ヨーロッパ囲碁ニュース
ヨーロッパの囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
囲碁ニュース [ 2022年5月30日 ]
パンダネット主催 欧州チーム選手権:決勝ステージ進出国が決定
第12回となるパンダネット主催の欧州チーム選手権の予選リーグが終了、決勝ステージ進出4か国が決定した。3連覇中のフランスが7勝1分の圧倒的成績で1位通過。加えてウクライナ、チェコ(共に5勝1分け2敗)、ポーランド(4勝1分3敗)がタイトルを争うことになる。決勝ステージは、今年夏にルーマニアで開かれる予定の欧州囲碁コングレスの機会に開催される。予選リーグは昨年10月から今月にかけて、ほぼ毎月1局のペースで進められていた。
なお、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアはトップのAリーグから排除された。
大規模大会、徐々に復帰
ワクチン接種が一段落し、移動の制限がほぼ撤廃されたことで、数はまだまだ少ないものの、参加者100人を超える大規模大会が復活し始めている。
フランスではイースターの週末である4月16-18日にパリ大会がパリ中心部で開催された。入場制限などはあったものの、142人が参加した。


優勝は戴俊夫8d(フランス)。今年は新たに本も出版するなど、幅広く活躍している。2位はコルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)、3位はヴァレリー・クルシェルニツキー6d(ウクライナ)、4位はス・ヤン6d(フィンランド)、5位はバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d(フランス)だった。
またパリ大会に続く週末には、チェコのプラハにおいて韓国大使杯が開かれ、こちらは168人を集めた。優勝は韓国のキム・ドヒョプ7d。これにスタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)が続いた。


[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年3月27日 ]
ロシアによるウクライナ侵攻、欧州囲碁界も動揺
EGFによる制裁
2月末にロシアがウクライナを侵攻したことで、欧州囲碁界にも動揺が広がっている。国外に逃れた、碁を打つ子供達、女性も少なくない。ウクライナ出身でキエフ在住だったアルテム・カチャノフスキー2pは西部リヴィウに移動した。カチャノフスキー2pは囲碁雑誌『欧州囲碁ジャーナル』を主宰しているが、ロシア選手からの同誌への寄稿を受け付けないこととしたと発表、「苦渋の選択」と述べた。
欧州囲碁連盟(EGF)は3月頭、「ウクライナに対する戦争」を非難すると共に、以下のような措置を発表した。
▽ロシアのEGFメンバーシップを停止する。
▽ロシアにおいて計画されているあらゆるEGF関連イベントを中止する。
▽ロシア選手は、ロシア代表としてはEGFのイベントに参加できない(イベントにおけるロシア旗の誇示、国家斉唱などが禁止される)。ただし、中立旗の元での参加(すなわち、欧州代表としての参加)は認める。
同様の措置は、ベラルーシにも適用される。これらの措置は直ちに実施され、措置の変更がない限り維持される。これに続き、国際囲碁連盟(IGF)もEGFと同じ措置の発動を発表した。ロシア選手の排除を求める声も少なからずあったが、最終的には中立旗という条件で参加そのものは認める、というオリンピック方式の結論に落ち着いたことになる。

チェコにおける欧州青少年選手権
EGFによる発表の数日後に行われたのが、チェコ・プラハにおける欧州青少年選手権である。ここでも当然ながら、ロシア選手の参加を許可すべきかどうかが問題となった。ホスト国であるチェコ囲碁協会は、侵攻開始直後の2月26日の時点で、ロシアおよびベラルーシの選手を、青少年選手権に受け入れない(実際に用いられた言葉は「歓迎しない」)、との方針を表明した。
この問題は、EGFの臨時総会で話し合われた。ロシア側は当初、選手達の参加を主張したが、最終的に「困難な国際的状況、またロシア選手に対する容認しがたい態度を背景に、係争を避け、参加する子供達を倫理的・精神的なトラウマから保護する」ことを優先して参加を拒否すると発表。こうして青少年選手権は、毎年多くの選手を派遣するロシア抜きでの開催となった。
とはいえ、合計の参加者は110人を超え、大きな大会となった。ウクライナからは、15人が参加した。








