日本囲碁ニュース

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2020年12月25日 ]

2020年のアマ碁界

 2020年は新型コロナウイルスに囲碁界は大きな影響を受けた。特にアマチュア囲碁界は大会やイベントの中止が相次ぎ、囲碁ファンにとっては寂しい一年となった。しかし、対面や会場でのイベントは無くなったものの、オンラインやネットを使用したイベントがどんどん増えていき、囲碁イベントの様相が変化していった。今年開催された大会はネット中心に行われ、対面で対局したいという声が多く聞かれた。イベントも日本棋院からのものだけでなく、学生やアマ強豪たちが自主的に何かをやろうという傾向が多く、コロナ禍にあってもオンラインによる活発な活動が見られた。
 秋ごろになると大会やイベントも各地で小規模ながら再開されはじめた。三大大会や学生、高校選手権といった大規模な全国大会は無かったが、ペア碁の大会が開催され、12月には松田昌士メモリアル 第31回国際アマチュア・ペア碁選手権大会が行われた。しかし冬になるにつれコロナが猛威を振るい規模の縮小を余儀なくされた。この状況を鑑みて中止や延期を発表し始めているイベントも出てきている。
 2020年はコロナにより囲碁のイベント様式が一変した年であった。果たして2021年はどのような年になるのであろうか。まだまだオンラインでのイベントも増えてくるであろうが、以前のように囲碁ファンが集まり対面により楽しめる日はいつになるのであろうか。一刻も早いコロナの収束を願うばかりである。

囲碁ニュース [ 2020年12月23日 ]

一力、強し!4年ぶり4回目の優勝

 30歳以下の棋士で争われる第11回おかげ杯囲碁トーナメント戦(株式会社濱田総業協賛)の本戦、1回戦から決勝戦までが、12月21、22の両日に行われた。毎年三重県伊勢市の「おかげ横丁」で開催されてきたが、今年は新型コロナウイルスの感染を鑑み、対局地は東京都千代田区の日本棋院に移された。また、過去10回は非公式戦だったが、今回は公式戦として行われた。予選を勝ち上がった16名は、敗れると次局からは記録係かネット棋譜解説を担当する。毎年、「記録係が豪華」と話題にもなってきた。一力遼天元碁聖と伊田篤史八段のカードとなった決勝戦は、241手まで、黒番一力二冠が中押し勝ち。非公式戦だった10回までの大会も数えると、4年ぶり4回目の優勝を飾った。白番の伊田が2手目と4手目を目外しに打つ立ち上がりから熱戦が繰り広げられた。「年内は、(AIの評価値が高い)星と小目を、自分に禁止していて、成績もよかったのですが、一力天元は容赦なかった」と伊田は振り返った。一力は「中盤以降は反省点が多く、優勝できたのは運がよかった」と控え目なコメントを残した。一力は、2日間で4勝を加え52勝13敗とし、今年の勝率が8割以上になることが確定。来年のさらなる活躍、世界戦での活躍にも期待が寄せられる。
 なお、表彰式の後、小林覚日本棋院理事長より「若手を育てる棋戦として、一定の役割を終えた」として、今回の第11回をもって当棋戦が終了となることが伝えられた。優勝者には、張豊猷、安斎伸彰(2回)、一力遼(4回)、余正麒、村川大介、許家元、芝野虎丸が名を連ねた。

囲碁ニュース [ 2020年12月17日 ]

一力、井山から天元奪取

 井山裕太天元に一力遼碁聖が挑戦する第46期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)は、決定局となる第5局が、16日に徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル」にて行われた。一力が、183手まで、黒番中押し勝ちを収めて天元位を奪取し、碁聖と合わせて二冠を達成。同時に九段昇段も決めた。中央の白模様に踏み込んだ戦いから、右上の白を取って勝勢となった一力は、「手が震えた」と振り返る。これまで、早碁棋戦の決勝では何度か井山に勝利しているが、七大タイトルは5回挑戦して全て退けられてきた。とりわけ3年前は、3棋戦に連続挑戦しながら10連敗というつらい結果に終わった。一力は「当時はかなりしんどかったですが、今思えば成長するために大事な時期だった」と振り返る。今年は大学を卒業し社会人になり「碁の勉強に充てる時間が増えた」という言葉通り、世界戦でも活躍し、勝ち星もトップを走り充実した強さを見せている。「プロになってからずっと追いかけ目標としてきた存在」である井山を6度目の挑戦で降した一力は局後、「井山さんにタイトル戦で勝つことは一つの大きな目標でした。まだあまり実感はありませんが、内容的にはまだまだ及ばない部分もあるので、さらに精進して内容をあげていきたい」と謙虚に喜びと決意を語った。敗れた井山は三冠で今年を終えることとなり「大事なところの精度が足りなかった。短い時間でいいパフォーマンスが出せず、内容的にも不満の残るシリーズでした」と振り返った。

囲碁ニュース [ 2020年12月8日 ]

芝野、王座初防衛

 芝野虎丸王座が2連勝した後、挑戦者の許家元八段が1勝を返して迎えた第68期王座戦挑戦手合五番勝負(日本経済新聞社主催)の第4局が、12月3日に神奈川県秦野市の「陣屋」で行われた。序盤、右下の戦いから始まり、両者の気合いがぶつかり合う激しい展開となった。まず、白番の許の「黒に攻めさせてサバく作戦」が成功し、優勢に立つ。碁盤の右下四分の一がほとんど白石だけになるほどの黒の大石が抜かれたが、芝野も右下の白の大石を仕留めて土俵を割らない。その後、左辺の大場に回った白がさらにポイントを加えたようだが、許の「優勢を意識した堅い一手」から流れが変わった。芝野が左上の大きな2線ハネツギに回り、左辺の白に寄り付く進行となって逆転。許は猛追して細かい碁となるが、芝野が半目逃げきった。許は「最終局に行けずに残念」と話したが、「今回のシリーズはミスが多かったので仕方ない」と淡々と受け止めた。芝野はホッとした様子を見せ、「苦しい場面が多かったです。あまり内容はよくないかもしれないですけど、粘り強く打てたのがよかったです。今年はタイトル戦であまり成績がよくなかったので、勝ててよかったです」と初めての防衛の喜びを語った。

