を一切入れずに自己学習だけで強くなったアルファ碁ゼロの登場は衝撃的だった。アルファ碁ゼロはわずか3日で李セドルと戦ったアルファ碁のレベルに到達し、40日後には100戦全勝したという。AIの底知れない可能性が明らかになった一方、人間とAIが協力する試みも盛んに行われている。3月にはワールド碁チャンピオンシップに国産のAI囲碁ソフト、DeepZenGoが出場し、世界のトップ棋士と肩を並べて戦った。また、世界ペア碁最強位戦2017にともなって親善と研究を兼ねて行われた、DeepZenGoと人間のペア(人間はペアで1人とカウントする)によるペア碁は、AIと組んでいる人間同士の相談を許可しその模様を中継することで、AIと人間がいかにチームプレーを行うかということに焦点を当てたユニークなもので、AIと人間が共生する未来を想像する上で示唆に富んだものだった。
囲碁ニュース [ 2017年12月21日 ]
アマチュア大会回顧2017
国際アマチュア・ペア碁選手権大会で18年ぶりの日本勢優勝など嬉しいニュースがあった今年のアマチュア碁界は若手の活躍が目立った。
三大大会から振り返ろう。アマ名人の大関さんは20代、学生囲碁界のトップにもなっている実力者である。アマ本因坊では高校生の林隆羽さんが17歳で史上最年少優勝を果たした。世界アマ全国優勝の村上深さんは30代であるが、今年の三大大会では最年長優勝者である。ベスト4を見てもアマ名人(20代4人)、アマ本因坊(30代2人、20代1人、10代1人)、世界アマ(30代1人、20代2人、10代1人)と40代以上がいないのである。プロ碁界でも若手が活躍しているが、アマ碁界にも若い風が吹いている。
三大大会以外の大会を見ても10代、20代の活躍が目立つ。三大大会優勝の3名もそうであるが、最近まで院生としてプロ修行をしていた(または院生ではないが外来でプロ試験を受けていた)人が多い。これは一般の大会のみではなく、学生囲碁界や高校生の大会でもそうである。プロの道を断念し、アマチュアの大会で活躍している人達が増えているのである。それだけプロを目指す人々の層が厚いということであろうか。
そんな若手活躍の中、アマ竜星戦で40代の諸留康博さんが優勝した。若手の活躍は喜ばしいことだが、来年はベテランの巻き返しなるか。世代を超えた熱戦を見たいと思う。
囲碁ニュース [ 2017年12月6日 ]
国際アマチュア・ペア碁選手権大会 日本18年ぶり優勝!
第28回国際アマチュア・ペア碁選手権大会が12月2、3日、東京都千代田区の「ホテルメトロポリタンエドモント」で行われ、世界21カ国・地域32組64人が、ペア碁の世界一を競った。
4回戦のリーグ戦。4連勝で優勝決定戦に進出したのは日本 関東甲信越ブロック代表の宇根川万里江さん・瀧澤雄太さんペアと韓国の柳昇希(リュウ スン ヒ)さん・李相斌(イ サンビン)さんペアだった。黒番の韓国ペアがリードする局面が続いたが、日本ペアが必死に食らいつき、一時は形勢が逆転。その後、再び韓国ペアが優勢になったものの、両ペアとも時間がない中で難しいヨセ合いに入り、最後は韓国ペアの時間が切れた。
本大会は韓国が11連覇しており、日本は1999年の第10回大会以来、優勝から遠ざかっていた。今回の優勝は実に18年ぶりとなる。
宇根川さんは「(目標を聞かれたら)優勝したいと言ってはいたけれど、本当に優勝できるとは思っていなかった。夢のようです」と喜び、瀧澤さんは「完全に負けの碁だったし、悪い手をいっぱい打った」と反省しつつ「勝てたことは素直に喜びたい」と語った。
二人は同学年でともに早稲田大学囲碁会に所属していた。今回は学生時代以来、15年ぶりにペアを組んで出場。息の合ったプレーで日本を久しぶりの優勝に導いた。
囲碁ニュース [ 2017年12月4日 ]
謝 女流本因坊返り咲き
謝依旻女流棋聖が藤沢里菜女流本因坊に挑戦する第36期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負第5局が11月29日、日本棋院で行われた。本シリーズは両者一歩も譲らず、第5局までもつれこんだ。
序盤から難しい戦いの碁になった。中盤、白番の藤沢が優勢になったが、謝が決め手を与えず相手のミスを誘い逆転。見応えのある激闘の結果は黒番謝の8目半勝ちとなった。
本局は難しい局面が多く二転三転した上に終局も19時59分と遅かった。局後謝は「全部苦しい碁だった。(タイトルを取れたのは)運が良かった」と語ったが、その顔は憔悴しきっていた。一方藤沢は心の整理を付けていたかのように「ミスが多く反省が多い碁だった。それも含めて実力だと思う。力が足りなかった」と淡々と振り返った。
謝、藤沢が初めて女流本因坊戦挑戦手合を争ったのは2015年。当時女流本因坊だった藤沢に謝が挑戦した。結果は3勝2敗で謝の勝利。翌年は藤沢が3勝1敗で奪い返した。
他棋戦でも両者の覇権争いは加熱している。昨年、謝は5つある女流棋戦、女流本因坊、女流名人、女流棋聖、女流立葵、女流最強位を独占したが、今年に入って藤沢に次々とタイトルを奪われ、一時は女流棋聖一冠に後退。今回、女流本因坊に返り咲いたことで、謝は女流本因坊、女流棋聖の二冠となった。謝、藤沢で女流タイトルを二分する二強時代。二人でどのような歴史を作っていくのか興味は尽きない。
囲碁ニュース [ 2017年11月30日 ]
杉内雅男九段逝く
11月21日、現役最高齢棋士、杉内雅男九段が肺炎のため97歳でこの世を去った。
杉内九段は囲碁一筋に打ち込み、囲碁の神様といわれ多くの棋士たちから尊敬されていた。坂田栄男(故、二十三世本因坊)、藤沢秀行(故、名誉棋聖)といった同世代の棋士とともに戦後の囲碁界を牽引した。昭和29年、33年に本因坊戦で二度の挑戦(共に高川秀格本因坊)、38年には囲碁選手権の優勝といった実績がある。
盤上のみならず、囲碁に向かう姿勢も厳しいことで知られ、院生師範のときは多くの院生たちからも恐れられた存在でした。遅刻をすれば対局中であろうと叱れ、「おかえりなさい」の一言で家に帰されたようだ。遅刻だけでなく、昼休みで悪ふざけをして遊んでいた院生が見つかると「おかえりなさい」ということになる。盤上の技術も必要だが、こうした院生たちの心構えに厳しい先生だったようだ。しかし、良い手を打ったときはきちんと褒める。普段は厳しい杉内九段に褒められると大きな自信になったという。
高齢になれば多くの棋士が引退していく中、杉内九段は生涯現役を通された。その囲碁に向かう情熱は棋士の鑑であり、その死は非常に残念である。
杉内九段のご冥福をお祈りしたい。
囲碁ニュース [ 2017年11月20日 ]
井山、中国最強棋士を破りLG杯決勝へ!
第22回LG杯 朝鮮日報 棋王戦の準々決勝と準決勝が、11月13日、15日に東京・日本棋院本院で行われた。今回久しぶりの日本開催となった背景にはベスト8に日本の井山裕太九段が残ったことが挙げられる。七冠を保持し、国内では敵なし状態の井山が国際戦でどう戦うかに注目が集まった。
井山は準々決勝で楊鼎新六段に白番中押し勝ちし、準決勝に進出した。LG杯ではベスト4が出そろった時点で、抽選会を行う。抽選会は井山、柯潔九段(中国)、江維傑九段(中国)、謝爾豪五段(中国)で行われ、組み合わせはそれぞれ井山―柯、江―謝に決まった。柯は世界ランク1位と言われる最強棋士。準決勝に向け、井山は「柯潔さんは最も厳しいが最も打ちたい相手。自分がどれだけやれるか、結果を恐れずに自分らしく戦いたい」と意気込みを語った。
準決勝当日、大盤解説会には多くのファンが集まった。井山の黒番。中盤、柯が一瞬の隙を突いて黒石を取り込み、白が優勢に立ったが、井山が気迫あふれる攻めで逆転した。その後、柯の猛追を受け一瞬ヒヤリとする場面もあったが、最後は振り切り中押し勝ち。井山は「相当負けない形勢になったと思ったが、そこからなかなか決めさせてもらえなかった。反省点はあるが、勝ち切れたことは自信になったし、今回の勝ちは色々な意味で大きな財産になった」と振り返った。
もう一方の山では謝五段が勝ち上がった。謝五段は19歳ながら何年も中国のトップ棋士だけが出場できる甲級リーグに在籍している強豪だ。決勝三番勝負は来年2月に行われる。井山は決勝に向けて「求めていた舞台なので、あとはやるだけです」と力強く語った。
準決勝 | ||
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勝者 | 結果 | 相手 |
▲井山裕太九段(日本) | 中押し | 柯潔九段(中国) |
謝爾豪五段(中国) | 中押し | ▲江維傑九段(中国) |
準々決勝 | ||
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勝者 | 結果 | 相手 |
江維傑九段(中国) | 半目 | ▲李元栄七段(韓国) |
柯潔九段(中国) | 中押し | ▲申眞諝八段(韓国) |
井山裕太九段(日本) | 中押し | ▲楊鼎新六段(中国) |
謝爾豪五段(中国) | 中押し | ▲崔哲瀚九段(韓国) |
囲碁ニュース [ 2017年11月14日 ]
一力VS井山 十七番勝負!
