日本囲碁ニュース

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2022年12月27日 ]

関、史上最年少防衛

 関航太郎天元に、伊田篤史九段が挑戦する第48期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第5局が、12月15日、徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル」で行われた。最後の最後までもつれた大熱戦は、関が黒番半目勝ちとし、初防衛を果たした。21歳0カ月18日での七大タイトル防衛は、芝野虎丸名人の持つ王座防衛時の年齢を「7日」上回る最年少記録。天元連覇により九段昇段も確定させた。最終局は握り直して関の黒番。「勝負に徹する」と決めた伊田の白番初手天元は見られなかったものの、黒3で三々に入って間もなく、左下隅で始まった戦いが、左辺一帯、さらに中央から上辺へと波及する目の離せない展開となった。右辺で伊田に読み落としがあったようで関がリードを奪い、下辺の白模様に踏み込んだ黒を生き優勢を築く。だが、秒読みの中、関が手堅く打ち進める間に、伊田がじわじわと追い上げ、ついに逆転ムードとなった。しかし、大ヨセで伊田に後悔の一手が出る。関が踏ん張り、半目を残した。伊田は「久しぶりのタイトル戦は楽しめましたが、自分の弱いところが出て、課題がいっぱい見つかったシリーズでした」と振り返った。難敵を降した関は「負けたら、何もなかった頃の棋士に戻ってしまう。天元だけは渡せないという気持ちだった」と振り返り、「結果を出せ、これ以上の喜びはありません。こういう機会を増やせるよう、がんばっていきたい」と喜びと抱負を語った。

小西和子八段、初優勝

 45歳以上の女流棋士が参加する、第2回テイケイ杯女流レジェンド戦(テイケイ株式会社協賛)の決勝戦が、12月24日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。決勝に勝ち上がったのは、関西棋院所属の小西和子八段と、ご子息が入段を決めたばかりの桑原陽子六段。東西の実力者同士の一戦は、険しい戦いの碁となったが、黒番の小西が中央の白石を取って決着。207手目まで、黒番中押し勝ちとした。小西はうれしい初のタイトル獲得。桑原は、第19期女流本因坊戦以来、2度目のタイトル獲得を期したが、惜しくも届かなかった。

テイケイ杯俊英戦。決勝は一力と芝野に

 25歳以下の棋士による第2回テイケイ杯俊英戦(テイケイ株式会社協賛)のA・Bリーグ戦が、12月17日から22日に渡って開催された。勝ち上がった12名が6名ずつに分かれて総当たり戦を行う本棋戦は、中一日の休みを挟んで連日対局するという趣向のタイトル戦。昨年は、同リーグに入った一力遼棋聖と芝野虎丸名人が1敗で並び、直接対決を制した芝野が枠抜け。もう一つのリーグで枠抜けした許家元十段が、決勝で芝野を降して優勝を決め、「令和三羽ガラス」が活躍した。今年も、優勝経験者は参加できないため「二羽」となったものの、Aリーグでは芝野、Bリーグでは一力がそれぞれ全勝。改めて強さを見せつけた。「昨年は決勝に進んで負けてしまったのでリベンジしたい」と芝野。一力は「自分の持てる力は出し切れた」と振り返り、「年明けから棋聖戦も始まり、しばらく芝野さんとの戦いが続くので、しっかりいい状態で臨めるようにしたい」と語った。両者の決勝三番勝負は、来年3月に行われる。

囲碁ニュース [ 2022年12月23日 ]

学生王座戦 川口飛翔さんV

優勝の川口飛翔さん
入賞者

 「第21回全日本学生囲碁王座戦」の本戦リアル対局が12月17日、18日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院東京本院で行われた。決勝に勝ち残ったのは川口飛翔さん(東京大学)と笠原悠暉さん(大阪市立大)。川口さんが左辺の戦いで優位に立ち初優勝となった。
 大会初日は抽選を行い対戦相手を決めるが、1回戦で川口飛翔さんと林朋哉さんの東大対決、赤木志鴻さんと岩井温子さんの京大対決と同じ大学同士の対戦が2組発生するという事態になった。
 今大会では32人のネット本戦が行われ、2敗者失格というシステムで16人がリアル本戦に勝ち進む。今回は岩井さんと田中ひかるさん(宇都宮大)の2人の女性が勝ち残った。両者ともに1回戦で敗退してしまったが、女子1位が学生王座優勝者とともに翌年2月に行われる世界学生王座戦の出場権を獲得できる。両者による決戦となり、田中さんが勝利した。
 本戦は準決勝に学生本因坊の川口さん、学生十傑の硯川俊正さん、学生最強位の笠原悠暉さん、昨年学生王座準優勝の水精次元さんという実力も実績もある4名となった。川口さんが水精さんを、笠原さんが硯川さんを破り決勝に進出した。
 優勝した川口さんは「この大会は優勝すると、プロの王座に挑戦や世界学生王座戦に参加できるのでとても気合が入っていた。優勝できて嬉しい」と語った。これで川口さんは学生本因坊と合わせて2冠になった。
 川口さんと田中さんが挑戦する世界学生王座戦は来年2月21日、22日の予定である。

囲碁ニュース [ 2022年12月14日 ]

第32回 国際アマチュア・ペア碁選手権大会

 
日本第1位の藤原・津田ペア
大会終了後の日本ペア 谷・大関ペア(左)、内田・坂室ペア(右)
松田杯世界学生ペア碁選手権大会
学生韓国ペアに勝利した芝野・川口ペア
プロ棋士も参加した親善対局

 12月10日、11日、東京飯田橋のホテルメトロポリタンエドモンドにて第32回国際アマチュア・ペア碁選手権大会が開催され、17ヶ国・地域32ペアが5回戦を戦った。
1回戦では関東甲信ブロックで決勝を争った内田祐里・坂室智史ペアと谷結衣子・大関稔ペアがいきなり当り、谷・大関ペアがリベンジを果たしている。対局途中に滅多にない事であるが、内田さんがミスをし思わず声を上げる場面があったが、坂室さんがフォローしている場面が印象的であった。内田さんは「ペアが優しすぎて困る」と語っていた。
谷・大関ペアも2回戦で同じ関東甲信代表の藤原彰子・津田裕生ペアに敗れた。2回戦では優勝候補の韓国と中国が対戦し、韓国が勝利。韓国は3回戦で中華台北にも勝利。順調に勝ち進んだ韓国であるが4回戦ではヨーロッパチャンピオンペア(フランス)に錯覚によるミスで大苦戦となったが、終盤に逆転勝ちを収めた。決勝戦は韓国ペアと藤原・津田ペアとなり、韓国ペアが勝利、優勝となった。藤原・津田ペアは過去にも2位の経験があり今度こそはと対局前に気合が入っていたが一歩届かずであった。

 国際アマチュア・ペア碁選手権大会と並行して松田杯 第7回 世界学生ペア碁選手権大会も開催された。こちらは16ペアが参加し、日本から5ペア、中国、韓国からは2ペアずつが出場した。日本では芝野すず・川口飛翔ペアが韓国ペアに勝利するものの中国ペア、中華台北ペアに続けて敗退。決勝は韓国対中国になり、韓国の優勝となった。
日本ペアで唯一の勝ち越しは3勝1敗の岩井温子・赤木志鴻ペア(5位)となった。

 今大会では様々なイベントも併せて行われ、前日の9日と10日の午前には世界ペア碁公式ハンデ戦、11日に荒木杯ハンデ戦が開催された。
荒木杯は幅広い棋力のペアが参加できる一大イベントである。公式ハンデ戦と合わせて3日間参加のペアも何組か見られた。
表彰式では各優勝者等の表彰の他に、ベストドレッサー賞も発表され賑わいを見せた。また、10日の夕方には本戦を休憩してプロ棋士や来賓を合わせた親善対局が行われ、本来のペア以外にも他の国の人ともペアを組んで交流が行われた。

囲碁ニュース [ 2022年12月13日 ]

仲邑、藤沢破り挑戦者に

 上野愛咲美女流棋聖への挑戦権をかけた第26期ドコモ杯女流棋聖戦(NTTドコモ協賛)の挑戦者決定戦が、12月8日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」にて行われた。決勝に勝ち上がったのは、藤沢里菜女流本因坊と仲邑菫三段。囲碁界が注目する一局となった。黒番の仲邑が手厚く打ち進め、藤沢が地合いで先行した。中央の白にどこまで寄り付けるかがポイントとなり、1手30秒(1分の考慮時間が10回)の中、読み合いが勝負となった。仲邑の鋭い踏み込みに、半分捨てる道もあったが、藤沢は全てを生きにいく。その直後、藤沢の一手のミスを捉えた仲邑がコウに持ち込み主導権を奪った。仲邑はコウを争う間に右下の実利を取って優勢を築くと、藤沢につけいる隙を与えず堂々と押し切り、241手まで黒番中押し勝ちとした。入段当初「中学生のうちに女流タイトルを獲りたい」と語った仲邑は、今年、4月に女流名人戦で初の挑戦権を獲得し、7月にはトーナメント戦の扇興杯女流囲碁最強戦で決勝まで勝ち上がった。前者は藤沢に二連敗、後者は牛栄子扇興杯に悔しい逆転負けを喫したものの、その夢に向かって着実に力をつけている。「上野先生は広島アルミを2連覇したり、すごく強くて、特に早碁が強くて大変ですが、自分の力を出し切れるようにがんばりたい」と仲邑。13歳でタイトルを獲得すれば、藤沢の持つ15歳9カ月の史上最年少記録も大きく更新することになる。上野との挑戦手合三番勝負は、来年1月19日に開幕する。

囲碁ニュース [ 2022年12月6日 ]

天元戦、最終局へ

 関航太郎天元の先勝、挑戦者の伊田篤史九段の二連勝で迎えた第48期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第4局が、12月1日に兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」にて行われた。黒番の伊田は、勝てばタイトル奪取という大きな一番に、大胆な「初手天元」で臨んだが、これを活かしきれなかった。192手まで、関が白番中押し勝ちを収め、対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。序盤は、伊田が天元を活かすべく右辺一帯に大きな模様を築いた。その後関が、模様を消しに入った中央の白の一団を捨てながら各所で地を稼ぐ巧みな打ち回しを見せ、地合いでリードを奪う。関の一手の緩着を捉え、伊田が左辺の白に襲いかかりコウに持ち込む見せ場を作ったが、コウダテは白に多く逆転には至らなかった。関は「最後のコウ以外は、それなりに納得のいく碁が打てました」と自信のコメント。最終局に向けては「今日のように打てればと思います」と語った。伊田は「特別にひどい手を打った気はしていない」と振り返り、「気持ちを切り替えて次をがんばるだけです」とサバサバした様子だった。波に乗ると強い関と、今年(本局まで)35勝と勝ち星トップ10に入っている好調の伊田。内容の濃い決戦が期待される第5局は、12月15日に徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年11月29日 ]

井山、3連勝で王座防衛

 井山裕太王座が挑戦者の余正麒八段に2連勝して迎えた第70期王座戦五番勝負(日経新聞社主催)の第3局が、11月18日、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」にて行われた。午後5時45分、白180を見て余が投了を告げ、井山が白番中押し勝ち。3連勝で防衛を果たし、王座2連覇(通算8期)とした。井山が左辺に白模様を広げ、余が中央の競り合いから右辺の白石に襲いかかると、第2局に引き続き本局も難解な攻防に突入した。際どい戦いの中、井山がコウを仕掛けたのが好判断。コウダテの多い白が、下辺の黒の勢力圏になだれ込みながらシノいで勝負を決めた。今シリーズは、名人位を奪取された直後の井山の疲れが心配されたが、強い精神力は健在だった。井山は「今年は調子がよくない部分もあったので、最後に結果を出すことができて非常にうれしい」と語った。

芝野、棋聖戦初挑戦

 一力遼棋聖に挑戦する、第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の挑戦者が、芝野虎丸名人に決定した。棋聖戦決勝変則三番勝負は、C、B、Aリーグの優勝者とSリーグ準優勝者のパラマス式トーナメント戦を勝ち上がった山下敬吾九段が、Sリーグ優勝の芝野に挑む形。芝野には1勝のアドバンテージが与えられている。東京都千代田区の日本棋院にて、第1局が11月18日に打たれ、山下が勝利。1勝1敗で迎えた第2局は、21日に打たれた。「1局目の内容が悪く、不安もありましたが、この碁はふだん通り打てました」と振り返る芝野が、右下の山下の仕掛けに的確に対応してリードを奪い、そのまま逃げ切った。敗れた山下は、「最近の調子からすればがんばったほうですが、せっかくのチャンスだったので、残念な気持ちもけっこうあります」と無念を語った。芝野が棋聖戦の挑戦者になるのは初めて。また、七大棋戦で一力と芝野がタイトル戦を打つのも初めてとなる。井山裕太三冠対「令和三羽ガラス(一力・芝野・許家元十段)」という構図から、歴史が1ページめくられた感がある。芝野は「一力さんはライバルというより、一緒に勉強してきた先輩という意識です。七番勝負までは時間がありますので、これからゆっくり対策を考え、平常心で臨みたい」と抱負を語った。七番勝負は来年の開幕。第1局は、1月12・13の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて行われる。

上野、史上初のアルミ杯連覇

 「毎年何か記録を作りたい」と語る上野愛咲美若鯉杯・女流立葵杯が今年も有言実行。第17回広島アルミ杯・若鯉戦(広島アルミニウム工業株式会社特別協賛)で、史上初の連覇を達成した。また、男女混合棋戦で女性棋士が連覇するのも史上初となる。30歳以下、七段以下の棋士が参戦する本棋戦では、第15回には藤沢里菜女流本坊が優勝しており、3年連続で女性棋士が優勝をさらった。今期の本戦トーナメントは、広島県広島市の「中國新聞本社」にて11月26に1・2回戦、27日準決勝・決勝が行われた。上野は平田智也阿含桐山杯らの強敵を破って決勝に進出し、実力者、小池芳弘七段を降して優勝を決めた。上野は「これまで優勝された先生方はすごい方々ばかりなので、自分が連覇できたことはすごくうれしい。すごい本戦メンバーの中で優勝することができたのは奇跡。とても光栄です」と喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2022年11月22日 ]

川端康成殿堂入り

 東京市ヶ谷の日本棋院において「囲碁殿堂表彰委員会」が開催され、川端康成が第19回囲碁殿堂入りとなった。『雪国』や『伊豆の踊子』等多数の名作を残し、日本人初のノーベル文学賞を受賞する。昭和13年、本因坊秀哉引退碁の観戦記を担当し、これを基に小説『名人』を執筆する。囲碁を題材とした小説の中でもすぐれた作品と評される。日本棋院特別対局室「幽玄の間」には、川端揮毫の書「深奥幽玄」が掲げられている。顕彰楯を制作し、日本棋院会館一階にて展示を行う予定であるようだ。

