日本囲碁ニュース
日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。
囲碁ニュース [ 2021年12月21日 ]
大竹英雄名誉碁聖引退
大竹英雄名誉碁聖が、12月15日、東京都千代田区の日本棋院で記者会見し、現役引退を表明した。大竹名誉碁聖は1956年にプロ入りし、通算1317勝。名人4期、碁聖5連覇など、タイトル獲得数48は、歴代5位の記録となる。林海峰名誉天元とともに「竹林時代」と呼ばれる一時代を築き、盤上の美しい形から「大竹美学」と命名された棋風は、多くの囲碁ファンを魅了し続けた。また、日本棋院理事長も兼任し、日本囲碁界の発展に尽力した。会見の席では「木谷實先生のところに入門を許され、そのとき9つでしたから、丸丸70年という節目ということもあり引退を決めました」「木谷先生ご夫妻、ご家族、先輩・兄弟弟子に恵まれ、入段してからは先輩の先生方、同僚、後輩の棋士…みんな素敵な仲間と出会えて、その間に、日本全国、世界中のいろんなファンの方にお目にかかりいろいろご指導いただいて……素晴らしい囲碁界に過ごせたことを本当に嬉しく思っています。長い間、応援、激励、私を助けていただき、ありがとうございました」と心のこもったあいさつ。続く記者たちの質問に答え、引退のきっかけを「碁盤に向かって頭の中に浮かぶ図が、貧相になってきた。自分に『覚悟しなさい』と11月ころから思うようになった」と明かした。今後は、公式戦は引退するが、「健康上の問題は全くなく、囲碁界のために自分のできる範囲で力を尽くし、ファンの皆様とご一緒に過ごさせていただきたいと思います」と終始笑顔で語った。
青木喜久代初代テイケイ女流レジェンド
今年新設された、テイケイ杯(テイケイ株式会社協賛)の中の「第1回 テイケイ杯女流レジェンド戦」の決勝戦が、12月11日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、青木喜久代八段が加藤朋子六段を降して優勝を決めた。本棋戦は、45歳以上かつ女流棋戦タイトル獲得経験棋士、開催前年の七大タイトル戦の獲得賞金額に女流棋戦の獲得賞金を加えた獲得賞金ランキング上位女流棋士によるトーナメント戦で、第1回は13名がエントリーされた。決勝戦は、難しい戦いが続く中、加藤が優勢に進めたが、その後の振り替わりで青木に逆転を許したようだ。青木は「戦いが一段落したときは厚くなり、打ちやすいと思っていたのですが、局後にAIで確認したら、まだ互角の形勢でした」と、楽観派らしいコメントに続き、「優勝できるとは全く思っていませんでした。ただ、参加人数が少ないので、あれ、もう決勝? という感じでゴールが近かったです。初代のタイトルホルダーというのは嬉しいものですね」。また、ベスト4に残った青木、加藤、保坂繭三段、佃亜紀子六段は、「第1回 テイケイ杯レジェンド戦」の本戦に出場できる。青木は「レジェンド戦に出られるのが嬉しい。ご褒美です」と明るい声で喜びを語った。
ペア碁も強かった両雄
コロナ禍の中、二度に渡って延期されていた「プロ棋士ペア碁選手権2021(第27回大会)」(公益財団法人日本ペア碁協会主催)が、11月23日、東京都千代田区の日本棋院で開催された。開会式では日本ペア碁協会筆頭副理事長の滝裕子氏が「夢のよう」と語り、棋士たちも「楽しみにしていた」と口々に語った。感染対策のもと、二十四世本因坊秀芳(石田芳夫二十四世本因坊)と吉原由香里六段に加え、敗れたペアも加わるという豪華な大盤解説会も行われ、集まったファンもまた「夢のよう」な時間を堪能する一日となった。どのペアが優勝してもおかしくない強豪16ペアが揃い、1回戦から準決勝までの3局が打たれ、どの対局も期待どおりの熱戦が繰り広げられた。その中で、決勝に進んだのは知念かおり六段・一力遼九段ペアと、牛栄子三段・井山裕太五冠ペア。今年、タイトル戦を戦い続けた一力と井山は、ペア碁も強かった。注目の決勝戦は、2月13日に行われる。
今回は、知念と牛に改めて大会を振り返ってもらった。
牛は、これまでペア碁であまり勝てたことがなく、実はなぜ勝てないのか反省と分析をしていたと言う。そして「こわがりすぎたり、緊張しすぎてもよいことはない。できるだけ自分なりに思い切り打とう」と臨んだ大会だった。「井山先生とは初めてペアを組むので、やはり緊張してしまい、1回戦(vs小山栄美六段・瀬戸大樹八段ペア)の布石では、井山先生の意図を汲めてないのではないかと心配になり、先生のリズムもわからず、不安にもなりました。でも運よく勝てて、自信になり、2回戦(vs吉田美香八段・山下敬吾九段)は、もちろんミスもあったのですが、自分なりによく打てたかなと思います」と牛。だんだん「私が変なことをしても、まあ、井山先生がいるから大丈夫」と思うようになり、「隣にいてくれるだけで心強かった」と笑う。準決勝は、謝依旻七段・許家元十段ペアとの一戦。見るからに戦いが強いペアだが、見事に勝利した。牛は「打っているときは、井山先生についていくだけでいっぱいいっぱいでした。勝つことができ、自分でもビックリしています」。決勝戦に向けては「ここまで勝てるとは思っていなかったので、嬉しくて、自分一人の対局なら目標達成と思ってしまいます。でも、井山先生がいますので、迷惑をおかけしないように、精一杯がんばろうと思います」と語った。
知念は、過去に結城聡九段とペアを組んで優勝したことがある。「あれが、もう25年も前なんですって」と知念は笑い、「優勝したことも、決勝戦に進んだのも、そのときの1回だけ。3局打って疲れたのですが、充実と感動の時間でした」と語る。一回戦(vs大澤奈留美五段・高尾紳路九段ペア)は「序盤、一力さんのすごくいい手から流れを掴んだのですが、コウ争いから難しくなって、相手の真ん中の模様がどのくらいまとまるかが勝負。でも心配していたほどまとまらず、勝つことができました」。2回戦(vs上野愛咲美女流棋聖・羽根直樹九段ペア)は、「劣勢からの大逆転」と知念。「相手の技も決まり、寄り付きもうまくいかず……コウになったのですが、負けを覚悟していた」という。だが、「相手がコウを立てる順番を誤り、一力さんがコウを解消して、勝ちになりました」とのことだ。準決勝の相手は岩田沙絵加初段・鈴木伸二七段ペア。二十四世本因坊秀芳が「ダークホース」と注目していたペアで、「一番負けたと思っている時間が長かった碁」だという。「ヨセになってからも、苦しくて、いつ投げてもおかしくないと思ってたんです。でも、横を見たら、一力さんは諦める様子が全くなくて、私もがんばらなくちゃと思いました」。そして、劇的な逆転半目勝利につながった。まだ感激が続いているような様子の知念は、最後に「一力さんからは、碁への厳しさも伝わってきましたし、対局を離れると穏やかで検討時も優しい。決勝戦は、足は引っ張ってしまうのですが、なるべく小さく、と思っています」と語った。
囲碁ニュース [ 2021年12月14日 ]
井山、王座を奪還し五冠
今年最後のタイトル戦、第69期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第5局が、12月9日に山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれ、161手まで、挑戦者の井山裕太棋聖が、芝野虎丸王座に黒番中押し勝ちし、タイトル奪取した。序盤早々、黒の実利と白の厚みという骨格が出来上がる。芝野も井山も「形勢判断が難しかった」と振り返るように、中盤までAIの勝率は互角のまま進む。だがじわじわと井山が流れを作り、シノギ勝負に。実利で大きくリードされた白が、白模様の中の黒石を取らなければ勝てないという碁に持ち込み、シノギきって芝野を投了に追い込んだ。井山は本シリーズを「負けた2局は、苦しい時間が長い内容でしたし、勝った3局も紙一重でした。また王座を取ることができうれしく思います」と振り返り、「農心杯」での4連勝や国内戦での今年一年の活躍について「世界戦も国内戦も厳しい戦いが続くなか、よくここまでできたなという思いです」、五冠となったことについては「三冠までタイトルが減った時、客観的に見てもここから数を増やしていくのは難しいと思っていたのですが、こうして五冠まで増やしていけたことをうれしく思います」としみじみ語った。
タイトルを失い無冠となった芝野は「タイトル数については気にはしていません。新しい気持ちでまたがんばりたいと思います」と巻き返しを誓った。
囲碁ニュース [ 2021年12月13日 ]
世界アマ日本代表決定戦
東京市ヶ谷の日本棋院にて来年の世界アマ選手権の日本代表の座をかけて平岡聡アマ本因坊と大関稔アマ名人によって行われた。例年は全国大会が行われ優勝者が日本代表になるが、コロナ対策により開催されなかった。そこでアマ本因坊とアマ名人による頂上決戦となった。
平岡アマ本因坊(51)は、アマ十傑(アマ名人の前身)1回、アマ本因坊5回、世界アマ日本代表5回と数多くの全国優勝を果たしている。大関アマ名人(27)はアマ名人3回、アマ本因坊2回と、こちらもアマ碁界若手のエースである。このようにアマ碁界で活躍している両者であるが、団体戦で1局とペア碁を除いては意外にも個人戦の公式戦では初対局である。
平岡アマ本因坊が初手5の五、3手目大高目という大胆な布石でスタート。途中まで互角で進んだが、大関アマ名人にミスが出て、そこからは平岡アマ本因坊が押し切った。
頂上決戦を制した平岡アマ本因坊は「代表は正直この年ですので、アマチュア碁界のことを考えると代表は私ではない方がいいのかなと。出させていただくからには勝ちたいが、楽しめればいいかなと思います」と世界戦への抱負を語った。初の日本代表を狙っていた大関アマ名人は「チャンスが来て狙っていたがこの大会(世界アマ)とは相性が悪い。アマ名人が、アマ本因坊が、というのは気になっていないが、最近の調子が悪いのを引きずって対局に臨んでしまった。納得のいく碁が打ちたかった」と悔しさを滲ませた。
2016年以来の6度目の日本代表となった平岡アマ本因坊は、1994年、2006年に続く3度目の世界一を目指す。
囲碁ニュース [ 2021年12月7日 ]
井山、農心杯4連勝
日本・中国・韓国の5名ずつによる勝ち抜き団体戦「第23回農心辛ラーメン杯 世界囲碁最強戦」の第2ラウンド(第5~9戦)が11月26~30日にネット対局にて行われ、日本のエース井山裕太九段が日本選手としては新記録となる4連勝を決め、日本囲碁界を大いに沸かせた。 10月11~14日に行われた第1ラウンド(第1~4戦)の日本勢は芝野虎丸九段が1敗、許家元九段が1勝1敗。この結果、日本は3人、中国と韓国が4人を残して第2ラウンドを迎えた。巻き返しを期して、日本は3番手に井山を投入。前日(第5戦)で韓国の朴廷桓九段を破った中国の范廷鈺九段との一戦は、苦しい形勢から井山が逆転した。「范さんは農心杯で抜群の成績。この碁に勝てたのが大きかった」と井山。ここから波にのり、第7戦で韓国の卞相壹九段、第8戦で中国の李欽誠九段、そして第9戦で韓国の申旻峻九段を降して4連勝。申九段戦も一度は苦しい形勢になりながら、ハードパンチを繰り出しての勝利だった。井山は「内容はともかく、最高の形で(このラウンドを)終えられ、うれしく思います。どの相手も世界トップクラスで、これだけ勝てたことに自分でも驚いています。一局一局自分のベストを尽くせたのがよかった。この成績を継続できるようにしていきたい」と語った。井山の躍進により、残りの選手は韓国が1人、中国が2人、日本が3人(井山九段、一力遼九段、余正麒八段)となって来年2月21~25日の第3ラウンドに臨むこととなった。また、最終局に日本選手が出場することが約束され、日本の2位以上が確定した。
芝野王座、タイに戻す
芝野虎丸王座1勝、挑戦者の井山裕太棋聖2勝で迎えた第69期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第4局が、12月3日、神奈川県秦野市の「陣屋」で行われた。序盤は黒番の芝野は「挑戦者の気持ちで」奔放に打つ。上辺で黒を取らせ、この黒石をうまく活用できるか否かが懸案のまま残ったが、両者は「白が打ちやすい」という判断で一致していた。その後、芝野は落ち着いて勝機を待ち、右辺の攻防でその時がきた。「右辺の黒模様で白に生きる道を選ばれていたら、負けていたと思う」と芝野は振り返り、井山も「右辺を捨てて中央を取る判断がおかしかった」と無念の表情。中央の攻防でフリカワリとなった時点で、芝野は優勢を意識したという。右辺の大きな黒地を黒159と手堅く守ったのが勝利宣言。井山を投了に追い込んだ。スコアを2勝2敗のタイに戻した芝野は「とりあえず最終局まで行けてよかったというのが正直な感想です。次もこれまでと変わらず、集中して打ちたい」、井山は「これまでと変わらずやるだけ。少しでもいい状態で臨めるようにしっかり準備したい」と、それぞれ平常心を強調するコメントを残した。井山が五冠となるのか、芝野が三連覇とするのか、注目の最終局は、12月9日に山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて打たれる。
関航太郎天元誕生
一力遼天元に、関航太郎七段が挑む第47期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)は、11月25日に福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世久留米」で行われた第3局を挑戦者が制し、天元をカド番に追い詰めた。そして、12月6日、注目の第4局が兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われた。結果は、一力の大石を仕留めて関の黒番中押し勝ち。シリーズを3勝1敗とし天元を奪取した。20歳0カ月での七大タイトル獲得は、芝野虎丸王座の5年1か月を抜き史上2番目の若さ、天元戦では最年少記録となる。また、入段から4年8カ月での七大タイトル獲得は史上最短を記録した。局後の関は、本局を「見ていない変化がたくさんあって、取れたのは運がよかったが、実力は出しきれた」と振り返り、「天元戦は今年初めて本戦に入り、まさかここまで来られるとは本当に思ってなかった。開幕前もここまで戦えると思ってなかったので、内容的にも実力以上のものが出たのかなと思う。出来過ぎたところはあるかなとは思うのだが、今までやってきたことが一つの結果として残せたのはよかった」と謙虚に喜びを語った。一力は「信じられないミスを打ってしまった。正しいコースでずっと読んでいて、なんで実戦は打ってしまったのか。こんなミスをしているようではダメです」と自身を叱責するように振り返り、「本局だけでなく、最近はタイトル戦でこういう簡単なミスが続いているので、結果もしょうがないかなという感じです。また、ゼロからやり直すしかないかなと思います」と絞り出した。碁聖に続いて天元を失い、一力にとっては苦い一年となったが、年明けの棋聖戦七番勝負からの巻き返しに期待したい。
囲碁ニュース [ 2021年11月26日 ]
高川秀格 殿堂入り
11月24日、日本棋院において第18回囲碁殿堂入りに高川格九段(二十二世本因坊秀格)が決定した。高川は本因坊9連覇他、名人も獲得しており昭和を代表する棋士として知られる。
高川格は第7期本因坊戦で橋本昭宇本因坊(橋本宇太郎)との七番勝負に4勝1敗で勝って本因坊位に就き、本因坊秀格と号した。以降、第15期まで9連覇し、名誉本因坊として高川秀格と号し、後に二十二世本因坊を贈られる。世襲制の本因坊は二十一世本因坊秀哉までで、その後は選手権制となった本因坊位を初の5連覇で本因坊の名を継いだ。これ以降、5連覇を達成した坂田栄男、石田芳夫、趙治勲、井山裕太が二十三世以降を名乗っている。
