中国囲碁ニュース

中国の著名な棋戦情報をお伝えします。
中国からの囲碁ニュースを皆様にお伝えします。

棋声人語 [ 2021年5月11日 ]

農心杯、韓国チームが余裕をもって優勝

 第22回農心杯世界団体戦は、終始ネットで行われた。この棋戦は、勝ち抜き方式の棋戦の先例を作った。2020年10月では前4局、11月では5局目から9局目、そして、最終段階は2021年2月22日から25日にかけて行われる。今回は、いつにも増して勝負が膠着していた。中国の辜梓豪九段(22歳)、唐韋星九段(27歳)、日本の許家元八段(23歳)、芝野虎丸九段(21歳)、韓国の洪基杓九段(31歳)、申旻埈九段(22歳)が皆白星を残し、中日韓の三チームそれぞれが2名の棋士を残し、最後段階に入った。

 しかし、第22回農心杯の最終段階の状況は、前の2段階とまったく異なった。韓国チームの副将申真諝九段(21歳)が出場するや否や、均衡を崩した。日本の井山裕太九段(31歳)、一力遼九段(23歳)、中国の楊鼎新九段(22歳)、柯潔九段(23歳)の最強メンバーを目の前に四連勝した。このことにより、韓国チームは主将朴廷恒九段(28歳)が出場せずに今回の農心杯での優勝が決まった。

 これは、申九段が「天下一」になった証拠でもある。彼は試合前に「朴九段は前回とても頑張ったので、今回は彼の出場なしで終わらせたい」という発言をし、見事に有言実行した。そして、農心杯で2連覇中だった中国チームは、無抵抗のまま終わってしまい、主将柯九段をはじめ、中国のファンから激しく批判された。囲碁界での勝者と敗者の差はこれほどまでに大きいのか。

( 記事:易非 / 写真提供:sina )

棋声人語 [ 2021年5月7日 ]

SENKO杯、於之瑩が三連覇

 日本で創立されたSENKO杯世界女子囲碁最強戦は、コロナ禍の影響により2020年は行われなかった。2021年では、ネッ対局方式で行われた。8名の棋士がこの棋戦に参加した。日本からは、2回行われた扇興杯において四位までに入った計5名、中韓からは常連の於之瑩六段(23歳)と崔精九段(24歳)が参戦した。中国台湾は、黒嘉嘉七段(26歳)にかわって同じく美人棋士の兪俐均三段(22歳)が出場した。

 3月22日から24日にかけて、各棋院で最強女流棋士のネット対局が行われた。前二期で優勝した於之瑩六段は、藤沢里菜四段(22歳)、向井千瑛六段(33歳)に連勝し、3度目の決勝進出を果たした。一方、崔九段は謝依旻六段(31歳)に勝ち、また上野愛咲美四段(19歳)との準決勝戦では逆転勝ちをした。2019年につづき、2021年のSENKO杯はまたもや中韓女王の対決となった。

 於六段と崔九段は、棋戦では何度も戦ってきた。また、プライベートでも仲が良く、互いのことをよく知る仲だ。スクリーン越しからでも仲の良さと躊躇する様がはっきりと見て取れる。崔九段は終始落ち着いた様子で、AIの勝率判断が高いとされた於六段も自分が優勢を占めていると思っていなかったようだ。コロナ禍が蔓延している今、2020年では多くの国際女流棋戦が中止になり、世界のトップ女流棋士たる二人も1年半ぶりに戦った。そして、久しぶりの対戦は於六段の中押し勝ちで終わった。今対局をもって、於六段はこの棋戦で三連覇を実現した。

 対局後於六段は、「三連覇はもちろん嬉しいが、唯一、日本の皆さんに会えなかったことが残念だった。来年は、機会があれば面と向かってお礼を言いたい。」と言った。

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年4月1日 ]