上野が挑戦権獲得

 鈴木歩女流棋聖への挑戦権をかけた第24期ドコモ杯女流棋聖挑戦者決定戦(株式会社NTTドコモ協賛)が、12月3日、東京都千代田区の竜星スタジオにて打たれた。決勝の舞台には、藤沢里菜女流四冠と、前期タイトルホルダーの上野愛咲美扇興杯の2強が勝ち上がった。序盤、白番の藤沢が下辺の地を大きく囲ったように思えたが、上野は左辺の白に狙いを絞る。藤沢の左辺を小さく捨てる意図を許さず、戦線を拡大させ主導権を握った。さらに、右下を鮮やかに荒らして優勢を築き、中押し勝ち。「早碁では負けない」とばかりに圧倒した一局となった。「まあまあよく打てた」と振り返る上野。「早碁は読みが大事なので、年末年始は詰碁を頑張ります」と笑顔でコメントした。鈴木女流棋聖との三番勝負は、新年の1月21日に開幕する。

天元戦は最終局へ

 井山裕太天元の2勝1敗で迎えた第46期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)の第4局が、12月7日に、兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われ、挑戦者の一力遼碁聖が208手まで白番中押し勝ちを収めた。序盤から井山が積極的な打ち回しを見せるが、一力は落ち着いて手厚く応じながら、狙いの左辺の打ち込みに向かい、コウの振り替わりでポイントをあげたようだ。井山は勝負手を繰り出すが、一力が冷静に的確に応じ、井山を投了に追い込んだ。対戦成績を2勝2敗に戻した一力は、「最終局までこられたのはよかった。次局がすぐ来週にあるので、またいい状態で臨めるように準備したい」と気を引き締め、井山も、「最終局もたくさん経験していますので、ベストを尽くしたい」と静かに闘志を語った。第5局は16日に徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年12月1日 ]

藤沢、女流本因坊を奪還し、女流四冠に

 女性棋士が男女混合の公式戦で優勝するという史上初の快挙を成した藤沢里菜若鯉杯・女流三冠。その偉業に囲碁界の興奮がまだ冷めやらぬ3日後の11月25日、藤沢が上野愛咲美女流本因坊に挑戦する第39期女流本因坊戦五番勝負(共同通信社主催)の第5局が、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。第4局は、序盤から戦いとなって上野が主導権を握った碁を逆転勝ち。本局も「時期尚早だった」と藤沢が振り返る下辺のコウの仕掛けから、先にリードを奪ったのは上野だった。右辺、上辺と転戦しながら険しい勝負所が続き、左辺の大場に上野が先着した時点ではAⅠの勝率も白番の上野に大きく傾いていた。しかし、最近の藤沢は、中盤から終盤にかけての粘り強さがある。左辺で筋のよい手から盛り返し、中央の最後の勝負所も制して抜き去った。3日前の偉業に続く「半目勝ち」を収め、4回目の女流本因坊に復位、女流四冠となった。2局続けて逆転負けを喫し、シリーズも逆転され失冠した上野だが、「里菜先生を相手に半目勝負ができたので、自信をなくさないで打っていきたい」と前を向いた。藤沢も「来年は四冠全部失うかもしれません。満足せず、もっと成長できるように精進します」と第一人者らしく気を引き締めた。

井山天元が2勝目

 井山裕太天元に一力遼碁聖が挑戦する第46期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)の第3局が、11月27日に福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われた。絶好調の両者は他棋戦でも充実ぶりを見せ、本シリーズでも1勝1敗と拮抗している。
 白番の井山が二隅で三々という布石でスタートし、序盤から険しい競り合いが展開された。白番の井山が少しずつポイントを重ね、細かいながらもやや白が有利な中、ヨセに入るかと思われた。だが、最強の道を選択する井山の一手から、突如戦いの碁へと変貌。白の大石が助かれば井山の勝ち、一力は取らなければ負け、という「シノギ勝負」となった。その後、鮮やかな筋から白がしのぎ切り、一力が無念の投了を告げた。井山の強さが印象づけられる一局となった。井山が2連勝というシリーズの流れを渡さずに一気に防衛を決めるのか、一力が巻き返すのか。注目の第4局は、12月7日に、兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年11月26日 ]

藤沢秀行名誉棋聖殿堂入り

 11月24日、日本棋院より藤沢秀行名誉棋聖が第17回囲碁殿堂入りとなったことが発表された。藤沢名誉棋聖は第1期から第6期まで棋聖6連覇、67歳でのタイトル獲得など数々の偉業を成し遂げている。藤沢名誉棋聖は盤上の勝負だけでなく囲碁普及にも力を注ぎ、若手の育成や中国への普及も熱心だった。秀行合宿を催し毎回多くの棋士が参加し、藤沢名誉棋聖の薫陶を受けて高尾紳路九段をはじめ多くの棋士たちが育っている。
 実績はもちろんのことだが、その破天荒な生き様が強烈な印象をあたえている。癌の手術以前はアルコール依存症の禁断症状と戦いながらの対局を重ねていた。こうした「最後の無頼派」とでも称すべき藤沢にはファンが多く尊敬する若手もいた。高利貸しから億単位の借金がありその大半を好きな競輪につぎ込んだ。棋聖を六連覇することで借金を返したという。アルコール依存症であり七番勝負のときだけは禁断症状に苦しみながら酒を抜いた。そんな藤沢名誉棋聖はシュウコウ先生(秀行は正式にはひでゆき)の呼び名で親しまれている。
 藤沢名誉棋聖は2009年に逝去し、多くの囲碁ファンを悲しませた。
 囲碁普及の情熱は子息の藤沢一就八段に受け継がれ、多くの弟子がプロ棋士として育っている。また、孫娘の藤沢里菜女流三冠は11月22日には男女混合の公式戦で女流初の優勝を果たす快挙を達成している。藤沢名誉棋聖の囲碁への思いは現在にも受け継がれている。