本因坊9連覇という記録は「不滅の金字塔」と言われていたが、平成10年に趙治勲(二十五世本因坊)の10連覇により破られることになった。その記録も現在は井山裕太(二十六世本因坊文裕)に並ばれている。
昨年の藤沢秀行名誉棋聖に続き昭和を代表する名棋士の殿堂入りとなった。
菊池康郎氏逝く
11月3日、アマチュア囲碁界の巨星菊池康郎氏が逝去された。アマ大会での優勝も数多いが、緑星学園を主宰し、囲碁普及にも尽力された。緑星学園からは山下敬吾九段をはじめとする数多くの棋士を輩出している。また、日本ペア碁協会の評議員も長年務められた。
心よりご冥福をお祈りいたします。
囲碁ニュース [ 2021年11月24日 ]
井山、難戦を制し王座奪還に王手
芝野虎丸王座が、挑戦者の井山裕太四冠に1勝を返して迎えた第69期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第3局が、11月19日、新潟県南魚沼市の「ryugon」で行われた。互いに模様を張り合う立ち上がりから、白番の芝野が右辺の黒模様に果敢に打ち込み戦いがスタート。白が黒数子を取り込み黒が厚みを築いて一段落した時点では、両者「やや白が打ちやすい」という判断で一致していたようだ。その後、黒が白の左上に侵入するが最強に受けられて「さらにまずくしていると思った」と井山は振り返る。この思いから、101手目で、白模様に深く踏み込み、ここから難解を極める戦いに突入した。判断の難しい碁で、両者の思惑とは異なり、AIの評価は終始互角。むしろやや黒よしとする時間が長かった。難解な戦いに突入してからはAIの評価値も揺れ、新聞解説の張栩九段は「めったに見ることのない、きわめて難解な攻め合い」となったが、黒が上辺をコウに持っていくと、コウ材は白が足りない。コウ材を増やしつつ中央の黒に迫る白158が捻り出した好手に思われたが、続く黒159が素晴らしい返し技だった。張九段、YouTube解説の鶴山淳志八段も思わず「そこからか!」「きれいな筋!」と声をあげ、これが決め手となった。黒がコウを解消し、白が中央の黒を取るフリカワリは白の利が大きく勝負が決した。立会人の王銘琬九段が「二人とも碁盤全体に目配りして局面を広く使っていた。複雑ながら拮抗した時間が長く続いた名勝負だった」と評した本局は黒183手まで、井山が黒番中押し勝ちを収め、タイトル奪還に王手をかけた。井山は「まだまだ大変なので、スコアはあまり意識せずにコンディションを整えて精一杯やりたい」、芝野は「星のことは気にせずまた次がんばりたい」と抱負を語った。第4局は、12月3日に神奈川県秦野市の「陣屋」で行われる。
上野愛咲美、藤沢里菜に続く快挙
女性棋士の活躍が目覚ましい今年、上野愛咲美女流棋聖がまたも快挙を達成した。30歳以下、七段以下の棋士が参戦する第16回広島アルミ杯・若鯉戦本戦トーナメント(広島アルミニウム工業特別協賛)が11月20、21日に行われ、上野が準決勝で六浦雄太七段を破り、決勝では西健伸五段に225手まで黒番中押し勝ちとし、優勝を決めた。同棋戦では昨年は藤沢里菜女流三冠(当時)が優勝。この男女混合の公式戦で女性棋士が優勝する史上初めての快挙に、上野が続いた。今年は新人王戦でも決勝に進出しながら1勝2敗で敗れた。その雪辱も果たした上野は、「たくさん打てたことが嬉しい。まさか優勝できると思ってなかったので、すごく嬉しいですし、里菜先生に続けたことが本当に嬉しいです。決勝の碁は、序盤と中盤に問題があってあまりいいとは思ってなかったですが、中盤の終わりころからは結構うまく打てたかなと。自分にあまり期待していなかったので、気楽に打てたのが逆によかった」と喜びを語った。敗れた西は、「ひどい碁を打っちゃって……もうちょっとうまく打ちたかったです」と無念のコメントだった。
また、上野はこの2日間で4勝を加えて47勝(21敗)とし、令和元年に記録した44勝(25敗)の女性棋士最多勝を更新。さらに全棋士の中でも今年の最多勝を確定させた。女性棋士が最多勝で1位になるのも史上初だ。
囲碁ニュース [ 2021年11月17日 ]
芝野、1時間50分の長考から王座戦1勝
芝野虎丸王座に井山裕太四冠が挑戦する第69期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第2局が、11月12日、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」にて打たれた。芝野は、本因坊戦七番勝負の後半3連敗に続いて、本シリーズの第1局にも敗れ、対井山戦は4連敗中。流れを変えたいという強い思いは、序盤の黒55に1時間50分を投じさせた。「白52、54の手段を深く考えてなくて」と淡々と振り返るが、持ち時間3時間の対局では相当な覚悟と勇気が必要な大長考だった。その後の複雑な上辺の攻防はフリカワリとなり、芝野は「まずそうで、大変な碁になったと思っていた」、井山は「最初は悪くないのかなと思って打っていたのですが…どこまでいっても形勢判断がわからなかった」とそれぞれ振り返る。芝野は、右上に残った黒から仕掛けるコウをにらみながら左辺に手をつけ、その後の黒109の切りが厳しかったようだ。白を分断し絡み攻めの様相となり、攻めながら下辺に大きな地を作って勝勢とした。早い時期から秒読みになりながらも、勝負手を連発する井山の粘りを振り切り、201手まで黒番中押し勝ちを収めた。局後の芝野は「とりあえず一つ勝ててホッとしたというのが正直なところ。第3局もこれまでと変わらず集中して打ちたいです」、井山は「また仕切り直して、次からも精一杯がんばりたい」とそれぞれ語った。第3局は、11月19日、新潟県南魚沼市の「ryugon」で打たれる。
一力天元、貫禄の逆転勝ち
一力遼天元に、挑戦者の関航太郎七段が先勝して迎えた第47期天元戦(新聞三社連合主催)の第2局が、11月16日に北海道札幌市の「ホテルエミシア札幌」で行われた。序盤早々、左上の「ダイレクト三々」からの攻防で黒番の関がリードを奪い、AIの評価が大きく黒に傾く時間が続いた。だが、優勢を意識した関が、右下の大きな地の手を選ばず中央の黒を補強すると、一力が右下の黒にモタレながら右辺に30目の白地を出現させ、一気に逆転した。その後も、「ダメにした瞬間が何度かあった」と一力が振り返る難解な戦いが続き、さらに難解な寄せに突入するが、一力がリードを手放さず、最後はコウで右下の黒を仕留めて決着。286手まで、関の猛追を退け、中押し勝ちを収めた。局後の関は、「わかりやすい見落としがあったのは反省点。いろいろ難しいところが多く、時間もあまりなくて正しく打てていないところが多すぎたと思う。もう少しいい手を探さなければいけなかった」と反省しつつも、若手らしく「今日の碁はちょっと残念でしたが、内容的にはけっこう楽しく打てている」と手応えも口にした。一力は「反省点が多い碁だった。序盤もですし、秒読みに入ってからもかなり乱れたので修正しないといけない」とやはり反省を述べ「次局はすぐなので、気を引き締めてがんばりたい」と結んだ。第3局は、福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2021年11月9日 ]
井山防衛、名人位譲らず
井山裕太名人が防衛して「大三冠」(棋聖・名人・本因坊)のまま第一人者に居座るのか、一力遼天元が新名人となり時代が変わる幕開けとなるのか。注目の第46期名人戦七番勝負の第7局(朝日新聞社主催)が、11月4、5の両日、静岡県河津町の「今井荘」で行われた。7局目は握り直して、井山が先番。序盤早々右下で険しい競り合いがスタートすると、戦いが中央・下辺、さらに左辺から全局へと波及していく展開となった。一日目からAIの評価では黒が優勢を築いていたが、両対局者にはその感覚はなかったようだ。「封じ手のあたりも、二日目に入ってからも難しいと思っていた」と井山は振り返る。局面が大きく揺れたのは、左辺で一力が放った白96のノゾキに対して、井山がツガずに黒97のマゲで応じた瞬間だった。この手が白96を咎め、「名人防衛の一手」となった。一力は「ノゾキは軽率だった」と悔やむ。勢い白が切ると左辺の黒を取れるが、代償として下辺を大きな黒地にされる。一力は手を出せず転戦するが、ここで井山が左辺に連打して逆に白5子を取り込み、地合いでは白が追いつけない形勢に。白は中央の黒の大石を取らなければ負けという碁になった。一力は必死に取りかけに向かうが、黒のしのぐ道を断つことはできず、129手まで無念の投了を告げた。井山がシリーズ2勝3敗からの逆転で2連覇を達成。通算8期目となる「名人」を堅守した。局後の井山は、一力について「こちらがいい勝ち方をしても次の局ではきちんと立て直してきた。そういう修正能力や、形勢が難しくなっても簡単に土俵を割らない粘り強さなど総合的に成長されているのは間違いない」と振り返り、「一力さんをはじめとする若い棋士たちが台頭してくる中で結果を残せたことは、自分の中で大きな意味がある」と喜びを語った。井山は、年内は芝野虎丸王座に挑戦する五番勝負、年明けには一力の挑戦を受ける棋聖戦七番勝負が控えている。今後の抱負を尋ねられると、「目の前の結果に一喜一憂しすぎず、自分が進歩しているかということだけ考えてやっていきたい」など、頂点に立つ者にしか見えない景色、心情について淡々と語った。まだまだ井山が歴史を作り続けるのか。今後も囲碁界のトップ争いから目が離せない。
SGW杯中庸戦、潘善琪八段が優勝
第4回SGW杯中庸戦(日本棋院主催。株式会社セントグランテW協賛)の本戦3回戦と決勝戦が、11月7日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。日本棋院所属の31歳以上60歳以下で、七大タイトル、竜星戦、阿含桐山杯、SGW杯の優勝経験がない棋士が出場し、16名が本戦に勝ち上がる。3連勝して決勝戦に駒を進めたのは、潘善琪八段と奥田あや四段だった。潘は名人戦、本因坊戦でリーグ経験のある実力者。奥田は、同期の謝依旻七段、向井千瑛六段の実績の陰に隠れてきた感があるものの、女流本因坊戦の挑戦者に名乗りをあげたこともある実力者ぶりを発揮し、女性で唯一人本戦入りし一気に決勝まで駆け上がった。女性棋士初の優勝に期待がかかったが、今一歩届かなかった。結果は、潘が黒番3目半勝ちを収め、嬉しい初タイトルを手にした。
囲碁ニュース [ 2021年11月4日 ]
王座戦開幕。井山が先勝
3連覇を期す芝野虎丸王座に、3期ぶりの復位を狙う井山裕太四冠が挑戦する第69期王座戦(日本経済新聞社主催)の挑戦手合五番勝負が開幕した。第1局は10月29日に神奈川県横浜市の「横浜ロイヤルパークホテル」にて打たれ、205手まで、井山が黒番中押し勝ちを収めた。序盤は井山が実利で先行し、芝野が模様で対抗する碁形となるが、錯覚があったか中央で白3子を取られ、芝野は「はっきり苦しくした」と振り返る。だが、井山の「3子取れたときは少し打ちやすいのかなと思ったが、その後もいろいろ変化してどこまでいっても難しい碁だった」という言葉どおりの展開をたどり、芝野が猛烈な追い上げを見せていった。新聞解説の高尾紳路九段は「井山四冠の有利な時間が長かったとはいえ、芝野王座もさすがの粘りで実力を発揮し、難しい局面が続いた好勝負だった」とコメントする。最後は、勝負手気味の芝野のヨセの手に井山が的確に応じて差が広がり投了となった。第2局は11月12日に兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」で打たれる。第2局に向け、芝野は「五番勝負なのでまだまだ長いと思いますが、一局ずつがんばりたいです」、井山は「他にも大変な対局が続きますので、一つ一つ精一杯やっていきたいと思います」とそれぞれ抱負を語った。
囲碁ニュース [ 2021年10月26日 ]
名人戦、最終局へ
井山裕太名人2勝、一力遼天元3勝――挑戦者が名人をカド番に追い詰めて迎えた第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第6局が、10月19、20の両日、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で行われた。多くの報道陣が見守る中、159手まで、一力が無念の投了。井山が黒番中押し勝ちを収め、スコアをタイに戻し、決着は最終局に委ねられることになった。勝てば名人という状況で「一力さんは少し緊張気味かもしれない」と、新聞解説の孫喆七段が心配する中、一日目は右上で一力が仕掛けて碁が動き出した。「(右上の)カタツキから気合いの進行になり、ハサミツケからも想定の進行でしたが…その後のコウを2手かけて解消するのでは自信が持てなかったが、そう打つよりなかった」と一力は振り返る。逆に井山にコウを解消されて形勢が傾いたようだ。二日目も一力は保留していた右上で再び仕掛けるが、挽回の手段はなく、孫七段は「相手の読み筋通りに打たせ、自分はさらにその読みの上をいく井山さんの得意技。一番相手の心が折れる戦法です」。その後、実利で先行している井山はさらに稼ぎ、左辺の大石のシノギ勝負に出る。井山は「よほどのことがなければシノギはありそうかなと思っていた」そうで、YouTube解説の鶴山淳志八段は「七局目も見据えた打ち方」と評した。局後の井山は、「ひとまず最終局までいけてよかったかなと思います。最後ですので、悔いの残らないようベストを尽くしたい」と淡々と語った。敗れた一力は、「左辺に寄り付いたとしても、地合いがかなり離れているので、二日目はあまりいい場面はなかったと思います」と完敗を認め、「(井山さんとは)フルセットの勝負が続いているので、自分の力を出し切れるようにがんばりたい」と気持ちを切り替えた。井山の逆転防衛か、一力新名人誕生か。最終局は、11月4、5の両日に静岡県河津町の「今井荘」にて行われる。
藤沢、圧巻の強さで女流本因坊初防衛
第40期女流本因坊戦(共同通信社主催)五番勝負の第3局が10月22日に東京都千代田区の日本棋院にて打たれ、190手まで、藤沢里菜女流本因坊が白番中押し勝ちを収めて星合志保三段の挑戦を退けた。一年おきに獲得してきた本棋戦では初の防衛となる。また、藤沢は今年打たれた挑戦手合制のタイトル戦全てをストレートで制し、圧巻の強さを印象づけた。局後の藤沢は「今日も苦しい碁でした。結果としてはうれしいですが、まだまだ未熟なところが多いかなと感じました。小さいころから苦しくなりやすい碁で、今年のタイトル戦も苦しい場面のほうが多かった。碁の前半とかが課題かなと思います」と謙虚に話し「今は楽しく囲碁を打てている」と充実ぶりを明かした。一歩届かなかった星合は「盤外でも、藤沢さんの時間の使い方とか冷静さとかを改めて感じ勉強になりました」と声をつまらせながら振り返り、翌日にはSNS上で「シリーズを通してチャンスをものにできないことが多く、残念な結果になりました。ただこれが今の実力です。課題は明確なので、その点をしっかり改善していきます」と前向きなコメントを伝えた。
一力、棋聖戦挑戦者。井山と今年度19番勝負
