日本囲碁ニュース (名人戦)

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2024年11月5日 ]

一力、名人を奪取し四冠に

 第49期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)は、第6局が10月30、31の両日、千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」にて打たれ、挑戦者の一力遼棋聖が芝野虎丸名人に勝利し4勝目をあげ、初の名人位を奪取した。一力は棋聖、天元、本因坊と合わせ、自身最多の四冠。芝野は2年ぶりの無冠となった。
 黒の芝野の模様対、一力の実利という両者の典型的な展開に進んだ1日目を、芝野は「そんなに悪くないかなと感じていた」、一力は「右辺の黒地がどのくらいまとまるかが判断できなかったので、そんなには自信のない展開かなと思っていた」と振り返る。2日目に入り、左辺から中央の攻防の中、黒が出た手からポイントをあげる。芝野は「出を見落としていて、打たれた瞬間にちょっと大変な碁にしてしまったかなと感じていた」という。その後、一力は、形勢判断と正確な読みのもと、最強手段で右辺の黒模様に臨み、芝野の追い上げを許さず勝ち切った。局後の一力は「ひとまず結果を出すことができホッとしています」と控え目に喜びを語り、芝野は「こちらのほうがミスは多くなってしまっていたと思うので、結果に関しては仕方ないかなと思う」とシリーズを振り返り、挑戦手合の渦中にある天元戦、王座戦の次に向けて「名人戦は残念な結果になりましたけど、対局が続くというのは本当にありがたいことなので、また切り替えて、集中して戦えたらいいかなと思います」と語った。
 一力は、「四冠」に関しては「今の実力からすると上出来かなという気はします。天元戦に続いて棋聖戦と、防衛戦が続きますので、そちらに切り替えて、またしっかり準備していきたい」と気を引き締めた。また、二日制の棋聖、名人を同時期に制したのは小林光一名誉棋聖、趙治勲名誉名人、井山裕太王座に次ぐ史上四人目の快挙となる。一力は「非常に偉大な先生方と記録の上では並ぶことができて、非常に光栄に思っております。ただ、(本シリーズも)まだまだ内容的に分からない部分も多かったですので、実力を高めていけたらいいかなというふうに思います」と語った。

囲碁ニュース [ 2024年10月29日 ]

芝野名人、1勝を返す

 第49期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第5局が、10月22、23の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で打たれ、カド番に追い詰められていた芝野虎丸名人が挑戦者の一力遼棋聖に白番中押し勝ちを収めて対戦成績を2勝3敗とした。第4局から本局まで、芝野は10月16日に王座戦挑戦手合第1局で井山裕太王座に白星、18日に天元戦挑戦手合第2局で一力天元に白星(1勝1敗)、20日に棋聖戦挑戦者決定トーナメント3回戦で山下敬吾九段に黒星という過密スケジュール。20日の敗戦ではヨセのミスがあり、疲れが心配された。
 本局は、一力にとっては初の名人位奪取がかかる一局ということもあってか、慎重な立ち上がりとなった。一日目、両者の対局には珍しい戦いのない穏やかな進行の中、一力は下辺の打ち方を「甘かった」とし「少し苦しいのかなと思っていた」と振り返る。ヨセ勝負となった二日目、上辺の折衝の中、芝野が手を抜き、左辺の狙いの切りを入れた後に、下辺から、中央の黒模様の荒らしに着手する。この対応が「中途半端だった」と一力。下辺の攻防で芝野がポイントをあげ、さらに上辺からも黒模様を荒らしてペースを掴んだ。その後、一力の勝負手を冷静に的確に咎めて一力を投了に追い込んだ。1勝を返した芝野は「まだ大変な状況ですが、一局ずつがんばりたいと思います」、一力は「今日は後半にいろいろまずいところがあったので、もう少し内容のいい碁を打てるようにがんばりたい」とそれぞれ意気込みを語った。第6局は、10月30、31の両日に、千葉県木更津市の「龍宮城スパホテル三日月」にて打たれる。

囲碁ニュース [ 2024年10月15日 ]

一力、会心譜で名人位にあと1勝

 芝野虎丸名人1勝、挑戦者の一力遼棋聖2勝で迎えた第49期名人戦挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)第4局が、10月10、11の両日、大阪府守口市「ホテル アゴーラ大阪守口」で打たれた。立ち上がりは黒番の芝野が実利を稼いだが、その後、独特の構想力を見せ、中央に模様を広げる。一力が打ち込み、両者の棋風がかみ合う「攻めとシノギ」の展開となった。二日目に入り、一力が「狙っていた」と振り返る中央の「様子見」の一手が勝着となったようだ。その後も最強のシノギを見せ、逆に芝野の石を取る最短コースで白番中押し勝ちとし、名人奪取にあと1勝とした。終局は、14時2分だった。芝野は、前述の「勝着」の前に、左辺の形を決め白を強くした手を反省したものの「一日目の段階で工夫しなければいけなかった」と振り返った。YouTube解説の佐田篤史七段は「一力棋聖のシノギ力。読みの強さ。答えを出せる場所で100点の答えを出せる強さが際立った一局。白の会心譜」と評した。第5局は、両者による天元戦対局を挟み、10月22、23の両日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて打たれる。一力は「一局一局精一杯打ちたい」、カド番に追い詰められた芝野は「大変な状況だが、そこは気にせず、切り替えてやっていけたら」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2024年9月19日 ]