囲碁ニュース [ 2020年11月24日 ]

藤沢里菜女流三冠、史上初の快挙

 第15回広島アルミ杯・若鯉戦(広島アルミニウム工業株式会社特別協賛)の本戦が、11月21、22日の両日、広島県広島市で打たれ、藤沢里菜女流三冠が決勝で孫喆七段を降し優勝を決めた。男女混合の公式戦で女性棋士が優勝するのは史上初めての快挙。藤沢は「信じられない気持ちでいっぱいです。本当に光栄に思います。これからも精進してまいります」と喜びを語った。
 本棋戦は30歳以下・七段以下の棋士が参加し、本戦は、予選を勝ち上がった15名と前回優勝者の16名によるトーナメント戦で争われる。組み合わせは20日に抽選で行われ、21日の1回戦の上野愛咲美女流本因坊と仲邑菫初段の対局が注目された。その勝者、上野を2回戦で破り、藤沢は2日目に駒を進めた。快進撃は続き、準決勝戦では前回優勝者の平田智也七段に中押し勝ち。決勝戦は、実力者の孫に序盤でリードを奪うも中盤で巻き返されてヨセ勝負となった。「最後まで計算できていなかったです」と振り返る藤沢だが、大熱戦を制し、332手まで、白番半目勝ちを収めた。

囲碁ニュース [ 2020年11月17日 ]

河野臨九段が2年連続3回目の棋聖戦挑戦者に

 井山裕太棋聖への挑戦権をかけた第45期棋聖戦(読売新聞主催)の挑戦者決定トーナメントは、12日、東京都千代田区の日本棋院で最終局が打たれ、河野臨九段が高尾紳路九段に劇的な黒番半目勝ちを収め、2年連続3回目の挑戦権を獲得した。挑戦者決定トーナメントを振り返ると、Aリーグ優勝の山下敬吾九段が本命視されていたBリーグ優勝の芝野虎丸王座・十段を降し、続くSリーグ2位の高尾戦でも優勢を築いた。だが、終盤に、山下が「信じられない」と嘆くミスが出る。「勝ち運」に恵まれた高尾が、最終のSリーグ優勝者、河野との変則三番勝負に駒を進めた。9日に打たれた第1局は、河野が優勢を築きながら後半失速して、高尾の逆転勝ち。河野はアドバンテージの1勝を持つため、1勝1敗となり、12日の最終局にもつれることになった。
 第2局は、序盤から険しい競り合いに突入し、上辺と下辺で高尾がポイントを重ねて優勢を築いた。一時は、「白勝勢」の声も聞かれたが、難解なヨセで河野が少しずつ盛り返していったようだ。最終盤になっても、AIは「白半目勝ち」を示し、河野も「全部うまくいっても半目負けだと思っていた」、高尾も「1目半勝ちだと思っていた」と振り返る。だが、最後に河野が抜き去り、半目勝ち。局後の検討でも敗着が見つからないほど難解なヨセだった。「自分なりに精一杯やった。結果は仕方ないとしか言えない」と高尾。河野は「運がよかった」とホッとした表情を見せ、「せっかくの機会を生かせるようにしっかり準備したい。井山さんには挑戦手合で一度も勝てていない。特に今、井山さんは結果も内容も素晴らしく、さらに厳しい戦いになると思います。勝つまで挑めばいつかは勝てるかな、という気持ちで臨みます」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2020年11月10日 ]

芝野、王座初防衛にあと1勝

 芝野虎丸王座が挑戦者の許家元八段に先勝してスタートした第68期王座戦挑戦手合五番勝負(日本経済新聞社主催)の第2局が、11月6日、宮城県仙台市の「仙台ロイヤルパークホテル」で行われた。黒番の芝野が、高い中国流を敷き、序盤から右辺で激しい攻防に突入する。白を絡み攻めにする流れから大きな黒地をまとめ、まず芝野がリードを奪った。さらに左下の白地の荒らしにも成功して勝負を決めたかに思われたが、許が中央で厳しい一着を放って猛追。危うかった中央の白を連れ出された時点を、芝野は「形勢に自信が持てなかった」と振り返る。逆転には至っていなかったようだが、その後、芝野は穏やかな道は選ばず戦いへ。両者秒読みの中、許に後悔の一手があったようだ。左上のコウ争いを芝野が制し、代わりに白が連打した右上の黒をシノいで勝敗が決した。芝野は連勝で、初の防衛にあと1勝。一気に決着をつけるのか、許が巻き返すのか。第3局は、11月17日に、兵庫県神戸市の「ホテルオークラ神戸」で行われる。

藤沢、踏みとどまる。女流本因坊戦は最終局へ

 上野愛咲美女流本因坊の2勝、挑戦者の藤沢里菜女流立葵杯の1勝で迎えた女流本因坊戦(共同通信社主催)の挑戦手合五番勝負第4局が、11月7日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。両者の気合がぶつかり、序盤から下辺で激しい競り合いとなり、その後も空中戦へと続いていった。藤沢は「ずっと戦いになって判断ができなくて、難しいと思っていた。最後まで自信はなかった」、上野は「中盤あたりでは形勢がいいと思っていた」とそれぞれ振り返る。しかし、「気がついたら、悪くなっていてがっかりした。気づくのが遅すぎました」と上野。優勢を意識したのは「最終盤だった」という藤沢の集中力が上回り、266手まで白番5目半勝ち。スコアを2-2のタイに戻した。上野は「最終局は後悔なく打てるようにしっかり準備したい」、藤沢は「次局は少し先なので、体調に気をつけて全力を出し切りたい」と語った。注目の最終局は、25日に、日本棋院で打たれる。