赤旗名人戦 小野さん初優勝

 11月12日、13日の両日、東京渋谷区の日本共産党本部で第57回しんぶん赤旗名人戦が3年ぶりに行われた。現在4連覇中の柳田朋哉さん(招待)に注目が集まったが、1日目で洪道場の師範である斉藤文也さん(東京)に敗れベスト8進出はならなかった。
今大会では子供教室を主宰している小野慎吾さん(山口)が初優勝となった。小野さんは数多くの全国大会でベスト8やベスト4の常連であったがなかなか優勝には手が届かなかった。「囲碁教室の子供達に優勝杯を持って帰れるのが嬉しい」と喜びを語った。

学生十傑 硯川さん初優勝

 11月19日、20日の両日、第58回全日本学生十傑戦全国大会が京都藤田塾で行われ32名の学生が競った。
1回戦でアマ本因坊の栗田佳樹さんが敗れる波乱がおきた。学生本因坊戦で決勝を争った川口飛翔さん、北芝礼さんも準決勝で敗れ3位決定戦での対戦となった。そんな中決勝に進出したのが硯川俊正さん(産業能率大学)と曹睿梟さん(東京大学大学院)で硯川さんがヨセで逆転し初優勝となった。硯川さんは元院生で栗田さんと1、2を争っていたが、アマチュア大会ではなかなか実績を残すことができなかったが、今回嬉しい初優勝なった。

囲碁ニュース [ 2022年11月15日 ]

井山、激戦を制し、王座防衛にあと1勝

 井山裕太王座に余正麒八段が挑戦する第70期王座戦五番勝負(日経新聞社主催)の第2局が、11月11日、京都府京都市の「ウェスティン都ホテル京都」にて行われた。余の力を封じて井山が先勝した第1局から一転、本局は序盤から激しく競り合う展開となった。互いに二つの弱い大石を抱える右辺一帯の難解な戦いを終え、白番の余がややリードを奪う。その後、左下での井山の仕掛けを簡明に受けていれば優勢を維持できたというが、秒読みの中、余が最強に応じて形勢不明。難解を極めるヨセ合いを黒番の井山が半目制した。局後の井山は「ずっと難しい碁でした。中盤、右辺の白への攻め方がまずかったと思います。下辺の攻防で追いつけたかもしれませんが、勝ちを意識したのは本当に最後の最後です」と振り返った。次局に向け、防衛に王手をかけた井山は「第3局以降も、自分なりにベストを尽くせるように、コンディションを整えたい」、余は「いつも通り、平常心でがんばりたい」と語った。余が巻き返すのか、井山が一気にシリーズを制するのか、第3局は、11月18日、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」にて行われる。井山が防衛すれば2連覇、通算8期目となる。

伊田が天元奪取に王手

 関航太郎天元が先勝し、挑戦者の伊田篤史九段がスコアをタイにして迎えた第48期天元戦五番勝負(新聞三社連合)の第3局が、11月14日、福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われた。序盤早々、右上で白番の伊田が積極的な手を見せるが、関も応戦して黒に不満のない結果に。その後、下辺に大きく広げた黒模様に伊田が打ち込み、黒の攻め、白のシノギという展開となった。険しい攻防のなか、関の緩着からAIの評価値は大きく白に傾いたが、関は「悪いのかもしれないが、これからかと思って打っていた」と振り返る。その後、関が挽回しAIの数値も接近したが、伊田が放った強手から再び黒が主導権を握る。その手を、「予想していなかった」と関。伊田は「どうなるか、はっきりわからなかったが、これで負けたら仕方ないと思って打った」と語った。伊田が戦いの碁で読み勝ち、関を投了に追い込んだ。天元奪取に王手をかけた伊田は、「この碁は、打ちたい手を打てていた。その意味ではよかった。次も打ちたい手を打っていきたい」と気合いのこもったコメント。敗れた関は「中盤で少し後退気味だったので、そのへんが反省点ですが、はっきりこの手が悪かったというのは今わからないので、仕方ないと思う」と振り返り、「次局に向けても、しっかり準備して臨みたい」と語った。第4局は、12月1日に、兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われる。

囲碁ニュース [ 2022年11月8日 ]

芝野、3期ぶり名人奪還

 井山裕太名人に芝野虎丸九段が挑戦する第47期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第7局が、11月2、3の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われた。二日間、ひと時も目の離せぬ大激戦が展開され、芝野が井山の大石を召し取る劇的な勝利をあげて、3期ぶりに名人位を奪還した。序盤、白番の芝野が左上の黒に猛攻を仕掛けるが、井山が見事にシノぐと、着々と地合いのリードを広げていった。局後の芝野は「一日目が終わったあたりで形勢が悪いと気づき、逆転が難しい碁形かなと。なので、二日目は、チャンスが来ればと思っていた」と振り返る。その二日目、芝野は左下では大胆な捨て石作戦で厚みを築き、右下、右上に手をつけ準備を整え、一度は逃がした左上の黒の大石の取りかけに向かった。芝野はこの時点では「読み切れてはいなかった」と語るが、新聞解説の鈴木伸二七段は「手のつけていき方が見事」、立会の張栩九段は「大石を取るセンスがある」とコメント。井山の必死のシノギに読み勝って決着をつけた。井山は大石に手を入れる機会はあったが「シノげるかと思っていた。自分の認識よりは、だいぶ危険だった」と振り返り、シリーズを通して「三連敗したときの内容をいいものにできなかったのは、自分の弱さだったかなと思います。最終局までこれたことはもちろんよかったのですが、本局、ギリギリのところで踏ん張れなかったので、実力不足です」と語った。芝野は「このシリーズは、判断ミスがかなり多かったですし、この碁も内容がよくなかった。勝てたのは運がよかった」と謙虚に振り返り、「最近はあまりよい成績を残せてなかったので、久しぶりに結果を出せてよかった」と喜びを語った。

藤沢女流本因坊、3連勝3連覇

 藤沢里菜女流本因坊に上野愛咲美女流立葵杯が挑戦する第41期女流本因坊戦5番勝負(共同通信社主催)の第3局が、11月4日に、東京都千代田区の日本棋院にて行われた。第2局とは一転、長いヨセ勝負となり、264手まで、黒番の藤沢が半目勝ちを収め、3連勝で防衛を果たした。敗れた上野は「第2局がひど過ぎた」と振り返る。今年スタートした世界女子団体戦「湖盤杯ソウル新聞世界女子囲碁覇王戦」の主将をつとめた上野は、10月17日から20日まで連日中国、韓国の強豪と対戦し、韓国の第一人者、崔精九段らに3連勝の活躍を見せ日本囲碁ファンを沸かせた。その直後に打たれた第2局は、少し疲れもあったかもしれない。本局は日本の女子2トップらしい大接戦を演じたが、一歩及ばず、「次に里菜先生と打てる機会があったら、もう少し頑張りたい」と語った。「終盤の女王」と称される藤沢には、もう一つ「半目の女王」の異名もある。半目勝負となった対局に絞ると、本局で12連勝となった。3連覇(通算6期)を達成した藤沢は「始まる前は3連勝できるとは思っていなくて、びっくりしている。3局を通して自分の力を出し切れた」と喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2022年11月2日 ]

山下、棋聖戦挑戦者決定戦へ

 一力遼棋聖への挑戦権をかけた戦いが佳境に入っている。パラマス式の第47期棋聖戦(読売新聞社主催)挑戦者決定トーナメントは、1回戦でCリーグ優勝の大竹優七段がBリーグ優勝の鈴木伸二七段を破って勝ち上がり、2回戦はAリーグ優勝の山下敬吾九段が大竹を半目差で降した。3回戦、Sリーグ2位の高尾紳路九段と山下の一戦は、10月27日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。両者の対戦成績は、高尾から見て28勝30敗。第一戦で活躍し続ける「平成四天王」対決は、中盤まで互いに一歩も引かず、自分の構想を主張し合う展開となった。白番の高尾が気になるコウ味を消し、山下に手を渡したところから、局面は一気に険しくなった。その後は山下が戦いの主導権を握り、右下の白の大石を仕留めて中押し勝ちを収めた。高尾は「誤算があったのが残念ですが、実力です」と肩を落とした。山下は11月7日、Sリーグ優勝の芝野虎丸九段との変則三番勝負(Sリーグ優勝者に1勝のアドバンテージ)の第1局に臨む。「まだあと2回勝たなくてはならないので、とりあえず、次の1局に全力で向かいたい」と語った。

鶴山、中庸戦優勝

 日本棋院所属の31歳以上60歳以下、かつ、七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯、本棋戦の優勝経験がない棋士に出場資格がある第5回SGW杯中庸戦(株式会社セントグランデW協賛)の本戦が、10月29、30日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。本戦は勝ち上がった16名によるスイス方式4回戦で、1日目に2連勝した4名が、2日目の3回戦で激突。三村智保九段を破った安斎伸彰八段と、鈴木歩七段を破った鶴山淳志八段が優勝決定戦に駒を進めた。共に読みが正確で戦いを厭わない実力者同士の一戦は、鶴山に軍配が上がった。鶴山は、YouTube配信や、Eテレの番組「趣味どきっ!」講師役をつとめるなど普及にも力をそそぐ一方、第76期から3期連続で本因坊戦リーグに在籍するなど第一線で活躍している。鶴山はSNS上に「望外の結果ですが素直に嬉しいです。ここまで頑張ってきて良かったなと感じています。日頃より応援してくださっている皆様ありがとうございます。そして何よりこの棋戦を開催してくださっている『株式会社セントグランデW』嶋屋社長に心よりお礼申し上げます」と、喜びと感謝をつづった。

仲邑、世界戦ベスト16

 主要国際棋戦の一つで韓国主催の第27回「三星火災杯世界囲碁マスターズ」の1回戦が、10月27、28日に、2回戦が10月31日と11月1日に、ネット対局で行われた。日本、韓国、中国、台湾の32人が出場するトーナメント戦で、日本からは一力遼九段、許家元九段、佐田篤史七段、ワイルドカード(主催者推薦)で仲邑菫三段が参戦した。一力、許が、27日に1回戦を突破したのに続き、28日には仲邑が韓国の権孝珍四段に白番中押し勝ち。日本の女性棋士が年齢制限のない男女競合の世界戦でベスト16に入ったのは初めて。歴史的な偉業ともいえる殊勲の星をあげた。仲邑は「普通に考えて負ける相手なので、内容を意識して臨みました。こんな舞台で対局していいのかなと緊張しました。勝てたのは、まぐれにしても良かったです」と笑顔で語った。2回戦は、31日、1回戦で佐田を破った韓国の女性ナンバーワン棋士、崔精九段に、一力も敗退。11月1日、許が中国の楊鼎新九段に、仲邑が韓国の李炯珍六段にそれぞれ敗れ、日本勢の3回戦進出はならなかった。仲邑は敗れたとはいえ白番で1目半負け。「今日も最後までわりといい勝負ができたので上出来だと思います。世界戦で2回も打てて自信になりました。でも、2局とも弱さが出たところもあって実力不足を感じています」と頼もしいコメントを残した。

囲碁ニュース [ 2022年10月26日 ]

伊田、逆転でスコアをタイに

 関航太郎天元が挑戦者の伊田篤史九段に先勝してスタートした第48期天元戦五番勝負(新聞三社連合)の第2局が、10月18日に北海道札幌市の「京王プラザホテル札幌」で行われた。1局目に白の1手目で天元に打ち下ろした伊田は、黒番の本局では天元を封印してスタートした。序盤、右上で関が難解なAI定石に誘った。伊田は受けて立ったが、「AIソムリエ」の異名をとる関が打ち回して、早々とリードを奪った。劣勢を意識する伊田は中央の白を攻める積極策に出るが、これをシノギ、大場にも先着した時点では、関は形勢にかなりの自信を持っていたようだ。だが、ここから伊田が粘る。関のわずかなミスを捉えながらじわじわと差を縮め、「読み切れてなかったが行くしかないと思った」と、左上の白地に手をつけた。これが成功し、白が有利な形ではあるもののコウに持っていく。以降、コウを戦いながらの難解なヨセ勝負を制し、伊田が逆転で黒番1目半勝ち。スコアをタイに戻した。なお、勝敗には関係しなかったが、最終盤に非常に珍しい形ができ注目を集めた。第3局は、11月14日に、福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われる。

井山、王座戦先勝

 井山裕太王座に余正麒八段が挑戦する第70期王座戦五番勝負(日経新聞社主催)が開幕。第1局が、10月21日に東京都港区の「グランドプリンスホテル新高輪」にて行われた。序盤、右上の攻防は、「黒番の余がリード」と評された。その後、井山は、左上の余の攻めを「手抜き」でかわす一流の打ち回しを見せながら盛り返し、余に力を出させないまま、逆転に成功。ヨセも隙なく逃げ切り、261手まで白番1目半勝ち。防衛に向けて好スタートをきった。井山は「ずっと判断が難しい碁だった」と振り返り、「次局まで少し時間があるので、良い状態で臨めるようにしたい」と抱負を話した。第2局は、11月11日に、京都府京都市の「ウェスティン都ホテル京都」にて行われる。

藤沢連勝。女流本因坊防衛にあと1勝

 藤沢里菜女流本因坊に上野愛咲美女流立葵杯が挑戦する第41期女流本因坊戦5番勝負(共同通信社主催)の第2局が、10月23日に秋田県能代市の「旧料亭金勇」で行われた。「序盤がひどすぎた」と振り返ったのは上野。右下で険しい接近戦となり、ここで藤沢が大きなリードを奪った。その後は藤沢が「緩んだら差が縮まるので、緩まないように打った」と振り返る。その言葉通り、上野の追い上げを許さず、148手まで、藤沢が白番中押し勝ち。第1局から連勝して、防衛まであと1勝とした。第3局は、11月4日に、東京都千代田区の日本棋院にて行われる。上野は「皆様に盛り上がっていただけるような碁を打ちたい」、藤沢は「体調を整え、次局もがんばりたい」とそれぞれ抱負を語った。

「カド番の鬼」復活。井山連勝で最終局へ

 井山裕太名人に芝野虎丸九段が挑戦している第47期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は、第4局を終え、井山が1勝3敗と追い詰められていたが、「カド番の鬼」、「カド番魔王」の異名どおり井山が追い上げ、ついにスコアを3―3のタイに戻した。10月12、13の両日に、静岡県河津町の「今井荘」で打たれた第5局では黒番の芝野が序盤でリードを奪ったが、左上の折衝の中、芝野の読みをはずす手から流れを変えると、検討陣が誰も見ていなかった好手を放って逆転。井山が白番中押し勝ちを収めた。迎えた第6局は、10月24、25の両日に、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で打たれた。一日目、黒番の井山が実利でリードし、二日目に入り、碁盤の下半分に広がる白模様での白の攻めと黒のシノギの読み合いが展開された。難解な攻防を井山が制し、芝野を投了に追い込んだ。井山先勝、芝野3連勝、井山2連勝という流れは、昨年の本因坊戦七番勝負と全く同じ。再び井山が大逆転防衛を果たすのか、芝野が雪辱を果たすのか。第7局は、11月2、3の両日、山梨県甲府市の常盤ホテルにて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年10月24日 ]