第42期棋聖戦の挑戦者決定トーナメント変則三番勝負第1局が11月9日に行われ、Sリーグ1位の一力遼七段がSリーグ2位の山下敬吾九段を白番中押し勝ちした。変則三番勝負ではリーグ上位者に1勝のアドバンテージがあるため、2勝0敗で一力の挑戦が決定。三大棋戦初挑戦を決めると同時に八段に昇段した。
一力は王座戦、天元戦で挑戦中のため、棋聖戦を合わせると3棋戦連続で井山に挑戦することになる。実に十七番勝負。同カードがこれだけ続くのは異例のことだ。
現在、王座戦は0勝1敗、天元戦は0勝2敗と、一力にとっては厳しい戦いが続いている。井山ショックとでも言おうか、井山との番勝負で一時的に不調に陥る棋士は多い。高い壁にぶつかって、これまで積み上げてきたものが根底から揺さぶられるのかもしれない。一力も直近で5連敗しており、不調が心配されていた。本局でも序盤から苦戦が続き、一時は絶望的な形勢だったが、粘りに粘って最後に山下のミスを引き出した。
苦しい中で挑戦をもぎ取った意味は大きい。今は井山がリードしている十七番勝負だが、一力の勝負強さは本物だ。棋聖戦七番勝負第1局は1月18、19日に行われる。進行中の王座、天元と合わせて、絶対王者井山に対し一力がどう戦うのか注目だ。
囲碁ニュース [ 2017年11月1日 ]
正岡子規 殿堂入り
10月24日、市ヶ谷の日本棋院において囲碁殿堂表彰委員会が開催され、第14回囲碁殿堂入りに正岡子規(1867~1902年)が選ばれた。正岡子規は愛媛県松山市出身の明治に活躍した俳人である。子規は平成14年には野球の殿堂入りもしており、二つ目の殿堂入りとなった。
子規は囲碁好きで、多くの俳句、漢詩、随筆などに囲碁に関する作品を残しており囲碁普及に貢献したとして今回の殿堂入りとなった。また、今年が子規の生誕150年になり、記念事業が話題になったことも評価の対象となった。
多くの句を残した子規だが、囲碁の実力はそれほどでもなく現在の級位者でも相当なヘボ碁であったという。子規は結核を患い、晩年は根岸の子規庵で療養生活を送りますが、敷きっぱなしの寝床で門人と碁を打ったり、詰碁をしていたというはなしもある。
子規の句をいくつか紹介しておく。
下手の碁や四隅かためる日永哉
勝ちそうになりて栗剥く暇かな
碁にまけて厠に行けば月夜かな
昼人なし碁盤に桐の影動く
真中に碁盤据えたる毛布かな
囲碁ニュース [ 2017年10月26日 ]
内閣総理大臣杯
10月22日、市ヶ谷の日本棋院に於いて第17回内閣総理大臣杯全国アマチュア団体囲碁選手権東京大会が行われ、多くの愛棋家たちが腕を競った。
本大会は、3人1チームの団体戦で、普段は碁敵である仲間や友人、会社の同僚や学校の先輩後輩、家族など様々チームが参加していた。クラスも県代表クラスが集まる無差別クラスから級位者でも参加できるCクラスまで4クラスにわかれている。
その中でも無差別クラス優勝チームは12月に行われる大阪大会優勝チームとの決勝大会進出があり一層白熱した戦いが繰り広げられた。
全勝同士で決勝に進出したのは初台碁聖選抜と洪道場A。初台碁聖選抜は元アマ本因坊の瀧澤雄太さんが主将を務めるチームで、全国大会常連のメンバー構成である。洪道場Aはプロ棋士の洪清泉三段が主宰する囲碁道場で多くのプロ棋士を輩出している。結果は3-0で初台碁聖選抜が勝利し見事優勝を飾った。また、全ての対局を3-0で勝利という完全優勝である。
初台碁聖選抜の名前では初優勝であるが、初台囲碁クラブとして過去にも優勝を果たしている。初台碁聖選抜の皆様には大阪チームとの決勝での健闘をお祈りする。
各クラス優勝は以下の通り
[ 無差別クラス ] 初台碁聖選抜
[ Aクラス ] NEC①
[ Bクラス ] 実幸会
[ Cクラス ] 東京都庁支部B
囲碁ニュース [ 2017年10月19日 ]
井山 七冠再び!
圧倒的としかいいようがない。第42期名人戦挑戦手合第5局が10月17日、静岡県熱海市「あたみ石亭」で行われ、挑戦者の井山裕太棋聖が高尾紳路名人を破りタイトルを4勝1敗で奪取した。これにより井山は七大タイトルのすべてを手中に収め、再び七冠に返り咲いた。囲碁界のみならず将棋界を含め、史上初の快挙だ。
井山が1度目の七冠となったのは昨年の4月。十段戦で伊田篤史十段(当時)を3勝1敗で破り、悲願を達成した。その後本因坊、碁聖を防衛し七冠を維持したが、高尾紳路九段に名人を奪われ、七冠保持記録は197日で止まった。
六冠に後退しても驚異的な強さは相変わらず。王座・十段戦で余正麒七段、天元戦で一力遼七段、本因坊戦で本木克也八段と若手が次々と挑んだがいずれも退け、六冠を維持したままリーグ全勝で名人戦の挑戦者となっていた。
井山は「一度目の七冠は是が非でもという思いがあったが、今回は昨年以上の戦いができるようにということを意識して重圧を感じなかった」と言う。偉業を偉業とも思わず、自然体で淡々と積み上げていく姿には凄みを感じる。いったいどれほどの余裕があるというのだろう。しかし、ひとたび世界に目を転じると同格と思われる棋士が数多くいる。「まだまだ自分自身完成とは思っていない」と井山。次は世界へ、期待が高まる。
囲碁ニュース [ 2017年10月11日 ]
芝野 新人王!
第42期新人王戦決勝三番勝負第2局が10月2日日本棋院で行われた。決勝に勝ち上がったのは孫喆五段(21)と芝野虎丸七段(17)。孫は大きな実績こそ少ないものの、各棋戦で本戦入りするなど実力は折り紙付き。対する芝野は竜星戦優勝、本因坊リーグ入りと立て続けに快挙を成し遂げ、今最も注目されている棋士の一人だ。
開幕戦は孫が優勢と見られていた碁を芝野が逆転し勝利。本局では孫が一勝を返すか、芝野がこのまま寄り切るかが注目されていた。
序盤は白番の孫に誤算があり黒優勢で進んだが、中盤孫が積極的に仕掛け、一時は形勢不明の闇試合に。しかし芝野は冷静で、危機を無事に乗り切ると地合で上回った。最後は足りないとみた孫が投了。芝野が新人王に輝いた。
「嬉しいです。2局とも危ない場面があったけど結果をだせてよかった」と芝野。一方の孫は悔しさをにじませつつ「来年一から頑張りたい」と前を向いた。
阿含桐山杯 六浦優勝!
第24期阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦の決勝が10月7日、京都市山科区の阿含宗釈迦山大菩提寺で行われ、六浦雄太三段(18)が高尾紳路名人(40)に白番中押し勝ちを収め、初優勝を飾った。
六浦は中部総本部所属、入段3年目。優勝時18歳5カ月で、これは全棋士参加棋戦優勝三番目の年少記録だ。(井山裕太棋聖・16歳4カ月、芝野虎丸七段・17歳8カ月に次ぐ)
さらに、本棋戦優勝により七段に昇段。また新たに十代のスターが誕生した。
囲碁ニュース [ 2017年10月5日 ]
AIと最強棋士の共演
囲碁AIソフトの急速な進歩により、人とAIがどう関わっていくかということが大きな課題として立ち上がってきた。AIが未知の領域を開拓してくれることを歓迎する人がいる一方で、AIによって「棋士」が脅かされるという悲観的な見方もある。
その意味で、10月4日、世界ペア碁最強位決定戦に先立って行われた出場ペアと和製囲碁AIソフト、DeepZenGoによる親善対局は「人とAIの共存」を考える上で重要な糸口になりうる画期的な試みになった。
対局は「世界ペア碁最強位」保持ペア(於之瑩六段・柯潔九段)と「世界ペア碁最強位戦2017 本戦」優勝ペア(謝依旻六段・井山裕太九段)がそれぞれZenとチームを組んで行うのだが、その方法がユニークだ。各ペアはペアで1人と数え、Zenとペアを組む。通常ペア碁は相談禁止だが、この場合は2人で1人なので、自由に相談してもかまわない。ただし、Zenと交互に打つため必ずしも読み通りにいかないところに見どころがある。
人間対AIは悲壮感が漂うのが常だが、本局は全く違っていた。Zenは意味や文脈で着手を選んでいるわけではない。しかし人間はそこに意味や文脈を付与する。AIはあくまで機械的にも関わらず、人間はコミュニケーションを取ろうと考えを巡らす。そこに生じる微妙なズレが何とも言えず面白く、対局者も観戦者も終始笑いの絶えない温かみのある対局になった。
柯九段は「人間対AIはもう打ちたくない」とSNSに投稿していたが、局後「今日はZenと組んで楽しかった。今ではSNSの投稿は言い過ぎだったと後悔している。Zenは強く、自分が打ったら分が悪いと思うが、今は自分より強い存在と共に頑張っていこうという気持ちがある。だから、AI対棋士の対局をファンが望むならこれからも打っていこうと思う」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。
於・柯 世界ペア碁最強位防衛!