囲碁ニュース [ 2020年11月4日 ]

上野女流本因坊が、二勝目

 上野愛咲美女流本因坊に藤沢里菜女流立葵杯が挑戦する女流本因坊戦(共同通信社主催)の挑戦手合五番勝負第3局が、10月31日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。藤沢先勝の後、上野が1勝を返してスコアはタイに。どちらがリーチをかけるかというシリーズの節目の一局となった。他棋戦でも好調の両者だが、藤沢は「全体的に薄くなってしまった」と振り返る。中盤で白番の上野がポイントを上げると、そのまま押し切る形で226手まで、藤沢を投了に追い込んだ。攻めが強く、「重たいハンマーを振り回しながら追いかけてくる」とも評される上野だが、シノギやヨセも隙がない実力を見せつけた一局ともいえる。2連敗であとがなくなった藤沢は「第4局は思い切って打てればいいなと思う」と気を引き締めた。上野が一気に防衛を決めるのか、藤沢がスコアをタイに戻すのか、注目の第4局は、11月7日に日本棋院で打たれる。

中庸戦、金澤秀男八段が初優勝

 第3回SGW杯中庸戦(日本棋院主催。株式会社セントグランテW協賛)の優勝をかけた一局が11月1日、東京都千代田区の日本棋院で打たれ、金澤秀男八段が金秀俊九段を降して優勝を決めた。本棋戦は、日本棋院所属の31歳以上60歳以下で、七大タイトル、竜星戦、阿含桐山杯、SGW杯の優勝経験がない棋士が出場し、予選を勝ち上がった16名によるスイス方式4回戦で争われる。金澤は、1回戦で大森泰志九段、2回戦で小県真樹九段、3回戦で鶴山淳志八段を破って、優勝につなげた。惜しくも敗れた金は、「自分も思い入れが強かったのですが、金澤さんからは並々ならぬ覚悟を感じました」と振り返る。初タイトルを手にした金澤は「信じられない気持ちです」と言葉少なに喜びを語り、夫人の矢代久美子六段に「いつも支えてくれてありがとうございます」と感謝の言葉を送った。

囲碁ニュース [ 2020年10月27日 ]

天元戦は、井山が1勝を返してタイに

 井山裕太天元に一力遼碁聖が挑戦する第46期天元戦挑戦手合五番勝負(新聞三社連合主催)は、第2局が、10月20日に北海道札幌市の「京王プラザホテル札幌」で行われた。絶好調の両者は、全棋戦の勝ち星ランキングでも一力が一位、井山が二位と圧巻の強さを見せており、両者の対決は「現在の頂上決戦」として注目を集めている。一力が逆転で半目を制した第1局に続き、本局も井山の積極的な仕掛けから険しい戦いの碁となった。一時は白番の一力がペースを握ったかに思われたが、難解な競り合いの中で、一力が悔やむ手順前後があったようだ。半目を争う攻防が続くものの、「勝機はない」と判断した一力が、投了を告げる結末となった。スコアをタイに戻した井山は、「ずっと難しい碁で判断もできませんでした。勝ちがわかったのは最後の小ヨセになってからです」と熱戦を振り返り、一力は「正しく打てばかなり細かいが、少し足りない」とくちびるをかみしめた。第3局は、11月27日に福岡県久留米市の「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われる。次局までの1か月に、両者がいかに調整してくるかがおおいに注目される。

王座戦開幕。芝野が先勝

 芝野虎丸王座に許家元八段が挑戦する第68期王座戦挑戦手合五番勝負(日本経済新聞社主催)が開幕した。両者は、一力遼碁聖と共に「令和三羽ガラス」と称され注目と期待を集めている。名人位を失冠したばかりの芝野は、何としても防衛を果たしたいシリーズ。許も「二人に比べ、自分は実績で明らかに遅れをとっている。久しぶりの挑戦手合なのでがんばりたい」と語り、本棋戦には特別な思いで臨む。期待される若い強者らしく、序盤から最強手をぶつけ合う難解な戦いが続いていった。許の後悔の一手から形勢は白番の芝野に傾いたようだ。その後の許の勝負手にも、最強に応じて振り切った芝野が、164手まで、中押し勝ちを収めた。芝野は、「挑戦手合で負けが続いていたので、ひとつ勝ててよかった」と安堵の表情で語った。第2局は、11月6日に、宮城県仙台市の「仙台ロイヤルパークホテル」で行われる。

一力、竜星戦、三連覇

 第29期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)の決勝戦が10月26日に放映された。前期決勝戦で、上野愛咲美女流本因坊が一力遼碁聖を苦しめた壮絶で華やかな碁が記憶に残っているファンも多いことだろう。1年が経ち、今期の決勝の舞台に勝ち上がったのは一力と井山裕太四冠。好調の両者は、持ち時間の短い「早碁」でも充実ぶりを見せた。結果は、一力が優勢を築いてそのまま寄り切って快勝。3期連続で優勝杯を手にした。また、通算4期の優勝は、小林光一名誉三冠、井山四冠を抜いて単独トップの記録となる。一力は「今期の本戦はどの碁も苦しい内容で、ここまでこられたのは、今まで以上に幸運でした」と振り返り、決勝譜については「井山さんとはNHK杯の決勝戦でも当たったのですが、そのときは内容が悪く悔いが残っています。今回は納得いく碁が打ててよかった」と笑顔を見せ、「碁聖も獲得でき、竜星も三連覇できましたので、この勢いで他の棋戦もいい成績を残せるようにがんばりたいと思います。来期も一局一局いい碁を、皆さんに楽しんでいただける面白い碁を打っていきたいと思います」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2020年10月21日 ]