第46期棋聖戦(読売新聞社主催)の挑戦者決定トーナメント変則三番勝負、第1局が、10月25日、東京都千代田区の日本棋院にて打たれた。最終カードは、Sリーグ優勝の一力遼天元と、孫喆七段(Bリーグ優勝)、余正麒八段(Sリーグ準優勝)を降して勝ち上がってきた芝野虎丸王座との顔合わせ。一力には1勝のアドバンテージが与えられている。名人戦、天元戦などの過密日程が待ち受ける一力は、「この一局で決着をつけたい」と臨んだ。穏やかに立ち上がったが、右下の攻防で芝野の積極策が裏目に出たようだ。白石の形が崩れ、一気に形勢が黒番の一力に傾いた。その後、芝野は勝負手を繰り出し、中央の黒の攻めに向かうと難解な局面に。一力は、「読み切れていない進行もあり、打っているときはよくわかっていなかった」と振り返るが、芝野は「もしかしたら(形勢が)難しくなるかもしれないと思ったのですが、黒からのシノギ筋がいくつもあった」とし、新聞解説の本木克弥八段も「白が少し挽回しましたが、白よしになる図は見当たりませんでした」と話す。121手まで、一力が黒番中押し勝ちを収め、4年ぶりの棋聖戦挑戦権を手中にした。芝野は「難しい碁が多いなか、今期はここまで来れて、よくできたかなと思う」とシリーズを振り返った。一力は「名人戦の第6局が内容的に安定していなかったので、今日は自分らしいまずまずの碁が打ててホッとしている」と笑顔で語り、棋聖戦七番勝負に向けては「まだ先なので、今は、いい状態、コンディションで臨めればと思う」とし、「目の前の一局に集中するしかない。一局一局を精一杯打っていきたい」と力強く続けた。
囲碁ニュース [ 2021年10月19日 ]
初挑戦の関、白星発進
一力遼天元に、新鋭の関航太郎七段が挑戦する第47期天元戦(新聞三社連合主催)の第1局が、10月5日、愛知県知多郡の「源氏香」にて行われた。史上最速で七大タイトルの挑戦者となった関は、初の大舞台にひるむことなく、「最高の環境を用意していただいて、普段より集中して打てたのかなと思います。第2局と第3局も、体調を整えて、今日のように集中して打てればよいかなと思います」と局後に語った。序盤から「面白い手を打ちたい」と積極的な姿勢を見せ、「時間を使ってしまいあまりいいペースではないのかなと思い、難しい戦いにしようと」、カタツキから仕掛けて「少し盛り返した」。その後、一力の黒石を仕留めて、天元を投了に追い込んでの白番中押し勝ち。堂々の白星でシリーズを好発進した。一力は「助ける手はいろいろあり、つながっていくようなコースなら、まだ少し悪いなりに先の長い勝負だったかなと思います」と敗因を語り、「内容的にまずすぎたので、2局目はもっといい碁にしたい。1か月以上あきますし、大きな他のタイトル戦もありますので気を引き締めたい」と巻き返しを誓った。第2局は、11月16日に北海道札幌市の「ホテルエミシア札幌」で行われる。
藤沢女流本因坊、2連勝で防衛に王手
藤沢里菜女流本因坊が、挑戦者の星合志保三段に先勝して迎えた第40期女流本因坊戦(共同通信社主催)の第2局は、10月8日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。前局で勝利にあと一歩届かなった星合は、本局を「この碁は内容が悪かった」と振り返り、「中盤のコウ仕掛けを軽視し、形勢を損じてしまいました」と反省する。逆に、藤沢は「本局は打ちたい手を打てた」と手応えのあった様子。前述の「コウ」から優勢を築き、その後も相手に逆転の糸口を与えず、最後は大石を仕留めて黒番中押し勝ち。2連勝で初のタイトル防衛まであと1勝に迫った。星合が「もう少しよい碁が打てるようにがんばりたい」、藤沢が「全力で臨みたい」と抱負を語る第3局は、10月22日に東京都千代田区の日本棋院にて打たれる。
外柳新人王誕生。嬉しい初タイトル
今期が最後の挑戦となる外柳是聞三段と、女流初の「新人王」獲得を期す上野愛咲美女流棋聖による注目の三番勝負に決着がついた。第46期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の決勝三番勝負は、10月9日に行われた第2局で上野が黒番中押し勝ちとし1勝1敗のタイとなり、10月15日に最終局が打たれた(第2局、第3局とも、対局場は東京都千代田区日本棋院)。外柳は「大きな舞台は最初で最後かもしれないと思っていた。新人王戦のことばかり考えて生活し、眠れない日や食事が美味しくない日もあった」と局後に語った外柳だが、プレッシャーを見事に味方につけ、「今日の碁が一番伸び伸びうまく打てて、内容的にも満足しています」と笑顔で振り返る。「ハンマー」の異名を持つ上野の攻めを封じ、白番中押し勝ちを収めた。初タイトルを手中にした外柳は、「新人王獲得は不思議な感じ。自分の実力に自信がなく不安になりながら打っていますが、もっと勉強してもっと堂々と打てるようになりたい」と新たな抱負を語った。
一力が「名人」にあと一勝
井山裕太名人に一力遼天元が挑戦する第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第5局が、10月12、13日に山梨県甲府市の常盤ホテルで行われた。2勝2敗となった本シリーズは、ここから三番勝負となる。序盤は、白番の井山が実利を取り、一力が模様を張る展開となった。一力は右辺の白を攻めながら、左辺一帯の模様を広げ、1日目の封じ手直前から、黒模様に入った白のサバキが焦点となった。2日目は左辺のコウ争いに突入。これを井山が解消し、右辺の白のシノギ勝負に出たが、一力が的確に白の大石を捕獲して勝敗を決した。今年の本因坊戦、碁聖戦に続き、カド番に追い詰められてから井山が巻き返してタイトル奪取へつなげるのか、一力が初の名人奪取を決めるのか、注目の第6局は、10月19、20の両日、数々の名勝負が繰り広げられた静岡県熱海市の「あたみ石亭」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年10月7日 ]
アマ本因坊 平岡さん5度目の優勝
第67回全日本アマチュア本因坊決定戦全国大会が10月2日、3日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行われた。注目は前回の優勝者でアマ名人の大関稔さんと棋聖戦Cリーグ経験のある栗田佳樹さんである。
栗田さんは安定した実力で勝ち進んだが、大関さんは苦戦を強いられることになった。1回戦で学生全国大会準優勝経験のある平松慶己さん(奈良)との対局では最後まで負けの形勢になっていたが、粘って半目差で逆転。1回戦で有力候補敗退というところまで追い詰められた。その他で有力候補とされていたのが今年のアマ名人戦全国優勝(大関アマ名人に挑戦するも敗退)を果たした北芝礼さん(愛知)であるが、1回戦で敗退するという波乱があった。
ベスト8はベテラン対若手の戦いとなった。名誉アマ本因坊で数々の優勝を誇る中園清三さんも10代と20代の若手に3連勝し、ベスト8に進出したが星合真吾さん(東京)に敗れた。準決勝では平岡聡さん(招待)と大関さんを準々決勝で破った小野慎吾さん(山口)、栗田さんと星合さんという組み合わせ。ベテラン対決の平岡さんと小野さんは平岡さんの半目勝ち。栗田さんと星合さんは栗田さんの5目半勝ちとなった。数々の大会で実績をあげているように見える星合さんであるがアマ本因坊では初の2日目ということである。
決勝は平岡さんと栗田さんであるが、この組み合わせは3大会前の決勝と同じ顔合わせとなった。結果は平岡さんの3目半と勝ちとなり、3大会ぶり5度目の優勝となった。
囲碁ニュース [ 2021年10月5日 ]
井山名人、快勝でタイに戻す
井山裕太名人が先勝し、挑戦者の一力遼天元が二連勝して迎えた第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第4局は、9月28、29の両日、神奈川県箱根町の「強羅環翠楼」にて行われた。一日目は見応えのある右辺の攻防が展開された。まず、黒番の井山が右上で白を取り込みややリードを奪うが、その後一力が、取られた石を生還させつつ黒数子を取り込み白地に塗り替える。一力は「まずまずの進行かなと思っていた」、井山は「右辺の出来上がりは損をしたかな…自信がなかった」とそれぞれ「白よし」の感想だったが、AIの評価値は黒に軍配をあげていた。局後、これを知った一力はショックを受けていたという。この形勢判断が、直後の封じ手に影響を及ぼしたか。検討陣が誰も予想しなかった封じ手を、一力は「予定の行動ではなかった。何が正しかったのかわからない。苦しい戦いにしてしまったかなと思います」と振り返る。続く井山の応手を、新聞解説の林漢傑八段は「魔王の一手」と評した。「白1子に逃げ出すスキを与え、あえて白に弱い石を二つ作らせる作戦だったのではないでしょうか」。その後の左辺の攻防は、「一本道で、形勢が悪くなることはわかっていたが、他によい手がわからなかった」と一力。最後は白の大石に生きる手はあるものの、生きると地合いが足りない状況だったという。167手目まで黒番井山が中押し勝ちとし、対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。第5局は、10月12、13日に甲府市の常盤ホテルで行われる。井山は「スコアのことは意識せず、自分なりに準備して臨みたい」、一力は「内容的にもう少しいい碁が打てるように、2週間あるので修正して臨みたい」とそれぞれ抱負を語った。
藤沢女流本因坊、逆転半目勝ちで初戦を制す
藤沢里菜女流本因坊に、星合志保三段が挑戦する第40期女流本因坊戦(共同通信社主催)の第1局が、9月28日、岩手県花巻市の「佳松園」で行われた。手厚く打ち攻める棋風の星合が持ち味を存分に発揮する展開で、黒番の星合が優勢のままヨセに入った。神経を使うヨセ合いの中、藤沢が最後の最後に抜け出し白番半目勝ちを収めた。ちなみに藤沢は、半目差で決着のつく対局を10連勝。「半目の女王」とも称される藤沢らしい勝ち方で初防衛にはずみをつけた。惜しくも敗れた星合は「残念なミスはありましたが、全体的には自分の力を出せました。次局は、気持ちを切り替えて、まっさらな状態で臨みたい」と抱負を語った。第2局は、10月8日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれる。
許、井山を破って早碁王に
早碁三大棋戦の一つ、阿含・桐山杯第28期全日本早碁オープン戦(阿含宗特別協賛)の決勝戦が、10月2日、京都市山科区の「阿含宗釈迦山大菩薩寺」で行われた。大舞台に勝ち上がったのは、井山裕太四冠と許家元十段。井山は、9月28、29日の名人戦第4局に勝利し、翌30日には中国の甲級リーグに参戦して丁浩八段に白番中押し勝ちと勢いが止まらない。「井山さんはミスらしいミスが見当たらない。ハードスケジュールになればなるほど充実している気がします」と試合前の許も井山の強さに感服した様子だった。2015年以来2回目となる本棋戦での両者の決勝戦は、序盤から激しく戦い続ける早碁ならではの展開となった。序盤の右辺の攻防では、白番の許がポイントをあげ、AIの評価値も白に大きく傾いたが、その後、中央の攻防で井山が巻き返す。だが、その後に許の捨てる判断が明るかったようだ。「中盤に好転したかなという場面はあったのですが、中央の白を小さく取らされた感触があって、右上方面の取られ方が大きかった」と井山。最終的には、取られていた白も生還し、全ての石をしのぎきって井山を投了に追い込んだ。二連覇を逃した井山は「チャンスがきたかなという場面で生かしきれなかったのですが、これも実力なので仕方ない」、初優勝の許は「タイトルを獲れるとは思っていなかった。大会を振り返っても、難しい碁が多かったので、優勝できて、これからの自信になりました」と喜びを語った。許は対井山との対戦成績も7勝7敗とし、「令和三羽ガラス」の一人としての存在感もアピールした。
藤沢、一般棋戦でも活躍
女流棋戦での活躍が著しい藤沢里菜女流五冠が、一般棋戦でも結果を積んでいる。9月23日には、大和ハウス杯第60期十段戦の本戦入りをかけた最終予選決勝で、一力遼天元に勝利。「投了されたとき、何が起こったんだろうと思いました。一力先生には練習碁でも勝った記憶がありません。自信になりました」と笑顔で喜びを語った。10月4日には第46期棋聖戦Cリーグの最終局で張瑞傑四段に白番中押し勝ちして3勝目をあげ、リーグ残留を決めた。1勝2敗になったときは陥落も覚悟したというが、その後に王座戦挑戦者となった関航太郎七段と張四段に連勝。「来期は上を目指してがんばりたい」と力強いコメントを残した。
囲碁ニュース [ 2021年9月24日 ]
一力、名人戦2勝目をあげる
井山裕太名人に一力遼天元が挑戦する頂上決戦――第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第3局が9月15、16の両日、愛知県田原市の「角上楼」で行われ、225手まで一力が黒番中押し勝ちを収めて対戦成績を2勝1敗とした。序盤は一力がリードを奪うが、上辺で始まった戦いが中央へと進展する中、井山の厳しい手から白が攻勢を奪う。井山は「よくなったと思った」、一力も「負けを覚悟した」と振り返る。だが、その後に井山が失速。「形の決め方がおかしかった。ぬるい手が何手かあったかもしれない」と井山。日本棋院のYouTube解説で六浦雄太七段は、「両者、大事な所を忘れていた」と指摘し、白は左下の黒模様の消しに回るのが急がれたようだ。結局、一力が左下の黒模様の守りに回ると、AIの勝率も一気に黒に傾いた。以降は逆転の機は訪れず、難戦に次ぐ難戦の一局を一力が制した。局後の井山は「七番勝負はまだ長いので、自分なりに準備をして精一杯臨むだけ」と言葉少なに語り、一力は「手拍子もあり、錯覚もあり、内容的にはまずかった。もっといい碁が打てるように」と次局に向けて気を引き締めた。第4局は、9月28、29の両日、神奈川県箱根町の「強羅環翠楼」にて行われる。
新人王戦、外柳が先勝
第46期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の決勝三番勝負が開幕した。予選開催年の8月1日時点で25歳以下、六段以下が対象の本棋戦で、26歳の外柳是聞三段は今回が出場のラストチャンス。上野愛咲美三段は女性棋士初のタイトル獲得を期す。第1局は9月20日に東京都千代田区の日本棋院で行われ、外柳が黒番中押し勝ちを収めた。穏やかな立ち上がりから、落ち着いた棋風の外柳がペースを握り、リードを奪った。戦う棋風の上野の「ハンマー」がいつ振り下ろされるかと注目される中、3時間の持ち時間を先に使い切り秒読みに突入した外柳の手にわずかな乱れがあったようだ。日本棋院のYouTube解説で、横塚力七段は「明らかに黒が動揺しています」と心配する局面もあった。形勢は揺れ動いたが、最後は外柳が押し切った。「いろいろまずすぎました。2局目まで少し期間があるので勉強し、もう少しいい碁が打ちたい」と外柳。上野は「三番勝負でよかった。打てるだけでうれしいのでがんばろうと思います」と話した。第2局は、10月9日に、同じく日本棋院で行われる。
井山、王座戦の挑戦者に
芝野虎丸王座への挑戦権をかけた第69期王座戦(日本経済新聞社主催)の本戦決勝が9月20日に打たれ、現在、名人戦七番勝負を戦っている井山裕太棋聖と一力遼天元が、ここでも顔を合わせた。結果は井山棋聖が黒番中押し勝ちを収め、2期ぶりの5番勝負出場を決めた。序盤、井山は右辺の厳しい切りからリードを奪うと、終始ペースを譲らずに一力を投了に追い込む快勝。前々期にタイトルを奪われた芝野王座との雪辱戦に向け、「今は挑戦者決定戦が終わったばかりでまだ何も考えていませんが、王座戦の五番勝負の舞台にまた戻れて嬉しく思います」と話した。芝野が3連覇を果たすのか、井山にリベンジを許すのか、五番勝負の第1局は、10月29日、神奈川県横浜市の「横浜ロイヤルパークホテル」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年9月22日 ]
学生本因坊 栗田さん連覇