「世界ペア碁最強位」保持ペア(於之瑩六段・柯潔九段)に「世界ペア碁最強位戦2017 本戦」優勝ペア(謝依旻六段・井山裕太九段)が挑む「世界ペア碁最強位決定戦」が10月5日、東京都渋谷区「セルリアンタワー東急ホテル」で行われた。
対局は狂言や能が演じられる能楽堂で行われた。対局者はそれぞれ民族衣装に身を包み、お囃子の生演奏がかかると、鏡の間から橋掛りを通り本舞台に上がるという、華やかかつ厳かな演出で登場。見所で多くのファンが見守る中、静かに始まった。
ニギリの結果、日本ペアが黒となった。序盤、日本ペアにミスがあり白に形勢が傾いたが、中盤以降の猛烈な追い上げにより形勢不明の闇試合に。解説者が頭を抱えるほどの大乱戦になったが、さすがは世界最強ペア。於・柯は冷静さを失うことがなかった。最後は日本ペアに錯覚があり白中押し勝ち。於・柯ペアが「世界ペア碁最強位」を防衛した。
局後のインタビューで於が「勝つことができてとても嬉しい。でも、自分の悪手で柯さんに迷惑をかけたし、その失敗をカバーしてもらった。」と話すと、柯は「私も悪手を打ったし、局面を複雑にし過ぎた」とフォローし、「結果的に勝つことができ、私たちペアは強いと証明できたと思う」と胸を張った。
一方の敗れた謝・井山ペアは「できれば勝ちたかった」と悔しさをにじませつつも、謝「世界トップの2人と同時に打てたことは嬉しい」井山「最高の舞台で最強のペアと打てて楽しかった」と充実した様子だった。
「世界ペア碁最強位戦2017」の詳しい報告は下記URLをご覧ください。
http://www.pairgo.or.jp/pgwc/2017/
囲碁ニュース [ 2017年9月26日 ]
村上深さん、初の日本代表
囲碁・将棋チャンネル杯第39回世界アマチュア囲碁選手権日本代表決定戦が9月16、17日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行なわれ、招待選手を含む各都道府県代表61人が日本代表を目指し熱戦を繰り広げた。
今年はアマ名人、アマ本因坊とも若手の活躍が目立っており、今大会も例外ではなかった。全国大会で数多くの優勝を誇る平岡聡さん(招待)や昨年の優勝者である坂本修作さん(招待)、アマ本因坊で最年少優勝を果たした林隆羽さん(埼玉)をはじめとする実力者が早々に姿を消した。ベスト8では30代が村上深さん(招待)のみで、20代6人、10代1人となった。
2日目のベスト4に残ったのは村上さんの他、北芝礼さん(愛知)、柳田朋哉さん(京都)、星合真吾さん(東京)という顔ぶれ。
北芝さんは14歳と、今大会最年少出場。2日目の注目を集めたが、村上さんに無念の敗退となった。柳田さんと星合さんはアマ名人、本因坊と今年二度の全国大会でも対戦しており、三大会全てで対戦することになった。
決勝は村上さんと柳田さんとの対戦となり、村上さんが見事初優勝を飾った。来年の世界アマチュア選手権で日本代表としての活躍を祈りたい。
囲碁ニュース [ 2017年9月19日 ]
棋聖戦挑戦者決定トーナメント出場者出そろう
第42期棋聖戦挑戦者決定トーナメントの出場者が14日、出そろった。棋聖戦はS、A、B、Cの4リーグ制でトーナメント出場者を決めたのち、Cリーグ勝者から順にB、Aと上位リーグ勝者に挑戦していくパラマス式トーナメントで挑戦者を決める。
挑戦を争うのはSリーグ1位から、一力遼七段、山下敬吾九段、高尾紳路名人、余正麒七段、本木克弥八段。一力から本木まで、全員今年の七大タイトル挑戦手合に出場した、あるいはこれからする、メンバーというのが面白い。(一力=王座・天元、山下=碁聖、高尾=名人、余=十段、本木=本因坊)それだけ充実している面々がそろったということだろう。
パラマス式トーナメントでかつ、最終戦は上位優位の変則三番勝負(上位者は1勝で勝ち)のため、最も挑戦に近いのは一力だ。しかし、全員にチャンスがある。現在進行中の名人戦、来月から始まる王座戦、天元戦の動向を含め、誰が挑戦することになるか楽しみだ。
10月5日 世界ペア碁最強位決定戦開催!
世界ペア碁最強位戦2017本戦で優勝した謝依旻六段・井山裕太九段ペアと現最強位保持者の於之瑩五段・柯潔九段ペアが10月5日、東京都渋谷区「セルリアンタワー東急ホテル 」で激突する。
柯は世界ランキング1位で、於は中国の新人王戦で女性として初めて優勝するなど、女流の枠を超え世界で活躍している。文字通り世界最強ペアに日本の最強ペアがどう挑むのか、血沸き肉躍る戦いが繰り広げられること間違いない。
本棋戦は一般抽選により200名まで無料で観戦することができる。観戦チケットの応募締め切りは9月28日(木)。世界最高レベルの碁を間近で観戦するチャンスだ。この期にぜひ応募してみてはいかがだろうか。
応募方法は下記URLをクリックしてください
https://sec.pandanet.co.jp/pairgo/pgwc/2017/subscription.htm
囲碁ニュース [ 2017年9月7日 ]
一力 王座、天元W挑戦
一力遼七段(20歳)の進撃が止まらない。8月25日に行われた王座戦挑戦者決定戦で芝野虎丸七段を破り挑戦権を獲得すると、8月31日の天元戦挑戦者決定戦でも山下敬吾九段に勝利し、こちらも挑戦を決めた。
一力は昨年、天元戦で井山裕太六冠に挑戦した。一力にとって七大タイトル初挑戦。善戦したものの1勝3敗と六冠の大きな壁を感じる結果となった。一年が経ち、胸に帰するものがあるのだろう。王座戦挑戦を決めた直後のインタビューでは「精いっぱい戦いたい」と力強く抱負を語った。
なお、一力は棋聖戦でもSリーグを4勝0敗で1位通過し、現在挑戦に最も近い位置に付けている。王座、天元と合わせて10番勝負、もし棋聖で挑戦を決めると17番勝負ということもあり得る。日本最強棋士井山にポスト井山筆頭と目される一力がどう戦うのか、しばらくは目が離せない。
なお、王座戦の開幕戦は10月20日(金)、神奈川県横浜市「横浜ロイヤルパークホテル」。天元戦は10月11日(水)、愛知県豊田市「ホテルフォレスタ」で行われる。
名人開幕 高尾先勝
高尾紳路名人に井山裕太六冠が挑戦する第42期名人戦が8月30、31日に大阪市北区「コンラッド大阪」で開幕した。名人は七大タイトルの中で井山が唯一持っていないタイトル。本シリーズで名人を奪取すると2度目の七冠となるだけに、開幕から注目が集まった。
井山は本因坊を4勝0敗、碁聖を3勝0敗と立て続けにストレート勝ちし、絶好調。どこを取っても圧倒的で、全く死角がないと思われていた。しかし、高尾は強かった。白番で中盤にリードを奪うと、井山の猛追をかわし半目勝ちしたのだ。昨年、名人を奪った瞬間から井山が挑戦してくることを予想し、そのために準備してきたと言う。万全の対策と充実した気力が貴重な1勝を引き寄せた。
高尾が先勝したことで、本シリーズはますます面白くなった。高尾が勢いに乗って連勝するのか、それとも井山が七冠復帰に向け巻き返すのか、第2局は9月12、13日に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われる。
本因坊リーグ出そろう
第73期本因坊戦リーグのメンバーが9月4日、出そろった。今年は昨年リーグ残留を決めた本木克弥八段、羽根直樹九段、山下敬吾九段、黄翊祖八段(リーグ内順位順)に予選を勝ち上がった小林覚九段、伊田篤史八段、余正麒七段、芝野虎丸七段の4人を加えた計8人によって挑戦権が争われる。
特に注目なのは小林(58歳)と芝野(17歳)だろう。小林は7期ぶりのリーグ入り。2014年の十段戦本戦では七冠をうかがう井山に勝ち、挑戦者決定戦まで駒を進めるなど、随所でいぶし銀の輝きを放つ大ベテランだ。一方の芝野は本因坊リーグ史上最年少で初リーグ入りを果たした。今最も勢いのある若手の一人だ。
昨年挑戦した本木やリーグ内順位を5位から2位に上げた羽根がどう戦うかも見どころの一つ。ベテランから若手まで多彩なメンバーが集い、どのような展開になるか楽しみだ。
囲碁ニュース [ 2017年8月24日 ]
アマ本因坊戦 林隆羽さん17歳最年少優勝!
第63回全日本アマチュア本因坊戦全国大会が8月19日、20日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行われ、招待選手9名を含む64名がアマ本因坊を目指し熱戦を繰り広げた。
最も注目を集めた昨年の優勝者で、アマ名人戦優勝を果たした大関稔さん(招待)は準々決勝で柳田朋哉さん(京都)に敗れ姿を消した。柳田さんは1回戦から全国大会優勝経験者や上位常連者が集まった最激戦区を勝ち抜いてベスト4入りし、初日の注目を集めた。
2日目は準決勝、決勝が行われ、準決勝は柳田さんと林隆羽さん(埼玉)、古川元さん(青森)と谷口洋平さん(東京)という組み合わせとなり、林さんと古川さんが決勝に勝ち上がった。
林さんは高校2年生ながら2年前に同大会で全国準優勝の実力者。そのときの優勝者が現在プロとなっている芝野龍之介初段だ。このとき高校3年生で最年少優勝を記録したが、林さんが優勝すれば記録を更新する。
古川さんは12年前にアマ最強戦(現在は中止)で準優勝するなど全国大会の常連である。夫人はプロ棋士の古川こんゆ二段である。2日目に勝ち残ったという古川さんからの連絡を受け、夜通しで青森から車を運転して子供4人を連れ応援に駆けつけた。
決勝は白番の林さんが地を稼ぎ、黒番の古川さんが厚みを築く展開となった。細かいヨセ勝負を林さんが制し、17歳での最年少優勝の快挙を達成した。
囲碁ニュース [ 2017年8月22日 ]
DeepZenGoが優勝 「中信証券杯 第1回 世界電脳囲碁オープン戦」
「中信証券杯 第1回 世界電脳囲碁オープン戦」が8月16日、17日の2日間かけて中国・内モンゴルのオルドス市にて開催された。同大会は「第1回中国囲棋大会」のメインイベントとして実施。世界各国の囲碁AI12チームが参加した。
予選では台湾のCGIが全勝で1位、続いて2位絶芸、3位DeepZenGoだった。決勝トーナメントへは予選12チーム中上位8チームが進出した。DeepZenGoは準決勝で予選で敗れた絶芸と対戦し、中押し勝ち。決勝戦でもCGIを破り、優勝した。
優勝したDeepZenGoは8月18日、中国のプロ棋士・孔傑九段との特別対局に臨んだ。同対局では孔傑九段が準優勝のCGIとタッグを組み、予測手・読み筋を参考にして着手。結果は187手まで黒DeepZenGoの中押し勝ち。
囲碁ニュース [ 2017年8月18日 ]
謝・井山ペア優勝!! 世界ペア碁最強位戦2017 本戦