オールアマ囲碁団体戦

 10月10日、東京市ヶ谷の日本棋院にてオールアマ囲碁団体戦が行われ、1チーム5名、無差別クラスからハンデ戦まで64チームが集まった。注目を集めたのは、おさるの会チームで、主将を大関稔アマ名人、副将栗田佳樹アマ本因坊、三将川口飛翔学生本因坊といったタイトルホルダーに、全国大会でベスト4経験のある杉田俊太朗さん、山田真生さんといった豪華なメンバーである。優勝候補の筆頭に挙げられていたが、1回戦で大熊義塾に3-2で敗退となった。
 大熊義塾も団体戦では常連チームで、主将が李章元さん、副将以降も元学生強豪という布陣で、おさるの会とは一世代違う学生強豪たちである。今回は先輩たちの意地を見せる結果となり、その勢いで大熊義塾が優勝となった。

東京23区囲碁大会

 10月23日、東京市ヶ谷の日本棋院で東京23区囲碁大会が行われた。三年ぶりの開催となったが、23区全て集まることができず、12区と区長会チーム、混合チームを入れた14チームで行われることになった。
 三回戦が行われ、北区が全勝で優勝となった。北区は慶應義塾大学のレギュラーだった稲垣聡さんを中心にバランスの取れたチームとなっていた。2位は早稲田大学のレギュラーを中心に構成された新宿区である。同じく3戦全勝だったが、チーム全体の勝ち数の差で惜しくも優勝を逃した。
 今回は23区囲碁大会ではあるが、23区が全て揃っておらず選抜囲碁大会という名称になった。来年はコロナ前のように23区揃っての参加をと考えているようだ。

囲碁ニュース [ 2022年10月11日 ]

藤沢女流本因坊が、先勝

 3連覇を目指す藤沢里菜女流本因坊に、3期ぶりの奪還を期す上野愛咲美女流立葵杯が挑戦する第41期女流本因坊戦碁盤勝負(共同通信社主催)が開幕。第1局が、10月4日、岩手県花巻温泉の「佳松園」で打たれた。
 藤沢は第33期に本棋戦を制した後、毎年失冠と奪還を繰り返し、前期に初の連覇を達成した。今期で9期連続出場となる思い入れの深い棋戦だ。序盤から険しい攻防に突入した。下辺の折衝は、白番上野の言い分が通ったかっこう。だが、続く右上の攻防で、藤沢に読みの入った絶妙手が出て白の大石を仕留めて優勢を奪った。だが、黒のリードはさほどでもなく、上野は全くあきらめていなかったようだ。大ヨセに入り、黒のまとめ方が難しく、上野に追い上げられて「パニックになった」と藤沢。ただ、ここで冷静さを取り戻したのはさすが。落ち着いて善処しリードを守りきった。終盤、右下のコウ争いが延々と続くなか、コウダテが足りず逆転は無理と判断した上野が投了を告げるところとなった。藤沢は「全体的には自分らしく打てたと思う」と振り返り、上野は「楽しかった」と明るい表情で語った。第2局は、10月23日に秋田県能代市の「旧料亭金勇」で行われる。

芝野、名人奪還にあと1勝

 井山裕太名人が先勝の後、挑戦者の芝野虎丸九段が2連勝して迎えた第47期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第4局が、10月6、7の両日、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われた。穏やかに立ち上がった本局だが、芝野が放った白24のノゾキから一転、険しい様相に突入した。攻防は上辺から下辺へと場所を移し、黒の実利対白の厚みという分かれ。井山が左辺に打ち込んでいった局面で芝野が封じ、一日目を終えた。二日目、左辺の黒を生かして、右下の大きな三々に先着した芝野の構想が奏功する。逆に、井山は左辺に丁寧に手をかけ、やや後れたようだ。芝野は右下で機敏に仕掛けたコウを解消して、優勢に。その後、一時は盛り返されるが、井山の緩着を捉え、左上の大場に先着して再び優勢に立つと、今度はリードを守り切って井山を投了に追い込んだ。芝野は3勝1敗とし、名人奪還に王手をかけた。両者は、昨年の本因坊戦七番勝負でも、井山先勝の後に芝野3連勝という同じ経緯をたどった。その後、井山が3連勝して本因坊防衛を決めた圧巻の巻き返しは、記憶に新しい。ただ、今年の井山は他棋戦でも黒星が続いているのが気になる。芝野が一気に名人を奪還するのか、井山が反撃を開始するのか、注目の第5局は、10月12、13の両日、静岡県河津市の「今井荘」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年10月4日 ]

酒井、新人王獲得

 酒井佑規三段が大竹優七段に先勝して迎えた第47期新人王戦決勝三番勝負(しんぶん赤旗主催)の第2局が、9月30日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。混戦を得意とする酒井、冷静にバランスを取る大竹、それぞれが持ち味を出しながら、序盤から一進一退の好勝負が展開された。終盤にさしかかるころ、酒井にやや勇み足があったようで、大竹がリードしてヨセに入った。わずかな差ながらそのまま黒番の大竹が寄り切るかと思われたが、早いペースで打たれる中、大竹に手拍子のミスが出て、打った石がそのまま持ち込みに。局後の検討によれば、このミスがなければ黒の半目勝ちだったという。その後は順当に寄せ合い、白番の酒井が1目半勝ちを収めた。敗れた大竹は「大事なところで凡ミスが出てしまったことが悔やまれます」と無念のコメント。2連勝で初タイトルを奪取した酒井は、「1局目も2局目も苦しく、勝てたのは運がよかった。自分の問題点や課題が見えてきたので、今後はそこを修正し、ほかの棋戦でもがんばりたい」と言葉少なに、喜びと抱負を語った。

平田、井山を破り初タイトル

 本因坊文裕(井山裕太名人・本因坊)と平田智也七段による第29期阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦の決勝戦(阿含宗特別協賛)が、10月1日、京都府京都市の「阿含宗本山総本殿 蝸牛庵」で打たれた。現地では張栩九段が無観客ながら大盤解説を行い、その模様が日本棋院の公式YouTubeにて公開された。序盤は白番の平田が厚みを築き、得意の碁形に持ち込む。AIの評価値は白よしを示し続けた。だが、中盤に入り井山が盛り返してAIの評価は黒ややよしに。張九段も「黒少しリードですが、差はわずか。白の薄さをつければ、差が広がりそう」と見守った。実戦は、平田の「普通は考えにくい手」(張栩九段)が奏功し、コウ争いの絡むヨセ勝負に。コウダテの多い白が巧みに寄せ、逆に井山にはミスがあったようだ。結果的には平田が「一番得意」と話すヨセで抜き去り、白番1目半勝ち。全棋士参加の棋戦では初めてのタイトルを奪取した。局後のインタビューで井山は「大ヨセのあたりではっきりまずい手があり、最善からはほど遠い内容」と振り返り、「最近は思うようなレベルで戦えなくなってきた。少しでもいい戦いができるようがんばっていきたい」と話した。平田は「井山さんとは公式戦初手合いでしたが、このような大舞台で打ててうれしく、不安もありましたが楽しめました。結果はたまたま運がよかった。まだまだ実力が足りないのでこれからも勉強していきたい」と控え目に話したが、少し時間をおくと、「棋士になってよかった」と喜びを語った。

関天元が先勝

 初防衛を目指す関航太朗天元に、伊田篤史九段が挑戦する第48期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)の第1局が、10月3日、三重県伊勢市の「伊勢かぐらばリゾート 千の杜」で打たれた。2手目に白番の伊田が天元に打って注目を集めた本局は、序盤から左辺で激しい競り合いが始まり、両者の迫力がぶつかり合う戦いの碁となった。結果は、関の黒番中押し勝ち。防衛に向けて大事な開幕戦を制した。だが、終局後の関に笑顔はなく、「ずっと打ちたい手がなく、どう打ったらいいかわからなかった」と厳しい表情で振り返った。伊田は敗れたものの、「天元戦」の開幕戦に黒白どちらの手番が当たっても「天元」に打つつもりだったと本シリーズへの意気込みを語り、「形勢判断のミスはあったが、後悔する手はなかった」とサバサバした様子だった。伊田が巻き返すのか、関が連勝で防衛に王手をかけるのか。第2局は、北海道札幌市の「京王プラザホテル札幌」で10月18日に打たれる。

囲碁ニュース [ 2022年9月27日 ]

新人王戦、酒井が先勝

 第47期新人王戦決勝三番勝負(しんぶん赤旗主催)が開幕した。予選開催年の8月1日時点で25歳以下、六段以下に出場資格のある本棋戦で、絶好調の大竹優七段と坂井佑規三段がこの大舞台に勝ち上がった。20歳の大竹は今年、棋戦戦Cリーグ優勝、本因坊リーグ入り、天元戦本戦準決勝進出など堂々たる戦績を残し、本局まで30勝5敗、13連勝中と勢いに乗っていた。対する18歳の酒井も着実に力をつけ、今年ここまで23勝6敗の好成績を収めている。第1局は、9月22日、大竹が所属する愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で行われた。序盤は早いペースで進みつつ、右下と左辺で一進一退の攻防が続いた。細かいヨセ勝負が予想され、ヨセに定評のある大竹がやや有利かと思われたとき、白番大竹の後悔の手を捉え、酒井が中央の白の薄みをついて優勢に立つ。大竹も「この碁はだめかなと思っていました」と振り返る。その後、粘る大竹の勝負手からコウが生じ、その結果「もう中央の白の大石を取るしかない」(酒井)という展開に。最後は、戦う棋風の酒井らしく大石を仕留めて207手まで、黒番中押し勝ちを収めた。酒井が連勝で決着をつけるのか、大竹が巻き返すのか。第2局は、9月30日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれる。

囲碁ニュース [ 2022年9月20日 ]

芝野、名人戦連勝

 井山裕太名人に芝野虎丸九段が挑戦している第47期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は、1勝1敗で迎えた第3局が、9月15、16の両日、大阪府守口市の「ホテル・アゴーラ大阪守口」で行われた。一日目は、白番の井山が実利を先行し、芝野が手厚く応じて中央に模様を築く進行。二日目は、芝野の封じ手に井山が戦いを仕掛けてスタートした。白には左辺と右辺に弱い石があり、戦いを仕掛けるのは得策ではないようにも見えるが、「地を稼いで、さらに戦いを仕掛け、シノギ勝負に持っていきシノギ切るのが井山さんの勝ちパターン」とYouTube解説の佐田篤史七段。だが芝野は、井山の挑発には乗らず、あえて戦いの道は選ばず、堂々と中央をまとめていった。戦う棋風というイメージの強い芝野だが、第2局に続き本局も、地合いのリードを信じて打ち進め井山を押し切る内容。終局まで打てば黒半目勝ちだというが、井山が逆転のチャンスはないとあきらめ、投了を告げた。「芝野さんは自然に打って、読み合いではなく、判断力と大局観で勝利しました。井山さんの倒し方としては過去に例がないように思います」と佐田七段。このまま芝野が流れに乗るのか、井山が流れを変えるのか。第4局は、10月6、7の両日、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年9月13日 ]

名人戦で芝野1勝を返す

 井山裕太名人が挑戦者の芝野虎丸九段に先勝してスタートした第47期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第2局が、9月5、6の両日、三重県鳥羽市の旅館「戸田家」で行われた。序盤は、互いに相手の思惑をはずしながら進みつつ、黒番の井山がペースを掴んだように思われた。芝野が右上の黒模様に手をつけてから、碁が大きく動き出す。芝野は右上を捨てる大胆な作戦から中央の模様を広げ、一日目を終えた時点では「悪くはないかな、ぐらいの感じでした」と振り返る。二日目、中央の白模様に井山が踏み込んで、黒のシノギ勝負という様相となった。大石の生きに向かって黒が隙なく運ぶ中、「二択の場面で誤った」と井山。以降は、芝野の読みが上回り、大石をあえて活かして地合いのリードを奪った。220手まで、芝野が白番中押し勝ち。1勝を返しスコアをタイにした。険しい攻防ではあったが、芝野は「地合い勝負の図が多い気がしていた」と語り、「一つ勝ててホッとしました」と安堵の表情を見せた。井山は「コンディションを整えて次局に臨みたい」。ファンの期待に応え、熾烈な七番勝負となりそうな予感がする。第3局は、9月15、16の両日、大阪府守口市の「ホテル・アゴーラ大阪守口」で行われる。

囲碁ニュース [ 2022年9月6日 ]

アマ本因坊 栗田さん初優勝

会場の様子

 8月27日、28日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において第68回全日本アマチュア本因坊決定戦全国大会が行われ、熱戦が繰り広げられた。前回優勝の平岡聡さんは仕事の都合で欠席となる中、昨年準優勝の栗田佳樹さん(神奈川)が闇雲翼さん(三重)を破ってアマチュア本因坊初優勝を飾った。栗田さんは棋聖戦Cリーグ入りやアマチュア名人獲得など実力は知られているが、意外にもアマチュア本因坊は初優勝である。これまで3年連続の準優勝で4度目の正直となった。マスクをしていても優勝を決めたときの嬉しそうな表情が分かるほどであった。「神奈川県代表として優勝できてうれしい」とコメントしている。アマ本因坊戦に関して栗田さんは学生本因坊によるシードで出場したことはあるが、神奈川県代表としては初参加のようである。
今回会場で注目を集めたのは蔵元実さん(奈良)である。全国大会での優勝こそないが、過去にはベスト4やベスト8の経験はある。今大会では、星合真吾さん(東京)、森洋喜さん(愛知)、今年アマ名人全国優勝の柳田朋哉さん(京都)を破り準決勝まで勝ち上がった。準決勝では闇雲さんに敗れたものの、若手に負けない活躍を見せ中年の星と言われた。
ベスト4は、優勝栗田佳樹、準優勝闇雲翼、3位杉田俊太朗(長野)、4位蔵元実となった。例年では優勝経験のある強豪が最終的には勝ち上がってきたが、今回は優勝の栗田さんは別として他の全国大会でも優勝経験がある選手より、準優勝やベスト4多数という選手の活躍が目立った。

囲碁ニュース [ 2022年8月23日 ]