第65回全日本学生本因坊決定戦の全国大会決勝・準決勝が9月19日、愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で行われた。全国大会には32名の選手が参加し、8月29日にネット対局でベスト4までを決め準決勝からは対面対局となった。
川口飛翔さん(東京大学)、林朋哉さん(東京大学)、中島光貴さん(慶應義塾大学)といった実力者が1回戦、2回戦で敗退するという波乱があった中、栗田佳樹さん(東京理科大学)と赤木志鴻さん(京都大学)が決勝に進出し、栗田さんが連覇を果たした。
栗田さんは棋聖戦Cリーグ入りするなどアマチュアリーガーと呼ばれているが、先日Cリーグから陥落となってしまった。その直後であり影響が懸念されたが、見事にその実力を示した。
女子学生本因坊 加藤さん初優勝
第57回女子学生本因坊決定戦の全国大会が学生本因坊決定戦と同日に行われた。こちらも学生本因坊戦と同様にベスト4までをネット対局で決め、準決勝・決勝を対面対局で行った。
女子学生本因坊戦では優勝候補が順当に勝ち上がった。注目だったのが2年前の高校選手権決勝と同じ組み合わせになった加藤優希さん(早稲田大学)と岩井温子さん(京都大学)の準決勝である。岩井さんは高校選手権3年連続優勝がかかった2年前に加藤さんに敗れている。雪辱なるかというところであったが加藤さんが勝利を収めた。決勝では加藤さんと連覇を目指す辻萌夏さん(慶應義塾大学)の対戦となり、加藤さんが初優勝を飾った。
囲碁ニュース [ 2021年9月16日 ]
一力、タイに戻す
井山裕太名人の先勝で迎えた第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第2局が、9月8、9の両日、福島県郡山市の「四季彩一力」で行われた。結果は306手まで、白番半目勝ち。コウの絡む難戦を、挑戦者の一力遼天元が制して、スコアを1勝1敗のタイに戻した。前夜祭では、挑戦者の一力が、旅館の名前に「親近感が持てる」と笑顔で語り、井山は、「どこかで聞き覚えがある名前」と笑わせ、「アウェイ感がある」とも語った。序盤から井山が積極的に仕掛け、左下の折衝では「愚形」をものともせず激しく攻め立てる展開に。これに一力が的確に応戦し、下辺のコウを解消して黒の大石を取った時点では、「少し打ちやすくなった」と一力、「少し大変だと思っていた」と井山がそれぞれ振り返る。だが「右上の黒地が大きくまとまったので、細かくなったかな、と」と井山。ただ「勝ちの図ははっきりとは見えなかった」という。一力は、勝ちを確認したのは「本当に最後の最後、半コウの形がなくなったことを確認したとき」と安堵の表情で振り返った。対局直後、井山は「(左下は)少し無理気味かとも思ったのですが」と苦笑しつつも、信念としている「打ちたい手を打つ」ことができたためか満足した表情。逆に一力の表情はかたく、「二日制の碁で初めて勝つことができホッとしている」と語った。好調の両者だけに、今後は精神力が問われる七番勝負となりそうだ。第3局は、9月15、16の両日、愛知県田原市の「角上楼」で行われる。
関航太郎四段、史上最速の挑戦者に
一力遼天元への挑戦権をかけた第47期天元戦(新聞三社連合主催)の挑戦者決定戦が、9月9日に東京都千代田区の日本棋院で打たれ、関航太郎四段が本命の芝野虎丸王座に白番中押し勝ちを収め、初の七大タイトル挑戦者となった。関は5番勝負第1局時点で19歳10カ月。井山裕太棋聖、芝野に次ぐ3番目の年少記録で、入段から七大タイトル挑戦者までの4年6カ月という数字は、芝野王座の持つ4年11カ月を塗り替える最短記録となる。また、規定により七段昇段を決めた。関はAIの研究に熱心で、棋士仲間からは「AIソムリエ」の異名で呼ばれる。「自分が挑戦者だとはまだ信じられないのですが…トップ棋士相手にどれだけ戦えるか楽しみ。しっかり準備して臨みたい」と抱負を語った。初防衛をかけた一力との五番勝負は、10月5日、愛知県知多郡の「源氏香」にて第1局が行われる。
藤沢、女流最強戦優勝。女流五冠に
第6回扇興杯女流囲碁最強戦(センコーグループホールディングス株式会社協賛)の決勝戦が9月12日に滋賀県東近江氏市の「迎賓庵 あけくれ」にて行われた。決勝に勝ち上がったのは、藤沢里菜女流本因坊と、上野愛咲美扇興杯の女流2強。藤沢が白番中押し勝ちを収め、2年ぶり3度目の優勝を果たした。昨年四冠を達成した時「来年は無冠になっているかもしれない」と気を引き締めた藤沢は、今年、女流名人戦、女流立葵杯に次いで、今棋戦も上野にストレート勝ち。第一人者の貫禄を見せ、女流五冠となった。表彰式では、「準決勝から苦しく、決勝も難しい碁でしたので、優勝できてうれしい」と笑顔で話し、藤沢、上野、鈴木歩七段、謝依旻七段のベスト4が出場する「SENKOCUP ワールド碁女流最強戦」に向けて「残念な成績が続いているので、来年は日本代表としてがんばりたい」と語った。
囲碁ニュース [ 2021年9月8日 ]
棋聖戦、各リーグ優勝者が決定
第46期棋聖戦(読売新聞社主催)は、各リーグの優勝者が決定した。すでにSリーグでは一力遼天元が、Aリーグでは芝野虎丸王座がそれぞれ優勝を決めており、B、Cリーグの優勝者が注目されていた。Cリーグは、結城聡九段と沼舘沙輝哉七段の決勝戦が9月2日に大阪府大阪市の関西棋院にて打たれ、沼舘が黒番中押し勝ちを収めた。Bリーグ優勝決定戦は、9月6日に、愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で打たれ、B2組一位の孫喆七段が、B1組一位の志田達哉八段を破った。一力、芝野、孫、沼舘はそれぞれパラマス式の挑戦者決定トーナメントに進出する。残る一枠のSリーグ準優勝をかけた村川大介九段と余正麒八段の一戦は9月16日に関西棋院にて行われる。
挑戦者決定トーナメントは9月23日に開幕する。初戦はBリーグ優勝者とCリーグ優勝者の一戦。孫は平成8年2月生まれで平成23年に入段。沼舘は平成4年11月生まれで平成22年に入段。院生時代には、ライバルとしてしのぎを削った。孫は鋭い読み、沼舘は独創的な発想力をそれぞれ得意とする。手の内を知り尽くした両者の熱のこもった一戦が期待される。
囲碁ニュース [ 2021年8月31日 ]
星合、初のタイトル戦へ
藤沢里菜女流本因坊への挑戦権をかけ、8月23日、第40期女流本因坊戦(共同通信社主催)の挑戦者決定戦が東京都千代田区の日本棋院にて行われた。かたや小山栄美六段は、準決勝で強敵、謝依旻六段にも完勝する充実ぶり。星合志保三段は2年連続の「挑決戦」進出で、「今期こそ」と強い気持ちで臨んだ。黒番星合は、棋風どおり、序盤から積極的な攻めの手を繰り出し、小山が冷静に応戦して互角に進んだ。右上に黒模様を広げ「自分の得意の碁に持ち込めたのが勝因」と星合。黒模様に入った白を厳しく攻め立て、優勢を築いた。その後も手所が多く難しい碁となったが、星合が力強く押し切り、初めての挑戦権を手中にした。局後、星合が「昨年の(挑戦者決定戦での敗戦の)経験を生かすことができました」と語ると、小山が「私も来年は、今年の経験を生かして」と引き取って報道陣を笑わせた。星合は藤沢とは大親友で「里菜ちゃんは普段は忘れ物が多かったりするのですが、盤上では隙がない。強い」と話し、「まだ実感が湧かないのですが……強い里菜ちゃんに向かっていけるよう、挑戦手合までの1か月を大事に過ごそうと思います」と喜びと抱負を語った。挑戦手合五番勝負は、9月28日に、岩手県花巻市の「佳松園」で開幕する。
井山、名人戦初戦を制す
井山裕太名人に一力遼天元が挑戦する第46期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の開幕局が、8月26、27の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて行われた。対局前日、解説の芝野虎丸王座は「読みは一力さんが勝り、井山さんは布石の構想力が勝る。井山さんは先行逃げ切りの碁が多いので、2日目より1日目が大事だと思います」とコメント。その1日目、黒番の一力が左下から下辺にかけて手厚く壁を築くが、左辺の黒模様の白1子を動き出した井山が巧みにサバいていく。その攻防で一力に後悔の手があったようだ。黒の厚みが期待したほど働かない碁形となり、井山が優勢を築いた。一夜明け、立会人の張栩九段は「今朝の一力さんの表情を見て安心した。過ぎたこと(失敗)は仕方ない、という覚悟が感じられる」と話し、「優勢な白はスキを与えず、劣勢の黒は一番勝負になる手を選び、両者見事」という2日目の戦いが始まる。一力は左辺の白を攻め、仕留めたかに見えた瞬間もあったが、井山はシノギの妙手を見ており、逆に黒を取って生還。ところが一力も代わりに右下の白を取る。深い読みの応酬によるフリカワリは互角に分かれた。ただし、1日目のリードがものを言い、212手まで、白番井山の中押し勝ちとなった。第2局は、9月8、9の両日に福島県郡山市の「四季彩一力」で行われる。
井山、碁聖を奪取し四冠に
名人戦開幕局から1日あけた8月29日、一力遼碁聖に井山裕太棋聖が挑戦する第46期碁聖戦挑戦手合五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の最終局が、東京都千代田区の日本棋院にて打たれた。黒番の一力が二連星、白番の井山は小目と三々という立ち上がりで、「井山さんは番碁の後半は地にからく打つ」と言われる通り実利を取り、右下で積極的に仕掛けていった。日本棋院のYouTube解説を担当した鶴山淳志八段は「右下での井山さんの妥協をしないシノギで黒が苦しい展開に。黒としてははっきりした敗着がないのがつらい」とコメント。井山は「右下で少し成功したかなと思いましたが、そのあとも厳しく攻められて、やはり難しいなと思いました」と振り返る。その攻められた下辺の白が生き、上辺の黒模様がどれだけまとまるかが勝負となった。鶴山八段は、右辺の白の出を「地味だが繊細な一手」と勝因にあげる。黒の形に切りの狙いが残り、右上の戦いを有利に進めて一力を投了に追い込んだ。初防衛を果たせなかった一力は、「本局も含め精一杯やった結果なのでしょうがない。来年戻ってこられるよう、しっかりがんばりたい」と言葉少なに語った。4期ぶりに7度目の碁聖を獲得した井山は、棋聖、名人、本因坊に加え四冠となり、「最近は1日制で結果を出せなかったので、まだまだやれるということを証明できてよかった」と喜びを語り、「自信というものは脆いものだと思っているので、自信過剰にならないよう、精神的なブレを小さくすることを意識している」と好調の理由を語った。一力をはじめとする若手の台頭については「みんな強くなってしまったものは仕方ない」と記者団の笑いを誘い、「最近は他人と比べるよりも自分の中の物差しで測るようにしている」と話した。また、今年誕生したご子息について尋ねられると「自分自身もっとしっかりしなければと思わせてくれる存在ですし、彼が生まれた年に成績が悪いとあとで何を言われるか…」と笑顔になった。
囲碁ニュース [ 2021年8月28日 ]
高校選手権 全国大会
第45回文部科学大臣杯全国高校囲碁選手権の全国大会が東京市ヶ谷の日本棋院で8月17日~19日の3日間行われ、全国の高校生が腕を競った。はじめの2日間に団体戦、2日目の午後から3日目に個人戦が行われた。
団体戦は男子が前橋高校(群馬)、女子は花園高校(京都)がそれぞれ初優勝した。
個人戦では2週間前の高校総合文化祭で全国優勝をした堀和寿希さん(三重)と大沢巴さん(宮城)が男女揃って1日目で敗れる大混戦となった。そんな中、男子では堀公誓さん(京都)、女子では玉作青葉さん(兵庫)がそれぞれ初優勝を飾った。
男子決勝では、黒番の堀さんが優勢を築き、そのまま押し切るかというところだったが、白番の堀米慧磨さん(神奈川)がヨセで猛追。最後は堀くんの半目勝ちとなった。
女子決勝は玉作さんと今分はなさん(京都)の二人である。中盤でポイント上げた黒番の玉作さんがそのまま押しきった。両者は団体戦決勝の主将戦でも対戦しており、そのときは今分さんが勝利している。男子の堀さんと今分さんは同じ高校で、あと一歩のところで同時優勝を逃した。玉作さんも妹の乙音さんもベスト8に進出しており、姉妹揃っての快挙となった。
例年では選手のみでなく会場を覆うように熱い観戦者も特徴であるが、今年はコロナの影響により対局者とスタッフ以外は会場に入れず、例年の見慣れた光景は無かった。辞退者も発生するなど例年とは違った全国大会となったが、またあの熱い光景がよみがえってほしいものである。
囲碁ニュース [ 2021年8月18日 ]
井山の闘志、タイに戻す
一力遼碁聖の2勝、挑戦者の井山裕太棋聖の1勝で迎えた第46期碁聖戦挑戦手合五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第4局が、8月17日、新潟県新潟市の「新潟グランドホテル」で行われた。両者は来週開幕する名人戦の七番勝負でもあいまみえる。本局は、碁聖戦にとどまらず、名人戦の行方を占い、ひいては日本囲碁界のトップが入れ替わるかもしれない歴史的な頂上決戦として注目を集めた。初めての立会人をつとめた張栩九段は、自身が頂点に上っていった番碁、後輩の井山に明け渡した番碁が「いろいろ思い出されて、昨夜は眠れなかった」と語り「どちらの気持ちもよくわかる。二人とも好調ですし、思いのこもった一手一手が繰り出され、必ず素晴らしい碁になる」と両者にエールを贈った。その言葉どおり、両者、立ち上がりから、本局のために用意してきたと思われる手を繰り出し合った。井山の右辺の黒模様への打ち込みから盤上が賑やかになり、さらに右下隅にも打ち込み積極的に仕掛けていく。これに一力も落ち着いて応じ、右辺と下辺の戦いはいい勝負に分かれた。その後、中盤の戦いの中、右上のハサミツケが、一力が「感情的になってしまった」と反省した一手。ここから井山が右上の黒を取り込みリードを奪った。さらに井山は下辺にも打ち込み、検討陣が驚く妙手を2手放つ。その後、左上で井山に打ち過ぎがあり、紛れるかと思われたが、下辺の攻防は読めており、白の有利なヨセコウに持っていく。実質的には黒が取られ、一力が投了を告げるところとなった。井山は「最終局を打てるのは嬉しい。自分なりにコンディションを整え精一杯やりたい」、一力は、「気持ちを切り替え、精一杯、後悔のないように打ちたい」とそれぞれ最終局への抱負を語った。「頂上決戦・第1章」の決着がつく第5局は、8月26、27日の名人戦開幕局を挟み、8月29日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれる。
囲碁ニュース [ 2021年8月12日 ]
上野、新人王戦の決勝へ
第46期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の準決勝戦の第2局――西健伸四段と上野愛咲美三段の一戦――が、8月9日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。結果は237手まで、上野が白番4目半勝ちを収め、決勝戦に駒を進めた。女性棋士が決勝戦に進出するのは、第22期に当時七段だった青木喜久代八段以来24年ぶりで、新人王戦では史上二人目の快挙となる。上野は、「幼なじみの関四段や広瀬五段が優勝していて、ずっと決勝に行きたかった。(女性初優勝という)記録を残せるのはうれしいので、がんばりたい」と笑顔で、喜びと力強い抱負を語った。藤沢一就八段門下の上野、広瀬優一五段、関航太郎四段の三人は、プロを目指していたころから切磋琢磨し、それぞれに活躍する現在も、刺激し合うライバル関係として知られる。プロ入りは上野と広瀬が平成28年、関が29年。また、広瀬は43期、関は45期にそれぞれ新人王を獲得しており、上野の上記のコメントが生まれた。7月22日に打たれた準決勝戦の第1局では外柳是聞三段が小山空也四段を破って決勝進出を決めている。上野が新たな記録を打ち立てるのか、外柳が初タイトルを手中にするのか。注目の決勝三番勝負は9月にスタートする。