世界ペア碁最強位戦2017本戦が8月12、13日の2日間にかけて東京都渋谷区「セルリアンタワー東急ホテル」で開催された。出場ペアは謝依旻六段・井山裕太九段ペア(日本)、藤沢里菜三段・羽根直樹九段ペア(日本)、崔精七段・朴廷桓九段ペア(韓国)、黒嘉嘉七段・陳詩淵九段ペア(中華台北)の4組。1回戦目は謝・井山ペア対藤沢・羽根ペア、崔・朴ペア対黒・陳ペアで行われ、それぞれ謝・井山ペア、崔・朴ペアが勝利。謝・井山ペア、崔・朴ペアによる決勝はくんずほぐれつの大乱闘を謝・井山ペアが制し、初優勝を果たした。
本大会の最大の見どころは出場者の豪華さにある。男女含めた世界のトップ棋士の共演を間近で観戦できる機会はそうそうない。その魅力を十二分に引き出すため、決勝戦は能楽堂(能や狂言を専門に演じる劇場)で行われた。対局者はそれぞれの民族衣装を着てスポットライトが当たる舞台で対局し、ファンは観客席からその模様を見ることができる演出。日本の伝統美とペア碁の華やかさが見事に調和し、とても美しかった。
また、随時行われていた大盤解説会では二十四世本因坊秀芳らが軽快かつ安心感のある解説を披露。約500人を収容できる会場が、終始満席と大盛況だった。
優勝した謝・井山ペアは昨年「ペア碁ワールドカップ2016東京」で優勝した於之瑩五段・柯潔九段(中国)と世界ペア碁最強位をかけて10月に対戦する予定。こちらも盛り上がること間違いなしだ。
大会の詳細 http://www.pairgo.or.jp/pgwc/2017/
囲碁ニュース [ 2017年8月15日 ]
虎丸 大活躍
芝野虎丸三段(現七段)の快進撃が続いている。7月31日には第26期竜星戦の決勝で余正麒七段を黒番中押し勝ちで倒し、初優勝を飾った。17歳8カ月での本棋戦優勝は一力遼七段の19歳1カ月を抜く最年少記録だ。さらに入段から一般棋戦(全棋士に出場権がある棋戦)優勝までの最短記録(2年11カ月)も井山裕太六冠(3年6カ月・阿含桐山杯)を抜き1位となった。
その他、七大タイトルの一角を占める第65期王座戦では7日、本戦トーナメント準決勝で中野寛也九段を破り決勝に進出。第42期新人王戦でも準決勝で藤沢里菜三段を破って決勝に勝ち進み、勢いが止まらない。
芝野は昨年新人王に輝いた大西竜平二段(17歳)とともに新世代のホープと目され、両者の名前を取って「竜虎」と称されることが多い。入段直後から評価が高かったが、ここにきて一気に表舞台に出てきた印象だ。
芝野の特異な点は碁の強さだけではない。そのキャラクターも独特だ。アルカイックスマイルで口数が少ない芝野は、いかにも勝負師といった雰囲気を持つ一力七段や大西二段とは異なり、どこか異郷の地から舞い降りたのではないかと思わせるような空気感がある。つまり、ミステリアスなのだ。
これから新人王戦決勝、王座戦本戦トーナメント決勝と重要対局が続く。碁の内容はもちろんだが、ここはひとつ芝野のキャラクターにも注目してみると、より面白いのではないだろうか。
囲碁ニュース [ 2017年8月3日 ]
井山 碁聖6連覇
井山裕太碁聖に山下敬吾九段が挑戦する第42期碁聖戦五番勝負第3局が7月25日、熊本県熊本市の「ホテル日航熊本」で行われた。1、2局を連勝していた井山がここで防衛を決めるか、山下が1勝を返し次局につなげるかが注目される中、白番の井山がつけ入る隙のなく打ち回し、中押しで勝利。6連覇を果たした。
本シリーズは特に井山の強さが光っていたように思う。山下に明確な失着があったとも思われないのに、いつの間にか井山の優勢になっていた。一人別次元の風景を見ていることを明確に示す結果であり、内容だった。
井山、名人挑戦 七冠再びなるか
井山裕太六冠と村川大介八段による第42期名人リーグの7月ラウンドが28日、関西総本部で行われた。高尾紳路名人への挑戦権をかけたリーグは6月までで井山が全勝(6勝0敗)、1敗はおらず、リーグ内序列2位の村川が4勝2敗で追いかける展開となっていた。結果は井山の白番中押し勝ち。これにより、8月の最終ラウンドを待たずに井山が挑戦権を獲得した。
井山は昨年、名人を失って以来、保持しているタイトルをすべて防衛し、残る名人の挑戦権も手に入れた。
開幕戦は8月30、31日に行われる。1度だけでも奇跡的と思われた「七冠」が再び誕生するかもしれない。今期名人戦は歴史的なシリーズになること間違いない。
囲碁ニュース [ 2017年7月28日 ]
囲碁の甲子園 全国高校囲碁選手権
7月24日~26日の三日間に渡り第41回文部科学大臣杯全国高校囲碁選手権全国大会が行なわれた。まず、24日、25日の午前は各校3人1組の団体戦が行われ、男子48校、女子42校が出場した。
男子は順当に強豪校が勝ち上がり、決勝はアマチュア本因坊戦の全国大会で準優勝経験のある林隆羽さんが主将を務める春日部高等学校(埼玉)が関西の強豪洛南高等学校(京都)を2-1で降し2連覇を果たした。女子は準決勝で昨年の優勝校戸山高等学校(東京)を降した白百合学園高等学校(東京)が決勝で昨年の準優勝であり、優勝候補の栃木女子高等学校(栃木)を3-0で降し初優勝となった。そのうち2局は半目勝ちという大接戦だった。
25日の午後から26日には個人戦が行なわれ、男子96名、女子50名の代表が頂点を目指し競った。25日は予選リーグ3局が行われ、男子は16名、女子は8名が決勝トーナメントに進出した。男子は同日にトーナメント1回戦まで行った。
男子は大会史上最高レベルとも言われ、誰が優勝してもおかしくないという評判であった。そんな中、優勝候補と見られていた元院生の青木裕孝さん(東京)が予選リーグで、団体戦では準優勝した洛南高等学校の主将今分太郎がトーナメント1回戦で姿を消すという激戦であった。決勝は安定した打ち回しを見せてきた優勝最有力と言われていた栗田佳樹さん(神奈川)と強豪を次々倒して勝ち上がった横江大樹さん(滋賀)によって争われ、栗田さんが勝利を収めた。
女子は前評判の高かった岩井温子さん(京都)と羽根蘭佳さん(愛知)という実力者で行われ、岩井さんが優勝を果たした。
囲碁ニュース [ 2017年7月20日 ]
藤沢 四冠に
第2回扇興杯女流最強戦の決勝が7月16日、滋賀県東近江市の迎賓庵『あけくれ』で行われた。決勝に勝ち上がったのは女流本因坊、女流名人、女流立葵杯を有する藤沢里菜三段と前回優勝者で女流棋聖の謝依旻六段。タイトルを二分する二人が激突した。
白番の藤沢に大きな見損じがあり、謝が有利に戦いを進めたが、藤沢が驚異の粘り強さを発揮。細かいヨセ勝負にもつれ込むと、最後は藤沢の2目半勝ちとなった。
これで藤沢は5つある女流タイトルのうち4つを手に入れた。昨年、謝が独占していた女流5冠を次々と奪取した形だ。だが、どの戦いも内容的には十分謝にもチャンスがあった。このまま藤沢が一強時代を築くのか、それとも謝が反撃に出るのか、二人の戦いはまだまだ続きそうだ。
パズル感覚で囲碁を
張栩九段考案の「囲碁パズル 4路盤」が7月26日に株式会社幻冬舎から発売される。「囲碁パズル 4路盤」は2011年に発売された「よんろのご」と同様、4×4の小さい盤を使った詰碁だ。しかし、「よんろのご」は小さな子でも興味が持てるようなかわいらしいデザインだったのに対し、「囲碁パズル 4路盤」は大人っぽいシンプルなデザイン。子どもに教えるための導入としてだけではなく、パズルが好きな大人にも楽しんでもらいたいという狙いがある。また、より囲碁のパズル的な側面に目を向けてほしいと陣地やセキなどの難しい概念は省き、なるべく「囲むと石が取れる」という簡単なルールだけで解ける問題を集めた。
「4路という小さな空間なのに驚くほどいろいろな変化が詰まっている」と張九段。「特に、今回は相手を全滅させるような爽快感がある問題を集めた。詰碁のパズル的な面白さがつまったものだからぜひ手に取ってほしい」と力説した。
囲碁ニュース [ 2017年7月13日 ]
AI ナショナルチームで活用
隣の将棋界では藤井聡太四段がデビューから29連勝の大記録を樹立して大きな話題となったが、その藤井四段はソフトで研究することで強くなったという。そして今、囲碁界でもAIソフトの登場によってその勉強方法が大きく変わりつつある。
国産AI囲碁ソフト、DeepZenGoが6月21日からナショナルチームに取り入れられ、選手たちがネット上で自由に対局するようになった。開発チームは経過を観察することができ、選手たちはソフトの手を研究することができる一石二鳥の試みだ。DeepZenGoは7月12日までに80局ほど打ち、勝率は約7割。アルファ碁ほどの強さではないが、井山裕太六冠などのトップ棋士が在籍するナショナルチームのメンバー相手にこの成績は驚異的だ。
監督の山城宏九段は「若手がどんどん活用して打っている。その棋譜を見られるのは個人的にも面白い」とDeepZenGoの参加を歓迎する。「単純に自分より強い相手がいつでも、必ず打ってくれるというのはすごいこと。もっと活用して、みんなで強くなっていけるといいですね」
8月からはすべての棋士に開放する予定という。すでに布石の打ち方などはAIの影響を受けて変わってきている。このスピードでAIの一般化が進むと、これまでの囲碁の常識がより一層大きく変わりそうだ。
資料発掘 100周年に向けて
2017年の大河ドラマ「女城主 直虎」には頻繁に囲碁のシーンが登場する。戦国の時代からそれだけ文化として定着していたということだ。しかし、なぜ昔から親しまれていたということが分かるのか。何でも手軽にネット検索できる時代だが、データ化されていない限りはヒットしない。当然ながら昔のことが初めからデータ化されている分けもなく、そこには一次資料を集め、読み解き、現代語訳する人が必ずいる。
南雄司さんは囲碁にまつわる古文書や古記録を集めてこの道40年。会いに行くと日本棋院の一室で、山積みになった資料に囲まれていた。「囲碁にまつわるものなら何でも集めているんだ。神保町の古本屋を全部回って、骨董市に出かけて、そうやって顔馴染みになると『南さん碁の本が入ったよ』って教えてもらえるんだよね」。時には個人宅へ行って写本や写譜(古い本を個人が手で書き写したもの)をもらってくることもある。「古いと版本(出版された本)がもうない場合もある。ただ、そういうものでも誰かが写本していて、どこかに眠っているかもしれない。だから(資料集めが)やめられないんだよね」。
現在取り組んでいるのは江戸時代の棋譜を整理すること。未発表の棋譜を一つ一つ丁寧に精査し、パズルのピースを当てはめるように時代の空白を埋めていく。記者が訪問した時は本因坊察元の若い頃の棋譜を写していた。「棋譜を見ているとその人がその時代確かにそこにいたことが分かるんだよね」と目を輝かせる。
南さんが所属する囲碁史会では7年後の日本棋院100周年に何らかの形で研究成果を発表しようと考えているそうだ。国際化が進み、AIが進歩したことで、マインドスポーツとしての囲碁に焦点が当たることが多くなった。しかし一方で、囲碁はとりもなおさず日本の伝統文化なのだ。そのことを南さんは改めて思い出させてくれた。
囲碁ニュース [ 2017年7月4日 ]
大関さんアマ名人全国優勝!