世界史上最年少棋士誕生

 8月17日、関西棋院は、大阪市の小学校3年生の藤田怜央さんを、新設した「英才特別採用」の第1号合格者として、9月1日付のプロ入りを発表した。「英才特別採用」は2019年に日本棋院の英才特別採用推薦棋士となった仲邑菫二段に次いで国内2例目。また、9歳4カ月の入段は、仲邑二段の10歳0カ月の記録を抜き、さらに世界と比べても最年少記録だという。藤田さんは記者会見で大勢の報道陣に囲まれ、緊張した面持ちで「うれしい」と話し、打ちたい棋士を尋ねられると「井山さん(井山裕太四冠)」と笑顔を見せた。仲邑二段とも対局経験があり、藤田さんが通う囲碁道場の師範もつとめる佐田篤史七段は「他の子供と比べると二人とも別格の強さですが、僕の感覚では、当時の仲邑さんと比べて怜央が上回る。小学生とは思えない柔らかい発想で打ってくる」と話す。仲邑二段の躍進ぶりは周知のとおり。藤田さんにも期待が寄せられる。

芝野、棋聖戦Sリーグ優勝

 一力遼棋聖への挑戦権をかけた第47期棋聖戦(読売新聞社主催)の各リーグ戦が佳境に入っている。8月18日は、最高位Sリーグの許家元十段と芝野虎丸九段の一戦が東京都千代田区日本棋院で打たれた。208手まで、芝野が白番中押し勝ちを収め4連勝。他の棋士に星二つの差をつけたことにより、最終局を待たずにSリーグの優勝を決めた。芝野は今年前半は好調とはいえぬ戦績だったが、ここ数カ月は目覚ましい活躍を見せている。「今日の碁は本当に苦しかった。優勝できてよかった。ここまできたら、挑戦権を取りたいですね」という局後のコメントからも自信がうかがえる。なお、棋聖戦は、Aリーグでは既に山下敬吾九段が優勝を決めており、Bリーグは25日に、富士田明彦七段と鈴木伸二七段のプレーオフが組まれている。また、Sリーグも、8月23日現在、井山裕太名人、村川大介九段、高尾紳路九段、許家元十段が2敗で並んでおり、挑戦者決定パラマス戦に出場できる2位争いから目が離せない。

囲碁ニュース [ 2022年8月19日 ]

学生本因坊 川口さん初優勝

 8月13日、東京市ヶ谷の日本棋院において学生本因坊戦の準決勝、決勝が行われた。学生本因坊戦の全国大会は7月にインターネット対局が行われ、ベスト4までが決定、準決勝以上をリアル対局で行った。
 勝ち上がったのが川口飛翔さん(東大)、森田拳さん(京大)、板垣友輝さん(立命館)、北芝礼さん(名古屋大)の4名。決勝は川口さんと北芝さん。川口さんは昨年の学生十傑戦の優勝者で世界アマ日本代表の経験もある。北芝さんは昨年のアマ名人戦全国優勝者(大関アマ名人に挑戦し敗れる)で、そのときの決勝の相手が川口さんだった。両者は小学生の頃全国大会で対戦し、その後も幾度も決勝戦で対戦している。今回は川口さんが勝利し、学生本因坊初優勝となった。
 大関稔さん、栗田佳樹さんと学生囲碁界には最強者が続けて登場しているが、川口さんはそれに続く実力者になるだろう。

女子学生本因坊 岩井さん初優勝

 学生本因坊戦と同日程で女子学生本因坊戦も開催された。ベスト4が岩井温子さん(京大)、坂野英恵さん(慶應)、牧野朱莉さん(新潟医療福祉大)、大宮七虹さん(東北大)の4名。決勝は岩井さんと牧野さんになり岩井さんが初優勝となった。岩井さんは高校選手権2連覇の実力者。昨年優勝の加藤優希さん(早稲田)がプロ試験で不在のため優勝候補の筆頭と見られていた。男子に交じっても劣らぬ実力があるので、今後の女子学生碁界の注目と言える。
 予選リーグでは今年の女流アマ選手権全国準優勝の田中ひかるさん(宇都宮大)が敗れるなど女子のレベルの高さを証明している。

囲碁ニュース [ 2022年8月16日 ]

伊田、天元戦挑戦者に

 一力遼棋聖と伊田篤史九段による第48期天元戦挑戦者決定戦(新聞三社連合主催)が、8月4日、東京都千代田区の日本棋院にて打たれた。一力はリターンマッチを期して臨んだが、序盤から主導権を握ったのは白番の伊田だった。「狙いのある自分らしい碁形でしたし、全局的に自分なりに打てました」と伊田。力強い棋風を前面に出して終始ペースを握り、白番中押し勝ちを収めた。伊田は、6年前に十段位を井山裕太当時六冠(この十段位奪還で初の七冠達成)に明け渡して以来の七大タイトル挑戦手合出場。天元戦五番勝負には初出場となる。「十段戦以降、結果にあせるあまり内容的にもあまりよくなかった。みんな強くなって、勝たなきゃいけないという思いが強すぎて、目の前の碁に集中できていなかった。でも、最近徐々に自分らしく打てているという感じはあった。挑戦手合の機会が回ってきたのは素直にうれしい」と喜びを語った。敗れた一力は「ここ最近は内容的にまずい碁が多すぎるので、結果は仕方ない」と言葉少なに無念を口にした。関航太郎天元と伊田は、8月14日に放映されたNHK杯での対戦が初手合で、この時は関が中押し勝ちを収めている。久々に井山も令和三羽ガラスも登場しない挑戦手合は、どんなドラマが展開されるのか。天元戦五番勝負は、10月3日、三重県伊勢市の「伊勢かぐらばリゾート 千の杜」にて開幕する。

囲碁ニュース [ 2022年8月2日 ]

井山碁聖、ストレートで防衛

 井山裕太碁聖の2連勝で迎えた第47期碁聖戦五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第3局が、7月27日、広島県廿日市市の「宮島ホテルまこと」にて行われた。結果は154手まで、白番の井山が中押し勝ちを収め、本因坊戦4連勝に続いての負けなしストレート勝ちで防衛シリーズを制した。序盤、左上の攻防で、黒番一力の無理気味な攻めに対して井山の返し技が冴え、早くも白がリードを奪う。その後、右辺の黒模様に最強の態度で臨み、一力も強い態度で攻勢に出るが、54分の大長考で方針を整えた井山が盤石に局面を作り、右辺に侵入した白を生きた上に右上隅も手にして勝勢とした。敗れた一力は「本因坊戦からの悪い流れを変えられなかった。3局とも、自分の力を出し切れないまま終わってしまった。今までのタイトル戦で一番悪い内容だった」と肩を落とした。2期連続、通算8期目の碁聖を獲得した井山は「内容的には紙一重の戦いが続いたので、結果としては幸いでした。これからも戦いは続いていくので、少しずつでも自分を高めていけたら」と語った。七大タイトルで相まみえてきた両者の決戦は、今年は終了。一力は8月4日、伊田篤史九段との天元戦挑戦者決定戦、井山は同じく8月4日に棋聖戦Sリーグの優勝をかけた芝野虎丸九段との一戦と、それぞれ大勝負に向かう。井山にはさらに8月24日からの芝野との名人戦七番勝負も控えている。

囲碁ニュース [ 2022年7月26日 ]

芝野、2期ぶり名人戦挑戦者に

 井山裕太名人への挑戦権をかけた第47期名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の最終ラウンド4局が、7月21日に打たれた。ここまで、優勝争いは6勝1敗の芝野虎丸九段と5勝2敗の一力遼棋聖に絞られており、芝野が勝つか一力が敗れれば芝野の優勝、芝野が負けて一力が勝てばプレーオフという状況だった。芝野と羽根直樹九段の一戦は愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で打たれた。白番の芝野は、序盤、左上の星の黒に横ツケを放つ。その後、前日に研究したばかりという進行となり早々にリードを奪うと、そのまま主導権を手放さず、早い終局で挑戦権獲得を決めた。芝野の名人戦挑戦手合出場は、井山にタイトルを奪われた第45期以来2期ぶり。芝野は「調子があまりよくないときに、踏ん張ることができてよかったと思います。名人挑戦は厳しいかなと思っていた。運がよかったですし、うれしい」とリーグ戦を振り返った。これまで井山とは本因坊戦2回を含め3回七番勝負を戦い、一度も勝てていない。井山との4回目の七番勝負に向けては「一局ずつがんばりたい」と静かに抱負を語った。東京都千代田区の日本棋院で打たれた一力と許家元十段の一戦は一力が勝利。プレーオフは実現しなかったが、一力は「今の状態としては6勝2敗はがんばれたと思います」と振り返った。名人戦挑戦手合は、8月24日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて開幕する。

囲碁ニュース [ 2022年7月19日 ]

井山碁聖、防衛に王手

 井山裕太碁聖が挑戦者の一力遼棋聖に先勝して迎えた第47期碁聖戦碁盤勝負(新聞囲碁連盟主催)の第2局が、7月16日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われた。白番の一力が下辺に打ち込んでからの折衝の中、井山らしい強気の二段バネが打たれ局面は険しくなる。井山が「無理気味だった」と語る下辺左側の黒を取らせる進行となり、白が優勢に立った。だが、黒が右辺にモタレて下辺の白への攻めを睨んだ折衝の中、一力にわずかな緩着があり、流れが変わる。中央で井山が出切りを英断すると、盤上のいくつもの石が絡み合い攻め合う大乱戦へと突入していった。「黒にも何度かチャンスがあったと思う」と、新聞解説の伊田篤史八段は振り返るが、いったんは井山が逆転し優勢を築く。その後、一力が粘りを見せるも、上辺で疑問手が出て井山の勝ちが決まったようだ。201手まで、井山碁聖が黒番中押し勝ちを収めタイトル防衛に王手をかけた。井山は「いろいろな変化がありすぎて見通しは立っていたわけではなかった」、「攻め合い含みでまずい手も打っていると思う」、「上辺の白と中央の黒の攻め合いになって、なんとか勝ちが見えた」と難戦を振り返り、「本局はまずい手がかなり多かったので、次はもう少し内容のいい碁を打てるように精一杯準備したいと思います」と気を引き締めた。後がなくなった一力は「中盤正しく打てないところが多かったので、またいい碁が打てるようにがんばりたい」と語った。伊田八段は「優勢から途中乱れた一力さんには悔いが残る対局だったとは思いますが、後半は諦めずにどちらが勝つかわからないという盤面に持っていく流石の粘りを見せてくれました。次局も熱戦を期待したい」と語った。第3局は、7月27日、広島県廿日市市の「宮島ホテルまこと」にて行われる。

牛、仲邑を降して初優勝

 第7回扇興杯女流最強戦(センコーグループホールディングス株式会社協賛)の決勝が、7月17日、滋賀県東近江市の「迎賓庵あけくれ」で行われた。決勝に勝ち上がったのは、準決勝で藤沢里菜女流本因坊・女流名人を降した仲邑菫二段と、同じく上野愛咲美女流立葵杯・女流棋聖を降した牛栄子四段。共に勝てば初優勝という注目の一戦となった。序盤、右下で白番の牛が早い仕掛けを試みたが、仲邑に的確に応じられ、黒優勢の流れとなる。弱い石が絡み合う乱戦の中、優勢の仲邑は緩まず最強手を選び続け、一時はAIの示す黒の勝率が99%にまで傾いた。ただ、全局的に黒が厚い碁形ながら、形が決まっていない箇所がいくつかあり、観戦する棋士たちからは、「白が苦しいのは確かだが、黒も勝ちきるのは難しい」という声も聞かれた。牛は、辛抱し、決め手を与えずに粘り続けた。ヨセに入り、仲邑に緩着が出ると、牛が一気に逆転を果たす。だが、ここから再び仲邑が立て直し、半目を争うヨセ合いが続くが、牛が逃げ切り、白番2目半勝ち。うれしい初タイトルを手にした。局後の牛は「碁は終わっていると思ってましたが、支えていただいている方々を思いだすと、がんばらないといけないと思って打ちました。優勝は小さい頃からの夢であって、本当に叶うとは思っていませんでしたので、すごくうれしいです」と言葉を選びながら笑顔で語った。勝ちが見えていながら初タイトルを逃した仲邑は「この負けを引きずらないようにして、これからも勝っていきたい」と言葉少なにコメントした。仲邑のタイトル獲得史上最年少記録達成はおあずけとなったが、2トップにニューヒロインたちの成長が加わり、女流囲碁界はますます活気づいていきそうだ。

囲碁ニュース [ 2022年7月12日 ]

上野、女流立葵杯奪取

 女流2トップの決戦――第9期会津中央病院・女流立葵杯(一般財団法人温知会協賛)の挑戦手合三番勝負の第3局が、6月24日、東京都千代田区の日本棋院にて打たれた。第1局は、藤沢の猛追をヨセの手筋で振り切って上野が制し、第2局は上野のお株を奪う力強い打ち回しで藤沢がほぼ完勝。1勝1敗で迎えた本局も見せ場の多い熱い対局となった。序盤、黒番の藤沢が左上で積極的に仕掛けたが、その後に発生したコウを解消したのが判断ミスで、上野がリードを奪う。だが、ここからただちに藤沢が盛り返し、その後一進一退の難戦となった。左辺一帯の険しい攻防の中、藤沢はAIの推奨手とも一致する好手を何手も放ち見せ場を作る。だが上野は落ち着いており、「白の方が打ちやすいと感じていた」と振り返る。左辺を争いながら、右下の黒の大石を狙う大胆な作戦が見事に成功し、藤沢を投了に追い込んだ。150手まで、白番中押し勝ちを収め、上野が藤沢女流立葵杯からタイトルを奪取した。藤沢は「実力不足でした。上野さんはいつも通り強かったです」とコメント。上野は「里菜先生にはいつもボコボコに負かされていて苦手意識が強く、勝てるとは思っていませんでした。信じられない気持ち」と喜びを語った。これで挑戦手合制のタイトルは、上野が女流棋聖と合わせて二冠とし、藤沢の女流本因坊と女流名人の二冠に並んだ。両者は一般棋戦でも活躍が目覚ましい。文字通り「女流2トップ」の躍進に今後も目が離せない。

井山、碁聖戦好発進

 井山裕太碁聖に一力遼棋聖が挑戦する第47期碁聖戦碁盤勝負(新聞囲碁連盟主催)が開幕し、第1局が、6月24日に大阪市北区の日本棋院関西総本部で打たれた。両者による挑戦手合は、今年3棋戦目となり、日本囲碁界は、「井山VS令和三羽ガラス」という構図から、「井山・一力の二強時代」に移ってきた感もある。1月から3月の棋聖戦は、フルセットの末に一力が井山から悲願の三大タイトルを奪取。一力時代の到来かと思いきや、春の本因坊戦は井山自身が「望外だった」と語る4 - 0のスコアで防衛を果たした。井山がこの勢いに乗るのか、一力が昨年の雪辱を果たすべく、「4連敗」を払拭して立て直してくるか――。注目の第1局は、「完勝」に近い形で井山が勝利した。序盤、右上で「思いつきで打った」という井山の強手は、AI推奨手と一致。ここから複雑な攻防が続く中で、井山はさらにAIも見ていなかった妙手を放ち、コウ争いで一本取って優勢を築く。その後も一力が繰り出す勝負手に緩まず応じ、176手まで、井山の白番中押し勝ちとなった。連敗スタートは避けたい一力の巻き返しはなるか。第2局は、7月16日に、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われる。