囲碁ニュース [ 2021年8月3日 ]
女流本因坊戦、挑戦者争いが佳境に
藤沢里菜女流本因坊への挑戦権をかけた第40期女流本因坊戦(共同通信社主催)の本戦が、佳境に入っている。7月22日には、星合志保三段が、強豪の鈴木歩七段を破って2年連続、挑戦者決定戦に駒を進めた。8月2日は、準決勝の第2局――謝依旻六段と小山栄美六段との一戦が打たれた。3期ぶりの五番勝負と4期ぶりの奪還を期す謝は、準々決勝で、前期女流本因坊の本命、上野愛咲美女流棋聖を破り勢いに乗る。実力者の小山は、こちらも破竹の勢いで注目を集めている仲邑菫二段を破っての準決勝進出で、充実ぶりが伺える。立ち上がりは両者慎重で、黒番の謝が手堅く地を取り、逃げ切る作戦に思われた。左辺でやや白を攻めあぐねたように見えたが、形勢互角のまま中盤へと進んだ。右上の攻防で、謝に錯覚があったようだ。上辺の黒を力強く動き出し、白を分断して攻勢に立ったが、取り切ったかに思われた右上の白にはセキにする手段が残っており、これを回避するために白の外側を厚くさせ、さほど戦果があがらない結果に。優勢に立った小山が、スキなく寄り切って、白番中押し勝ちとなった。星合が初の挑戦者に名乗りをあげ、親しい藤沢との五番勝負が実現するのか、小山がベテランの星となり檜舞台に返り咲くのか。注目の挑戦者決定戦は、8月23日に、東京都千代田区の日本棋院にて行われる。
囲碁ニュース [ 2021年7月21日 ]
一力、棋聖戦「パラマス戦」進出へ
一力遼天元・碁聖の勢いが止まらない。現在進行中の碁聖戦五番勝負では、防衛まであと1勝としており、名人戦の挑戦者にも名乗りをあげているが、7月26日には、棋聖戦Sリーグでも全勝を守って、「パラマス戦」進出を決めた。Sリーグは3ラウンドを終え、一力と余正麒八段が全勝でトップを並走していた。26日は、全勝同士の一戦が組まれ、一力が白番中押し勝ちして4勝目をあげた。この結果、一力が最終局の高尾紳路九段戦に勝てば文句なしの優勝、負けても、現在2勝1敗の村川大介九段が残り2局で2敗目を喫すれば優勝となる。また、村川が連勝して4勝1敗になった場合も、優勝を逃すが2位に入るため、挑戦者を決定する「パラマス戦」への進出が確定した。「パラマス戦」は、S、A、B、C各リーグの優勝者とSリーグ2位の5名で争われる。現在、Aリーグは、混戦から大西竜平七段と芝野虎丸王座が4勝2敗で抜け出し、最終戦での直接対決に勝った方が優勝。Bリーグは第1組が志田達哉八段と本木克弥八段、第2組が蘇耀国九段と孫喆七段が優勝を争い、Cリーグは山城宏九段、結城聡九段、沼舘沙輝哉七段、大竹優五段の4名が勝ち上がっている。
囲碁ニュース [ 2021年7月20日 ]
一力、初防衛に王手
一力遼碁聖に井山裕太棋聖が挑戦している第46期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)五番勝負の第3局が、7月17日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われた。井山が先勝し、一力が1勝を返して迎えた本局は、対局前の「一つ勝って精神的にも楽になった。明日は気負わずに自分の力を出し切りたい」(一力)、「第2局はそれなりに粘り強く打てた。明日もこれまでと変わらず自分のベストを尽くし、いいパフォーマンスができるように集中したい」(井山)という落ち着いたコメントからも好調の両者の自信が伺え、好局が期待された。黒番の井山が実利、一力が厚みを築く展開となるが、井山は「序盤、右下の分かれがやや甘かったのかもしれない」と振り返った。その後、白模様に井山が打ち込み、一力の取りかけが始まる。「黒をいじめて他で得をする選択肢もありましたが、黒の大石が生きる手が自分には見えなかったので、終盤の強手を決断した」と局後の一力。そのまま大石を仕留め、138手まで、白番中押し勝ちとなった。対戦成績を2勝1敗とした一力は、初防衛に王手をかけた。敗れた井山は「次局まで少し時間が空くので、気持ちを新たに頑張りたい」、一力は「第4局まで1カ月空くので、いい状態で臨めるように準備したい」とそれぞれ抱負を語った。1勝3敗から勝利した本因坊戦七番勝負のように、井山の逆転はあるのか。一力が一気に防衛を果たすのか。注目の第4局は、8月17日、新潟県新潟市の「新潟グランドホテル」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2021年7月13日 ]
本因坊文裕、10連覇達成
本因坊文裕(井山裕太本因坊)が、10連覇の偉業を達成した。史上タイ記録の10連覇か、50年ぶりの最年少記録達成か、どちらが勝っても大記録となる第76期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第7局が、7月6、7の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」で行われ、180手まで、白番の文裕が挑戦者の芝野虎丸王座を中押し勝ちで退けた。二十五世本因坊治勲(趙治勲二十五世本因坊)の大記録に並んだ文裕は、翌日「新聞を見たりして、一つ大きなことを達成できたという実感がわいてきた」と語った。今シリーズは初戦で勝利した後、いずれも大石を取られる内容で3連敗を喫した。「防衛をあきらめた」と文裕は振り返る。だが、「負けた3局はいずれも自分のミスを芝野王座に的確に咎められた内容。自分のパフォーマンスをあげていけば、何とかなる」と気持ちを切り替えたという。第4局の翌日に、非公式戦ながら中国甲級リーグの対局で強敵、謝科九段に勝ったことも自信回復につながった。「第4局の直後であることは伝えてあり、それでもかまわない、力を貸してほしいと言ってくれた。自分のためではなく、誘ってくれたチームに貢献したいという思いが強く、無欲になれた」と井山。決断の一手から戦い抜いて勝ち切った一勝が、今シリーズの流れも変えたようだ。第7局は、右辺の黒模様で、白がシノぐ展開となった。ただシノぐだけでは勝ち切るまで難しいと判断した井山は、手を抜いて地を稼ぎ、「取りにこい」と勝負をかける。「3連敗」の碁が頭をよぎったファンもいただろう。だが、今回は芝野の本気の取りかけもかなわず、井山がシノぎ切り、その後も緩まずに勝負を決めた。芝野は「また勉強し直して、戻って来られるように頑張ります」と語った。記録が並ばれた二十五世本因坊治勲は「僕の10連覇は終着駅になりましたが、井山さん、あなたの10連覇はただの通過駅です。次の停車駅は20連覇ですか?」とエールを贈った。
一力碁聖、一勝を返し、タイに
第46期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)の第2局が、7月12日、一力遼碁聖の地元、宮城県仙台市の「ホテル佐勘」で行われ、本因坊戦10連覇を達成したばかりの井山裕太棋聖を迎え撃った。「中盤の戦いがいまひとつだった」と井山。優勢を築いた一力が、勝ちを読み切って手堅くヨセ、黒番半目勝ちをおさめ、対戦成績を1勝1敗の五分に戻した。
井山は「次局は、またコンディションを整えて精一杯やりたい」、一力は「初めての地元仙台での対局で結果を出せてホッとしています。第3局もすぐにあるので、気を引き締めて頑張りたい」とそれぞれ豊富を語った。第3局は、7月17日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われる。
一力は、第46期名人戦(朝日新聞社主催)挑戦者決定リーグで、7月8日に許家元十段が羽根直樹九段に2敗目を喫したことで、最終局を待たずに井山名人への挑戦権を獲得している。碁聖戦と合わせ、井山と一力の12番勝負の行方が注目される。
「ペア碁」の魅力満載!『群舞のペア碁』の単行本第1巻が発売
2021年1月より双葉社「月刊アクション」に掲載中の漫画、『群舞のペア碁』(高木ユーナ著。公益財団法人日本ペア碁協会協力)の単行本第1巻が、6月24日から全国の書店で発売されている。著者の高木氏は「ペア碁の面白さは、棋力の高さよりも心理戦が鍵になる場面が多い所だと思います。 それはどんな環境の人にとっても共感できる、実は親しみやすい競技だと感じています。(中略)今の時代だからこそ改めて描ける人と人との関り合い や「心」を作品に込めています」と語る。コミュニケーションを取るのが苦手な主人公「群舞」が、「ペア碁」を通して成長していく物語で、二人で打つ「ペア碁」によって心が自由になり、自由な心で囲碁も上達していく様子が魅力的なキャラクターたちと共に描かれていく。監修を担当する藤沢里菜女流四冠は「『群舞のペア碁』を通して、囲碁の魅力を知ってもらいたいですし、これを機に興味が湧いてきたら実際に触れてみてほしい。人間として成長できる競技なので、面白いんじゃないかと思います。いまはアプリを通じて気軽にチャレンジもできるので、ぜひ試してもらいたいです!」と語る。また「囲碁の面白さだけじゃなく、キャラクターがどう成長していくのかが見どころになっている作品です。その中でもやはり一番気になるのは、群舞の成長でしょう。彼がペア碁と出会ったことでどんな風に変わっていくのか、ぜひ見届けてほしいと思います」と魅力を伝えている。
囲碁ニュース [ 2021年7月8日 ]
第15回朝日アマ囲碁名人戦
第15回朝日アマチュア囲碁名人戦全国大会が7月3日、4日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行われ、53人の選手が腕を競った。昨年はコロナの影響により開催されなかったため2年ぶりの開催になるのだが、開始前の会場は久しぶりに会う全国の代表たちが近況を語り合う和やかな雰囲気だった。
アマ名人戦は全国大会の優勝者がアマ名人に挑戦する方式で、現アマ名人は大関稔さんである。今大会では大関さんと二年連続でアマ名人を争った棋聖戦Cリーグで活躍中の栗田佳樹さんが都合で欠場のため大混戦が予想された。
今大会では10歳の最年少出場者が注目を集めたが1回戦突破はならなかった。さらに今大会はコロナ禍のこともあり、参加を見送った県もあり、招待選手の闇雲翼さんも辞退となった。また、大雨の影響で交通機関のストップにより1回戦に間に合わず不戦敗となる選手も何名か見られた。
そんな中、ベスト8は30代1人、20代5人、10代2人となり、決勝は世界アマ日本代表経験のある川口飛翔さんと北芝礼さんによる10代対決となった。両者は同年生まれで、今年19歳となる。結果は北芝さんの勝利で、初の一般大会全国優勝となった。北芝さんは7月24日、25日に大関アマ名人との三番勝負を行う。大関さんは「若い力に負けないようにしっかり準備したい」と語っていた。
ベスト4は優勝 北芝礼さん、準優勝 川口飛翔さん、3位 平野翔大さん、4位 星合真吾さんとなった。
囲碁ニュース [ 2021年6月29日 ]
井山、碁聖戦に先勝
一力遼碁聖に井山裕太棋聖が挑戦する第46期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)の五番勝負が開幕した。一力が初防衛するのか、井山が4期ぶりに奪還を果たすのか、注目の第1局は6月26日、岡山県倉敷市「マービーふれあいセンター」で打たれ、135手まで、井山棋聖が黒番中押し勝ち。4日前に打たれた本因坊戦第5局に続いて、強さを見せつけた。「打ちたい手を打つ」という井山の信念のとおり、本局は中盤の井山の強手から流れを引き寄せた。一力も「黒85のブツカリが予想以上に厳しかった」と敗因を振り返る。その後も井山は妥協せず最強手を選び、攻勢のまま積極的に局面を動かし続けて一力を投了に追い込んだ。局後の井山は「中盤、中央で主導権を握れて打ちやすくなったと思う。まず一つ勝ててよかったです」と目の前の一局一局に集中する意気込みを語り、敗れた一力は3月から続いていた連勝が12でストップしたが、「第2局まで2週間以上あくので、気を取り直してがんばりたい」と気を引き締めた。第2局は、7月12日、一力の故郷でもある宮城県仙台市「ホテル佐勘」で打たれる。この間、6月29、30の両日には本因坊戦第6局が組まれており、井山には大勝負が続く。
囲碁ニュース [ 2021年6月21日 ]
藤沢、女流立葵杯5連覇達成
第8期会津中央病院・女流立葵杯(一般社団法人温知会協賛)の挑戦手合三番勝負が6月18、19日に福島県会津若松市の「今昔亭」で打たれた。藤沢里菜女流立葵杯が、18日の第1局を白番中押し、19日の第2局を黒番中押しで勝利し、挑戦者の上野愛咲美女流棋聖を退け、5連覇を達成。60歳から名乗ることのできる「名誉」の資格を22歳の若さで獲得した。今期は、挑戦者を決める本戦のベスト4が会津若松市の会場に袴の和装であでやかに登場し、15日準決勝、16日に決勝が打たれた。注目された仲邑菫二段は牛栄子三段に、加藤千笑二段は上野にそれぞれ敗れた。決勝戦は牛三段に悔やまれる失着があり、上野が2年ぶりの挑戦者に勝ち上がった。一日の休養日をとって挑戦手合がスタートするタイトなスケジュールの中、第1局は、「ハンマー」と異名をとる上野のお株を奪う力強さで藤沢が大石を仕留めて決着。第2局は、一般棋戦でも終盤の強さに定評があり、「ヨセの女王」と称される藤沢が、本領を発揮して逆転した。上野は「体力が大丈夫かなと思いましたが、自分の力は出せたかなと思います。会津のおいしいごはんのおかげです」と明るいコメント。藤沢は「苦しくなる展開が多く、内容がいいというわけでもない。まだまだ今後の課題があると思います」と気を引き締めつつ、「5連覇のことはまったく意識していませんでした」と笑顔を見せた。
本因坊文裕(井山裕太本因坊)、踏み留まる
3連勝して勢いに乗る挑戦者の芝野虎丸王座が一気に奪還を決めるのか、本因坊文裕が1勝を返して10連覇に望みをつなぐのか――注目の第76期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第5局が、6月21、22の両日、長野県松本市の「松本ホテル花月」で打たれた。結果は、218手まで、井山が白番中押し勝ちし、対戦成績を2勝3敗と戻した。本シリーズは、初戦で井山が勝利した後、第2局から、6月10、11日に福岡県北九州市の「アートホテル小倉ニュータガワ」で打たれた第4局まで、芝野が3局続けて井山の大石を取っての中押し勝ち。内容的にも、井山の不調が心配されて迎えた第5局だった。だが、白番の井山がやや打ちやすい形勢で一日目を終え、二日目、右辺でコウが始まり難戦となり一時は芝野が盛り返したが、「上辺で仕掛けていった手からおかしくした」と芝野。芝野の追い上げを振り切っての力強い勝利だった。井山は「上辺をそれなりに取り込めて、よくなったと思ったが、勝ちが分かったのは右辺の決着がついたあたりでした」と振り返る。解説の山下敬吾九段は「本局は本因坊にほとんど悪いところがなく、本来の強さが戻った感じがした」とコメントし、シリーズから目が離せなくなってきた。敗れた芝野は「シリーズの成績のことは気にせずに、集中して打てたらいいかなと思います」、井山は「前局まではまず過ぎたので、一つ返せたことはすごく自分としては大きいですけど、まだまだ厳しい状況ですので、また自分なりに準備して、自分の打ちたい手というか、自分なりの碁が打てればと思います」とそれぞれ抱負を語った。第6局は、29、30の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2021年6月18日 ]