柯潔九段、LG杯決勝戦で悔し涙を見せる

 第25回LG杯世界囲碁棋王戦は、新型コロナウイルスが発生してから最も早くに再開した世界棋戦である。試行錯誤の後、中日韓三国は協力して国際ネット棋戦のルールを完成させた。2月4日、この試合は予定通り幕を下ろした。これは、流行病を前にして囲碁界が持つ不屈の精神を表した。だが、試合開始時を振り返ると、本戦32強の一人である范蘊若八段(1996-2020)が故人になったことを嘆かわしく思う。

 本戦4回戦を経て、中国の柯潔九段(23歳)と韓国の申旻埈九段(22歳)が勝ち残った。柯九段の勝ち上がりの過程は実に険しかった。第2ラウンドでは、韓国の第一人者である申真谞九段(21歳)をねじ伏せた。また、準決勝戦では卞相壹九段(24歳)と対戦の際、ネットの回線状況が悪く、16回も切断した。このような厳しい状況の中、粘り強く立ち向かって逆転勝利した。そしてついに、初のLG杯の決勝戦に入った。一方、申旻埈九段は、準決勝戦で朴廷恒九段に勝った。ファンたちが長年期待していた「柯朴三番勝負対決」という夢はまたもや叶わなかった。

 決勝戦もネットで行われた。世界棋戦の第9冠を前にしたためか、柯九段でさえも平常心を失った。試合前、焦慮しすぎて一晩眠っていなかったという。ピリピリとした1局目では、柯九段の中押し勝ちとなった。中国囲碁界は、勝利が確実だと思ったようだったが、2局目と3局目では申九段が屈強な一面を見せ、好手を連発した。結果2:1で世界チャンピオン陣に入った。試合後、柯九段はネット生放送のカメラに向かって声を出さずに泣いた。彼の抱えていたプレッシャーの大きさがうかがえる。

(記事:易非 / 写真提供:sinaサイト)

棋声人語 [ 2021年3月29日 ]

昔を想起させる農心杯元老戦

 新型コロナウイルスの影響で、多くの棋戦が予定通り行われなかった。2020年、韓国棋院は農心会社と協力し、かつての囲碁の世界的な盛り上がりの再現に尽力した。三国元老囲碁勝ち抜き戦を開催しようとしたのだ。しかし、通航が中止されたため、対面での対局ができなくなり、結局、諦めざるをえなくなった。それを補うため、主催側は中日韓のレジェンド棋士それぞれ2名を招き、ネットを通して「農心杯レジェンド棋士特別招待戦」を行った。合計6回戦の対戦は、各棋士が他の5名の棋士と戦えることを実現した。この棋戦は大変な時期の特番として、多くの囲碁ファンに向けて行われた。

 中韓の出場棋士は、聶衛平九段(68歳)、常昊九段(44歳)と曹薫鉉九段(67歳)、李昌鎬九段(45歳)の師弟ペアだ。この四人の大棋士は、自国の囲碁界で目覚ましい功績を立てていた。日本は、小林光一九段(68歳)と依田紀基九段(54歳)だ。二人は師弟関係ではないが、ともに北海道出身で、日本囲碁界を代表している。

 全6回戦の対戦は、1月24日に幕を下ろした。8局のうち、日本チームは一勝しか取れず、その結果に目を疑ってしまった。依田九段が李九段に勝ち、30年過ぎても「トラが石仏を制す」という謂われはまだ健在のようだ。決勝戦は、中韓両国の間で行われた。常九段も李九段に勝ち、若い頃連敗した鬱憤を晴らした。しかし、絶好調でも曹九段に圧制された聶九段は、その陰から抜けることができず、中押し負けとなり、中国チームは準優勝、韓国チームは優勝という結果となった。「当時強かった人は今でも強い」と感心せずにはいられない。ちなみに、優勝賞金は5000万ウォン(約476万円)だ。

図1:対局中にタバコを吸える人は、世界広しといえど聶衛平九段くらいだろう
図1:対局中にタバコを吸える人は、世界広しといえど聶衛平九段くらいだろう
図2:常昊九段は3勝1敗。曹薫鉉九段に負けた1局が悔しい
図2:常昊九段は3勝1敗。曹薫鉉九段に負けた1局が悔しい
図3:対局現場。農心の広告に囲まれている
図3:対局現場。農心の広告に囲まれている
図4:授賞式
図4:授賞式