第12回朝日アマチュア名人戦全国大会が7月1、2日の二日間の両日開催され、47都道府県の代表と招待選手を合わせた57人がアマ名人を目指し熱戦を繰り広げた。初日から全国大会上位入賞常連選手が次々と姿を消す中、二日目に駒を進めたのは30代2人、20代5人、10代1人という若い世代だった。ベスト4になると20代4人となり、25歳の闇雲翼さん(三重)が最年長となった。
決勝は大関稔さん(招待)と闇雲さんという組み合わせになった。大関さんは昨年アマ本因坊に輝き、学生本因坊、王座、最強位と学生タイトル4つのうち3つ優勝という学生碁界の実力者。闇雲さんも学生時代、学生十傑、王座の二冠に輝いている。そんな学生碁界の新旧チャンピオン対決とも言える決勝は、序盤から激しい戦いとなり、勝負所で闇雲さんのミスにより、95手という短手数で黒番の大関さんが中押し勝ちとなり、アマ名人全国初優勝を飾った。3位決定戦は第9回準優勝の夏冰さん(招待)が杉田俊太朗さん(滋賀)を降し3位となった。
アマ名人戦はこれで終わりではなく、挑戦手合制となっており、昨年アマ名人となった平野翔大アマ名人との三番勝負が7月29、30日に神奈川県湯河原町で行われる。平野アマ名人は立命館大学の学生で大関さんと学生碁界で覇を競っている。昨年は学生十傑戦で優勝したものの、残る三つでは全て決勝で大関さんに敗れている。「予想はしていたが手強い相手。心の準備をして三番勝負に望みます」と大関さんの優勝直後に平野アマ名人は語った。
囲碁ニュース [ 2017年6月29日 ]
立葵杯 藤沢優勝!
会津中央病院・女流立葵杯の決勝三番勝負第3局が6月23日に東京都千代田区の日本棋院で行われ、藤沢里菜女流本因坊が謝依旻女流棋聖を白番中押し勝ちで破り、女流立葵杯の位を獲得した。これで藤沢は女流本因坊、女流名人に続き3冠目のタイトルとなる。
4回ある藤沢―謝の挑戦手合は藤沢の3勝1敗。両者の初タイトルマッチとなった2015年の女流本因坊戦では謝が勝ったが、その後は藤沢が3連勝している。長らく続いた謝1強時代から謝―藤沢の2強体制になり、今回でまた均衡が少し藤沢に傾いたといったところだろうか。
直近の成績では藤沢が上回っているものの、内容は拮抗している。女流碁界をけん引している二人のタイトル戦は今後もたくさん観る機会があるだろう。勢いのある藤沢を相手に謝がどう巻き返していくのか、あるいはこのまま藤沢1強時代に入っていくのか。これからも二人の戦いに目が離せなそうだ。
天元 ベスト4出そろう
第43期天元戦のベスト4が出そろった。メンバーは趙治勲名誉名人、山下敬吾九段、一力遼七段、許家元四段だ。特筆すべきは趙の存在だ。前人未踏の生涯勝星1500勝(4月27日)を達成し、ますます充実してきていることをうかがわせる。
1500勝達成時、趙の自宅でインタビューをさせてもらった際、ふとした拍子に冗談めかして「もし井山と番碁が打てるなら、それこそ命に代えてもいいね」と言っていたのを思い出した。次は一力、その後は山下―許の勝者。勝つのは容易でないが、星の上ではあと2つで挑戦権が得られる。
七大タイトル獲得の史上最高齢獲得記録は藤沢秀行名誉棋聖の67歳(1992年王座戦にて)。時代は変わり、ベテランが勝つのは今まで以上に大変になった。しかし、数々の偉業を成し遂げてきた趙ならもしかして…と思わずにはいられない。
囲碁ニュース [ 2017年6月20日 ]
文裕 6連覇
第72期本因坊戦七番勝負第4局が6月15、16日の2日間にわたって行われ、白番の本因坊文裕(井山裕太九段)が挑戦者の本木克弥八段に中押し勝ちを収めた。これにより文裕は4勝0敗で防衛。6連覇を果たした。
本木にとっては苦いデビュー戦となった。しかし、本シリーズに関しては文裕が強過ぎたというのが本音ではないだろうか。「自分の実力との間に差を感じた」。この本木の感想は心の底から湧き出たものだろう。昨年から余正麒七段、一力遼七段、本木と若手が次々挑戦しているが、文裕はすべて危なげなく退けている。
11月に名人を失い六冠となって以来、王座、天元、棋聖、十段、本因坊と5タイトルを防衛してきた。しかも、名人リーグでは6連勝で単独首位を走っている。残る碁聖を防衛し、名人を奪うと再び七冠となる。普通なら夢物語のようなことも今の充実ぶりなら起こしてしまいそうだ。
二度目の七冠を占う意味でも重要な第42期碁聖戦五番勝負の開幕戦は6月22日に宮城県松島町で行われる。
立葵杯 決戦は最終局へ
藤沢里菜女流本因坊と謝依旻女流棋聖による第4回会津中央病院・女流立葵杯、決勝三番勝負は1勝1敗で最終局にもつれ込んだ。
16日、福島県会津若松市で行われた第1局は藤沢が黒番中押しを収めたが、一日置いた第2局では謝が持ち前の勝負強さを発揮し黒番4目半勝ちした。第3局は23日、東京都千代田区・日本棋院で行われる。
夢百合杯 日本勢2人32強へ DZGも
世界の頂点を目指す第3回夢百合杯・世界オープン戦の本戦トーナメントが6月19日、中国北京市の中国棋院で開幕した。参加選手64人のうち日本からは高尾紳路名人、河野臨九段、余正麒七段の3人が出場。余は高宇三段(中国)に破れ姿を消したが、高尾は江維傑九段(中国)、河野は陶欣然六段(中国)にそれぞれ勝利し、2回戦に進出した。
高尾、河野、余に加え、日本代表というべき存在がもう一つある。それは「DeepZenGo」和製AI囲碁ソフトだ。今回は「ワイルドカード枠」により、特別に出場が許された。
3月に行われたワールド碁チャンピオンシップでは構想力の強さを発揮するも後半に乱れが生じ1勝2敗に終わった。本棋戦の1回戦は申旻埈五段(韓国)に快勝したが、どこまで勝ち上がれるのか。
アルファ碁は世界ランク1位の柯潔九段を完封し、人間を凌駕したことを示した。DeepZenGoもすでに人間を超えているのか。その戦いぶりに注目される。
囲碁ニュース [ 2017年6月1日 ]
地域振興! 観て楽しむ! 日本囲碁リーグ
「浪速エンプレス」「瀬戸内オーシャンズ」サッカーチームのようだが、実はこれ、囲碁チームの名前だ。
棋士による地域別対抗戦、日本囲碁リーグは2015年に関西棋院の若手棋士が中心となって発案し、2016年にスタートした。「浪速エンプレス」「瀬戸内オーシャンズ」の他、「大阪ジェネレーション」「兵庫ウラヌス」「古都インフレンス」「ワールドユナイテッド」の計6チームが参加し、1年をかけて優勝チームを決める。メンバーは関西棋院・日本棋院に所属する有志の棋士だ。「古都インフレンス」なら京都出身の棋士、「瀬戸内オーシャンズ」なら中国・四国地方出身の棋士と、各チームにはその地域と所縁のある棋士が所属している。
今年、6チームの中で現在首位を走っているのは九州・海外出身の棋士で構成された「ワールドユナイテッド」だ。清成哲也九段が監督を務めるこのチームにはポスト井山の筆頭格、余正麒七段も所属している。そして「ワールドユナイテッド」を一点差で追いかけているのが「兵庫ウラヌス」。結城聡九段、坂井秀至八段、村川大介八段とタイトル経験者が3人も所属している強豪チームだ。
スポーツと違い普段、囲碁はプロの対局を観戦することができない。しかしそれでは裾野が広がらないと「地域への振興」「観て楽しむ囲碁」をモットーにしている。地域対抗にすることで地元の方から応援してもらえるようにし、パンダネットやニコニコ動画で中継することで気軽に観戦できるようにした。発起人の一人、田村千明三段は「囲碁をよく知らないという人も見てくれているし、今までとは違った見せ方ができていると思います」と胸を張る。
次回の対局は7月16日。兵庫県宝塚市で7月14日から17日の4日間にかけて行われるジャパン碁コングレス内で行われる。田村三段は「大勢のお客さんの前で一斉対局を行います。コングレスの目玉イベントなのでぜひ来てください」と呼びかけた。
囲碁ニュース [ 2017年5月24日 ]
地域の輪・世代の交流 東京23区対抗囲碁大会
東京23区が各区で9人1組のチームとなって優勝を目指す、第七回東京23区対抗囲碁大会が21日、日本棋院で行われた。メンバーになるためには在住、在勤、在学いずれかの条件を満たしていることが条件。さらに老若男女がまんべんなくチームに入るようにシニア枠、女性枠、青年枠、子ども枠が設定されている。
豊島区の主将、中園清三さんは今回が初参加。「同じチームの子どもたちが自分の対局が終わった後で私の碁を見に来るのがかわいらしい。大会自体、とても盛り上がっていて楽しいです」と笑みを浮かべる。しかし、チームが勝てなかったのは残念だった。「自分が勝っても全体の層が厚くないとチームは勝てない。豊島区の課題が見えたような気がします」。
団体戦はたくさんあるが、いつもとは違ったメンバーがチームにいるという点が面白い。世田谷区の副将、岩田紗絵加さんは「他の大会では敵として戦っている人と一緒に出られるのは楽しいし、心強いです」と話す。主将の谷口洋平さんは都大会などでよく当たる相手だが、今回ばかりは同じチームの仲間。「地域」という枠が大会に不思議な連帯感と新鮮さをもたらしている。
4回戦行い、全勝で優勝したのは前回優勝の世田谷区。全員アマ高段者という層の厚さが2連覇に導いた。なお、準優勝以下の入賞チームは以下のとおり。準優勝・中野区、3位・千代田区、4位・練馬区、5位・文京区、6位・板橋区、7位・荒川区、8位・渋谷区。
囲碁ニュース [ 2017年5月19日 ]
碁聖挑戦は山下!