井山、名人奪還。三度目の大三冠達成

 芝野虎丸名人がカド番に追い詰められて迎えた第45期名人戦挑戦手合(朝日新聞社主催)の第5局が、10月13、14の両日、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で行われた。挑戦者の井山裕太棋聖は、3勝1敗とした第4局までを「自分なりに、それなりに手応えを感じている」と自信をのぞかせ、昨年この対局地で史上最年少名人となった芝野は、「いい思い出がいろいろよみがえってきた」と苦境を振り払う笑顔を見せて対局に臨んだ。1日目から難解な戦いに入り、読みの応酬が続くなか、井山がややリードを奪う。2日目も険しい攻防は続き、最強手を選び続ける井山流が芝野を圧倒。178手まで、ついに名人を投了に追い込んだ。3期ぶりに名人を奪還し、七大タイトルの通算獲得数を49にのばした。また、防衛中の棋聖、本因坊とあわせて三度目の「大三冠」を達成した。初防衛を果たせなかった芝野は「やはりちょっと残念な気持ちはあります。井山先生にうまく打たれて、実力が足りないところを感じました」と振り返った。井山は「最近は失冠が多かったので、結果を残せてよかったです。これからも少しでも成長していけたらと思います」と喜びを語った。

関航太郎三段、新人王を逆転奪取

 佐田篤史七段が先勝し、関航太郎三段が1勝を返して迎えた第45期新人王戦決勝三番勝負(しんぶん赤旗主催)の第3局が、10月16日、大阪市の関西棋院で行われた。黒番の佐田の研究布石からスタートし、「途中までは判断が難しい碁で、自信のない局面もあった」と関は振り返る。だが、佐田に「深く考えずに打ってしまった」という大後悔の一手があり、その失着から一気に流れが白に傾く。以降は関の集中した打ち回しで寄り切った。初タイトルを獲得した関は、「自分でも驚いています。これまでの努力が報われたようで本当に嬉しい」と喜びをかみしめた。佐田にとっては悔いの残る一局。今年、本因坊リーグ入りして七段昇段を決めた佐田は、本棋戦には来期が最後の出場資格となる。「最後なので悔いの残らぬよう全力を尽くしたい」と抱負を語った。

お詫びと訂正/先週のニュースで佐田篤史七段の新人王戦出場資格が、今期が最後とお伝えしましたが、来期が最後となります。訂正してお詫びいたします。

囲碁ニュース [ 2020年10月13日 ]

新人王決勝三番勝負は、最終局へ

 佐田篤史七段が先勝して迎えた第45期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の第2局は、9月28日、東京都千代田区の日本棋院にて行われた。結果は関航太郎三段の白番中押し勝ち。スコアをタイに戻した。最終局は、10月16日に大阪市の関西棋院で行われる。

芝野名人、カド番に

 芝野虎丸名人が1勝を返して迎えた第45期名人戦挑戦手合(朝日新聞社主催)の第4局は、9月29、30の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」にて行われた。1日目から険しい戦いの碁となり、芝野が大長考の一手を封じたが、2日目も井山裕太棋聖の厳しさが勝った結末。井山が黒番中押し勝ちで3勝目をあげ、芝野はカド番に追い詰められた。

女流本因坊戦、スタート

 上野愛咲美女流本因坊に、藤沢里菜女流立葵杯が挑戦する女流本因坊戦(共同通信社主催)の挑戦手合五番勝負が開幕。第1局が、10月1日に岩手県花巻市の「佳松園」で行われた。藤沢は本棋戦で1年おきにタイトルを獲得し、五番勝負の舞台に7年連続出場したことになる。上野は前週の世界戦「第3回 呉清源杯 世界女子囲碁選手権」(中国棋院他主催)で女流ナンバーワンの崔精九段を破る大殊勲の星をあげたばかり。文字通り、日本のトップ2の争いは、藤沢が黒番中押し勝ちして幸先のよいスタートをきった。「中盤でまずい手があった。佳松園の温泉に入って切り替えたい」と上野。藤沢は「第2局以降も力を出し切りたい」と語った。

井山、阿含桐山杯5度目の優勝

 阿含・桐山杯第27期全日本早碁オープン戦(毎日新聞社、京都新聞社後援、阿含宗特別協賛)の井山裕太三冠と山下敬吾九段による決勝戦が、10月3日、京都市山科区の阿含宗本山総本殿「釈迦山大菩提寺」で打たれた。山下はコロナ禍による公式対局中断が明けてから「囲碁を打てる幸せを感じ、自分の手に自信も持てるようになった」と復調を語っている。結果は井山が難戦を制し黒番中押し勝ち。張栩九段と並ぶ最多記録5度目の優勝を果たした井山は「一つ結果を残せたのは嬉しい」と喜びを語った。

棋聖戦挑戦者決定トーナメント開幕

 第45期棋聖戦(読売新聞主催)の挑戦者決定トーナメントが開幕。10月5日に、Cリーグ1位の洪爽義三段とBリーグ1位の芝野虎丸王座による1回戦が東京都千代田区の日本棋院で行われた。気合いがぶつかり合う攻防を制して芝野が白番中押し勝ちを収め、2回戦に駒を進めた。

天元戦開幕。一力、2冠に向けて先勝

 井山裕太天元に、一力遼碁聖が挑戦する第46期天元戦(新聞三社連合主催)挑戦手合五番勝負が開幕。第1局が、10月8日、愛知県名古屋市の「賀城園」で打たれた。白番の井山が優勢に打ち進めていたが、一力が盛り返し、ヨセで抜き去って半目勝ちを収めた。一力の師匠、宋光復九段は「棋力と体力で拾った勝ちですが、井山さん相手に負け碁をひっくり返した棋力は充実している」とコメント。一力は「次はもっとよい内容で勝ちたい」と話した。

最年少対局は、仲邑菫初段に軍配

 10月8日に打たれたドコモ杯女流棋聖戦(日本棋院主催、株式会社NTTドコモ協賛)本戦1回戦の上野梨沙初段と仲邑菫初段の一戦は、二人の年齢を合わせて25歳10カ月。史上最年少対局となった。勝ってベスト8入りを果たした仲邑は「次も自分らしく精一杯打ちたい」と抱負を話した。