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年3月23日 ]

柯潔九段 龍星戦で三度目の優勝

 柯潔九段(23歳)と連笑九段(26歳)、二人の親友は第11回中国囲碁龍星戦決勝戦で遭遇する。これは2020年8月に決まったことである。だが、中国北京の防疫政策が原因で、決勝戦の日付はなかなか決められなかった。結果、主催側の検討の後、日本龍星戦の放送方法を採用した。試合は10月18日から20日の間で行われるが、その結果は12月24日の放送が終わってから公表するということになった。

 柯決勝戦に入る前に、柯九段は強豪・芈昱廷九段(24歳)、新星・趙晨宇八段(21歳)を負かした。一方、連九段は趙八段、范廷鈺九段(24歳)、楊鼎新九段(22歳)と五連勝の王昊洋六段(32歳)に勝ち、決勝戦に入った。

 柯決勝戦の1局目で黒の柯九段は明らかに調子が悪く、始まったとたんに崩れて、早くも負けを認めた。しかし、2局目からその強い掌握力を発揮した。2局目が白、3局目が黒、いずれも勝率を常に維持し、2:1で逆転勝ちした。人より優れている実力を現した。

 柯柯九段が中国囲碁龍星戦で4年ぶりに優勝したのは今回が三度目。2回前の第4回中日龍星対抗戦では日本の芝野虎丸九段(21歳)に負けたが、第1回中日韓三国龍星戦で韓国の金志錫九段(31歳)、日本の一力遼九段(23歳)に勝って優勝した。柯潔と同時に日本、韓国で優勝したのは一力九段と申真谞九段(20歳)だった。だが、コロナの影響で第2回中日韓三国龍星戦は中止になった。三国の「龍星」は再開できるだろうか。

図1:決勝戦現場
図1:決勝戦現場
図2:柯九段が石を打つ
図2:柯九段が石を打つ
図3:連九段が九仞の功を一簣に欠く
図3:連九段が九仞の功を一簣に欠く
図4:王昊洋六段(32歳)と陳一鳴四段(28歳)が解説
図4:王昊洋六段(32歳)と陳一鳴四段(28歳)が解説

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年3月19日 ]

聶衛平九段はまた聶衛平杯で準優勝

 中国四川省成都市で2019年から行われてきた聶衛平杯のスポンサーは聶衛平九段(68歳)のファンで、聶九段への敬意を表すため、気前よくお金を出した。第一回は8名の棋士が参加する個人戦だった。聶九段は武宮正樹九段(69歳)と劉昌赫九段(53歳)を負かした後、決勝戦で宿敵の小林光一九段(68歳)に負け、準優勝だった。

 今年の上半期に行われる予定だった第二回聶衛平杯はコロナの影響で2020年12月末の中国囲碁甲級リーグ戦成都大会とともに行われることになった。対局はネットに移され、競技方式も団体戦に調整された。中日韓三国の60代、40代、30代の各一人の棋士は10代の女子新星と組んで、ペアで対抗する。引き分けの場合は60代棋士の勝利数で勝負を決める。

 12月21日から23日、三国の各年齢層の名手がパソコンに向かって戦いを広げた。日本チームの結果は信じられなかった。山下敬吾九段(42歳)、河野臨九段(39歳)二人のトップ棋士と新星・上野梨紗初段(14歳)がいながら、8戦全敗で1ポイントも取れなかった。特に武宮正樹九段が多くの間では優勢を占めていたのに、聶九段はヨセで中国ルールを利用し半目で彼を負かした。聶九段との対戦では30年以上勝てなかった武宮九段はネット対局でも厳しい結果に終わった。試合後、武宮九段は嘆かずにはいられなかった。

 決勝戦は中韓対決だった。聶九段門下の常昊九段(44歳)、古力九段(37歳)は李昌鎬九段(45歳)、尹峻相九段(43歳)に勝ったが、呉依銘二段(14歳)は意外にも鄭有珍初段(14歳)に負けた。しかし、主将戦では、聶衛平九段はまた曹薫鉉九段(67歳)に負けてしまった。棋戦の命名者が連続で準優勝になる、これも囲碁界の奇妙なことの一つだろう。