囲碁ニュース [ 2022年7月8日 ]

アマ名人戦 柳田さん初優勝

 第16回朝日アマチュア囲碁名人戦の全国大会が7月2日、3日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行われ、各都道府県代表、招待選手合わせて57名が全国優勝、大関稔アマ名人への挑戦を目指した。
1日目はベスト8まで決めるが、そこで有力選手が次々と姿を消していった。昨年全国優勝の北芝礼さん(招待)、元アマ名人の平野翔大さん(招待)、ベスト4常連の星合真吾さん(招待)などである。それでもベスト8には実力者が進出したが、全国大会でも初のベスト8に進出したのは立命館大学の学生である板垣友輝さん(熊本)である。平野さん、準優勝経験のある闇雲翼さん(三重)という強敵を破っての活躍である。
 ベスト8で本命視されたのはやはり棋聖戦Cリーグ経験のある栗田佳樹さん(招待)であるが、準々決勝で林隆羽さん(埼玉)に敗れた。林さんは5年前に当時17歳で史上最年少アマ本因坊となった実力者だが、アマ名人戦は縁が無かったのか、これまで活躍がなかった。
 準決勝は、柳田朋哉さん(京都)-林さん、川口飛翔さん(招待)-夏冰さん(招待)である。川口さんは昨年の準優勝者、夏さんも全国上位常連である。また、川口さんが埼玉、夏さんが京都ということもあり、準決勝は埼玉-京都という組み合わせとなった。
 決勝は柳田さんと川口さんとなった。両者は洪道場の出身で柳田さんが先輩にあたる。柳田さんは後輩の面倒見がよく、パパと呼ばれていたという。当時では道場で動き回る川口少年を柳田さんが止めるということがしばしばあったという。そんな両者の決勝は柳田さんが川口さんの大石を仕留めて悲願の全国初優勝となった。

囲碁ニュース [ 2022年6月30日 ]

関東カーニバル

 6月26日、東京市ヶ谷の日本棋院で関東の学生たちによる第10回関東カーニバルが行われた。一番上のAクラスは学生トップクラスから九路盤による初級者まで80人以上の学生が集まった。本来は大学生に加え高校生の参加も可能であるが、今回はコロナ後、久しぶりの再開ということもあり、その間に卒業したOBも参加できるようになった。
 Aクラスでは早稲田OBの星合真吾さん、世界アマ日本代表経験のある川口飛翔さんといった強豪が参加する中、加藤優希さんが優勝となった。加藤さんは昨年の女子学生本因坊で今年もプロ試験を受験するとのこと。川口さんは最終戦で星合さんに勝利し加藤さんと同じ全勝であったが、スイス方式により加藤さんが優勝、川口さんが2位となった。加藤さんと川口さんは5月頭の関東学生リーグの早稲田大学対東京大学の主将戦で対戦しており、そのときは川口さんが半目勝ちし東大の優勝となった。
 5月から6月は学生の関東大会がたくさんあり、春季関東リーグから始まり、女子学生本因坊戦、学生本因坊戦、学生十傑戦、そして関東カーニバルと隔週に開催された。
 コロナの影響でなかなか学生大会も開催されず、開催されてもコロナ前より人数が大幅に減少していたが、今大会では久しぶりに学生たちの賑わいが戻ったようで、それぞれ対局だけでなく交流も楽しんでいた。
 これから全国大会も始まっていくので、学生大会も以前のような活気を取り戻していくだろう。

囲碁ニュース [ 2022年6月21日 ]

女流立葵杯、トップ2の決戦は最終局へ

 藤沢里菜女流立葵杯に、上野愛咲美女流棋聖が挑戦する第9期会津中央病院・女流立葵杯(一般財団法人温知会協賛)の挑戦手合三番勝負が開幕した。第1局が6月18日に、第2局が20日に福島県会津若松市の「今昔亭」で打たれ、それぞれ上野、藤沢が中押しで勝利。両者譲らず1勝1敗として最終局にもつれ込むことになった。
 第1局は、白番の上野がやや打ちやすい形勢から藤沢が追い上げる展開。「終盤の女王」の異名をとる藤沢のペースかと思われたが、上野のヨセの手筋が決まり218手まで上野の白番中押し勝ち。藤沢は「白208のアテコミが見えていなかったので仕方ない」と反省し、上野は「白208の前にぶつかられていたら半目負けそうだったので運がよかった」と振り返った。第2局は、序盤から激しい攻防となり、左上の戦いを制した藤沢がリードを奪うと、上野には苦しい時間の長い一局となった。「ハンマー」の異名をとる上野が中央で勝負手を連発したが、落ち着いてしのいだ藤沢が146手まで白番中押し勝ちとした。結果的には互いに相手のお株を奪う勝ち方で、実力伯仲ぶりがうかがえる。決着をつける第3局は、6月24日、東京都千代田区の日本棋院にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年6月14日 ]

本因坊文裕、前人未到11連覇達成

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に一力遼棋聖が挑戦する第77期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第4局が6月11、12の両日、福岡県太宰府市の「九州国立博物館」にて行われ、196手まで白番の井山が白番中押し勝ちを収め、4連勝で防衛。自身と、趙治勲25世本因坊の10連覇(1989年から98年)を越え、七大タイトル最多となる前人未到の11連覇を達成した。第4局は、一力が「思いつきだった。その後は勢いで」と振り返る右下の仕掛けから、難戦に突入。「深い知識はなく手探りで打っていた」と語った井山が、黒石を取り込む形で地で先行した。一日目の封じ手のあたりでは「決着の仕方が分かってなくて、形勢判断もできていなかった」と井山。だが、二日目に入り、昼食休憩に入るあたりでは「まずまずなのかな」と形勢に自信を持ったという。一力は「想定していない手を打たれ……いろいろ判断できていなかった」、「中央の数手が雑だった。何か工夫しなければいけなかった」と反省する。その後、左下のコウを解消した時点で、井山は「少し残りそう」と勝ちを意識した。両雄の決戦は、七局目までもつれた名人戦、棋聖戦から一転、誰も予想しなかった4―0というスコアでの決着となった。
 一力はシリーズを通して、「判断ができない局面が続いて、決断が裏目に出ることが多かった。中終盤の内容が悪かったので、この結果は仕方ないと思う」と振り返り、記者団にさらに具体的に問われると「特に2局目は、はっきり勝ちの局面を2回逃した。それも含めて実力」とし、「一年間、井山さんと七番勝負を打ち続ける中で、今回は名人戦より内容はよくなっていたと思うが結果に結びつけられなかったことは残念ですし、4局で終わってしまい、関係者の皆様に申し訳ない気持ちです。総合的にはまだまだ及ばない。いろいろ足りない部分を気づかされたシリーズでした。これを今後に生かしたい」と最後に前を向くコメントを残した。
 井山は「今年に入ってから結果が出ておらず、難しい時期もあった。でも、せっかく本因坊戦という大きな舞台を与えられているのだから、自分なりに精一杯できることをやろうと臨んだ」と振り返り、「苦しい時間がすごく長いシリーズで、内容的には反省点、課題があるのですが、その苦しい中で結果を出せたことはよかった。粘り強く打てたことが結果につながった」と語った。一番印象に残る対局には「開幕局」をあげた。11連覇については、「子供の頃から憧れていた趙治勲先生の10連覇にチャレンジできたことを光栄に思う。趙先生の大きさは、変わるわけではない」と語り、今後について問われると「自分なりに精一杯碁に向き合ってきた。これからも、人と比べるのではなく、自分なりに精一杯向き合い続けたい」と応えた。
 趙からは「井山さんと10連覇で並ぶのは心地よかったです。正直、いつまでも10連覇で並んでいたかったですが、井山さんの記録が11連覇で止まるのも嫌です。僕の記録と比較されて、目の上のたんこぶみたいな感じになるから。できるなら20連覇ぐらいして、はるかかなたに行ってほしい」とエールが贈られた。

囲碁ニュース [ 2022年6月7日 ]

文裕、本因坊戦11連覇に王手

 第77期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第3局が、6月1、2の両日、長野県高山村の「藤井荘」にて行われ、本因坊文裕(井山裕太本因坊)が、挑戦者の一力遼棋聖に259手まで黒番中押し勝ちを収めた。昨年の名人戦、今年の棋聖戦の七番勝負同様、今シリーズも最終局にまでもつれる展開が予想されていたが、内容的には肉薄しながらも、結果としてはここまで井山の三連勝という一方的な流れ。三局共に中盤から終盤の集中力で上回っている感のある井山は、前人未到の11連覇に王手をかけた。本局一日目、序盤から、「やりすぎだったか」と井山が振り返る右下の仕掛けから、激しく難解な戦いに突入した。互いに最強手を繰り出し、激しさを増すなか、井山の最強手を咎めた白のキリが厳しく、中央に厚みを築いた一力がややリードを奪った。「ポン抜かれるのを軽視していた」と井山は反省し、「はっきり苦しいと思っていた」と言う。だが、二日目、劣勢を意識していた井山は「迷うこともなく、どんどん積極的に行くしかない」と臨む。一力が上辺を白地に塗り替えた時点では白優勢は盤石かと思われたが、その直後に白を取り込む形で中央を黒模様にする構想が勝り「勝負形」(井山)に。その後、一力の緩手もあったようで、井山の逆転勝利となった。一力は「大ヨセで見えていない手があった。いろいろ計算できていなかった」と言葉少なに振り返り、「もう少し内容のいい碁を打てるように…」と語尾が聞き取れないほどの小さな声で抱負を語った。井山は「これまで通り、自分なりにコンディションを整えて、精一杯やりたいと思います」と淡々と語った。一力の巻き返しはなるのか。注目の第4局は、6月11、12の両日、福岡県太宰府市の「九州国立博物館」にて行われる。

仲邑菫二段、史上最速最年少で100勝達成

 13歳3カ月の仲邑菫二段が、6月6日、第41期女流本因坊戦本戦2回戦で加藤啓子六段に勝利し、公式戦100勝を達成した。日本棋院所属棋士の中では、趙治勲名誉名人により1972年に達成された15歳11カ月の記録を、50年ぶりに塗り替えた。対局後に報道陣に囲まれた仲邑は「勝ち星はあまり意識しないので、そうなんだ…という感じです」と答え、プロ入りから3年2カ月での達成については「あまり分からないですが、早そう」と笑顔で答えた。女流棋士は、一般棋戦の他に女流棋戦も戦うため、条件が同一ではないものの、将来への期待度は高まる。日本棋院所属棋士の100勝達成年少記録は、3位が井山裕太四冠(16歳3カ月)、4位が藤沢里菜女流四冠(16歳8カ月)、5位が一力遼棋聖(16歳9カ月)という強い顔ぶれ。ちなみに、プロ入りから100勝達成までは、井山が3年4カ月、一力が3年6カ月、藤沢は5年2カ月を要している。

囲碁ニュース [ 2022年5月31日 ]

文裕、逆転で二連勝

 「歴史的な名局」と称された第1局の余韻が2週間経ってもまだ消えぬ5月24、25の両日、第77期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第2局が、埼玉県熊谷市の熊谷ラグビー場特別室で打たれた。本因坊文裕(井山裕太本因坊)は、対局前日、半目勝利した第1局を「終局時間も遅く、手数も長い碁を戦い抜くことができたのは収穫だった」と改めて振り返り、本局まで対局はなく「しっかり準備できた」と話した。挑戦者の一力遼棋聖は、この2週間に大勝負を2局こなし、いずれも勝利する充実ぶり。両者共に、囲碁界初の「ラグビー場」での対局を「楽しみ」と笑顔を見せ対局に臨んだ。一日目、右上から右辺へと戦いが広がり、白番の井山の実利対、一力の模様という骨格が出来上がる。やや打ちやすそうな黒が、上辺の白に攻勢をかけ、白がどう凌ぐかという局面で、井山が封じた。二日目、「封じた時から中央で戦うつもりでした」と井山は振り返り、中央に味をつけてから上辺の生きに向かうが、中央で一力の厳しいキリが入り、険しく難解な局面へと進んだ。「厳しくこられるのを想定していなかった」と井山。左辺で一本取り、大場に先着した一力が優勢となった。その後、黒に緩着があり差がつまるものの、黒優勢のまま大ヨセを迎え、このままゴールに向かうかと思われた。だが、「受けると利かされな気がして」と、一力が左下で手を抜き、逆に右下を利かしにいったのが敗着。この一瞬の隙を捉えた井山が左下に連打し暴利を得て逆転。その後の右下の攻防は、YouTubeで解説していた平田智也七段が「井山マジック」と呼ぶ変化をたどった。左下の損を回収することはかなわず、一力が無念の投了を告げた。「右下隅がコウになっていけるかと思いました。次もしっかり準備して臨みたい」と井山。動揺を隠せぬ様子だった一力が、次局までにどう立て直すかが注目だ。第3局は、6月1、2の両日、長野県高山村の「藤井荘」にて行われる。

「終盤の女王」藤沢が日本チームに1勝

 日本、中国、韓国の三国から5名ずつが参戦する女子団体戦――第1回湖盤杯(ソウル新聞、韓国棋院主催)の第1ラウンドが5月22日から28日にネット対局で行われ、第1戦から7戦まで進んだ。韓国棋院主催の「農心辛ラーメン杯」と同様、勝者が負けるまで勝ち上がっていく方式。日本からは、藤沢里菜五段、上野愛咲美四段、鈴木歩七段、謝依旻七段、仲邑菫二段が選抜され、出場順は選手間で決めたという。第1戦は、仲邑と中国の新鋭・呉依銘三段の注目ライバル対決となった。呉はこの碁に勝利して勢いに乗ると、5連勝の大活躍。日本勢は二番手の鈴木、三番手の謝も呉に敗れた。第6戦では韓国の実力者、金彩瑛七段が、貫禄を見せて呉にほぼ完勝。第7戦は、その金と、藤沢との対戦となった。序盤の右辺の競り合いから終始難しい戦いが続き、形勢は細かいながらも白番の金がやや優勢となっていた。だが、中盤から大ヨセに差し掛かるあたりの藤沢は「神がかり的に強い」と定評がある。期待どおり、金のわずかな隙を捉えて逆転を果たすと、その後はほぼ完璧に打ち回して黒番中押し勝ちを収めた。「海外の選手と打つのは久しぶりだったので、楽しみにしていました」と藤沢。「強い主将が控えているので、気楽に打てます」と笑い、「チームに貢献できるよう、1つでも多く勝てるようにこのあともがんばります」と頼もしいコメントを残した。第1ラウンドを終了して、残っている選手は、日本が2名、韓国が2名、中国が4名。藤沢と中国選手の第8戦から始まる第2ラウンドは、10月開催が予定されている。