大会の様子。サイドイベントとしてペア碁の大会も開かれた。ウクライナを支持するメッセージを掲げる選手達も見られた。(写真:Jaromír Šír、チェコ囲碁協会)
結果は以下の通り。
12歳未満(参加者32人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | ベンデ・バルサ | 3k | ハンガリー | 5-0 |
2 | アルペル・スラク | 1d | トルコ | 4-1 |
3 | アレクサンドル=ニコラス・パトラスク | 9k | ルーマニア | 3-2 |
4 | バルトロメイ・ダッフ | 6k | チェコ | 3-2 |
5 | ヤコブ・シチッチ | 11k | クロアチア | 3-2 |
6 | マテイ・シンカリ | 12k | ルーマニア | 3-2 |
ハンガリーの新鋭バルサ3kが初優勝を果たした。囲碁新興国トルコのスラク1d(昨年8位)の活躍も特筆すべきだろう。
16歳未満(参加者43人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | フセヴォロド・オフシェンコ | 4d | ウクライナ | 5-0 |
2 | ユツェ・シン | 2d | ドイツ | 4-1 |
3 | アンナ・メルニク | 1d | ウクライナ | 3-2 |
4 | ロベルト=アンドレイ・グロス | 1k | ルーマニア | 3-2 |
5 | オレシア・マルコ | 2d | ウクライナ | 3-2 |
6 | シュテファン=アドリアン・ロタリツァ | 1d | ルーマニア | 3-2 |
ウクライナのオフシェンコ4d、メルニク1dが1位、3位を占めた。オフシェンコ4dは12歳未満でも優勝経験があるホープ。
20歳未満(参加者40人)
名前 | 段位 | 国 | 勝敗 | |
---|---|---|---|---|
1 | アーヴェド・ピットナー | 5d | ドイツ | 5-0 |
2 | ダヴィデ・ベルナルディス | 4d | イタリア | 4-1 |
3 | デニス・ドブラニシュ | 4d | ルーマニア | 3-2 |
4 | ジョルジェ・ジゴイ | 2d | ルーマニア | 3-2 |
5 | リュバン・ヴィルエルム | 1d | フランス | 3-2 |
6 | エムレ・シナル | 2d | ドイツ | 3-2 |
昨年2位のピットナー5dが優勝した。現イタリアチャンピオンで伸び盛りのベルナルディス4dが2位となった。



[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年2月13日 ]
第5回欧州グランプリファイナル、シクシン4pが優勝
第5回目となる欧州グランプリファイナル大会が1月20-27日にかけてオンラインで開催された。グランプリファイナルの参加者は、欧州囲碁連盟(EGF)から指定を受けた大きな大会の成績優秀者のうち、合計ポイントが上位の16人。新型コロナウイルス禍を反映して、ポイント計算の元となった大会の合計数はわずか6大会となり、2019年の15大会から大幅に減少している。
今回のグランプリファイナル大会は、本来フランスのグルノーブルにおいて開かれる予定だったが、直前になってオンライン開催に切り替わった。欧州社会そのものはコロナとの共生に向かっているものの、欧州全体からの参加がある大会だけに、フランスではロシア製ワクチンのみを接種した者の入国が認められない、といった比較的強い制約があることが問題となった。
8人に人数を絞る予選リーグ戦においては、タンギー・ルカルヴェ1p(フランス)、スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)、アントン・チェルニフ7d(ロシア)といった有力者が脱落。EGFプロのイリヤ・シクシン4p(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)に加え、ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)、オスカル・バスケス6d(スペイン)が枠抜けした。
決勝ステージの結果は以下の通り。
アルテム・カチャノフスキー2p | ミティッチ | リジー | シクシン |
ニコラ・ミティッチ7d | |||
マテウシュ・スルマ2p | リジー | ||
パヴォル・リジー2p | |||
オスカル・バスケス6d | ジャバリン | シクシン | |
アリ・ジャバリン2p | |||
ルカシュ・ポドペラ7d | シクシン | ||
イリヤ・シクシン4p |
決勝に上ったのはリジー2pとシクシン4p。シクシン4pが安定した打ち回しで、第2回、4回に続く3度目の優勝を飾った。
なお、決勝ステージ1回戦ではミティッチ7dがカチャノフスキー2pに見事な勝利を収めた。準決勝ではリジー2pに敗れたものの、見事4位に入賞した。
グルノーブル囲碁大会、囲碁・スキーキャンプが開催
1月末から2月頭にかけて、仏グルノーブルでは国際囲碁大会に続き囲碁・スキーキャンプが開かれた。
対面式で開かれた大会には、合計で100人以上が参加。各自の参加にあたっては、ワクチン接種証明が求められた。
優勝は韓国のキム・ドヒョプ7d、2位はルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、3位はコルネル・ブルゾ6d(ルーマニア)。これに同率4位で地元の今村亨3d、デニス・カラダバン5dが続いた。