世界アマチュア囲碁選手権戦
第41回世界アマチュア囲碁選手権戦が6月4日~9日の6日間、ロシアのウラジオストクで開催された。コロナウイルスのため昨年は開催されず、今年も開催はどうなるのかという声も聞かれたが、開催地で参加する選手と自国からオンラインで出場する選手が57か国・地域から世界一を競った。
日本代表は森川舜弐さんで市ヶ谷の日本棋院からオンラインで参加した。森川さんは日本棋院中部総部での院生経験がある25歳。プロ入りにあと一歩まで迫った実力者。日本代表を決める決勝ではアマ名人・アマ本因坊の大関稔さんを破っている。
日本の森川さんは2連勝と好スタートを切ったが、3戦目にポーランド、4戦目にフランスに敗れ4勝2敗で10位となった。優勝争いは5勝1敗で4人が並び、中国の馬天放さんがポイントで上回り優勝となった。
今回特筆すべきはヨーロッパの国の躍進である。特にポーランドは日本の森川さんのみではなく、優勝した中国の馬さんにも勝利している。しかしそのポーランドの選手もチェコに敗れている。日中韓台の四強と言われた時代は過去のものとなりつつあるようだ。AIの登場によりプロのいない国でも学ぶことができ、世界の実力差はどんどん無くなっているように感じられる。
今回の世界アマ選手権は無事に終了となったが、来年以降の開催はどうなっていくのであろうか。まだまだコロナの影響は世界各地で続いている。世界のレベルも上がってきており、これからが楽しみというときに不安ではあるが、またオンラインなどではなく、世界の強豪が集結して腕を競えるよう願っている。
囲碁ニュース [ 2021年6月8日 ]
絶好調の一力、世界戦でベスト8へ
韓国13名、中国7名、日本3名、中華台北1名が出場する世界戦「第26回LG杯朝鮮日報棋王戦」が、前年に続いてネット対局で開催され、5月31日に1回戦、6月2日に2回戦が打たれた。日本からはシード枠の一力遼九段、許家元九段と予選を勝ち抜いた伊田篤史八段の3名が出場し、組み合わせ抽選の結果、許と伊田は1回戦から、一力は2回戦から参戦。許と伊田は共に、韓国の強豪に敗れたが、一力は中華台北の新鋭、陳祈睿七段に146手まで白番中押し勝ちを収め、ベスト8に駒を進めた。一力は昨年あたりから世界戦でも結果を残し、世界のトップ棋士たちの中でも存在感を増している。本局でも、布石で研究の新手を放って優勢を築くと、中盤でも読みの入った鋭い打ち回しで、追い上げを許さず打ち進めた。その後、一力に緩着があり、相手にチャンスを与えた局面が一瞬あったようだが、ほぼ完勝に近い充実した内容の一局だった。昨年1回戦負けの雪辱を果たした一力は、「打っている時は余裕はありませんでした」と振り返りつつも、「打ちたい手を打てました」と笑顔でインタビューに応えた。準々決勝は、11月7、8日に行われ、一力は韓国の申真諝九段と対戦する。
絶好調の一力は、国内戦でも活躍しており、6月7日には名人リーグ戦(朝日新聞社主催)で勝利して単独トップをキープし、3月18日からの連勝も10に伸ばした。
囲碁ニュース [ 2021年6月3日 ]
芝野、本因坊戦2連勝
本因坊文裕(井山裕太本因坊)が初戦を制してスタートした、第76期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)は、第2局、第3局をいずれも挑戦者の芝野虎丸王座が大石を取って中押し勝ち。スコアを2-1とリードした。
5月24、25の両日、秋田県能代市の「旧料亭金勇」で打たれた第2局は、井山が「一日目からいくつか後悔の手があった」と振り返る。二日目に入り、「どちらかが大きく死んで直ぐに終わってしまうのではと心配なくらい、両者踏み込んでいる」(三村智保九段)などの評からもわかる険しい戦いは、井山の黒の大石が死んで決着。二日制の対局では珍しい、午前中の終局となった。
1勝1敗で迎えた第3局は、6月1、2の両日、大阪府守口市の「ホテル・アゴーラ大阪守口」で行われた。序盤から井山が積極的に仕掛け、芝野が冷静に対応していく展開。二日目に入ると、井山は各所の形を決めた後、黒模様の中の白石のシノギに向かった。芝野は、生きられては地合いで足りないと判断し、大石を取りにいく。息詰まる「攻めとシノギ」の接近戦が延々と続き、ついに井山が投了を告げた。芝野は「1日目に打ちにくくしたと思った」そうだが、「右辺での白の眼がなくなった時に正しく打てていると思った」と自信をのぞかせる。「次も集中して打ちたい」と語った。敗れた井山は、「形はやれると思っていたが、進んでみてはっきりとシノギが見えなくなった」と脱帽した様子。「次はしっかりとコンディションを整えて臨みたい」と心機一転を誓った。
井山がシリーズの成績をタイに戻すのか、芝野が一気に王手をかけるのか。第4局は、10、11の両日、北九州市の「アートホテル小倉ニュータガワ」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年5月28日 ]
アマ名人戦各地で予選
第14回朝日アマチュア名人戦の予選が全国の各都道府県で行われている。昨年はコロナウイルスの影響により囲碁大会が行われなかったため、参加者たちにとっては待ち望んだ大会となった。しかし、地域によっては従来の参加者よりも少なく、緊急事態宣言により開催日程を全国大会ギリギリまでに延ばすなどしている県もある。
そんな中でも各県では実力者が勝ち上がり代表が決まっている。久々の大会ということもありTwitterなどのSNSでは各県の情報が大いに発信されている。東京大会では参加者同士でお互いの近況を確認し合う姿や、無事を確認する様子が見られた。
東京大会では小学四年生の山際庸平くんが代表まであと2つに迫るなど子供たちの活躍も目立ったが、逆に40代、50代の活躍も目についた。東京だけでなく、近年では20代、30代の躍進があっただけにベテランたちの巻き返しも見られるだろう。
コロナウイルスがこの一年に与えた影響は各世代に大きく表れているようである。大会があれば姿を見せたていた常連でも60代以上では参加を見合わせたり、20代、30代でも仕事の影響により参加困難なため出場を見合わせたという話も聞く。
アマ名人戦の全国大会は7月初めに行わる。アマ名人戦の後にはアマチュア本因坊戦も各地で予選が始まろうとしている。すでに中止も決めた大会もあるが、今回のアマ名人戦が囲碁大会復活の幕開けになることを願うばかりである。
囲碁ニュース [ 2021年5月18日 ]
仲邑菫二段、13連勝中
「強い先生とたくさん打ちたい」と日本棋院東京本院に移籍した仲邑菫二段の勢いが止まらない。今年、12歳という最年少記録で二段昇段を果たしたばかりだが、「二度目の10連勝」の見出しが驚きと共に紙面やネットを飾った後も、自身の連勝記録を伸ばし続け、5月13日には実力者の堀本満成五段に黒番5目半勝ちし、連勝を「13」とした。現在24勝2敗という驚異的な成績で、全棋士中、勝率トップ。勝ち星ランキングも2位の上野愛咲美女流棋聖の「21勝」に「3勝」の差をあけてトップに立っている。強敵を倒しての棋聖戦Cリーグ入りの他、藤沢里菜女流本因坊への挑戦権をかけた本戦トーナメント戦も、5月9日、牛栄子三段に一度は逆転を許しながら終盤に再逆転する力強さを見せ、ベスト8に勝ち上がっている。今後、どこまで勝ち上がっていくか、国内のみならず、国外の囲碁ファンの注目も集まっている。13連勝した局後のインタビューには「ずっと細かい碁だと思っていました。終盤中央に黒地ができたあたりで優勢を意識しました。次も良い碁が打てるようにがんばります」と答えた仲邑。次局は20日に、本格派の小松英樹九段と名人戦予選Cの決勝戦が予定されている。
囲碁ニュース [ 2021年5月13日 ]
本因坊文裕が初戦を制す
第76期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)が開幕した。本因坊文裕(井山裕太本因坊)の10連覇なるか。挑戦者の芝野虎丸王座がこれを阻止するか。注目の第1局は5月11、12の両日、群馬県高崎市の「旧井上房一郎邸」で行われ、184手まで、井山本因坊が白番中押し勝ちを収めた。互いに模様を張り合い、荒らし合う進行となった本局は、やや井山優勢から芝野が盛り返し、一日目が終わるころには互角の形勢。二日目に入ってからも石の張った好勝負が展開された。井山は「右辺の黒地を荒らしてまずまずかなと思った」、芝野は「右辺を荒らされたとき、厳しい手を選ばないといけなかった」と振り返る。現地大盤解説をつとめた本木克弥八段は、下辺の攻防で井山から見て先手ゼキにした時点で黒が優勢に立ったという。その後、芝野が目一杯に囲ったが、持ち時間を残していた井山が絶妙な打ち回しで黒地に手をつけ、成功させて、芝野を投了に追い込んだ。井山の読みの鋭さが印象に残る一局となった。井山は「始まったばかり。次もしっかり準備して悔いのないよう戦いたい」、芝野は「切り替えて次も集中して打ちたい」と話した。第2局は5月24、25の両日、秋田県能代市の「旧料亭金勇」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年5月6日 ]
井山、碁聖戦挑戦者に
一力遼碁聖への挑戦をかけた第46期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)の挑戦者決定戦が5月6日に打たれ、井山裕太棋聖が、伊田篤史八段に211手まで黒番中押し勝ち。失冠した2018年以来3期ぶりに碁聖戦のタイトルマッチに名乗りをあげた。序盤、井山が好手を放ち流れを引き寄せるが、中盤に伊田が一流の力強さを発揮して井山の大石を取りかけに向かい、盤上は壮絶な様相に。一時は検討陣から「黒が絶対絶命」の声も聞かれたが、井山が妙手を繰り出しシノいで勝負を決めた。井山は、すでに「名誉碁聖」の資格を有する棋戦で7期目を期す。迎え撃つ一力碁聖は、「井山さんが本命だと思っていました。こちらがタイトルを持っている状態でのタイトル戦は初めてですが、井山さんと打つときは常に挑戦者だと思っているので、挑戦者の気持ちで臨みたい」と語った。 5番勝負の第1局は、6月26日、岡山県倉敷市で行われる。
仲邑菫二段、棋聖戦Cリーグ入り/女流棋士3名の活躍に期待
5月6日、棋聖戦のCリーグ入りをかけた予選、FT(ファーストトーナメント)の決勝に臨んだ仲邑菫二段が、鳥居裕太三段に勝利した。序盤はリードを奪われていたが、鳥居の疑問手を捉えて一気に逆転すると、「仲邑さんの特徴は最終盤の強さ」と芝野虎丸王座に評される盤石さでゴールに向かった。12歳2か月でのCリーグ入りは、もちろん最年少記録となる。また、仲邑はこの勝利で22勝2敗とし、勝ち星も勝率も日本棋院の全棋士の中でトップ。連勝も11に伸ばし、勢いが止まらない。打つ度に強くなっていく印象の仲邑から目が離せない。
今期のFTは決勝には4名の女流棋士が勝ち上がっていた。まず、4月22日に、謝依旻六段が、今年負けなしの9連勝中と絶好調の常石隆志四段に逆転半目勝ちして3期目のCリーグ入りを決め、4月29日には藤沢里菜女流本因坊が初のCリーグ入りを決めた。もう一人、期待されていた上野愛咲美女流棋聖は、5月3日に、福岡航太朗初段に半目敗れ、3期連続のCリーグ入りを逃した。仲邑を含め、3名の女流棋士のCリーグでの活躍が期待される。15歳4カ月でCリーグ入りを果たした福岡初段は、わずか3日で最年少記録を塗り替えられてしまったが、当初から「今年の目標はCリーグ入り」と語っており、やはり活躍が期待される。
藤沢、早碁オープン戦で女流棋士初の本戦入り
5月6日、第28期阿含・桐山杯 全日本早碁オープン戦(阿含宗特別協賛)の最終予選決勝が打たれ、藤沢里菜女流本因坊が、王銘琬九段を破って本戦入りを決めた。同棋戦は、本戦入りが16名。ここに女流棋士が勝ち上がったのは初めてとなる。棋聖戦Cリーグ入りに続いての快挙に、藤沢は「うれしいです。本戦で一局でも多く打つのが目標です」と笑顔で語った。
囲碁ニュース [ 2021年4月29日 ]
許家元十段、誕生
芝野虎丸十段の2勝、挑戦者の許家元八段の2勝で迎えた大和ハウス杯第59期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第五局が、4月28日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。激戦の末、195手まで、許八段が黒番中押し勝ちを収め、2018年の碁聖以来二度目の七大タイトルを獲得した。序盤早々、左上で難しい戦いに突入しながら、両者ほとんど使わず猛スピードで進みギャラリーを賑わせた。この戦いが収束した局面を、黒番の許は「少し後悔の手があり、そんなには自信がなかった」、芝野は「途中で研究にない手を打たれたが、一応白も打てるのではないかな」とそれぞれ振り返る。その後、形勢は揺れ動き、中盤に許が仕掛けて再び激しい戦いとなる中、今度は許の強手が決まり、勝敗を決した。敗れた芝野は「5局とも難しい碁ばかりだったが、全体的に勝負所でのミスが増えてしまっていたので、そこらへんをもっと鍛えていかないといけないと思いました」とシリーズを振り返り、「防衛できなくて残念です。またタイトル戦で打てるようにがんばりたい」と再起を誓った。許は、「どの碁も苦しい場面が多かったのですが、一応最後まで粘り強く打てたのはよかったかなと思います。(ライバルでもある芝野には)圧され気味でしたので、今回勝ち切れたのは本当に運がよかったと思います」と振り返り、「まだ実感がわきませんが、十段を獲れたことは素直にうれしいです」と笑顔で喜びを語った。
囲碁ニュース [ 2021年4月21日 ]
藤沢、女流名人戦4連覇
藤沢里菜女流名人に上野愛咲美女流棋聖が挑戦する女流2強の決戦――第32期博多・カマチ杯女流名人戦三番勝負(一般社団法人巨樹の会特別称賛)の第1局、第2局が、それぞれ4月14日、16日に東京都千代田区の日本棋院本院で行われ、藤沢が2連勝で防衛を果たした。第1局は、白番の上野が実利でリードを奪い、はっきり優勢を築く。黒模様を荒らしに入った左辺の攻防で「死活を間違えて(形勢が)あやしくなってしまった」と上野。「間違えたので仕方ない」とサバサバした様子でもあった。その後、上辺の大ヨセで黒が得をし「やっと細かくなった」と藤沢。以降をしっかりまとめて黒番1目半勝ちとした。第2局も上野がペースを掴んだが、一手の緩みを藤沢が捉えて微細な形勢に。その後藤沢の好手がありリードを奪うと正確な打ち回しで上野を投了に追い込んだ。4連覇を達成した藤沢は「2年ぶりに女流名人戦を開催していただき感謝しています」とまず謝意を伝え、「厳しい勝負ばかりで、連覇は運がよいと思う」と謙虚なコメントを残した。上野は「2局とも、序盤はまあまあだなと思っていたのですが、逆転されてしまい……里菜先生は強かったです」とコメント。後日の藤沢は「特に1局目は、悪い時間が長かった。(中1日でのタイトなスケジュールについては)とくに疲れはなかったですが、でももし2局目に負けていたら、確かに疲れが出たかもしれませんね」と激戦を笑顔で振り返った。
令和三羽ガラス対決、十段戦は最終局へ