図1:対局現場
図1:対局現場
図2:パソコンで対局する聶九段
図2:パソコンで対局する聶九段
図3:師匠の聶九段は弟子の常九段と一緒に検討する
図3:師匠の聶九段は弟子の常九段と一緒に検討する

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年3月5日 ]

江西チーム、初の中国囲碁甲級リーグ優勝

 2020年、華為(HUAWEI)携帯杯中国囲碁甲級リーグ戦は、8月に浙江の長興でレギュラーシーズンの8回戦を行った。今年は国家体育総局の要求に応じ、体育のリーグ戦は必ず二段階で終わらせなければならない。残り7回戦のレギュラーシーズンと、8回戦のポストシーズンは全て12月6日から23日の期間に集中的に成都市で行われることとなった。しかし、試合期間中に成都市で新型コロナウイルス感染者が発見され、棋士含め審判もみなホテルに閉じ込められてしまった。このような苦い経験も2020年の特別な思い出になった。

 中国囲碁甲級リーグ戦は、上位8チームが優勝を争い、下位8チームが甲級リーグ残留をかけて戦うため、レギュラーシーズンはどのラウンドも激しい戦いとなる。上位4チームが優勝をかけて戦い、下位9チームが残留資格をかけて戦う。このような状況下で、山東日照チームは一気に駆け上がり、浙江チームは一瞬で地に落ちた。檀嘯九段(27歳)と童夢成八段(24歳)率いる浙江チームは、三度も降格を避けるチャンスがあったが、平常心で挑むことができず、上海建橋学院チームにも山西チームにも負けてしまった。結局浙江チームが勝ったのは、レギュラーシーズンで最下位だった天津チームだけで、かろうじて甲級に残留した。今年もっとも惜しい思いをしたチームと言えよう。

 柯潔九段(23歳)が率いる北京チームも好運に恵まれず、レギュラーシーズンでは11位になり、8位に入ろうとするラウンドでは時越九段(29歳)が率いる深圳チームに負けた。勝ったのは最後に降格になった上海清一チームだけだった。

 優勝を争うグループでもっとも期待されていたのは、レギュラーシーズンで一位だったホストチームの成都チームと前回の優勝チームである蘇泊爾杭州チームだ。しかし、2チームは、準決勝戦でそれぞれ山東日照チームと江西チームに負け、期待を大きく裏切った。党毅飛九段(26歳)と強力な助っ人の朴廷恒九段(27歳)がいる成都チームは最後の最後で平常心を失い、四位に留まった。決勝戦では、江西チームの主将辜梓豪九段(22歳)は力を発揮し、勝敗を左右する主将戦で山東チームの江維傑九段(29歳)に勝ち、江西チームの優勝にとって決定的な一勝を収め、江西チームは初優勝を果たした。優勝賞金は100万元(約1580万円)である。

 ちなみに日本からの助っ人、芝野虎丸九段(21歳)は、山東日照チームの一員として参戦し、1勝5敗だった。レギュラーシーズンの最後のラウンドで、浙江チームの童八段に勝ったのがその一勝だ。日本人棋士が中国囲碁甲級リーグ戦で勝利するのは17年ぶりである。

図1:試合会場
図1:試合会場
図2:今年の囲碁甲級リーグ戦の参加者の中で、現場に来られない棋士は10名いたが、韓国のソウル、日本の東京、中国台北にて、ネット対局を通して試合を行った
図2:今年の囲碁甲級リーグ戦の参加者の中で、現場に来られない棋士は10名いたが、韓国のソウル、日本の東京、中国台北にて、ネット対局を通して試合を行った
図3:中国中央テレビは決勝戦の主将戦を生放送
図3:中国中央テレビは決勝戦の主将戦を生放送
図4:古力九段(37歳)は重慶チームと江蘇チームが五位・六位を争う際に出場し、囲碁甲級リーグ戦の22年間の皆勤記録を達成した
図4:古力九段(37歳)は重慶チームと江蘇チームが五位・六位を争う際に出場し、囲碁甲級リーグ戦の22年間の皆勤記録を達成した