第42期碁聖戦の挑戦者決定戦が18日、日本棋院で行われた。本戦トーナメントを勝ち上がってきたのは、平成四天王の一人、山下敬吾九段と、現在本因坊戦で井山裕太六冠に挑戦中の本木克弥八段だった。結果は山下が力と力がぶつかる戦いの碁を制し、139手で黒番中押し勝ち。2期ぶりに井山碁聖への挑戦権を獲得した。
これで山下は15年連続して七大タイトル戦の挑戦手合に出場していることになる。これは趙治勲名誉名人の24年、林海峯名誉天元と加藤正夫九段の16年に次ぐ記録。若い世代が次々と出てきてはいるが、世代交代というには早すぎる。
「タイトル戦は久しぶり(昨年1月の棋聖戦以来)なので嬉しい。井山さんには負けっぱなしだが、昔の先生は長く活躍されていたので、自分もまだまだ頑張らないと、という気持ちはある」と山下。五番勝負については「対策はもちろんだが、それ以上に自分の調子をいかに万全に整えるかが大事」と意気込んだ。
開幕戦は6月22日、宮城県松島町の「松島 一の坊」で行われる。
囲碁ニュース [ 2017年5月12日 ]
本因坊戦 開幕!
第72期本因坊戦挑戦手合七番勝負の開幕戦が5月9、10日(火・水)の二日間にかけて岐阜県岐阜市「岐阜グランドホテル」で行われた。昨年5連覇を達成した本因坊文裕(井山裕太六冠)に挑戦するのは七大タイトル初挑戦となる本木克弥八段だ。
本木は群馬県出身の21歳。ヒカルの碁をきっかけに碁にのめりこみ、小学4年生の時に藤沢一就八段に師事。その後、本格的にプロを目指すため中学1年生で単身上京し、内弟子となった。2011年に入段して以来着々と実力を付け、2014に広島アルミ杯若鯉戦優勝、2015年に初の本因坊リーグ入りを果たし、今回挑戦者に躍り出た。棋風は「力強い攻めの碁」と評判だ。日本 最強の棋士、文裕に本木がどう戦うかが注目される。
開幕戦となった本局は黒番の文裕が厚みを活かして攻め、本木が実利を取ってサバく展開に。互角の戦いが続いたが、中盤、文裕が華麗な打ち回しを見せ優勢を築いた。19時8分、本木が投了。147手完、黒中押し勝ちで、文裕の白星スタートとなった。
第2局は5月23、24日(火・水)に島根県大田市「熊谷家住宅」で行われる。
囲碁ニュース [ 2017年5月1日 ]
井山 十段防衛!
第55期十段戦五番勝負の第4局が4月21日に日本棋院関西総本部で行われ、井山裕太十段が余正麒七段を白番中押し勝ちで破り、3勝1敗で防衛した。
井山の勝負強さが光ったシリーズだった。特に第1局でははっきり余が優勢の碁を逆転勝ち。どんなに危なくても最後にはなぜか勝ってしまう井山マジックを再確認させられた。一方、敗れた余にとっては悔しくも大きな収穫のあるシリーズだったのではないだろうか。昨年の王座戦で0勝3敗のストレート負けを喫し、公式戦で9連敗していた井山相手に第3局で1勝を挙げた。結果は及ばなかったが、大きな自信につながったに違いない。
グロービス杯
20歳未満の若手世界一を決める第4回グロービス杯世界囲碁U-20が4月21日から23日にかけて東京都千代田区で行われ、韓国の申真諝七段が初優勝した。
日本からは一力遼七段、許家元四段、姚智騰四段、六浦雄太三段、芝野虎丸三段、張瑞傑二段が参加し、グループリーグを抜けた一力、姚、芝野の3人が本戦トーナメントに進んだ。本戦トーナメントでは第1回優勝者の一力が第2回優勝者の黄雲嵩四段(中国)を破り、芝野が辜梓豪五段(中国)に大逆転で勝利。準決勝で両者ともに敗れてしまったものの、中韓に大きく差を付けられている中、ベスト4に日本勢が2人入った価値は大きい。最終結果は以下の通り。優勝・申真諝七段(韓国)、準優勝・卞相壹五段(韓国)、3位・一力遼七段、4位・芝野虎丸三段。
趙治勲 1500勝!
2度の大三冠や本因坊10連覇など、数々の偉業を成し遂げてきた趙治勲名誉名人(60歳)がまた新たに大記録を打ち立てた。4月27日、マスターズカップ第2回戦で片岡聡九段を白中押し勝ちで破り、史上初の1500勝を達成。11歳で入段し49年間、常に一線で活躍し続けていた積み重ねの結果だ。
趙自身は1500勝に気づいていなかったそうだが、局後、報道陣に囲まれると笑顔で取材に応じた。軽妙な語り口調で「本当はタイトルを取る方が尊いんでしょうけど、それはムリなので、ささやかながら楽しい話題を」と笑いを誘いつつ、「タイトルに届かなくても6合目くらいで与えられた役割を果たそうと思う。勉強して碁盤に向かう姿勢は持ち続けたい」と矜持を示した。
1500勝という記録については「嬉しい。1000勝の時はタイトルを取る方がいいと思っていたのでそんなに嬉しくなかったが、1400勝あたりから勝ち星が目標になってきた」と語った。時折、井山裕太棋聖の名前を出して「僕はダメだけど」と卑下しつつも、記者にタイトルへの気持ちを聞かれると「年のせいで勝てないと言うのは言い訳じみている。ひそやかにタイトルを取ろうという気持ちはある」と意欲を見せた。
驚くべきことに趙は入段してから一度も年間成績で負け越したことがない。還暦を過ぎてもなお一線に立ち続けられる理由、それは「常に今日より明日の方が強くなると思っている」という趙の言葉に象徴されるように、成長を信じて勉強し続けているからなのだろう。まだまだ打ち盛り。これから先どれだけの記録を積み重ねていくのか、想像もつかない。
囲碁ニュース [ 2017年4月14日 ]
新初段6人誕生!
4月は新しい新たな門出の季節。囲碁界でも初々しい新初段が誕生した。日本棋院では毎年東京本院、関西総本部、中部総本部でプロ試験が行われる。今年は本院から4人、関西総本部と中部総本部からそれぞれ1人、計6人が合格。3月28日に行われた合同表彰式で免状を授与され、それぞれ抱負を語った。
今回は6人の新初段の中から桒原駿初段(18歳)を紹介しよう。
桒原は夏季採用試験で合格し、他の5人より一足早く手合を打ち始めた。入段直後にも関わらず本因坊予選Aまでコマを進めるなど、その実力は折り紙付き。しかし彼は囲碁一筋の、多くの人が想像するいわゆる「棋士」か、というとそうではない。都立白鴎高校に通う現役の高校生で、成績優秀。文学に興味があり、「大学には進学するつもり」と話す。彼にとっては棋士も、大学進学も、知的好奇心を満たすための手段であって目標ではないのだ。
棋士を取り巻く環境は日々変化している。囲碁界は囲碁界だけで孤立してあるのではなく、社会の中で様々な分野の団体と関係しあって存立しているからだ。その中で、囲碁だけではない多角的な視点を持っている棋士がいれば頼もしい。取材を通して、桒原にはそういう存在であってほしいと感じた。
囲碁ニュース [ 2017年4月7日 ]
十段戦 余1勝返す!
井山裕太十段に余正麒七段が挑戦する第55期十段戦挑戦手合五番勝負第3局が6日、長野県大町市で行われた。井山の2勝0敗で迎えた本局は、井山がこのまま防衛するか、余が一勝を返すかの大一番だった。
結果は余の白番中押し勝ち。石と石が絡み合う難解な戦いを見事読み勝った。余の七大タイトル挑戦は王座に続き2回目。王座では3連敗で敗れ、苦杯をなめた。後がない状態は続くが、連敗を重ねてきた井山相手に1勝を挙げた価値は大きい。
本因坊 挑戦者は本木!
本因坊リーグの最終局が6日、一斉に行われた。とりわけ注目されたのは5勝1敗でリーグ首位の本木克弥七段(22歳)と4勝2敗で追う黄翊祖八段(29歳)との一局。本木が勝てば本木の初挑戦がきまり、黄が勝つと同じく4勝2敗で追っていた羽根直樹九段にも挑戦の可能性が出てくる非常に重い一局だった。
結果は本木の白番中押し勝ち。大一番を制し、初の七大タイトル挑戦を決めた。「できるだけ早く挑戦手合に出たいと思っていたのでよかったです」と本木。本因坊文裕(井山裕太本因坊)との七番勝負については「井山先生には研究会で打ってもらったことがありますが一度も勝てたことがありません。大変な戦いになると思いますが、精一杯頑張ります」と話した。
囲碁ニュース [ 2017年3月28日 ]
WGC 朴優勝 井山は4位
日中韓のトップ棋士とAIソフトによる世界戦、WGC(ワールド碁チャンピオンシップ)が21日から23日にかけて日本棋院関西総本部で行われた。出場者は井山裕太六冠(日本)、ミ昱廷九段(中国)、朴廷桓九段(韓国)の3人とDeepZenGo。総当たり戦を行い世界一の座をかけて競った。
井山は1日目に朴、2日目にミと対戦。両局とも手に汗握る大接戦となったが、一歩及ばず2連敗を期した。一方のDeepZenGoは思わぬもろさを露呈した。1日目にミ、2日目に朴と対戦し2連敗。序盤、中盤で華麗な打ち回しを見せリードを奪うも、終盤で失速し敗れた。開発チームの加藤英樹さんは「世界のトップ棋士相手にリードしたのは予想以上だった。結果は残念だったが、世界トップの方に打っていただけたから分かった欠点。ヨセに入ってからのエラーが多いということは、終盤の学習が不足しているのかもしれない」と分析。「欠点があるということはもっと強くなる余地があるということ。開発者としては得るものが大きかった。」と今後に期待を示した。
最終日は2勝同士で朴とミが激突。結果は黒番の朴が超難解な競り合いを制して中押し勝ちを収め、初優勝を果たした。一方の井山対DeepZenGoは黒番のDeepZenGoが卓越した大局観でリードを奪いそのまま勝ち切った。終盤での失速が心配されたが大きく崩れることもなく、本領を発揮したと言える。
敗れた井山は「機械が打っているという違和感がなく、とても強かった。はっきりとしたチャンスはなかったと思う」と振り返った。また、全体の成績について問われると「不甲斐ない結果で申し訳ない気持ちもあるが、それが今の自分の実力。世界のトップと対局して手ごたえをつかんだ部分と自分の足りない部分の両方が見えた。世界で勝つにはチャンスを逃さない力が必要」と冷静に分析し、前を向いた。
囲碁ニュース [ 2017年3月22日 ]
UEC杯 Fine Art優勝!