本因坊リーグ開幕。半目勝負の大熱戦

 本因坊文裕への挑戦権をかけた第76期本因坊戦(毎日新聞社主催)のリーグ戦が開幕した。今期の序列は、上から芝野虎丸王座、許家元八段、一力遼碁聖、羽根直樹九段。ここに、再リーグ入りの黄翊祖九段と、新規参入を果たした鶴山淳志八段、佐田篤史七段、大西竜平七段の3名を加えた8名で争われる。10月8日は、芝野―鶴山戦、許―佐田戦が組まれ、いずれも開幕戦にふさわしい大熱戦となった。結果は、芝野と許がそれぞれ白番半目勝ち。今後も熱戦が期待される。

博多・カマチ杯女流オープン戦が女流名人戦へ。藤沢女流名人復活

 第1回博多・カマチ杯女流オープン戦(医療法人社団埼玉巨樹の会協賛)の準決勝が10月8日に、決勝が9日に打たれた。決勝に勝ち上がったのは、上野愛咲美女流本因坊と藤沢里菜女流立葵杯。藤沢が上野を降して優勝を決めた。同日行われた、向井千瑛五段と牛栄子三段の三位決定戦は、向井が勝利した。
 また、9日には同棋戦の協賛社が女流名人戦に移行して「博多・カマチ杯女流名人戦」として復活することが発表された。昨年休止された時点の女流名人、藤沢がそのままタイトル保持者となり、7人のリーグ戦で勝ち上がった挑戦者と三番勝負を行う。リーグ戦は11月に開始される予定だ。

囲碁ニュース [ 2020年10月7日 ]

ネット棋聖戦、村上深さん優勝

 第7回ネット棋聖戦決勝トーナメントが9月26日、27日に行われた。ネット棋聖戦は予選と決勝トーナメントベスト16までをインターネット対局パンダネットで行われ、ベスト16から対面での対局となる。3位までになれば第46期棋聖戦のファーストトーナメントへの出場権が得られる。昨年優勝の栗田佳樹さんの第45期棋聖戦での活躍は記録に新しい。通常であればベスト4の4名が対象となるが、アマチュア枠が最大4枠のため、栗田さんのCリーグ残留により今回は3位までとなった。
 ベスト16の対面対局は通常なら同時に行われるが、今回は4組2回にわけて行われた。
 ベスト4に進出したのは3連覇を目指す栗田さん、村上深さん、竹田和正さん、坂倉健太さんとなった。村上さんはアマチュア本因坊、世界アマ選手権の全国大会で優勝経験のある実力者で、現在は囲碁ライターとしても活躍中である。坂倉さんは社会人一年目で、少年少女、高校選手権で全国優勝の経験があり、昨年までは学生大会でも活躍していた実力者である。竹田さんも学生大会で全国準優勝経験があり、ネット棋聖戦では毎回好成績もあげている。
 準決勝では村上さんが竹田さんを、栗田さんが坂倉さんを破り決勝進出となった。両者は第5回の決勝でも対戦しており、そのときは栗田さんが勝利したが、今回は村上さんが栗田さんを降し雪辱を果たし、初優勝となった。
 今年度は新型コロナウイルスの影響により多くの囲碁大会中止またはネット対局となったが、久しぶりの対面での大会に参加者の間では喜びの声もあった。

囲碁ニュース [ 2020年9月30日 ]

芝野、1勝を返す

 芝野虎丸名人に井山裕太棋聖が開幕2連勝して迎えた第45期名人戦挑戦手合(朝日新聞社主催)の第3局が、9月23、24の両日、山口県山口市の「山口市菜香亭」で行われた。劣勢の井山が、終盤に秘技を繰り出して盤上は大荒れとなったが、芝野がぎりぎり耐え抜き、第2局に続いての大逆転は免れた。211手まで、黒番芝野が中押し勝ち。1勝を返して悪い流れを断ち切った。本局は、まず、芝野の独創的な布石が注目された。その後、井山が積極的に仕掛けて戦いが続くが、中盤に、井山が「戦いの本戦から外れていた」と悔いる一手があり、「以降は白が無理気味でした」と劣勢を語った。終盤の本コウとなった大変化については、「難しくなったとは思いましたが、うまくいくまではおそらく大変」と井山。芝野は「運がよかった」と振り返った。大熱戦の興奮がいまだ冷めぬなか、時をあけず、第4局が9月29、30の両日に三重県鳥羽市の「戸田家」にて行われる。芝野が勝ってスコアを2-2のタイに戻すのか、井山が勝ってリーチをかけるのか、シリーズの流れを決める大一番となる。

棋聖戦、挑戦者決定トーナメント出場棋士が出揃う

 井山裕太棋聖への挑戦権をかけた第45期棋聖戦(読売新聞社主催)のS・A・B・C各リーグは、それぞれ優勝者が決定した。これまでに、Cリーグは洪爽義三段が、Bリーグはプレーオフで六浦雄太七段を破った芝野虎丸名人が優勝。Aリーグは最終局を待たずに山下敬吾九段が優勝を決めていた。残るSリーグは混戦の中、24日に河野臨九段が最終局に勝って優勝をさらった。Sリーグは、6名中4名が3勝2敗で並び、リーグ内順位がものをいう結果となった。各リーグ優勝者と、Sリーグ2位の高尾紳路九段の5名が挑戦者決定トーナメントに出場する。河野は「挑戦者になるまでが大変ですが、大きな碁が打てるのは嬉しい。挑戦者決定戦に集中できるように、しっかり調整したい」と語った。注目の芝野は「挑戦まではかなり長いですけど、1局1局頑張って打ちたい」と抱負を述べた。初戦のC優勝の洪とB優勝の芝野の一戦は、10月5日に行われる。

囲碁ニュース [ 2020年9月18日 ]