囲碁ニュース [ 2022年5月25日 ]

関東リーグ 東大V

東京大学(右)- 早稲田大学

 5月1日、4日、5日の3日間にわたり東京市ヶ谷の日本棋院において春季関東学生囲碁リーグが行われた。コロナ以降、昨年秋季関東リーグは行われたが春季リーグは初である。コロナの影響もあり、大学囲碁部の活動が困難だったためか出場校の数はコロナ前に比べて減少している。
そんな中、1部リーグは早稲田大学、東京大学、東京理科大学、慶應義塾大学が4強とされていたが、慶應が5位になるなど勢力図が変化していくようだった。9連覇中の早稲田大学が6回戦まで全て5-0で6連勝し10連覇まであと1勝となった。最終戦の相手は同じくチームとしては全勝の東京大学。昨年の秋季リーグでは東大が4-1で早稲田を降すも東京理科大や慶應と星の潰し合いとなりメンバーの勝ち数で早稲田が制している。今回は共に全勝のため勝者が優勝の決勝戦となった。
早稲田大学は昨年とほとんどメンバーは変わらず、女子学生本因坊の加藤優希さんを主将に関東学生界の中でも実力者が揃っている。対する東京大学は主将に世界アマ日本代表経験のある川口飛翔さん、高校選手権で全国優勝経験のある林朋哉さんを副将にこちらも実力者が顔を並べる。
最終戦は2-2で最後に残った主将戦に託された。多くのギャラリーが注目する中、東大川口さん半目勝ちとなり、3-2で東大が念願の優勝となった。
主将の川口さんは「チームのみんなの頑張りです」と語った。早稲田は秋季リーグでのリベンジに意欲を燃やしていた。

囲碁ニュース [ 2022年5月17日 ]

一力、雪辱をかけて碁聖戦挑戦者に名乗り

 井山裕太碁聖への挑戦権をかけた第47期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)の挑戦者決定戦が、5月16日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。この大舞台に勝ち上がったのは、前碁聖の一力遼棋聖と、余正麒八段。両者は、本因坊戦に続いて挑戦者決定局で相まみえることとなった。「序盤から経験のない展開になり、中盤以降自信はなかった」と一力は難戦を振り返る。だが、コウを解消して形が決まり、勝ちを意識したという。219手まで、一力が黒番中押し勝ちを収め、井山へのリターンマッチ出場を決めた。余にとっては大一番でのつらい連敗となった。一力は「今年もこの舞台に戻ってくることができてよかったと思います。井山さんと1日制の碁は久しぶりなので、2日制とは違った碁になると思いますが、精一杯自分のベストを尽くして戦います」と抱負を語った。七大タイトルの挑戦手合で、井山と一力の組み合わせとなるのは、棋聖戦、本因坊戦に続いて今年に入ってから3棋戦目。充実の両者による頂上決戦が歴史を作っている。挑戦手合五番勝負の第一局は、6月24日に、大阪市北区の「日本棋院関西総本部」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年5月12日 ]

本因坊戦、歴史的名局で開幕

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に、一力遼棋聖が挑戦する第77期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)が開幕した。第1局は、石川県金沢市の「金渓閣」で5月10、11の両日に打たれ、本因坊戦七番勝負史上最多の357手までの大熱戦を、井山が黒番半目勝ちとし、11連覇へ向けて好スタートをきった。一日目の立ち上がりから、布石はなく戦いに突入し、両対局者も「そもそもよくわからない」(井山)、「手さぐりの状態」(一力)と振り返る展開となる。井山が「左下が生還したが、全局的に薄く、今一つかなと思っていた」という状態で一力が封じた。二日目も「一手先も見えない戦いが続いた」と井山。日本棋院公式YouTubeで解説をつとめた立合の羽根直樹九段と「幽玄の間」の解説も兼任していた高尾紳路九段も、「どこまでいっても難しい」と驚きをまじえながら見守っていた。一日目、二日目の午前あたりまではAIの評価は白番の一力を優勢としていたが、井山の反撃で逆転する。「中央から右下の黒に食いつける展開になって少し盛り返した」と井山。一力は、「中盤、方針が定まらず、かなりちぐはぐになってしまった」と反省する。AIの評価が80%代で井山優勢を示しても、羽根・高尾両解説者は「互角」の評価だった。終盤、上辺で白の切りが入った瞬間に、白の評価が90%代に高まる。井山は、この切りを「見えていなかった」と振り返った。対局中も首を傾げ、身体をよじる様子が映し出され、白勝ちが想像された。だが、ここから起死回生の一手をひねり出す精神力はさすが。高尾九段は「勝着」と呼び、井山も「一応、コウになって、それなりに難しくなった」と手応えを持ったようだ。だが、その後もコウ争いの場を何回も移しながらの難戦が延々と続く、まさに頂上決戦の名にふさわしい大熱戦となった。高尾九段は「歴史的大熱戦」、「歴史的名局」とし、井山が半コウをついで半目勝利した終局時には「両者に拍手を送りたい」と賛辞を送った。第2局に向け、井山は「自分なりにコンディションを整え、精一杯やりたいと思います」、一力は「もう少しいい内容の碁を打てるようにがんばります」と語った。その第2局は、5月24、25の両日、埼玉県熊谷市の「熊谷ラグビー場」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年5月6日 ]

春の叙勲・褒章 ―― 石田と井山が受章

 令和4年春の叙勲・褒章受章者が4月29日付で発表され、囲碁界では石田芳夫九段(二十四世本因坊秀芳)が旭日小綬章を、井山裕太九段(名人・本因坊・王座・碁聖)が紫綬褒章をそれぞれ受賞することが決まった。存命の棋士の中では、勲章を受章するのは、杉内寿子八段、大竹英雄名誉碁聖、林海峰名誉天元に次いで石田が4人目。褒章受章は、大竹、林、石田、小林光一名誉棋聖、趙治勲名誉名人に次いで井山が6人目となる。8月に74歳、来年現役60目を迎える石田は「光栄としかいえません。この受章に恥じないよう碁界に貢献していきたい」とあいさつし、AIにはない独創性を碁に求めつつ、「2千局、1200勝に到達したら(引退を)考えます。もうひと踏ん張り」と現役棋士としての抱負を語った。最年少での受章が決まった井山は「こんなに早く…思いもよらなかったこと」と驚いた様子を見せ、「名誉なことで大変光栄に思います。今後は棋士としても、人間としても、少しでも成長していけるよう精進していきたい」とあいさつした後、「新たなことに挑戦していく姿勢で」囲碁に向き合い、「盤上への興味は尽きません。囲碁の真理に近づけるように成長していきたい」と語った。

囲碁ニュース [ 2022年4月28日 ]

アマ名人戦予選各地で始まる

 4月になると都道府県で第16回朝日アマチュア囲碁名人戦の都道府県大会が始まり、7月の全国大会、大関稔アマ名人への挑戦を目指す。4月には東京をはじめ、埼玉、愛知、大阪などの都市部を中心にすでにいくつかの県で続々と予選が行われ各代表が決まっている。全国優勝経験者や全国上位常連などが順当に勝ち上がっているようである。県大会は4、5月を中心に行われる。東京では近年、コロナの影響からか参加者数が以前より減っているようであるが、地方では昨年の参加を控えていたという参加者が復帰してきているようである。とはいえ、まだまだコロナ以前の人数に回復するまではいかないようであり、会場の確保に苦労している県もあるようである。それでも大会への参加を楽しみにしている参加者は多く、昨年は緊急事態宣言の中行われていたところもある県大会だが、今年は宣言が出ていなくて嬉しいというコメントもあった。
 迎え撃つ側の大関アマ名人は3月には井山裕太名人とのプロアマ名人戦が行われ、井山名人に敗れている。左上の攻防で大関アマ名人に誤算があったのか、逆コミのハンデがあるものの、井山名人が押し切ったという印象である。
 昨年は10代の北芝礼さんが全国大会を制し、大関アマ名人に挑戦したが、今年も若手が登場するのか、ベテランが巻き返すのか。そして大関アマ名人が3連覇をするのか注目である。
 アマ名人戦が盛り上がる中、アマ竜星戦(世界アマ日本代表決定戦)の中止も発表されている。

囲碁ニュース [ 2022年4月19日 ]

藤沢、菫二段を退け、女流名人五連覇

 五連覇か史上最年少記録の大幅更新か――「第33期博多・カマチ杯女流名人戦」三番勝負(一般社団法人巨樹の会他協賛)の第1局と第2局が、それぞれ4月14日と16日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。注目を集めた本シリーズは、藤沢里菜女流名人が挑戦者の仲邑菫二段の挑戦を退け2連勝とし、謝依旻六段(9連覇)以来二人目の5連覇を達成した。仲邑二段の初タイトル奪取は見送りとなった。
 勝てば13歳1か月という若さでのタイトル獲得となる仲邑二段の挑戦だった。1局目は接戦となり、囲碁AⅠが黒番の仲邑二段優勢を伝える時間も長かった。だが、難解な中盤戦から終盤に入るあたりで藤沢女流名人がいつもどおりの強さを発揮し逆転。白番中押し勝ちとなった。2局目は序盤から藤沢がほぼ完璧な打ち回しを見せる。途中「不安があった」(藤沢)、「悪いなりに少し難しくなったかと思った」(仲邑)と両者が振り返る攻防はあったものの、他では反撃を寄せつけず、藤沢の黒番中押し勝ち。貫禄の強さで防衛を果たした。仲邑は「(女流名人戦の直前に打たれた)SENKO CUPが一番うまく打てた」と振り返り、本シリーズは「内容があまり良くなかったので残念です」としながらも、「藤沢先生は、時間の使い方など、やはり勝負強いなと感じた。こういう大きな舞台で藤沢先生と2局打てて勉強になりました」と報道陣に応えた。藤沢は「13歳という若さで挑戦できるのもすごいし、この大舞台で普段と変わらない空気を感じたのでメンタルの強さもすごいと思った」、「改めて仲邑二段の厳しさを感じた」と挑戦者を讃えたが、自身も「こんなに大勢の報道陣に囲まれた対局は初めてでしたが、対局が始まれば普段どおりに打てました」とメンタルの強さを披露。「これからもどんどん強くなっていく仲邑二段に置いていかれないようにがんばります」と笑顔を見せながら、「仲邑二段に限らず、誰にも負けたくないので」と静かに闘志を語った。

囲碁ニュース [ 2022年4月12日 ]

許十段、初防衛

 許家元十段の二連勝で迎えた大和ハウス杯 第60期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第3局が、4月7日、長野県大町市「ANAホリデイ・インリゾート 信濃大町くろよん」で行われた。序盤、左下の折衝で黒番の許がペースを握り、白を攻めながら優勢に立った。挑戦者の余正麒八段も左辺で勝負手を放ち見せ場を作ったが、許がこれをかわして逃げ切った。黒番中押し勝ちで三連勝とし、七大タイトルで初の防衛を果たした。本局で公式戦の連勝を15に伸ばした絶好調の許だが、「この碁は、途中から何が起きているのかわからなくなって…逆転されていてもおかしくなかったです。シリーズ全体としても難しい碁が続き、どちらが勝ってもおかしくない勝負だったと思います」と謙虚に振り返った。また、思い切った勝負手で相手の大石を取りにいって逆転し、勝利を収めた第2局に勝てたことが大きかったと初防衛の勝因を語った。敗れた余は「いったんは難しくなったかと思ったのですが…。精一杯やった結果なので仕方ありません」と語り、「またこの舞台に戻ってこられるようにがんばります」と前を向いた。

上野、日本女流界初の世界一

 第4回SENKO CUPワールド碁女流最強戦(センコーグループホールディングス株式会社特別協賛)が4月8、9、10の3日間に渡って開催され、上野愛咲美女流棋聖が悲願の日本勢による世界戦初優勝を果たした。今大会は、「扇興杯女流囲碁最強戦」上位4名と主催者推薦1名、中国、韓国、中華台北のランキング1位という8名によるトーナメント戦がネット対局で行われ、日本からは「扇興杯」優勝者の藤沢里菜女流四冠、準優勝の上野女流棋聖、ベスト4の鈴木歩七段、謝依旻六段と、ベスト8に残った仲邑菫二段が推薦枠で出場し、中国からは於之瑩七段、韓国からは崔精九段、中華台北からは蘆鈺樺四段がそれぞれ出場した。過去三回の大会はいずれも於七段が優勝しており、日本勢は決勝戦に進出したことがなかった。だが、今年は8日の1回戦から日本勢が奮起。謝六段が、女流世界最強として知られる崔九段に勝利し、上野女流棋聖は於七段を降した。鈴木七段は蘆四段に惜敗したが、日本勢同士の一戦を制した藤沢女流四冠との3名がベスト4に勝ち上がった。また、まもなく開幕する「女流名人戦五番勝負」の前哨戦となった藤沢女流四冠と仲邑二段の対局は、一時はAIが90%を越える数字で仲邑二段優勢を伝えたが、「神がかり的な強さがある」と張栩九段らトップ棋士に定評のある終盤力で藤沢女流四冠が逆転した。藤沢女流四冠との初の公式戦を終えた仲邑二段は「意外と力の差はないな」と手応えを感じたそうだ。
 9日の準決勝は藤沢女流四冠との超難解な戦いの碁を上野女流棋聖が制して決勝に進出。謝六段は蘆四段に惜敗し、「世界最強の崔さんにまさか勝てるの思わなかったので、本当にうれしいです。準決勝もできれば勝って決勝戦を打ちたかった」と無念の表情で語った。そして、10日は東京都千代田区の日本棋院で「SENKO CUP 女流囲碁フェスティバル」も開催され、大盤解説も行われるなか、大勢のファンと女流棋士たちの応援を受けながら、上野女流棋聖と蘆四段の決勝戦がスタートした。「ハンマー」の異名をとる戦う棋風の上野女流棋聖が、読み切って最強の着手を選びながら相手の大石を召し取るという「らしさ」全開の内容で勝利を収め、日本中の囲碁ファンと棋士たちが歓喜した。優勝した上野女流棋聖は「勝った3局とも、AIを使う研究会で学んだ布石が出てきて、うちやすくなりました。研究会のみんなに感謝したいです」と語り、「後悔する手は打たなかったので満足な内容です。優勝の実感はありませんが、勝っていたみたいでうれしい」と取材陣に笑顔で応えていた。三位決定戦は、藤沢女流四冠が謝六段に勝利を収めた。

囲碁ニュース [ 2022年4月5日 ]