第10回UEC杯コンピューター囲碁大会が18日、19日、東京都調布市の電気通信大学で行われた。本大会は2007年、コンピューター囲碁がまだアマチュア級位者レベルだった頃に情報処理技術を支える新しい基盤的研究の一環として設立され、以来その発展に大きく貢献してきた。今年はディープラーニングという大きなイノベーションが起こったことを受け、プロレベルのソフトが次々と参入。超ハイレベルな戦いとなった。
出場した全30ソフトの中で決勝に勝ち進んだのは、昨年、趙治勲名誉名人と対戦したDeepZenGoと、世界最大のゲーム会社と言われる中国企業、テンセントが開発したFine Art(絶芸)。両ソフトともトッププロに並ぶレベルとあって、決勝戦は非常に見ごたえのある熱戦となった。「プロから見て違和感のある手が全くない」と解説のマイケル・レドモンド九段。序盤の感覚から読みの正確さまで、改めて技術の進歩を実感する内容だった。結果はfine Artの白番中押し勝ち。深い読みに裏付けされた見事な打ちまわしで中盤以降DeepZenGoを圧倒した。
テンセントが囲碁ソフトの開発に乗り出した背景には、自社が取り組むSNSのサービスや検索エンジンの構築にディープラーニングの手法が有用との見方があるようだ。開発チームは「ディープラーニングの手法を試みる素材として囲碁はとても優れていると思いました」と話す。
ソフトの発展は様々な人に様々なインパクトを与えた。囲碁愛好家の多くが感じたであろう、人間だけの特権と思われていたことが、そうではないと突き付けられた寂しさは否定しようがない。しかし一方でソフトによって囲碁の新しい可能性が開かれたという側面もある。そして、技術の側でも囲碁を通過点として新たなステップを踏もうとしている。アルファ碁の衝撃以来、あまりの変化の速さに認識・感情ともについていけていなかったが、本大会の取材を通して私たちが「すでに新しい時代の中にいる」ということを再認識させられた。
囲碁ニュース [ 2017年3月16日 ]
井山 棋聖5連覇!
第41期棋聖戦挑戦手合七番勝負第6局が9、10日に新潟県南魚沼市で行われ、井山裕太棋聖が挑戦者の河野臨九段を白番中押しで破り、4勝2敗でタイトルを防衛した。これにより井山は棋聖5連覇を達成。名誉棋聖を名乗る権利を得た。井山は昨年、本因坊を5連覇し二十六世本因坊文裕を、碁聖5連覇により名誉碁聖を名乗る権利を得ており、今回で3つ目の名誉称号となる。
先週、十段戦の初戦を白星で飾り、本局では充実の内容で6冠を堅持した。次の大勝負は21日から日中韓のトップ棋士にAIソフト「DeepZenGo」を交えて行われるWGC(ワールド碁チャンピオンシップ)。国内では敵なしの井山がどのような戦いを見せるのかが楽しみだ。
女流アマ 岩田さん初優勝!
アマチュア女性のナンバー1を決める第59回全日本女流アマチュア囲碁選手権大会が11、12日に日本棋院で行われ、岩田紗絵加さんが前回優勝の大島玲奈さんを決勝で破り初優勝を果たした。
岩田さんは院生経験があり、現在も大学に通いながらプロを目指している。「今まで色々な大会で2位ばかり続いていたので、やっと優勝できてとても嬉しい気持ちとホッとした気持ちがあります」と岩田さん。これからもプロを目指しつつ一般の大会にも積極的に出場していく予定だ。
囲碁ニュース [ 2017年3月9日 ]
十段戦 開幕
井山裕太十段に余正麒七段が挑戦する第55期十段戦五番勝負が7日、大阪府東大阪市「大阪商業大学」で開幕し、井山が黒番中押し勝ちを収めた。
昨年の十段戦は井山が史上初の七冠を達成したことで歴史的なシリーズとなったが、その挑戦者決定戦で井山と争ったのが今回の挑戦者である余だ。大注目を集めたその一局はほとんど余が勝利を手中に収めていたにも関わらず、最終盤で井山が逆転するという劇的な内容だった。余はその後、王座戦で挑戦するも3連敗で敗退。内容的には拮抗しているがあと一歩のところで勝ち切れない歯がゆい状態が続いている。
本局は黒番の井山が強手を放ちペースをつかんだが、打ち過ぎにより形勢不明の混戦に。一時は逆転もささやかれたが最後は大石同士の攻め合いを井山が制した。次局について「平常心で、全力で打ちたい」と余。あと一歩の壁を破り勝利をあげられるか。注目の第2局は3月30日、大分県宇佐市で行われる。
藤沢 新女流名人に!
謝依旻女流名人に藤沢里菜女流本因坊が挑戦する第29期女流名人戦三番勝負第2局が8日、大阪府東大阪市「大阪商業大学」で行われ、藤沢が白番1目半勝ちを収めた。これにより藤沢は2勝0敗で女流名人を奪取。9連覇中だった謝を押さえ、女流本因坊に続き2冠目を獲得した。
両者は間違いなく女流最強のニ人だが、棋風はまったく違う。謝が力強く攻めるタイプなら藤沢はじっくり地を稼いでヨセ勝負に持ち込むタイプ。本局は意欲的に局面を動かそうとする謝に対して藤沢がペースを乱さず地合勝負で勝ち切った。
「自分なりに打てたと思います。内容的にはおかしいところもありましたが、こういう結果になって嬉しいです」と藤沢。一方の謝は、「せっかくここまで来たので10連覇を目指していました。少し悔しいです」と話した。
囲碁ニュース [ 2017年3月1日 ]
大関さん 世界学生王座連覇!
第15回世界学生囲碁王座戦が2月21日、22日の二日間にわたって東京都中央区で開催された。12カ国地域16人の代表選手による4回戦のリーグ戦(スイス式)。日本からは学生王座の大関稔さん(専修大学)と藤原彰子さん(早稲田大学)が出場した。
結果は大関さんがオーストラリア、中国、中華台北、アメリカを破り、4勝0敗で優勝。昨年に引き続きトップに立った。日本の優勝はこれで3回目、連覇は初となる。
日本の学生のレベルは高いが、中でも大関さんの実力は別格と言える。昨年はアマチュア本因坊戦と学生本因坊のダブル優勝を筆頭に数多くの大会で優勝。現在進行中のアマチュアも参加できるプロ棋戦、阿含・桐山杯では潘善琪八段、小松英樹九段を破り予選Aに進出するなど、アマチュアの枠を超えて活躍している。
かつての平岡聡さんや洪爽義さん(現在は関西棋院プロ初段)のようにアマチュア代表のスター選手がいると盛り上がる。特に現在は棋聖戦にアマチュア枠ができるなど、オープン棋戦も多い。大関さんのさらなる活躍を期待したい。
井山 李世乭と対戦
井山裕太棋聖と韓国の李世乭九段によるエキシビションマッチが2月26日、東京都内のホテルで行われた。結果は李の黒番中押し勝ち。井山は世界のトップ棋士と対戦できたことについては「貴重な対局だった」と喜びつつも、内容については「反省点の多いまずい碁だった」と振り返った。
3月21日からはAI囲碁ソフト「DeepZenGo」と日中韓のトップ棋士によるリーグ戦(日本代表:井山、韓国代表:朴廷桓九段、中国代表:芈昱廷九段)、ワールド碁チャンピオンシップが行われる。井山はたびたび国際戦への意欲を示しており、周囲の期待も大きい。今回の対局はエキシビションとはいえ国内棋戦に追われる井山にとって、今後国際戦で戦う上での財産になったに違いない。
女流本因坊 本戦スタート
第36期女流本因坊戦の本戦が2月24日に開幕した。今期の本戦出場者の特徴は若手が多い点にあるだろう。木部夏生二段、宮本千春初段、田口美星初段、星合志保初段、新井満涌初段、稲葉かりん初段の6人はいずれも初出場。また、今年、女流棋聖戦の挑戦者となり一躍注目を集めた牛栄子初段にも注目が集まる。
実績において謝依旻女流名人が大本命であることは間違いない。しかし若手女流棋士のレベルは年々上がっている。藤沢里菜女流本因坊が瞬く間にトップに駆け上がったように、急成長して一気に時代を作る可能性も十分にあり得る。実績十分の実力者に対して若手がどのように挑むのか、今後の展開に注目だ。
囲碁ニュース [ 2017年2月17日 ]
プロ棋士ペア碁選手権
毎年の恒例となったプロ棋士ペア碁選手権2017が12日、日本棋院で開幕し、決勝に進出する2ペアが決定した。
本棋戦は日本を代表する棋士が勢ぞろい。しかも公開対局なので生で熱戦を観戦できる。トップ棋士の対局を間近で観戦できるとあって、多くのファンが詰めかけた。出場棋士は全員が実力者。しかしペア碁は単純な足し算ではないところが面白い。棋風、時間の使い方、タイミング…、どのくらい息が合うかという点がキーになってくる。
16組32人の中から決勝に進出したのは藤沢里菜女流本因坊、羽根直樹九段ペアと鈴木歩七段、趙治勲名誉名人ペアだった。藤沢と羽根は両者とも地にカラい力戦家。自然と棋風が合ったのだろう、順調に勝ち進んだ。一方の鈴木、趙ペアは安定感があった。特に鈴木は第1回夫婦杯(棋戦は2015年に終了)で林漢傑七段とともに優勝した実績があり、ペア碁の呼吸を熟知している。勝利の女神はどちらにほほ笑むのか。決勝戦は3月5日(日)、日本棋院で行われる。こちらも公開対局で観戦可能だ。興味のある方は下記URLから申し込んでみてはいかがだろうか。
http://www.pairgo.or.jp/pro/2017/
囲碁ニュース [ 2017年2月9日 ]
謝 女流棋聖5連覇!