上野、女流2冠に

 第5回扇興杯(日本棋院主催。センコーグループホールディングス株式会社協賛)の準決勝、決勝戦がそれぞれ9月11日、13日に東京都江東区「東京イーストサイドホテル櫂会」で行われた。準決勝は、謝依旻六段が前期覇者の藤沢里菜女流立葵杯を、上野愛咲美女流本因坊が桑原陽子六段をそれぞれ降して決勝に勝ち上がった。結果は、白番の上野が5目半勝ちを収めて本棋戦での初優勝を決めた。謝は、平成30年12月以来のタイトル奪還はならなかったが、「大変な状況の中で棋戦を開催してくださったことに感謝しています。準決勝からは素晴らしい会場を用意してくださり、棋士としてこれ以上ない幸せです」と関係者に謝意を述べ、決勝進出は幸運もありました。決勝戦は残念でしたが、またこの舞台に戻れるようにがんばります」と前向きなコメントを残した。上野は「今回は内容も悪くなく、結果もよかったのでうれしいです」と笑顔で話し、「世界戦のSENKO CUPが開催されるかわかりませんが、もしも開催されたらいい結果を残せるようにがんばりたい」と抱負を語った。上野は今年2月に女流棋聖のタイトルを失ったが、再び女流2冠となり、通算タイトル数を4に伸ばした。

井山、終盤の大逆転で、名人戦2連勝

 芝野虎丸名人に、挑戦者の井山裕太棋聖が先勝して迎えた第45期名人戦挑戦手合(朝日新聞社主催)の第2局が、9月15、16の両日、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」で行われた。一日目は、左辺の攻防で白番の芝野が石を働かせ、「白優勢」の声が多かった。二日目に入り、白模様に侵入した右下隅の黒を、井山は生きずにあえてコウにして局面を難しくする。芝野がコウを譲り、上辺と右辺の大場に回った時点でも「白優勢」との評。井山が右辺へ深く踏み込んで、最後の勝負所となった。「ヨセ勝負だが白がよさそう」と見守られたが、一転、両者残り1分の秒読みの中、井山の石が生きるか死ぬかという険しい局面へと進んだ。芝野がほぼ勝利を手中にしたと思われたとき、結果的には手順前後となった、芝野の痛恨の一手があり、これに井山が反応する。「この手が打たれた時点では、井山さんもまだ読み切れてはいなかったと思う」と新聞解説の山田規三生九段。だが、その井山の渾身の一手がシノギ筋を拓き、午後7時12分、芝野が投了を告げた。213手まで、黒番井山が大逆転勝利を収め、開幕から2連勝とした。「この負け方はあとを引くかもしれません」と山田九段は心配する。1週間で芝野が気持ちを立て直せるか否か。注目の第3局は、9月23、24の両日に山口県山口市の「山口市菜香亭」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年9月11日 ]

一力、3期ぶり天元戦挑戦者

 井山裕太天元への挑戦権をかけた第46期天元戦(新聞三社連合主催)の挑戦者決定戦が、9月4日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、一力遼碁聖が河野臨九段を中押しで降して3期ぶり3度目の挑戦者に名乗りをあげた。一力は今年、悲願の七大タイトル、碁聖を獲得した勢いにも乗り、直近では20勝2敗という9割を超える驚異的な勝率を残している。13年ぶりの復位を目指す河野も、安定した戦績で復調の兆しが見えるが、今年の対一力戦は、棋聖、名人、本因坊の三大リーグ戦でいずれも敗れている。黒番の河野が、最近研究の布石で臨んだが、一力も研究していた模様。序盤で白の一力がポイントをあげた。その後一力にミスがあり、河野にチャンスの局面が訪れたが、その勝負所で今度は河野に失着があり、流れを引き寄せられなかった。絶好調で、二つ目の七大タイトルが近づいた一力は「3年ぶりにこの舞台に戻ってこられたことを光栄に思います。前回は3連敗でしたので、今回はそれよりいい成績を残せるよう、万全の準備をして精一杯臨みたい」と抱負を語った。挑戦手合五番勝負の第1局は、10月8日、愛知県名古屋市の「賀城園」で行われる。

学生最強位に初の高校生

 第8回全日本学生最強位戦の決勝トーナメントが9月6日にインターネット対局でパンダネットにより行われた。学生最強位戦は他の学生大会の予選とは違い、関東や関西といったブロックごとではなく、全国の学生が同じ予選を行い、8名が決勝大会に進出する。決勝大会は例年では静岡県熱海市で対面対局を行っていたが、今年は新型コロナウイルスの影響によりネットでの対局となった。
 今年は関西勢の活躍が目立ち、決勝大会は関西6名、関東2名となった。学生最強位戦は大学生だけでなく高校生も参加することができ、灘高校の笠原悠暉さんが決勝大会に進出した。
 優勝候補とされていたのは棋聖戦Cリーグで活躍中の栗田佳樹さん(東京理科大)であるが、決勝大会1回戦で松本直太さん(神戸大)に敗れ姿を消した。ベスト4の時点で、学生タイトル獲得経験者はいなくなり、誰が優勝しても初の学生タイトル獲得となった。
 決勝は西村遼太郎さん(立命館)と笠原さんとなり、パンダネットからYouTubeライブ中継された。対局の様子も中継され、笠原さんは体を揺らしながら考えていたのに対し、西村さんは画面上を見入って考えているという対称的な姿が見られた。結果は笠原さんが西村さんを降し、初の学生タイトルを獲得した。
 学生最強位戦の高校生による優勝は初となる。笠原さんは元院生でプロを目指した経験もあり、大学に入学してからも活躍が期待されるだろう。
 学生最強位戦は同時に昇位戦、新星位戦という棋力別クラスも行われ、それぞれ古家華一さん(京都大)、笠原孝一さん(広島大)が優勝した。

囲碁ニュース [ 2020年9月3日 ]