芝野虎丸十段に許家元八段が挑戦する大和ハウス杯第59期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)は、第3局が4月8日に長野県大町市で打たれ、許が337手に及ぶ死闘を制した。続く第4局は、20日、東京都千代田区の日本棋院本院で行われ、149手まで芝野が黒番中押し勝ち。スコアを2対2のタイに戻した。第3局は、コウ争いが次々と発生する凄まじい戦いの碁だった。優勢の許を追い、芝野が勝負手を連打し、混戦へと突入していった。対照的に、第4局は穏やかに流れていった。中盤に白番の許の疑問手を咎めた芝野が中央の白を取り込み優勢を築くと、その後も力強く打ち回して許を寄せ付けなかった。芝野は「大変な内容の碁が続いていますが、最終局も集中して打ちたい」。敗れた許は「泣いても笑っても最後なので、全力を尽くしたい」と、それぞれ最終局への抱負を語った。防衛か奪取か。第5局は今月28日に日本棋院本院で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年4月12日 ]
ジュニア本因坊戦
第24回花まる学習会杯ジュニア本因坊戦全国大会が3月20日、21日に東京千代田区の神田神保町に行われた。各地区の代表32名で行われる予定であったが、コロナウイルスの影響により3名が欠席となった。例年では選手の子供たちだけでなく、保護者の熱気もすごいが、今年はコロナ対策により会場は子供たちのみとなった。
ジュニア本因坊戦は他の子供大会とは異なり小学生と中学生が同じ舞台で戦う。そのため中学生が勝ち上がることが多いが、今回は國松聡さん(熊本・小6)が3位、高地祐希さん(東京・小5)が5位と2名の小学生が入賞した。
2日間の熱戦は5回戦行われ、神奈川代表の竹内怜櫂(れいる)さん中学1年生が初優勝を果たした。
こどもチャンピオン戦
第24回ボンド杯全日本こども囲碁チャンピオン戦全国大会が3月30日、31日に京都府京都市の聖護院御殿荘で行われ、小学生、中学生各24名ずつが腕を競った。
今大会では3コウ無勝負が発生し打ち直しとなる珍しい出来事が起こった。
小学生の部は米津玲吾さん(東日本・小3)が優勝した。米津さんは故・梶原武雄九段の曾孫にあたり、将来有望な一人である。
中学生の部は安田勝哉(東日本・中3)が優勝した。安田さんは藤澤一就八段門下の元院生である。昨年優勝の吉藤真成さんは5位、昨年準優勝の田浩人さんは2年続けての準優勝となった。
子供たちにとって年度末の2つの大会は大きな励みとなるであろう。
囲碁ニュース [ 2021年4月6日 ]
芝野、2年連続の本因坊挑戦者
10連覇を期す本因坊文裕(井山裕太本因坊)への挑戦権をかけた第76期本因坊戦リーグ(毎日新聞社主催)は、4月2日に最終一斉対局が打たれた。4名が可能性を残していたが、1敗で単独トップだった芝野虎丸王座が羽根直樹九段を破り、2年連続の挑戦権を獲得した。最終戦績で2敗の許家元八段、一力遼天元と3敗の羽根が残留。今期リーグ入りを果たした黄翊祖九段、鶴山淳志八段、佐田篤史七段、大西竜平七段の4名が陥落となった。
注目の芝野・羽根戦は、序盤、左下で、羽根の様子伺いの一手に芝野が最強手で応じて険しい攻防に突入し、早くも勝負所を迎えた。羽根は「攻め合いでひどい読み違い、錯覚があった」と振り返る。芝野はここで読み勝ち、さらに右下も大きく取り込んで、羽根を投了に追い込んだ。97手まで、黒番芝野の中押し勝ち。過去は芝野から見て2勝6敗と苦手にしていたが、気合いのこもった積極策が実を結んだ。リーグを振り返り、「令和三羽ガラス」の許に敗れた後、一力に勝って、挑戦者を意識するようになったという。「井山先生には、昨年本因坊戦と名人戦でやられているので(いずれも、1勝4敗)、リベンジしたい気持ちはありますが、結果にはこだわらずに臨みたい」と抱負を語った。趙治勲名誉名人と並ぶ、井山の10連覇がなるか、芝野のリベンジがかなうのか。注目の七番勝負は、5月11日に群馬県高崎市にて開幕する。
囲碁ニュース [ 2021年4月2日 ]
芝野、1勝を返す
芝野虎丸十段に、挑戦者の許家元八段が先勝して迎えた「大和ハウス杯 第59期十段戦」(産経新聞社主催)の第2局が、3月24日、滋賀県長浜市の「Hotel & Resorts NAGAHAMA」にて行なわれた。黒番の芝野が3手目に、白番の許が10手目にそれぞれ三々に入る立ち上がりから、序盤は互角の折衝が続いた。だが、許に後悔の一手があり、左下の白石が黒からの「花見コウ」となる。さらにもう一手、許に悔やむ手が出ると、芝野が鋭い読みで右辺の白もコウに。このコウ争いに勝って、勝負も決したようだ。157手まで、芝野が中押し勝ちを収め、1勝を返した。芝野は「(時間を残すように)早く打とうと心がけました。一つ勝てたので安心しています。大変な相手なので、第3局もしっかり準備して集中して臨みたい」と語り、許も「今日の敗戦は気にせず、いつもどおり全力で臨みたい」と次局への闘志を見せた。第3局は4月8日、長野県大町市の「ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん」で行われる。
一力、2年ぶり2度目のNHK杯優勝
第68回NHK杯テレビ囲碁トーナメント(日本放送協会主催)の決勝戦が3月21日に放映され、一力遼天元・碁聖が2年ぶり2度目の優勝杯を手にした。決勝の舞台にあがった一力と余正麒八段は、共に昨年8割を超える勝率で、好調同士の大一番となった。黒番の一力が高い中国流を敷いてスタート。右下で余が戦いを仕掛けた攻防は、黒が白を取り込んで大きな地を確保してややリードを奪い、これに白が厚みを築いて対抗した。中盤、右下の白を生還させて余が盛り返し、一力が「やり過ぎて負けを覚悟した場面もあった」、余が「途中からそれなりに手応えがあった」と振り返る熱戦となった。だが、左辺の白模様を荒らし、さらに上辺の白地を荒らす絶妙なツケが放たれて勝敗が決着。233手まで、黒の中押し勝ちとなった。昨年、反省の内容で準優勝だった一力は「全体を通して自分らしく打てた」と決勝戦を振り返り、「優勝できてホッとしている」と笑顔。「来期も楽しんでいただける碁をお見せできたらと思っています」と早碁の王者らしいコメントを残した。敗れた余も、「初めての決勝戦でしたが、思ったより緊張しなかった。残念な結果になりましたが、非常に貴重な経験にもなりましたし、またがんばりたいと思います」と局後には笑顔を見せていた。
囲碁ニュース [ 2021年3月19日 ]
女流アマ 内田祐里さん初優勝
3月13日、14日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において第63回女流アマチュア囲碁選手権全国大会が行われ内田祐里さん(埼玉)が初優勝を果たした。内田さんは今年度までプロ棋士採用試験を受けており、大会の実績は無かったが注目の選手の一人だった。準々決勝では優勝経験のある実力者藤原彰子さんに粘り勝ちすると、準決勝、決勝と力強い碁で制した。
ベスト8には内田さんをはじめ、松本実優さん、加藤優希さんというプロ試験受験者の活躍が目立った。その他に前回優勝者の吉田美穂さんをはじめとする本大会は上位入賞常連者が勝ち上がっており、上位常連対若手という構図になった。
プロ試験を終えたばかりの若手の活躍が目覚ましいとされたが、準々決勝では村瀬なつさんが松本さんを降し実力を示した。準決勝は内田さんと加藤さんというプロ試験で競い合った同士、宇根川万里江さんと村瀬さんという過去入賞経験もある実力者という組み合わせとなり、決勝は内田さんと村瀬さんの組み合わせになった。両者は岩田一九段門下の姉妹弟子で、内田さんは岩田教室に通い始めた当初、村瀬さんに教わったことがあるそうだ。
今回の大会は緊急事態宣言の中ということもあり、辞退者が続出した。特に関東から離れる地方の選手は参加を辞退し、関東からの繰り上りが多くなった。さらに会場は感染症対策により、選手以外の姿はほとんど見られなかった。全国大会では応援や久々に地方選手と会えるために会場を訪れる人々が多いが、今回は寂しい光景となった。競技の場としてだけでなく、交流の場としても復活するよう願うばかりである。
囲碁ニュース [ 2021年3月16日 ]
上野、プレーオフ制して挑戦者に
藤沢里菜女流名人への挑戦者が決定した。第32期博多・カマチ杯女流名人戦のリーグ戦は、全勝だった鈴木歩七段が3月4日に打たれた最終局で謝依旻六段に敗れ、上野愛咲美女流棋聖が11日に打たれた最終局で一敗を守って終了。一敗で並んだ鈴木、上野の両者が、15日のプレーオフに臨んだ。本戦では鈴木に敗れている上野は、布石に反省点があったとし「布石が課題」と語っていた。その布石で、黒番の上野が最近では珍しい二間高バサミを打ち下ろすと、鈴木は「研究しているに違いない」とばかり、旧来の定石を選択。上野は「研究していたのですが、さっそくはずされてしまって」と笑う。でも、「布石の研究をよくしたので、安心して打てた」と本局を振り返る。その後の右上の攻防で、白の薄みを狙う上野らしい力強い手が奏功し、白石を取り込んで地合いでリードを奪った。その後、上辺の黒への攻めを見られるが、進出して左辺でさばき、白に逆転のスキを与えなかった。敗れた鈴木は、「序盤で誤算があり、そこから流れを崩し、いいところなく、うまく打たれてしまって。完敗だったと思います」と脱帽し、「残留を目指していたので、2位はよい結果。来期もこの順位を生かせるようにがんばりたい」と語った。上野は、リーグ戦で一敗した時点で挑戦者はあきらめていたそうで、「挑戦できるだけでめちゃくちゃうれしいです」と笑顔。「里菜先生は、自分より実力が上だと思っています。でも、サラッと負けて後悔しないようにがんばりたい」と抱負を語った。昨年の女流本因坊戦五番勝負以来となる藤沢と上野のタイトル戦――三番勝負は、4月14、16、19日の短期決戦となる。
仲邑、史上最年少の二段
3月15日、仲邑菫初段が、「第28期阿含・桐山杯」の予選で松原大成六段に勝利。女流棋戦を除く公式戦で通算30勝をあげ、昇段規定により16日付で二段に昇段した。12歳0カ月での二段昇段は、趙治勲名誉名人が持っていた12歳3カ月の最年少記録を52年ぶりに更新する快挙だ。仲邑は、今年1月、日本棋院関西総本部から東京本院に移籍した。環境の変化がプロとしての自覚もうながした様子で、1月以来、自己最多の10連勝と戦績も見事。昇段については「目標にしていました。小学生のうちに二段になれて嬉しいです」と話し、記者団に今後の抱負を尋ねられると「(4月に中学生になってからも)強くなれるようにがんばりたいです」と入段当時よりはきはきとした口調で受け答えしていた。
囲碁ニュース [ 2021年3月9日 ]
井山、棋聖9連覇達成
井山裕太棋聖が棋聖戦史上初の9連覇を達成した。第45期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が、3月4、5の両日、新潟県南魚沼市の「ryugon」で行われ、152手まで、井山が白番中押し勝ち。シリーズの戦績を4勝1敗とし、河野臨九段の挑戦を退けた。9連覇は、小林光一名誉棋聖の8連覇を抜き単独トップの新記録。名人、本因坊と合わせた三大タイトルを同時に有する「大三冠」を保持すると共に、七大タイトル獲得数に、「1」を積み「50」とした。第5局は、共に徹底した研究を伺わせる立ち上がりから、井山が先に左辺に打ち込む積極策に出た。対して河野のコウ材づくりが機敏で、1日目を終える局面を井山は「白がはっきり大変でした」と振り返る。形勢を悲観していた井山は、2日目に入ると強手を次々と繰り出す迫力を見せる。石の張った左下の折衝の中、河野が101手目に予想だにしない大技を仕掛け、左下の白7子を取り込んだ。大技は成功したかに思われたが、その結果中央の白を厚くして黒が後手を引き、白126と上辺に構えられると、巨大な白の地模様が現れ、黒が勝つのが大変な状況となっていた。黒101で普通に進めていればまだまだ互角の形勢だったという。結果的には大仕掛けの決行が裏目に出てしまった。上辺を荒らしに向かうも、的確に応じられ、白152を見て河野が投了を告げた。シリーズを通して「形勢判断の精度に差があった」と対局直後の河野。一夜明け、自身のSNSでは「力が及びませんでした。また頑張ります!」と再起を誓った。井山は「自分にとって非常に意味のあること」と今シリーズを振り返り、9連覇を「一局一局、ギリギリの勝負のなかでよくここまで積み重ねられたという思い。もちろん非常に嬉しいことですが、これからの方が大事かなと思っています」と語った。シリーズ中に第一子が誕生したことを尋ねられ、「『しっかりしなければ』と意識すると結果が欲しくなるので、意識しないようにと思っていました」と笑顔を見せたという。大棋士・井山の語る「これから」に注目していきたい。
囲碁ニュース [ 2021年3月3日 ]
形勢二転三転。十段戦初戦は許の勝利
芝野虎丸十段に許家元八段が挑戦する「大和ハウス杯 第59期十段戦」(産経新聞社主催)が開幕し、第1局が、3月2日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」にて行われた。一力遼天元と共に「令和三羽ガラス」と呼ばれ期待を集める両者は、昨年の王座戦以来、二度目の挑戦手合対決となる。王座戦では芝野が3―1で防衛を果たしたが、今年に入り、名人戦と本因坊戦のリーグ対局ではいずれも許の勝ち。その後の棋聖戦Aリーグでは芝野が勝つなど、両者の戦績は拮抗している。序盤は互角に進み、右辺で許が最強手で仕掛けて碁が動き出した。対して芝野が繰り出した一手を、新聞解説の村川大介九段は「全く想像のつかない手。相手の受け方を見てその後の打ち方を決めようという高度な手」と評し、その後に芝野がリードを奪う。許も「右下でうまく形を決められ、(形勢は)大変かなと思った」と振り返った。だが、その後の難解な折衝の中、許がポイントを重ねて盛り返し、逆にリードを奪った。黒番の許の優勢の時間は長かったが、YouTubeでライブ配信された解説では、一力遼天元が「難しい局面なので、まだまだ形勢は揺れ動きそう」と予想し、実戦もその言葉どおりに進んでいった。優勢を意識し、手堅く打ち進めた許が「真ん中の打ち方がぬるかった気がする」と反省。この機を捉えて芝野が再度逆転し、検討陣からは「白番の芝野十段が半目か1目半勝ち」という結論も出された。ところが、先に秒読みに突入した芝野は「判断ができずに打っていた」と悔やむ。味の悪い左上を放置して、大きなヨセの手を選択。今度はこの瞬間を捉えた許が左上で逆転打を放って再々逆転を果たすところとなった。205手まで、許の黒番中押し勝ち。許は「一局勝ててよかった。次も厳しい戦いになると思うが、最高のパフォーマンスをしたい」、敗れた芝野は、少し考えた後に「しっかり準備して集中して打ちたい」と、それぞれ次局への抱負を語った。第2局は、24日、滋賀県長浜市の「Hotel & Resorts NAGAHAMA」にて行なわれる。
囲碁ニュース [ 2021年2月26日 ]
囲碁大会再開の兆し
新型コロナウイルスの影響により2020年は多くの囲碁大会やイベントが中止となった。2021年はどうなっていくのであろうか。まず、緊急事態宣言の発令による関係もあり打ち初め式は行われず、宝酒造杯各段チャンピオン戦も年内の中止を決めるなど、まだまだ再開はされないのかと思われた。
しかし、2月に入り例年日本棋院で行われていたジャンボ囲碁団体戦こそ行われなかったものの、ジュニア本因坊戦、子どもチャンピオン戦といった二つの子供大会は予選が開催され、3月の全国大会も開催予定である。また、女流アマチュア囲碁選手権も各地で予選が行われた。県によっては人数の制限や過去代表経験のある方に絞って少人数で開催したところもあり、各会場や県支部の努力や想いを感じることができる。女流アマチュア選手権も3月に全国大会を開催する。
子ども大会や女流大会の再開に続き一般大会も再開の兆しを見せている。朝日アマチュア名人戦の予選日程が各地で発表されはじめ、全国大会の日程も予定として発表された。緊急事態宣言が解除されれば開催の予定であるという。緊急事態宣言中や延長された場合はその期間に予選は行わないという但書きはあるものの、緊急事態宣言も解除の方向に向かっている。囲碁大会の再開は多くの囲碁ファンが望んでいたところである。