第20期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負第3局が6日、東京都千代田区で行われ、謝依旻女流棋聖(27歳)が挑戦者の牛栄子初段(17歳)を2勝1敗で破り防衛、史上初の5連覇を果たした。これにより謝は名誉女流棋聖の有資格者となった。すでに名誉女流本因坊、名誉女流名人の資格も得ているため3つ目の名誉称号となる。
次々と大記録を打ち立てている謝だが、本シリーズはかなり追いつめられたと言っていいだろう。挑戦者の牛は入段2年目。入段時からいずれはタイトル戦の舞台に出てくる大器と注目されていたが、この一年でメキメキと力を付けた。1局目は謝が力で完封したが、2局目で牛が返し、迎えた3局目は非常に険しい戦いになった。序盤で謝がリードを奪ったが、牛が謝の打ち過ぎをとがめ一転攻勢に。大石同士の競り合いとなったが、牛の方に余裕がある形で新女流棋聖誕生は目前と思われた。しかし、謝が持ち前の勝負強さを発揮。大石同士の攻め合いを制し黒番中押し勝ちを収めた。
牛はよほど悔しかったのか、局後の検討ではほとんど口を開くことがなかった。それでも感想を求められると「自分なりに頑張れたと思います。チャンスはあったけれど実力が足りませんでした。これからも純粋な姿勢で一局一局頑張ります」と前を向いた。
一方の謝は史上初の5連覇に「まだ実感がわかない」と答えつつホッとした笑顔を見せた。「栄子ちゃんは気合がよく、その気合に圧倒される場面もありました。2017年、いいスタートが切れたので、女流名人戦も全力を尽くしたいと思います」。
囲碁ニュース [ 2017年2月6日 ]
余 十段挑戦へ!
来月開幕する第55期十段戦五番勝負の挑戦者は余正麒七段(22歳)に決まった。余は昨年の王座戦で井山裕太六冠に挑戦した新鋭。七大タイトルの挑戦手合に出場するのは今回で2回目となる。
1月26日に行われた挑戦者決定戦で争ったのは同じ関西棋院所属の大先輩、今村俊也九段(50歳)だった。今村は碁聖と王座に挑戦した経験がある実力者でその棋風は「世界一厚い碁」と評されるほど重厚な本格派。現在は関西棋院の理事としても手腕を発揮している。若手の活躍は頼もしく嬉しいが、ベテランの活躍もまた嬉しい。今村の挑決進出は多くのファンを元気付けたに違いない。
結果は終盤のわずかな隙を突き余の黒番半目勝ち。317手におよぶ大激戦を制した。王座挑戦の際には3連敗と苦杯を飲んだが、今回はリベンジなるか。注目の開幕戦は3月7日、大阪東大阪市「大阪商業大学」で行われる。
女流名人 挑戦者は藤沢!
十段戦とほぼ同時期に開幕する女流名人戦、こちらの挑戦者も決定した。
本棋戦は前期リーグ上位4人とトーナメントを勝ち上がった3人、計7人によるリーグ戦で挑戦者を決める。その中で6勝0敗と文句なしの成績でトップに立ったのは藤沢里菜女流本因坊だった。藤沢は弱冠18歳だが昨年の女流本因坊戦では謝依旻女流名人を3勝1敗で破り返り咲きを果たすなど、謝とならぶ第一人者と言える存在。文字通りの頂上決戦は見ごたえのある大熱戦になること間違いない。開幕戦は3月1日京都府京都市上京区「平安女学院大学 有栖館」で行われる。
囲碁ニュース [ 2017年1月26日 ]
Master解説会
昨年末から年明けにかけてインターネット上に突如として現れ世界のトップ棋士相手に60連勝という驚異の記録を残した謎の棋士「Master」は、その後ディープマインド社の発表によりアルファ碁の進化版であることが発表されたが、その動揺はまだおさまっていない。それはAIが人間を超えたという衝撃以上に、Masterの棋譜に囲碁4000年の歴史にない新しい打ち方が含まれていたからという部分が大きいように思う。
1月22日、日本棋院でAI囲碁に詳しい王銘琬九段、マイケル・レドモンド九段、大橋拓文六段による「Master解説会」が行われた。当初定員50名の予定だったが予想以上に詰めかけたファンが多く、急きょ部屋を広げ最終的には100人以上が参加したと言う。集まったファンは棋力、年齢、性別がさまざま。一般に幅広い関心を集めていると感じた。
新しいということで一致していても、どのように新しいかという解釈が三者三様だったのが面白い。例えば王九段は「アルファ碁は中央指向で戦わずして勝つという感じを受けたが、Masterは戦いを避けることをしない。中央指向なのかと思えば2線をハウことにも抵抗がないのが違うところ」と説明。一方でレドモンド九段は模様の名局を取り上げ「とてもバランスが良くストーリーを描いて打っているかに見える。機械らしくない」と評し、大橋六段は足早に地を稼いで相手の壁を攻めたてた碁を取り上げ「模様も地も相手には両方あげない。人間は模様なら模様、地なら地と一貫性を求めてしまうがそういうことにとらわれないのがすごい」と語った。
この解説会は29日(日)にも日本棋院で行われる。囲碁史上「新布石時代」以来の大転換。今何が起こっているのか生で実感したい人におすすめだ。
囲碁ニュース [ 2017年1月20日 ]
棋聖開幕!
井山裕太棋聖に河野臨九段が挑戦する第41期棋聖戦挑戦手合七番勝負の開幕戦が14日、島根県安来市の「さぎの湯荘」で行われ、河野九段が白番中押し勝ちを収めた。
井山、河野ともに自由に発想して、さまざまな打ち方を試すタイプ。折しもアルファ碁の進化版Masterが現れ、長い間の常識が次々と覆されている最中だ。AIの誕生が両雄に少なからずインスパイアを与えているのは間違いない。本局でも随所に彷彿とさせる場面があった。かつての新布石時代のようなパラダイム転換が起きようとしている今、この大舞台で二人はどのような碁を見せてくれるのか。シリーズを追うごとに内容が深まっていくに違いない。注目の第2局は1月22日、23日、熊本県菊池市「笹乃家」で行われる。
女流棋聖謝先勝!
謝依旻女流棋聖に牛栄子初段が挑戦する第20期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負が19日、神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」で開幕した。
牛の黒番でスタートした本局は下辺で始まった戦いが中央にまで発展した。くんずほぐれつの大乱戦となったが、最後は謝の読みが一歩上回り白番中押し勝ちに。防衛まであと1勝とした。
実は本局が両者の初手合。それもあって、牛は少し緊張していたかもしれない。一矢報えるか、それともこのまま防衛か。第2局は1月30日に東京都千代田区の「竜星スタジオ」行われる。
囲碁ニュース [ 2017年1月13日 ]
プロの団体戦 トライカップ開幕!
今年新設されたトライカップ プロ囲碁団体戦が1月10日に開幕した。女流棋士1人を含む3人1組の団体戦。優勝チームには賞金100万円が授与される。本棋戦の特徴はチームメイトやチーム名がすべて自由な点。アマ大会ではよくある団体戦だがプロ棋戦には珍しい。
出場チームは全部で33組。その中から注目チームをいくつか紹介しよう。「小松家」のメンバーは小松英樹九段、小松英子四段、小松大樹二段。親子チームが息の合ったチームワークでどこまで勝ち上がるか注目だ。「謝ファミリー」はその名の通り謝依旻女流名人と謝を慕う平田智也七段、本木克弥七段による実力派チーム。そして中部総本部は羽根直樹九段、伊田篤史八段、王景怡二段というベストメンバーでチーム「天和」を組んできた。この2チームが優勝候補の筆頭といったところだろうか。
棋士の団体戦といえば国際戦などシリアスなものが多いが、ここでは仲間を誘って楽しく参加しているのが見て取れる。囲碁ファンにとっても棋士の交友関係が垣間見えて楽しい企画だ。他にも棋士の意外な一面が見られるかもしれない。この企画、ちょっと覗いてみてはいかがだろうか。
囲碁ニュース [ 2017年1月10日 ]
1月5日 打ち初め式
毎年1月5日は「囲碁の日」。日本棋院では「囲碁の日」に打ち初め式が行われる。式典には多くの囲碁ファンが集まり、高尾紳路名人と昨年新人王を獲得した大西竜平二段による新春記念対局や指導碁などを楽しんだ。
一つの注目ポイントは名誉タイトル保持者およびタイトル保持者の挨拶だろう。昨年七冠の井山裕太棋聖を破って名人に輝いた高尾紳路名人は「昨年はいい年になった。酉年ですが鳥のように羽ばたくとはいかないと思うので、鶏のようにコツコツ頑張ります」とユーモアを交えて語った。また1月14日から井山裕太棋聖に挑戦する河野臨九段(昨年の阿含・桐山杯優勝者)は「少しでも囲碁界を盛り上げられるように、まずは棋聖戦を頑張りたい」と抱負を述べた。
謎の「Master」アルファ碁の改良版
年末から年始にかけてネット上で「Master」というハンドルネームの謎の打ち手が現れ、柯潔九段や井山裕太棋聖と思われる世界のトップ棋士を次々と撃破し話題となっていた。60戦して全勝という桁違いの強さと着手の速さからAIソフトだろうと言われていたが、5日、ディープマインド社のCEO、デミス・ハサビス氏が自身のツイッターで「Master」がアルファ碁の改良版だったことを明かし謎が解けた。ハサビス氏は「非公式のテストは終了した。今年中に公式対局を打てるのを楽しみにしている」と結び、新たなステップがあることを予告。2017年、早くもAIによって囲碁界が揺さぶられている。