芝野名人、1勝を返す

 芝野虎丸名人に一力遼棋聖が挑戦する第49期名人戦の挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)の第3局が、9月17、18の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」にて打たれた。結果は、204手まで、芝野の白番中押し勝ち。ここまで2連勝、さらに世界一の栄冠も手にした一力の勢いを止めた。1日目は、実利を稼ぐ一力に芝野が模様を張って対抗し、一力が白模様に消しに入った局面で芝野が封じた。1日目を終え、芝野は「形勢は悪くないのかな、という感じでした」、一力は「はっきり苦しいかなと思っていました」と振り返る。2日目、芝野の「中央の白は生きてください」という手に対し、一力は中央を放置して、さらに地を稼ぐ。「(中央を)素直に生きているようだと地合いがはっきり苦しそうだったので、あまり成算はなかったですけれど、実戦のほうが勝負になるかなと思って選びました」と一力。ここから盤面は一気に険しくなった。難解な白のシノギ勝負となるなか、芝野の読みがわずかにまさり、一力を投了に追い込んだ。芝野は「とりあえず、一つ勝ててよかった」と安堵の表情を見せ、「第4局まで少し間があきますが、またしっかり準備して集中して打てたらと思います」、一力は「正しく打てなかったところもありますが、精一杯やった結果なので仕方ありません。次戦までしっかり準備していきたい」と語った。第4局は、10月10、11の両日、大阪府守口市の「ホテル アゴーラ大阪守口」にて打たれる。

囲碁ニュース [ 2024年8月28日 ]

名人戦開幕。一力が先勝。

 芝野虎丸名人に一力遼棋聖が挑戦する第49期名人戦の挑戦手合七番勝負(朝日新聞社主催)が開幕した。対局前日、3連覇を期す芝野は、「今、名人しか持っていないので、その意味でもこの七番勝負にかける気合いはかなりあります。一力さんは世界戦の応氏杯決勝でも2連勝して勢いに乗っており、いつにも増して厳しい戦いだと思いますが、相手のことを考えても仕方ないので、自分なりに準備して精一杯戦いたい」と抱負を述べ、初の名人位を狙う一力は、「これから大事な勝負が続き、日程的にも厳しくなりますが、一局一局に全力を尽くしたい」と語り、「ワクワクした気持ちでもある」と自信をのぞかせた。第1局は、8月27、28の両日に芝野の故郷である神奈川県相模原市の「杜のホールはしもと」で打たれた。白番の芝野の模様対、黒番の一力の実利という碁形から、一力が下辺の白模様に打ち込み、この攻防が一日目の争点となった。芝野の迫力の攻めに対し、一力が一歩も引かないサバキでしのぎ切り優勢を築く。一力は「深く入ったので、生きられれば形勢は悪くないかなと思っていた。手堅い生きもありましたが、もう少し頑張りました」と振り返る。芝野が封じて1日目を終え、2日目も険しい戦いが続いた。ネット解説の鶴山淳志八段は「黒が優勢を築きましたが、そこからの、芝野名人の難しく難しくして持っていった『妖術』も見事」と評した。一力も「一回でも間違えると一瞬で逆転する碁形なので、気を抜けない展開だった」と語る。戦いは、両者の深い読みにより難解さを増していったが、一力が正確な対応で中央もシノギ切り芝野の追撃を振り切ると、最後は左上と右辺の白への攻めを見合いにして黒番中押し勝ちとした。両者は、30日にも王座戦の挑戦者決定戦で顔を合わせる。一力は「体調を整えて、以降もしっかり臨みたい」とコメント。芝野は「今日は少し勉強したらすぐに寝てしまい、次に備えようと思います」とSNSに投稿した。第2局は、9月4、5の両日、宮崎県高原町の「極楽温泉匠の宿」にて打たれる。

囲碁ニュース [ 2024年7月31日 ]

一力、名人戦挑戦者に

 芝野虎丸名人への挑戦権をかけた、第49期名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の最終一斉対局が、7月22日に打たれた。7月11日に余正麒八段との全勝決戦に勝利した一力遼棋聖が、最終局も富士田明彦七段に黒番中押し勝ちを収めて全勝を守り、3期ぶり2度目の挑戦者に名乗りをあげた。11日の一力・余戦は、両者の気迫がぶつかり合う険しい戦いの碁となった。一力は前日の夕方5時に「応氏杯世界選手権」が行われた中国から帰国したばかりで体力面が心配されたが、「今日までがんばるつもりでした」と疲れを全く感じさせない集中ぶりだった。余が優勢な時間も長かったものの、難戦を読み勝ち、決着をつけた。22日の富士田戦は、互いに荒らし合いながら、中盤までは白番の富士田がリードを奪っていた。だが、ヨセに入ったかと思われた局面から一力が左辺で大きなポイントをあげ、さらに下辺を手にして富士田を投了に追い込んだ。全日程を終え、余(7勝1敗)、井山裕太王座(6勝2敗)、許家元九段(5勝3敗)、山下敬吾九段(4勝4敗)の残留組が今期も残留を果たし、関航太郎九段、張栩九段、志田達哉八段、富士田は陥落となった。3連覇を期す芝野名人との七番勝負は8月27日、神奈川県相模原市の「杜のホールはしもと」にて開幕する。

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