許、初代「テイケイ俊英」

 25歳以下の棋士が出場する新棋戦、第1回テイケイ杯俊英戦(テイケイ株式会社協賛)の決勝三番勝負・第2局が、4月2日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で打たれ、許家元十段が芝野虎丸九段に勝利。第1局に続く2連勝で、初代「テイケイ杯俊英」となった。両者の対戦成績は芝野がリードしていたが、昨年、許が芝野から十段位を奪取して以来追い上げ、この第2局を終えて11勝11敗と並んだ。第1局は、同じく「竜星スタジオ」で3月4日に打たれた。許が芝野の中央の攻めをかわしてリードを奪い、盛り返した芝野が上辺の折衝での返し技も決めて細かいヨセ勝負となったが、許が半目逃げ切っての勝利だった。今年の芝野は本局まで4連勝と調子を上げてきたものの、トータルでは7勝7敗。かたや許は、13連勝中。第2局は、13連勝の勢いが勝り、238手まで、許が白番中押し勝ちとなった。連勝を14に伸ばした許は「自分でもびっくりです」と笑い、戴冠については「できすぎた部分はありますが、すごくうれしいです。だいぶ自信にもなりました」と喜びを語った。

菫二段、史上最年少挑戦者

 藤沢里菜女流名人への挑戦者を決める「第33期博多・カマチ杯女流名人戦リーグ」(一般社団法人巨樹の会他協賛)が3月31日の日程を終えた時点で、仲邑菫二段が単独1位となり、挑戦権を獲得した。仲邑は鈴木歩七段に敗れたものの、残る強豪に連勝し、3月24日に自身の最終戦で向井千瑛六段を破って5勝1敗でゴール。31日の上野愛咲美女流棋聖と謝依旻七段の一戦の結果を待っていた。謝が勝てば1敗で並びプレーオフとなるが、結果は上野の黒番中押し勝ち。1敗は仲邑唯一人となった。女流名人戦三番勝負が開幕する4月14日に、仲邑は13歳1か月。藤沢の持つ挑戦者最年少記録の16歳0か月を大きく更新した。仲邑は「こんなに早くタイトル戦に出られるとは思ってなくて本当にうれしいです。(リーグ戦では)謝先生、上野先生に勝てて自信になりました」と喜び、「里菜先生とは研究会で20局くらい打ってもらい2局くらいしか勝ったことがない。ふだんからすごく優しくてめちゃくちゃ仲良くさせていただいているんですけど、碁もすごく強くて、人としてもすごく尊敬している憧れの先生。実力的には相当厳しいと思うので、少しでも何かを得られればなと思います」と抱負を語った。迎え撃つ藤沢は「勝算はないです。菫さんは、今年に入ってますます力をあげている印象ですし、普段打っている練習碁と本番ではまた違うので、公式戦は今回が初めてなんですけど、どんな戦いになるのか、戦ってみないとわからないなというのが今の気持ちです」と語った。

一力が本因坊挑戦者に

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)への挑戦権をかけた第77期本因坊戦リーグ(毎日新聞社主催)の最終一斉対局が3月31日に打たれ、全勝の余正麒八段は芝野虎丸九段に敗れ、一力遼棋聖は佐田篤史七段に勝ち一敗で並んだ。両者のプレーオフは4月4日に打たれ、一力が白番中押し勝ちを収めた。序盤から一力がポイントをあげて優勢を築き、そのままつけ入る隙を与えぬ快勝。余はつらそうに投了を告げた。余は「リーグ全体を通しては自分なりに頑張れました」と語ったが、一力、許家元十段の強敵を降しながら、最終局で半目負け。プレーオフでは力を出し切れない無念の敗退となった。一力は、これまで本因坊リーグでは一つの黒星に泣くことが多く、「三大タイトルのリーグは、全勝しなければ挑戦者になれない」と語るようになっていた。昨年の名人戦リーグ、棋聖戦Sリーグはいずれも全勝で挑戦権を獲得。それゆえ「リーグ戦で1敗したときは、挑戦は厳しいかなと思っていた」と振り返る。「プレーオフまできて、そのチャンスをものにすることができ、ホッとしています」と静かに喜びを語った。一力の本因坊戦挑戦は初。また、名人戦、棋聖戦、本因坊戦と連続して三大タイトルで同一カードが組まれるのは史上初。井山の11連覇が成るか、一力がこれを阻み世代交代をすすめるのか。両者の七番勝負は、5月10、11日に、石川県金沢市の「金渓閣」にて開幕する。

囲碁ニュース [ 2022年3月29日 ]

ジュニア本因坊戦

 花まる学習会杯第25回ジュニア本因坊戦全国大会が3月26日、27日の両日、東京の毎日ホール(毎日新聞東京本社)にて行われ、32名の子供たちが頂点を競った。認定大会ではなく、こういった子供の全国大会では小学生・中学生は夏の少年少女囲碁大会のようにそれぞれ別に小学生の部、中学生の部とわかれるのが普通であるが、本大会の特徴は小中学生が同じ舞台で全国の頂点を目指す。予選も県大会ではなく、関東や関西といったブロックごとになっている。
2日で5回戦行われるが、1日目で小学生名人の吉田透真くんが敗れるなど、小学生の有力選手や、中学生でもこれまで全国上位常連が次々に敗れるなど混戦になった。
全勝対決は原一太くん(愛知・中3)と樋口駿くん(福岡・中1)となり、樋口くんが初の全国優勝となった。決勝は序盤から苦しく最後は逆転勝利だった。両者は1週間前に京都で行われたボンド杯こどもチャンピオン全国大会でも顔を合わせており、そのときは原くんの勝ちだったため、樋口くんはリベンジを果たしたことになる。樋口くんは3回戦で1目半、4回戦で半目と接戦が多かった。
樋口くんは福岡ブロックの代表だが佐賀在住で、引退後に故郷に帰り囲碁指導をしている吉岡薫九段に教わっている。吉岡九段は弟子が多く中部総本部でプロになっている弟子が多い。
近年では子供たちのレベルが上がっており、どの子も強いので実績がある子が勝てるとは限らないくらい実力差が無くなっている。

囲碁ニュース [ 2022年3月22日 ]

一力遼新棋聖誕生

 第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第7局が、3月17、18の両日、京都市の仁和寺で打たれ、挑戦者の一力遼九段が、井山裕太棋聖に黒番中押し勝ちをおさめ、悲願の棋聖戴冠を果たした。前週の10、11の両日に神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われた第6局は井山が勝利。昨年からのカド番対局を10連勝とし、異名となっている「カド番魔王」ぶりを発揮した。3勝3敗で迎えた最終局は、井山の10連覇か、10年ぶりの新棋聖誕生かで大いに注目された。
対局前夜、東北では大きな地震があり、一力は「連絡を取る術がなかったのですが、自分のできることは、まずは目の前の一局に集中することだと思って頑張りました」と振り返る。対局は、左辺で6線をオシて、相手に地を与えるリスクをとりつつ中央の白を攻める大胆な戦略が注目を集めた。この決断が奏功し、白の大石を攻める中で一力がリードを奪うと、そのまま逆転のスキを与えず逃げ切った。悲願の三大タイトル獲得を果たした一力は、4連敗を喫した4年前の棋聖戦挑戦時を振り返り「以前よりは少し成長できた部分はあるのかなと思いますが、まだまだ内容的には足りない部分もあったので、引き続きがんばっていきたい」と語り、今シリーズを総括して「井山さんにはまだ及ばない部分がある。これからも精進したい」と謙虚に喜びを語った。10連覇を絶たれた井山は「今期は残念な負け方が多かったです。また力を蓄えて、戻ってこられるように頑張っていきたい」とリベンジを誓った。

囲碁ニュース [ 2022年3月17日 ]

女流アマ 久代さん 2度目の優勝

 3月12日、13日の両日、第64回全日本女流アマチュア囲碁選手権全国大会が東京市ヶ谷の日本棋院で行われ、久代迎春さんが2018年の第60回以来2度目の全国優勝を果たした。全国から88名が参加し、8つのブロックに分かれ3回戦が行われ16名が決勝進出となる。 予選リーグは順当に実績者が3連勝で勝ち上がる中、田中ひかるさん(栃木)が優勝経験のある大沢摩耶さん(埼玉)を降し、唯一の2勝1敗での勝ち抜けとなった。それに勢いがついたのか、決勝トーナメントでは関西棋院の元院生だった西方彩華さん(関西)、女子学生強豪の辻萌夏さん(東京)、高校選手権2連覇の経験がある京大生の岩井温子さん(関西)を降し決勝に進出した。 もう一方のブロックで注目を集めたのが谷結衣子さん(神奈川)である。高校選手権で全国優勝はあるが、大学でもあまり大会に出ず、卒業してからもほとんど碁をやっていなかったというが、女子学生本因坊の加藤優希さん(東京)、昨年の女流アマ全国優勝の内田祐里さん(シード)を降しベスト4となった。準決勝では久代さんに敗れた。 決勝の久代‐田中戦はねじり合いとなり、久代さんが読み合いの熱戦を制した。田中さんが勝利していれば、全勝者が1人もいないという珍しい展開となるところであった。 今大会では昨年の上位者が次々に姿を消す展開となったが、女流アマのレベルの高さと実力の拮抗を物語る結果となった。

囲碁ニュース [ 2022年3月8日 ]

「角番魔王」井山、1勝を返す

 井山裕太棋聖が、挑戦者の一力遼九段に1勝3敗と追い詰められて迎えた第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が、3月3、4の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われた。歴史が変わる瞬間を見届けようと多くの報道陣が詰めかける中、井山が劣勢を「魔術」で覆し、213手まで黒番中押し勝ちを収め、角番を一つしのいで2勝3敗とした。序盤、左上の「経験のない形」(井山)からの競り合いは互角に分かれるが、その後、右下で井山が一力の一瞬の隙を突く鋭いキリを放ち、攻勢に立って一日目を終えた。二日目に入り間もなく、一力の強手から白が挽回し、さらに井山に見損じがあって形勢は大きく白に傾いた。「負けを覚悟した」と井山は振り返る。持ち時間も一時は井山が残り1時間強、一力が4時間弱と3時間もの差が開き、控室は「新棋聖誕生か」という空気に包まれた。ただし、立会をつとめた羽根直樹九段は「流れは白ですが、右下にはコウが残っており、左辺はまだ決着がついていません。こういう不透明要素がある碁では、流れを掴みかけている方が精神的には嫌なものです。勝負はまだ全くわかりません」と話した。その言葉どおり、井山が勝負手を次々と繰り出し、一力のミスを誘い、準備を完璧に整えてから左下隅の狙いを決行。井山が一気に逆転を果たした。新聞解説の六浦雄太七段が、井山の読みの深さ、技術、相手が間違えやすいように持っていく力、全てを総じて「魔術」と称し、「強すぎる」と感嘆する一局となった。井山は「精一杯準備して、悔いのないように臨みたい」、一力は「この碁は中盤以降ミスが多かったので、修正してがんばります」とそれぞれ次局への抱負を語った。昨年からの角番の対局を9連勝とした井山が、さらに10連勝として棋聖位10連覇につなげるのか。一力が悲願の戴冠を決めるのか。第6局は10、11の両日、同じく神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われる。

囲碁ニュース [ 2022年3月2日 ]

一力、3勝目。井山、カド番に

 井山裕太棋聖が1勝、挑戦者の一力遼九段が2勝で迎えた第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第4局が、2月18、19の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われた。結果は第3局に続いての逆転で、236手まで、一力が黒番半目勝ち。3勝目をあげ、タイトル奪取まであと1勝とした。本局も、立会をつとめた張栩九段が「お互いに才能を見せつけ合っている」と評したように、序盤から見応えのある攻防が続いた。右下の攻防でわずかに井山がリードを奪ったようだが、一力も終始粘り強く勝機を探り続けた。二度の振り替わりを経て、井山優勢となったが、終盤に井山にミスが出て逆転を許した。新聞解説の鈴木伸二七段は「内容の濃い名局。秒読みに入るまでは両者完璧な打ち回し。秒読みに入ってから両者にミスがありましたが、最後にミス(白194)をした井山棋聖が少し届かなかったという印象」と評した。井山は「下辺の死活に錯覚がありました。それも実力なので仕方がない」と振り返り「気持ちを新たに少しでも納得できる碁を打てるよう準備していきたい」と語った。一力は「(シリーズを通して)勝った碁も紙一重。自分が有利だとは思っていません」と気を引き締め、「引き続き、目の前の対局に集中していきたい」と語った。井山は、昨年の本因坊戦、名人戦に続き、三大タイトルで角番に追い詰められた。その2シリーズは見事に逆転して防衛を果たしたが、棋聖戦でも底力を発揮できるか。注目の第5局は、3月3、4の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われる。

許、十段戦先勝

 許家元十段の七大タイトル初防衛か、余正麒八段の初の七大タイトル奪取か――大和ハウス杯 第60期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)が開幕し、第1局が、3月1日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で打たれた。対戦成績は許が勝ち越しているものの、直近は余が巻き返している。二人は大親友としても知られ、余は「いつも通りに、平常心で打ちたい」と語った。序盤は早いペースで進んだ。許は「構想通りだった」と振り返る。余の仕掛けに許が反撃しリードを奪う。だが、余は決定打を与えず、冷静に打ち進め、接戦にもつれ込んだ。立会の山田規三生九段が「お互いに大きなミスがなく、ハイレベルな戦い」と評した一局は、238手まで、最後は細かいヨセ勝負を黒番の許が半目制して逃げ切った。許は「勝てたのは運がよかった」と振り返る。敗れた余は「勉強しなおして、第2局に臨みたい」と語った。第2局は、3月23日に滋賀県長浜市の「ホテル&リゾート長浜」で行われる。

囲碁ニュース [ 2022年2月25日 ]

アマ大会開催様々

 昨年後半には新型コロナウイルスの感染者数も減ってきており、アマ大会やイベントの開催も多く見られるようになってきたが、年が明けるとオミクロン株の影響により再び感染者数が増加してきた。それによりアマ大会やイベントの開催に大きな影響が出ている。
 いち早く発表があったのがジャンボ大会の中止である。ジャンボ大会は1チーム10人以上の団体戦で、東京大会では15人と11人、中部では11人で行われ、団体戦の中ではそれぞれのチームが一番力を入れるところである。大人数の団体戦ということもあってか、普段なら2月に開催されるこの大会は中止となった。他にも大学のOB・OG団体戦といったこれも10人以上の団体戦が中止になるなど、やはり団体戦という多くの人数が集まるものが中止となった。
 個人戦では宝酒造杯が年内の全会場での開催の中止を発表した。宝酒造杯は各段級位に分かれて行うため、東京大会になると1000人以上の参加者になる。加えて会場で試飲ができるなども中止の原因であろう。2月や3月にあると子供大会と女流アマ選手権の各都道府県予選から全国大会が行われる。こちらは例年通り開催はされるが、子供大会は地区によっては代表戦のみで、段級位認定大会を行わないところもある。全国大会は現在予定通り開催されるようである。
 学生大会も学生最強位戦が中止となり、関東カーニバルが6月に延期となった。学生大会としては例年5月に関東学生リーグという大学の団体戦が行われるが、学生の間では無事に開催されるか不安の声もあがっている。