[ 記事:野口基樹 ]
囲碁ニュース [ 2022年1月11日 ]
第6回グランドスラム大会
第6回目となる欧州グランドスラム大会が12月16-19日にかけてセルビアの首都ベオグラードにおいて開かれた。先日オンラインでの欧州選手権が24人を集めて開かれたばかりであるが、グランドスラム大会では8人の欧州囲碁連盟(EGF)所属プロに加え、最近の大会での成績などを加味したボーナスポイント、予選会の結果により更に8人が選抜され、合計16人で、ノックアウト方式で争われる。中国のスポンサーによる後援もあり、優勝賞金は1万ユーロと、欧州選手権を大きく上回る。オミクロン株の出現やそれに伴う各国での制限措置の厳格化などが始まり、出場予定だったウクライナのアンドリー・クラヴェッツ1p(ドイツ在住)が直前で参加を取りやめるといったアクシデントもあったものの、なんとか対面式での開催にこぎつけた。
一回戦では、欧州プロ7人と、今年のプロ入段手合で決勝まで進んだポドペラ7dが勝ち抜き。二回戦では、シクシン4p(ロシア)、カチャノフスキー2p(ウクライナ)の常連に加え、ここのところ大きな大会に出場していなかったスルマ2p(ポーランド)と、ルカルヴェ1p(フランス)が勝ち準決勝に進んだ。準決勝では、カチャノフスキー2pが安定した石運びでスルマ2pを下す一方、ルカルヴェ1pが素晴らしい内容でシクシン4pに中押勝を収め驚きを呼んだ。
決勝ではカチャノフスキー2pが手厚く打ち進め、優勝を飾った。
パヴォル・リジー2p | リジー | ルカルヴェ | ルカルヴェ | カチャノフスキー |
マティアス・パンコケ6d | ||||
アレクサンダー・ディナーシュタイン3p | ルカルヴェ | |||
タンギー・ルカルヴェ1p | ||||
アリ・ジャバリン2p | ジャバリン | シクシン | ||
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d | ||||
ヴィクトール・リン6d | シクシン | |||
イリヤ・シクシン4p | ||||
マテウシュ・スルマ2p | スルマ | スルマ | カチャノフスキー | |
デュシャン・ミティッチ7d | ||||
オスカル・バスケス6d | ポドペラ | |||
ルカシュ・ポドペラ7d | ||||
スタニスワフ・フレイラック1p | フレイラック | カチャノフスキー | ||
ニコラ・ミティッチ7d | ||||
コルネル・ブルゾ6d | カチャノフスキー | |||
アルテム・カチャノフスキー2p |



[ 記事:野口基樹 ]