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年3月4日 ]

楊鼎新、天元タイトルへの挑戦が成功

決勝戦現場
決勝戦現場

 第34回同里杯中国囲碁天元戦は、不運の連続だった。2020年1月に始まったと思いきや、新型コロナウイルスの影響で4月に行う決勝戦が6月に延期された。それからも、北京の感染発生でもう一度延期されることとなった。10月になっても、11月になっても、なかなか行われず、11月の末になりようやく行われた。試合は、11月30日から12月3月にかけて、江蘇の同里で行われた。ようやくこの年の任務を完成させたのだ。

 1月に5連勝して挑戦権を手にしたのは、新しく世界チャンピオンになった楊鼎新九段(22歳)だ。11月30日、楊九段は碁盤の前に座り、天元三連覇の連笑九段(24歳)と対峙した。

 この十年間、天元戦の決勝戦三番勝負は同じ流れを辿っている。最終的な優勝者は、2:0で完勝を取るか、初局を失っても2:1で勝利を収める。言い換えれば、2局目をとったら勝利が決まるということになる。連九段は、去年も一昨年も謝科八段(20歳)と范蘊若八段(1996-2020)からの挑戦を打ち破った時、2回とも初局は負けたが、結果2:1で勝利を勝ち取った。

 今回は、楊九段が最終的な勝者となった。初局で、楊九段は大きなミスをし、あっという間に石が死んでしまったが、自分の運気をため込んだと捉えることもできる。2局目では、連九段はずっとリードし、そろそろ勝利を迎えようとしたとき、不思議と中央の大石のつながりを見間違えたせいで、切られて不慮の死を遂げた。悔しい思いをした連九段は結局、タイムオーバーで12月2日の二局目を失った。この流れで、次の日の3局目の勝利も失うことになった。

 今回の勝利により、楊鼎新九段は中国囲碁界で馬暁春九段(56歳)、劉小光九段(60歳)、聶衛平九段(68歳)、常昊九段(44歳)、黄奕中七段(39歳)、古力九段(37歳)、陳耀燁九段(31歳)、連笑九段に次いで九人目の天元になった。中国天元戦の優勝賞金は2020年から40万元(約630万円)にあがった。

(記事:易非/写真提供:sina)

棋声人語 [ 2021年1月26日 ]

呉清源杯、新しい女王が戴冠

 2020年9月に行われた第3回呉清源杯世界女子囲碁戦は、ネットでの8強戦を経て、準決勝戦には4名全員中国人棋士が残った。このことから、11月30日から12月4日までの準決勝戦と決勝戦は福州で対面対局することとなった。ネット対局の単調さや技術面の難しさが避けられるので主催側にとっては一石二鳥だ。

 4強入りしたのは、中国の老・中・青・少各四世代を代表する女流棋士である芮乃偉九段(57歳)、王晨星五段(29歳)、於之瑩六段(23歳)、周泓余六段(18歳)だ。新型コロナウイルスが蔓延したこの一年は、囲碁界の多くの棋士に大きな影響を与えた。最年少の周六段は、自宅で練習に没頭し、AIの知識とスキルが一層向上した。準決勝戦では、何度も負けた芮九段に完勝した。一方、於六段も序盤の優勢を最後まで維持し、前回の準優勝者である王五段に勝ち、初の決勝戦に進出した。

 決勝戦三番勝負は、中国女子囲碁王者の世代交代の戦いとなった。静謐な環境である福州呉清源囲碁会館で、周六段は最初こそ負けたが残り二局は勝ち取り、2:1で初の世界チャンピオンとなった。於六段と同じく18歳で世界チャンピオンを経験した。また、二人の名前には同じ発音の「yu」(中国語では「魚」と同じ発音)があり、今回の決勝戦は、「小さな魚が大きな魚を食べてしまった」と表現された。今の囲碁界では、トップ棋士の交代がこれほどまでに早いのだと感心せずにはいられない。