囲碁ニュース [ 2022年2月15日 ]

知念・一力ペアが優勝

 第27回を迎える「プロ棋士ペア碁選手権2021」の決勝戦が、2月13日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、知念かおり六段・一力遼九段ペアと牛栄子四段・井山裕太五冠ペアの大熱戦が繰り広げられた。二十四世本因坊秀芳と星合志保三段による大盤解説会はネット上でも流れ、鶴山淳志八段のYouTube解説もファンを楽しませた。
現在、棋聖戦七番勝負――日本囲碁界の頂上決戦を戦っている井山と一力がペア碁でもその強さを存分に発揮して決勝に勝ち上がってきた。黒番は知念・一力ペア。序盤、左下で始まった戦いでは「左下の黒が全部取られる形もあったのですが、白に助けてもらって」と知念は振り返る。その後も白が中央の黒に襲いかかり、攻勢が続く。中央が生きた後は、上辺の黒のサバキ具合が勝負となった。終始戦いが続き、碁盤全体が戦場となり、形勢も二転三転するなか、上辺にツケていった白の手が敗着となったようだ。右上隅の黒に触らずにサバければ黒有望と思われたが、中央の白数子を取り込む望外の利を得、ここでほぼ勝敗が決した。最後は左辺も手になり、地合いで届かない白を投了に追い込んだ。一力は、前々回大会以来2度目の優勝。1997年大会以来の2度目の優勝杯を手にした知念は、「一力さんは碁盤を離れると気さくで話しやすく、質問すると何でもやさしく教えてくださいました。でも、ひとたび碁盤に向かうと別人のようなオーラ。学ぶことが多かったです」とペアを讃え、「本当に嬉しいです。読むのに必死でしたが、集中して打てました。4局も打たせていただいて、私にとっては貴重な時間でした」と決勝戦と大会を振り返った。

囲碁ニュース [ 2022年2月8日 ]

一力、乱戦を逆転で制し2勝目

 井山裕太棋聖に、一力遼九段が挑戦する第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第3局が、2月4、5の両日、長崎件西海市の「オリーブベイホテル」にて行われた。一日目、右上で白番一力の強手に、井山が強手で反発して一気に険しい様相に。黒のシノギ具合が注目されるなか、井山が封じた。一力が「大変な進行かなと思っていた」と話したように、AIは黒優勢を示していた。二日目も互いに反発し合いながら最強にがんばる熱戦となり、中央で乱戦に突入した。「一手先も分からない展開がずっと続いた」と井山が振り返るなか、両者残り1分の秒読みになる。一時は黒勝勢となりながら、「攻め合いの具合も、うっかりしていたこともあって」と井山。予定変更した手から「事件」が起こり、井山がコウを解消した時点で、YouTubeで解説をしていた孫喆七段は「白勝ちになりました」。その後も難しい折衝が続いたが、252手まで、白番の一力が中押し勝ちし、シリーズ対戦成績を2勝1敗と勝ち越した。新聞解説の村川大介九段は「白188に対してコウにせずにつないでおけば黒がよかったと思いますが、井山棋聖らしく一番厳しくいった結果だったと思います」と話した。「ただ、勝つチャンスの局面があっただけに、井山棋聖にはショックの大きい負け方だったかもしれません」ともコメント。第4局で井山がどう立て直すかが注目される。一力は、「185手目あたりでははっきり負けだと思っていました。途中分からないことだらけだったので、しっかり修正して第4局に向かっていきたいと思います」、井山は「また気持ちを新たに、精一杯やりたい」とそれぞれ抱負を述べた。井山がタイに戻すか、一力が一気に王手をかけるのか。第4局は、2月18、19の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年2月1日 ]

上野、連勝で防衛

 上野愛咲美女流棋聖が先勝して迎えた第25期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)の第2局が、1月27日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。「ハンマー」の異名を持つ上野と、詰碁の力はトップ棋士に伍すると定評のある挑戦者の鈴木歩七段の対局とあらば、戦いの碁になることは必至と予想されたが、第1局に続いて本局もヨセ勝負に突入した。互角の形勢から下辺の折衝で鈴木に後悔の手があり、そこで優勢に立った上野が押し切っての決着。277手まで、白番の上野が5目半勝ちを収め、防衛(通算4期目)を果たした。上野は最近、苦手としていたヨセの勉強に力を入れてきたという。敗れた鈴木は「2局とも、ヨセでしっかりやられてしまった感じです」と脱帽。上野は「今回はヨセではっきりしたミスがなかった」と勉強の成果を喜び、「今年は新人王のリベンジ、若鯉杯連覇、世界戦でも結果を残し、もっと勉強して女流棋戦も一般棋戦も全部がんばりたい」と二十歳となった一年の頼もしい抱負を語った。

余、5年ぶりに七大タイトル挑戦へ

 許家元十段への挑戦権をかけた第60期大和ハウス杯十段戦の挑戦者決定戦(大和ハウス工業株式会社特別協賛)が、1月27日、大阪府大阪市の関西棋院で打たれた。余正麒八段と佐田篤史七段という関西棋院所属棋士同士の大一番となった。余は2016年の第64期王座戦、2017年の第55期十段戦で井山裕太六冠(当時)に挑戦するなど、早くから頭角を現した。佐田は「余さんとは同い歳ですが、ライバルだと思ったことはありません。ずっと目標としている棋士です」と謙虚に語るが、本因坊リーグに在籍するなど、ここ数年で大きく飛躍している。昨年も関西棋院での勝ち星ランキング1位(43勝19敗)の好成績を残した。だが、余もここ数年、さらに力をつけている。棋聖戦S、名人戦、本因坊戦の三大リーグに在籍し、現在本因坊リーグでは4連勝で単独トップを走る。本局は、中盤に黒番の余の打ち回しが冴え、右辺の白を封じ込めて戦いを優位に進める展開となった。佐田も粘って追い上げたものの、逆転には至らなかった。319手までの熱戦の末、余が黒番3目半勝ち。5年ぶりの七大タイトル挑戦権を獲得した。佐田は「耐えながらチャンスを伺ったが、チャンスらしいチャンスがなかった。力不足です。また一局一局がんばっていくしかありません」と語った。余は「挑戦者になれて、とりあえずホッとしている」と笑顔を見せた後、「2歳下の許くんとは仲がよすぎて弟みたい。こんな日がくるのは思わなかった。不思議な感じ」と語った。許が防衛するのか、余が初の七大タイトルを手にするのか。注目の第一局は、3月1日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で行われる。

張心治さん、最年少棋士に

 「令和4年度女流特別採用棋士採用試験リーグ」は、最終第7局が1月29日に打たれ、5勝1敗同士の張心治さん(12)と柳原咲輝さん(11)が激突。史上初の小学生同士の直接対局首位決戦に張さんが黒番6目半勝ちを収め1位となり、2月1日の常務理事会の承認を経て入段が決まった。心治さんは、張栩九段と小林泉美七段の次女で、2020年4月に入段した張心澄初段は姉。家族4人が全員棋士となった。また、現在最年少の仲邑菫二段より1歳若いため、現役の最年少棋士となる。目標の棋士を尋ねられて「父です」と心治さん。「実力不足なので、強くなりたいです」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2022年1月25日 ]

ドコモ杯女流棋聖戦、上野先勝

 上野愛咲美女流棋聖に、鈴木歩七段が挑戦する第25期ドコモ杯女流棋聖戦三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)が開幕した。第1局は、1月20日に神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」で行われ、黒番上野が1目半勝ちを収めた。上野と鈴木は3期連続の顔合わせで、2期前は、鈴木が上野から奪取し、前期は上野が雪辱を果たした。互いに、戦いになったときの相手の強さを肌で感じている。そのためか、本局は互いに相手の強手を警戒し、戦いを避ける手が打たれ、予想に反して比較的穏やかなヨセ勝負の展開となった。序盤、上野がやや優勢を築くが鈴木が盛り返し、ヨセに入ると鈴木がリードを奪うシーンもあったようだ。だが、鈴木のわずかな緩着をとらえ、上野がヨセ勝負を制した。上野は「できればもっと楽しく戦えればいいのですけど」、鈴木は「気分を切り替えて、次は戦うつもりでいます」とそれぞれ2局目に向けて「戦う」宣言を残した。上野が一気に防衛を決めるのか、鈴木が1勝を返して最終局までもつれるのか――第2局は、1月27日に、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われる。

井山、快勝で1勝を返しタイに

 井山裕太棋聖に、挑戦者の一力遼九段が先勝して迎えた第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第2局が、1月21、22の両日、千葉県勝浦市の「三日月シーパーク勝浦ホテル」にて行われた。井山が「自分なりにコンディションを整えてきた。結果を恐れずにベストを尽くしたい」、一力は「第1局と同様、目の前の一局に集中していきたい」と臨んだ本局は、序盤から黒番の一力が積極的に仕掛け、井山が最強に応戦する流れから、何度も勝負所を迎える険しい難戦となった。中盤、地合いで先行した白番の井山が、上辺一帯の黒模様でしのぐ展開になる中、左辺の折衝でポイントをあげ、最後は逆に左辺の黒を攻め込んだ。158手まで、白番中押し勝ち。井山が1勝を返し、スコアをタイに戻した。井山は「1日目は、厳しいと思っていた。2日目に入ってからも、はっきり判断ができていなかったのですが、あまりよくないと思って打っていた。優勢を意識したのは、最後の最後です。判断も読みも含めて分からないことだらけでした」と難戦を振り返り、一力は「85手目でもう少し頑張る手があったかもしれない。実戦は白地も多く、後の打ち方が難しかった」と敗因を分析した。3局目に向けて、井山は「ひとまず一つ勝てたことはよかったですけど、先は長いので、気持ちを新たにがんばりたい」、一力は「後半にミスが多かったので、そのあたりを修正して、次も精一杯がんばりたいと思います」と語った。第3局は、2月4、5の両日、長崎件西海市の「オリーブベイホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年1月18日 ]

一力先勝で、棋聖戦開幕

 10連覇がかかる井山裕太棋聖に、一力遼九段が挑戦する第46期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕した。第1局は、1月13、14の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われ、214手まで、白番の一力が中押し勝ちを収めた。昨年、無冠となったダメージが心配された一力だが、「ゼロからやり直すしかない」と力強く語り、落ち着きを取り戻したようだ。序盤、下辺の折衝で一力がポイントをあげるものの、井山がしぶとく食い下がり形勢は不明に。終始戦いが続き、互いに手筋を繰り出す見応えのある熱戦となった。コウ争いからの華やかなフリカワリを経て、上辺の白模様がどれだけまとまるかが最後の勝負所となり、両者残り1分の秒読みの中、一力が読み勝つ形で、井山の石を召し取り勝負を決した。一力は4連敗を喫した42期以来4年ぶりの挑戦。雪辱を果たすべく幸先のよいスタートに、「読めていたわけではなかったですが、取りにいくしかないので、最後、耐えていたのは運が良かった」と振り返り、第2局に向けては「コンディションを整えて頑張りたい」。敗れた井山は「少しでも良い状態で臨めるように、精一杯やりたいと思う」と語った。今期はどんなドラマが展開されるのか。第2局は、1月21、22の両日、千葉県勝浦市の「三日月シーパーク勝浦ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2022年1月7日 ]

令和三羽ガラス、早碁棋戦を分け合う

 あけましておめでとうございます。今年も日本囲碁界のプロの棋戦のニュースをお届けしてまいります。よろしくお願いいたします。
 昨年末、12月27日に、第30期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)の決勝戦が放映され、芝野虎丸九段が、許家元十段を降して4期ぶり2度目の優勝を果たした。昨年「十段」と「王座」を失い、七大タイトルは無冠となった芝野だが、年末に存在感を示した。一手30秒(1分の考慮時間10回)で打たれる本棋戦と、「NHK杯」、本戦は2時間、決勝は1時間30分で打たれる「阿含・桐山杯」は、「早碁三大棋戦」と呼ばれ親しまれているが、昨年はNHK杯で一力遼九段、阿含・桐山杯で許家元十段が優勝を決めており、今回の芝野の優勝で、「令和三羽ガラス」が仲良く三棋戦を分け合うこととなった。

第1回テイケイ杯俊英戦 許と芝野が決勝へ

 昨年スタートした新棋戦「第1回 テイケイ杯俊英戦」は、25歳以下の棋士が出場し、予選を勝ち抜いた12名が、6名ずつ二つのリーグに分かれて総当たり戦を行い、それぞれの優勝者が決勝三番勝負に進む。このリーグ戦が、12月20、21、22、24、25の5日間に渡って一気に行われた。Aリーグは、芝野虎丸九段と一力遼九段が4勝1敗で並び、規定により直接対決を制した芝野が優勝。Bリーグは5戦全勝した許家元十段が優勝を決め、ここでも「令和三羽ガラス」が圧倒的な強さを見せつける結果となった。竜星戦に続いて芝野が制するのか、許が雪辱するか、注目の決勝三番勝負は、今年3月に行われる予定となっている。また、女性棋士で唯一リーグ戦に勝ち上がった上野愛咲美女流棋聖は、Aリーグで2勝3敗の戦績で4位だった。

囲碁ニュース [ 2022年1月6日 ]

京大23年ぶり優勝

 第65回全日本学生囲碁選手権が12月23日から26日の4日間、東京市ヶ谷の日本棋院で行われ、全国各地区の代表校8校が日本一を目指して競った。近年では関東と関西の代表校が優勝争いを演じている。
 前評判が高かったのが京都大学で、レギュラーのレベルも学生トップクラスから代表クラスである。対抗としては関東の早稲田大学であり、両校は最終戦の直接対決まで全勝で進んだ。しかし勝ち方は対称的で、京都大学が5-0を連発して圧倒的な成績をおさめる一方、早稲田大学は3-2や4-1とチームの全員で補い合って勝ち続けた。
 最終戦では主将戦こそ早稲田大学が制したものの、4-1で京都大学が勝利し、23年ぶりの日本一となった。
 京都大学は全国大会も久しぶりの参加で、最近はしばらく関西代表は立命館大学であり、前回(一昨年)の全日本も立命館大学が早稲田大学を破り優勝している。立命館大学の当時のレギュラーはほとんどが卒業し、京都大学は新たな戦力が参加しての代表、優勝となった。関西リーグではレギュラーの2人がプロ試験を受けている中で立命館大学を破る安定ぶりだった。
 全日本では補欠も含め最強戦力で見事優勝を果たした。
 近年では関東と関西の代表校が圧倒的な力を示しており、他6校は続く3番手はどこだ、という争いをしてきたが、今回では早稲田大学を追い詰めるなど、けっして3番手争いではなく優勝を目指せる大学が増えた。次回では久々の関東、関西以外での優勝争いが見られるだろうか。

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