イベントや大会は公式戦のみでなく各碁会所も徐々に再開しはじめており、月例大会やプロ棋士の指導碁など、完全とはいかないが元に戻しつつある場所も少なくないようである。
囲碁ニュース [ 2021年2月18日 ]
河野、反撃開始
井山裕太棋聖の3連勝で迎えた第45期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第4局が、2月16、17の両日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われ、212手まで、挑戦者の河野臨九段が白番中押し勝ちを収めた。
「ホテル花月園」は、前期の七番勝負で河野が勝利した第五局と同じ対局地。ゲンもよく、対局前の河野は「3連敗していて言うのもはばかられるのですが、調子は上向いている」と柔らかく自信をのぞかせるコメントを残した。1日目は黒の実利と白の厚みという碁形に分かれた。右上の攻防で「井山が手順を尽くして白3子を取り込んだ」と評されたが、井山は「確定地は黒もそれなりにあるのですが、白3子を捨てられ、右上を巧く処理されたかなという感触があった」と振り返る。2日目に入り、河野が好手から黒の形を崩し、流れを引き寄せた。井山が「無理気味だとはわかっていたのですが」という勝負手を放つものの、これに的確に対応した河野が勝勢を築いていった。そのまま終局するかと思われたが、終盤に井山が再び勝負手を放ち、攻め合いの「勝負形」に持ち込む見せ場を作った。だが、最強に応じた河野が攻め合いも制し、投了へと追い込んだ。河野は「形勢はずっとわからなかった。勝ちを意識したのは、攻め合いの形がはっきりした、本当に最後の最後」と熱戦を振り返った。粘る井山を振り切り、好局で1勝を返した河野は、「依然としてカド番ですが、スコアのことは気にしないで、自分の碁をしっかり出し切れるように」、井山は「引き続き、ベストを尽くしたいと思います」とそれぞれ抱負を話した。第5局は、3月4、5の両日、新潟県南魚沼市の「ryugon」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年2月9日 ]
井山、棋聖9連覇まであと1勝
井山裕太棋聖の2連勝で迎えた第45期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第3局が、2月5、6の両日、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われた。1日目を終え、黒番の挑戦者の河野臨九段が打ちやすいと見る声も多く聞かれた。河野も「一応それなりにずっと勝負形のつもりで打っていた」と振り返る。2日目に入り、右上の攻防のなか、「真正面からいけないとおかしいのですが、自分の中では思わしい図ができなくて、ひねり出した」と井山が振り返った白106が流れを大きく変えた。新聞解説の瀬戸大樹八段は白106、112、122の三手を「『令和の三妙手』として語り継がれるかもしれません!」とSNSに投稿している。「コウ含みでどこまで進んでも判断ができず、どう打ってよいか全くわからなくて」(井山)、「中央をどう見るかに苦労していました。どう考えてよいのかがずっとわからなくて」(河野)と両者が振り返る難解な展開だったが、上記の「三妙手」に続き、河野が「めちゃくちゃ悪い手を打ってしまって、全然だめになってしまった」と振り返る。形勢は白に傾き186手まで、白番井山が中押し勝ちをおさめた。井山が一気に4連勝で9連覇を達成するのか、前期同様、河野がここから巻き返すのか、注目の第4局は、2月16、17の両日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われる。井山は「まだまだ大変なので、精一杯準備して臨みたい」、河野は「せっかくの七番勝負なので、盛り上げられるように、少しでもいい状態を作っていけるように努めたい」とそれぞれ抱負を語った。
上野、女流棋聖位を奪還
鈴木歩女流棋聖が先勝し、挑戦者の上野愛咲美扇興杯が1勝を返して迎えた第24期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)の最終局が、2月8日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。結果は148手まで、白番上野の中押し勝ち。昨年の雪辱を果たし、2期ぶり3度目の女流棋聖位を獲得した。防衛はならなかった鈴木は「愛咲美ちゃんが強かった」と振り返り、「力は出し切れたと思いますが、自分の力が及びませんでした。また挑戦できる機会があればがんばりたい」と語った。2冠となった上野は、「第1局の内容がひどすぎたので、あとは楽しんで打とうと考えました」とシリーズを振り返り、「碁の内容は今日が一番よかった。今年は世界戦もがんばりたい」と笑顔で喜びを語った。
囲碁ニュース [ 2021年2月2日 ]
女流棋聖戦、最終局へ
前期とはタイトルホルダーと挑戦者を入れ替えて、第24期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)が開幕した。連覇を期す鈴木歩女流棋聖は、1月21に神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」で打たれた第1局で黒番中押し勝ちをおさめて先勝。続く第2局が、28日に東京都千代田区の「竜星スタジオ」で打たれた。序盤は白番の鈴木がペースを握り、挑戦者の上野愛咲美女流最強位は「ほぼあきらめの気持ちでした」と振り返る。だが、上野は中盤から必死の追い上げを見せる。逆に「楽観があったのかも」と振り返る鈴木が上辺で白を捨てた選択が疑問だったようで、黒が巻き返した。その後、鈴木に後悔の打ち回しがあり、上野が手厚く冷静に応じて優勢を築き、そのままヨセ切って中押し勝ち。スコアを1勝1敗のタイに戻した。鈴木は、上辺の攻防に「悔いが残る」と、無念そう。上野は「最終局は序盤の作戦をしっかり考え、楽しい碁を打ちたい」と抱負を語った。防衛か雪辱か、注目の最終局は、2月8日に、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われる。
井山棋聖、2連勝
井山裕太棋聖が先勝してスタートした第45期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第2局が、1月22、23の両日、富山県高岡市の「勝興寺」で行われた。挑戦者の河野臨九段は1勝を返したい一局だったが、序盤に黒番の井山がリードを奪うと、そのまま黒優勢の時間が長く続いていった。二日目に入り、下辺の攻防のなか、河野の絶妙手から超難解な戦いへと突入。勝敗の行方は不明となった。ただ、碁形が黒に味方し、逆転はかなわず。「最後の攻め合いには勘違いがあった」と振り返る河野が投了を告げるところとなった。井山は「まだまだ先は長いので」と気を引き締め、河野は「七番勝負を盛り上げられるように精一杯努力したい」と語った。その言葉どおり巻き返しがなるか。第3局は、2月5、6の両日、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われる。
許、十段戦挑戦者に
芝野虎丸十段への挑戦権をかけた大和ハウス杯第59期十段戦(大和ハウス工業特別協賛)の挑戦者決定戦が、1月28日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。決定戦に勝ち上がったのは、許家元八段と余正麒八段。両者は共に好調で、余は昨年22連勝を記録し、今年も5連勝と勢いに乗っていた。だが、中盤には黒番の許が、「少し打ちやすいと思った」と振り返る。さらに黒が上辺で仕掛け、読みを入れた戦いで利を得て大勢が決したようだ。中押し勝ちをおさめた許は、昨年末の王座戦に続いて、芝野に挑戦することになった。「こんなに早く挑戦の機会がめぐってくるとは思っていなかったので、すごく嬉しいです。芝野さんは強敵ですが、タイトル奪取が目標。しっかり対策をして、全力で臨みたい」と決意を語った。挑戦手合の第1局は、3月2日に大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で行われる。
囲碁ニュース [ 2021年1月28日 ]
二度目の緊急事態宣言と囲碁大会
年が明け11都府県に二度目の緊急事態宣言が発令され、再び囲碁界ではイベントの延期などが行われた。碁会所などは時短営業となったものの、昨年春のように休業するところは少なく感染予防をしながら営業をしている。
年内の囲碁大会はどのようになっていくのだろうか。自粛している一方で囲碁ファンの中には大会の開催を待ち望んでいる方は多い。現在、アマ名人、アマ本因坊、アマ竜星(世界アマ)の開催については発表されていない。例年では予選日程がそろそろ発表される時期である。昨年に続き今年も開催されないのではという声も聞かれファンの中では寂しい声もある。
それとは違い子供大会に関しては開催が現在のところ発表され、昨年の暮れから全国各地で予選が行われている。3月にはジュニア本因坊戦と全日本こどもチャンピオン戦の二つの全国大会が開催予定である。子供たちにとって大切な時間となるように願いたいところである。
また現在のところでは女流アマ選手権も開催予定となっており、各地で予選の日程も発表されている。しかし、関東に関しては日程の発表はされているものの、はっきりと開催とはされておらず申し込みも様子を見ながらの更新とホームページに記載されている。全国大会の日程は発表されているが果たして開催できるのであろうかという不安の声も聞かれる。
昨年に続き今年も囲碁大会開催が不安視されている。いつになったら元のように囲碁ファンが大勢集まり以前のように賑やかに交流できる日が来るのであろうか。一刻も早く以前のような光景が見られることを望むばかりである。
囲碁ニュース [ 2021年1月19日 ]
一力、「応氏杯」準決勝で敗退
4年に1度、オリンピックと同じ年に開催される世界戦、第9回応氏杯世界選手権(応昌期囲棋教育基金会主催)の準決勝三番勝負が、10日と12日にネット対局にて行われ、中国の謝科八段と対戦した一力遼九段は、2局ともに優勢を築くも、中盤以降、持ち時間にも追われる流れとなり悔しい2連敗。決勝進出はならなかった。
コミ8目(持碁は黒勝ち)、持ち時間3時間を使い切ると20分ずつ2目コミ出し(2回まで)などの特有のルールを持つ本棋戦は、日本では公式戦に含めていないが、過去には大竹英雄名誉碁聖、依田基紀九段がそれぞれ第2回、第3回に準優勝しており、認知度も注目度も人気も高い。一力は、三番勝負第1局では4目のコミを払い中押し負けとなり、その反省を基に、第2局は「序盤は(時間を使わないように)とばした」と振り返る。相手の得意戦法を研究し優勢を築くが、中盤に難解な戦いに持ち込まれ、再び持ち時間の差が開いていった。「2目払っても勝てる」という手応えを掴んだ局面もあったが、難戦の中、結局ヨセ勝負となり、コミ2目を払っての3目負けという結果となった。局後の一力は「やっぱり残念な気持ちは大きいです。かなり、懸ける思いは強かったですので」と天を仰いだが、「よくなってから勝ち切るというところがまだ課題なのかなと感じたので、今後また修正して臨んでいきたい」と、悲願の世界一に向けて決意を新たにしていた。
棋聖戦開幕。井山が先勝
9連覇を目指す井山裕太棋聖に、河野臨九段が昨年に続いて挑戦する第45期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕。第1局が、13、14の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて行われた。一日目は黒番の河野が得意の布石でスタートさせ、両者ともに「形勢に自信がなかった」と振り返る局面で、井山が封じた。二日目に入ると、井山らしい最強手と自由で巧みな打ち回しから白が優勢を築き、中盤から河野のつらい時間が続いていった。だが、井山が勝負を決めにいったシーンで一気に局面が紛れる。井山は右辺の黒の大石を取りかけにいったのだが、逆に白石を取り込まれるコウ争いに突入。井山に誤算があったようだ。ただ、大熱戦となったが、逆転には至らず、244手まで、白番井山の中押し勝ちとなった。第2局は、1月22、23の両日、富山県高岡市の「勝興寺」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2021年1月12日 ]
「女流名人戦」リーグ出場棋士7名が決定
1年空け、「博多・カマチ杯」として復活した第32期女流名人戦は、30期・31期のトーナメント戦から改められ、7名による挑戦者決定リーグ戦が再開される。藤沢里菜女流名人への挑戦権をかけ、謝依旻六段、牛栄子三段、辻華初段の3名が、昨年12月にリーグ入りを決めている。1月7日、東京都千代田区の日本棋院で予選が行われ、鈴木歩女流棋聖、上野愛咲美女流最強位、向井千瑛五段、加藤千笑二段の4名が勝ち上がり、リーグ戦に参戦する7名全員が出そろった。実力者が並ぶ中、若手の辻は「強い先生とリーグで打てるのはうれしい。全敗は悲しいので、1勝できるように頑張ります」、加藤は「リーグは初めてなのですごくうれしいです。リーグ戦は勝っても負けてもたくさん打てる。リーグに残れるように頑張りたい」とそれぞれ喜びと抱負を語った。
また、今年1月に、日本棋院関西総本部から東京本院に移籍した仲邑菫初段は、午前の対局で佃亜紀子五段に白番中押し勝ちして移籍後の初戦を白星で飾ったが、午後の決勝で上野に敗れてリーグ入りは果たせなかった。仲邑は「上野先生は強かった」。上野は「菫ちゃんと打つのは怖いけど、戦いになるので楽しいです」とのコメント。リーグ戦については「挑戦者になって里菜先生と打ちたいです」と力強い抱負を語った。
囲碁ニュース [ 2021年1月5日 ]
一力と余がランキングトップ
あけましておめでとうございます。
昨年末、12月28日に、日本棋院と関西棋院は公式戦のランキングを発表し、日本棋院では、一力遼天元・碁聖が勝ち星(53勝)、対局数(66局)、勝率(0.803)の3部門で首位。連勝部門では11連勝で2位につけた。3部門での首位は、2012年の井山裕太本因坊(当時)以来。また、連勝部門は長徳徹志二段が14連勝で初の「最多連勝」を獲得した。女流棋士では、藤沢里菜女流本因坊が勝ち星(35勝)と勝率(0.7)で1位。上野愛咲美女流最強位が対局数(57局)、下坂美織三段と牛栄子三段(8連勝)が連勝で、それぞれ1位となった。
関西棋院では、余正麒八段が全部門で1位。対局数(50局)は村川大介九段と並んだが、他は単独トップ。とりわけ、勝率(0.860)と連勝(22)は驚異的な数字で、一力二冠と共に、好調ぶりを示している。
なお、一力二冠、余八段ともに、連勝を継続中で、両者は今月7日の名人戦リーグで激突。どちらが連勝をのばすかが注目される。
「大和ハウス杯第59期十段戦」へ
1月5日、本戦進行中の第59期十段戦(産経新聞社主催)に、2021年1月1日より大和ハウス工業株式会社が特別協賛し、正式名称が「大和ハウス杯第59期十段戦」となることが、産経新聞社、公益財団法人日本棋院、一般社団法人関西棋院より発表された。十段戦は現在、芝野虎丸十段への挑戦権をかけて本戦を戦っており、張栩九段、村川大介九段、余正麒八段、許家元八段の4名が勝ち上がっている。