 呉清源杯と同時に2020年世界人工知能囲碁大会も行われた。今回の大会は、黒六目半のコミ出しという一風変わったルールを採用した。中国で行われる国際棋戦の先駆けとなるだろう。大会結果は、コミの数が自由に変更できるという基準で開発された「星陣囲碁」が優勝した。

図1:毎年呉清源杯が行われると、呉清源囲碁会館がにぎやかになる
図1:毎年呉清源杯が行われると、呉清源囲碁会館がにぎやかになる
図2:呉清源の弟子、芮乃偉はまたもや準決勝戦で敗退した
図2:呉清源の弟子、芮乃偉はまたもや準決勝戦で敗退した
図3:決勝戦現場
図3:決勝戦現場
図4:決勝戦の間、主催側は人気ドラマ『棋魂』の制作チームを招いて、棋士たちと交流。ドラマの技術指導の范蔚菁三段(33歳)は間もなくカメラに映る常昊九段(44歳)、張璇八段(52歳)夫婦、檀啸九段(27歳)、賈罡璐三段(25歳)夫婦に撮影を説明している
図4:決勝戦の間、主催側は人気ドラマ『棋魂』の制作チームを招いて、棋士たちと交流。ドラマの技術指導の范蔚菁三段(33歳)は間もなくカメラに映る常昊九段(44歳)、張璇八段(52歳)夫婦、檀啸九段(27歳)、賈罡璐三段(25歳)夫婦に撮影を説明している

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年1月19日 ]

聶氏師弟、親縁戦で覇を唱える

 2018年に創立された親縁囲碁戦は、呉清源杯世界女子囲碁戦のペア碁部門で、ゆかりのある棋士たちがペアを組んで戦う。第一回では江鋳久九段(58歳)、芮乃偉九段(57歳)夫婦が優勝した。2020年に第二回を迎える際、主催側は男子世界チャンピオンの4人がプロ棋士の夫人とともに参戦するという盛事を実現させようとしたが、常昊九段(44歳)、張璇八段(52歳)夫婦は都合により参加できないため、特別に聶衛平九段(68歳)とその弟子、魯佳三段(32歳)の師弟コンビを招いた。彼らは羅洗河九段(43歳)、梁雅娣二段(46歳)夫婦、時越九段(29歳)、金珊初段(25歳)夫婦、檀啸九段(27歳)、賈罡璐三段(25歳)夫婦と戦うことになった。

 このような顔ぶれは注目を集めた。特に、中国の若い世代である時九段と檀九段も家庭を持ち、夫婦で碁を打つ姿は実に羨ましい。どのペアのチームワークがよりよいかが見どころだ。試合は12月3日から4日にわたり、中国福建省福州市呉清源囲碁会館で行われた。

 第一回戦では、聶・魯の師弟ペアが序盤から敗勢となったが、初めてペアで碁を打つせいか、檀・賈夫婦は意思疎通ができず、結果好局を逃してしまった。一方、時・金夫婦は羅・梁夫婦に瞬く間に勝った。もともと形勢は悪くはないが、羅・梁夫婦は対局前、母から離れて泣いている幼いわが子のことを心配し、不利な状況を見て少し諦めの気持ちがあったのかもしれない。

 決勝戦は、2020年の囲碁界で最もドラマチックな一局と言えるだろう。時・金夫婦は、序盤で大きな優勢を握ったが、石を取ることにこだわりすぎたことが敗着となった。中央で15子ほど取られて、大損を被ったが、実地では足りないわけではなかった。ヨセの段階に入ると、聶・魯の師弟ペアが全力で猛追し、差はみるみるうちに小さくなった。ちょうどその時、勝負を左右する出来事が起こった。時・金夫婦が着手の順番を間違えたことにより1目のペナルティーを課された。その後、聶・魯の師弟ペアは粘り強く中国ルールを利用してコウを勝ち取った。結果、黒の聶・魯ペアが盤面5目の状況で半目辛勝した。ここ数年で珍しい一局ともいえよう。

図1:聶衛平、魯佳師弟
図1:聶衛平、魯佳師弟
図2:時越、金珊夫婦
図2:時越、金珊夫婦
図3:羅洗河、梁雅娣夫婦
図3:羅洗河、梁雅娣夫婦
図4:檀啸、賈罡璐夫婦
図4:檀啸、賈罡璐夫婦

(記事/写真:易非)

棋声人語 [ 2021年1月13日 ]

中国リーグ戦、浙江・上海の天下に

大会現場

 11月14日から22日にかけて、2020年中国囲碁団体戦(男子乙級、女子乙級)が浙江省杭州市で行われた。以前との変更点は、男子丙級リーグが取り止めとなったことだ。そして、男子8回戦、女子7回戦で、開催期間中の休みがいずれも1日だけになっている。これも新型コロナウイルスの影響だろう。

 中国囲碁団体戦は、世界を舞台に年に一度行われる。韓国からの助人選手以外に、日本と中華台北からもチームが参加する。以前丙級リーグが開かれたときは、ヨーロッパチームも参加していた。2020年は特別な年となった。24名の国際棋士は対局会場に来ることはなく、ネットを通じて対局することとなった。日本の井山裕太九段(31歳)も初出場を果たし、中日友好チームの主将になった。崔哲瀚九段(35歳)、崔精九段(24歳)などの韓国のトップ棋士も名簿に入っている。

 8日間の激戦が終わると、浙江チーム、北京チームは男子乙級から甲級に上がり、杭州チームと上海チームは女子乙級から甲級に入った。杭州、上海は、韓国の助人棋士の崔精九段、金恩持二段(13歳)の活躍で昇級した。2019年の囲碁甲級リーグ戦で不運にも降格した北京チームは、「全華班」のおかげで甲級に戻った。これで、浙江省(杭州市含む)では囲碁甲級リーグの資格を持っているチームは男子5つ、女子3つとなった。それに対し、上海では囲碁甲級リーグの資格を持っているチームは男子2つ、女子2つとなった。両方合わせて男女囲碁甲級リーグ戦の26チームの半分近くを占めている。囲碁が盛んな地域の実力を示している。

 男子囲碁乙級では、中日友好チームは10位で、台湾中環チームは15位だった。そして、今年は降格するチームはなかった。

(記事:易非/写真提供:sina)

棋声人語 [ 2021年1月4日 ]

周泓余、女子名人になる

女流名人戦決勝戦現場

 新型コロナウイルスの影響で、2020年4月開催予定だった第2回閬中古城杯中国女子囲碁名人戦決勝戦三番勝負は、10月の末に延期された。しかし、10月30日当日、フィリピンから飛行機で中国のアモイに来た乗客の一名が感染者と確認された。同機の乗客の中の一名はちょうど四川省閬中市のホテルで大会に参加中だった。

 また、そのホテルは古城杯が行われるところでもあった。女流名人戦は、ただちに一時停止となった。関係者全員が陰性と確認されてからようやく11月11日から14日にかけて閬中古城杯が無事開かれた。

 第2回女子名人戦は、2019年11月に開幕した。中国の10代女流棋士の中で最強と言われる周泓余六段(18歳)は挑戦権を獲得し、初めて国内決勝戦に進出した。第1回の女流名人戦で、周六段は準決勝戦で陳一鳴三段(28歳)からの待ち伏せ攻撃を受け、敗北した。結果、陳三段は人生初優勝を手に入れた。今回は、周六段のリベンジ戦と言えよう。

 新型コロナウイルスの影響で、中国では2020年の棋戦の大部分は予定通りに行われなかった。また、棋士のコンディションもその影響を受けた。三番勝負の第1局目では、陳三段は全く集中できず、早くも負けてしまった。優勝を前にしたからか、若き周六段も動揺し、第2局目に敗れた。しかし、若者はやはり幸運に恵まれているのだろうか。決勝戦では、陳三段は布石の段階で誤算してしまい、50手を過ぎたところで勝敗はほぼ決まっていた。

 周泓余六段は皆の期待に応え、18歳をもって女流名人になり、女子王者の道をさらにもう一歩進んだ。

(記事:易非/写真提供:sina)

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