藤沢、女流本因坊戦のリターンマッチへ

 上野愛咲美女流本因坊への挑戦権をかけ、第39期女流本因坊戦(共同通信社、日本棋院主催)の挑戦者決定戦が、8月27日に東京都千代田区の日本棋院で打たれ、藤沢里菜女流立葵杯が星合志保二段に勝利。雪辱戦の舞台に立つこととなった。序盤では黒番の星合がペースを握り、中盤、右下に黒地がまとまると「黒を持ちたい形勢だった」と藤沢は振り返る。しかしその後「左辺の黒が寄り付かれた」と星合が敗因を分析する。ヨセでもわずかなミスが出て「白にうまく立ち回られた」と言う。ただ、敗れはしたが、「(これまで本戦で白星のなかった)縁のない棋戦でここまで来れたのはよかった」と手応えを掴んだようだ。藤沢は、本棋戦でタイトル奪取と失冠を交互に繰り返し、今回で7期連続の五番勝負出場となる。このことに触れ、「リターンマッチばかりしている印象が」と笑い、「充実している強敵の上野さんとまた打てるのが今から楽しみ。自分の力を出し切れるように精一杯がんばりたい」と力強く抱負を語った。注目の第1局は、10月1日に、岩手県花巻市の「佳松園」で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年8月28日 ]

頂上決戦、井山が先勝

 芝野虎丸名人に、井山裕太棋聖が挑戦する第45期名人戦挑戦手合(朝日新聞社主催)が開幕した。共に三冠の両者が七番勝負を戦うのは、今年の本因坊戦に続いて二度目。調子を上げている芝野は「こんなに早く(本因坊戦の)リベンジをする機会がきてうれしい」と語り、井山も「七冠のころより強くなっている」という周囲の声を否定せず、数々のコメントに充実ぶりが伺える。第1局は、8月25、26の両日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で打たれ、白番井山が芝野の猛追を振り切って1目半勝ちを収めた。対局前日に行われたネット前夜祭では、両者と立会人の趙治勲名誉名人との座談会も企画され、ファンを楽しませた。
 注目の開幕局は早いペースで進行し、新聞解説の高尾紳路九段は「序盤中盤はずっと井山さんが押していた」と振り返る。左辺の白のケイマが巧手で、黒が苦しい状況のなか、芝野が封じて一日目を終えた。二日目も井山が順調に打ち進めたが、右辺の攻防で井山に一手の疑問手が出る。これを芝野が捉えて白の大石が危なくなり、一気に険しい状況に突入し、井山は秒読みにも突入した。だが、秒に読まれながらも強手を繰り出し逆襲し、コウの形に持っていく。芝野の猛追に耐え、1目半勝ちとした。高尾九段は「井山さんにプレッシャーを与え、勝つのは簡単ではないと思わせたことが1局目の芝野名人の収穫。井山さんにとっては、残り1分で踏ん張れたことが自信につながる1勝。2局目以降、ますます目が離せません」と話した。第2局は、9月15、16の両日、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年8月18日 ]

悲願達成。一力遼新碁聖誕生

 羽根直樹碁聖に、挑戦者の一力遼八段が2連勝して迎えた第45期碁聖戦挑戦手合五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第3局が、8月14日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。160手まで白番一力の中押し勝ち。早碁棋戦など9つのタイトルを獲りながら、七大タイトル挑戦は井山裕太棋聖に阻まれ続けてきた一力が、悲願の七大タイトルを、6度目の挑戦で獲得した。一力は今年3月に早稲田大学を卒業し、4月から河北新報東京支社編集局所属の新聞記者の肩書きを加えている。現役新聞記者がタイトルを獲るのは、もちろん史上初となる。この日44歳の誕生日を白星で飾れなかった羽根は、「気づいた時には苦しい形勢になったなと思っていました」と振り返り、今シリーズを「今の力は出し切れたが、それでも力及ばずという感じでしたので、仕方ないと思います」と語った。一力は「とにかくほっとしました」と笑顔を見せ、局後の記者会見では、師匠の宋光復九段の涙に思わずもらい泣きするシーンもあった。16日には新聞記者として、自身がシリーズを振り返る記事を掲載し、「どの碁も紙一重の勝負で、3連勝という結果は出来過ぎだが、全体的に自分らしさを出して戦えたのは良かった」と振り返った。羽根については「盤上はもちろん、盤外でもお手本となる部分が多く、棋士のかがみといえる存在。今回も食事のメニューを決める際の配慮や空調温度についての声掛けなど、トップ棋士としてのあるべき姿を学ぶことが数多くあった」と紹介し、記事の最後は以下のように締めくくった。「仙台にいた頃からお世話になっている師匠の宋光復先生、道場で修行する機会を与えてくださった洪清泉先生、そして子どもの頃から応援していただいた仙台の方々には改めて感謝申し上げたい。今回の碁聖獲得を励みに、他のタイトル戦や国際戦でも活躍できるよう精進したい」。また、出身地、宮城県の村井嘉弘知事は、文化・スポーツなどで活躍した県関係者をたたえる「特別表彰」を、一力に贈ることを発表した。

囲碁ニュース [ 2020年8月14日 ]

藤沢、女流立葵杯4連覇

 藤沢里菜女流立葵杯に鈴木歩女流棋聖が挑戦する第7期会津中央病院・女流立葵杯(一般社団法人温知会協賛)の挑戦手合三番勝負の第1、2局が、7月27、29日に行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初予定されていた福島県会津若松市から対局地を東京都千代田区の日本棋院に移しての短期決戦で、藤沢が二連勝してタイトルを防衛。4連覇(通算5期)を達成した。第1局は、中盤に鈴木が追い上げ、ヨセに入っても秒読みの中、険しい攻防が続いた。「半目勝っているかと思っていた」(鈴木)、「負けたかもしれないと思いましたが、黒が最後にダメを詰めたので、もしかしたら……と思いました」(藤沢)と両者が振り返るほどの細かい勝負を白番の藤沢が半目制した。鈴木にとっては、勝つチャンスを逃した残念な敗戦となった。藤沢は、「第1局は運がよく、その勢いで第2局もいけたのではないかと思う」と語る。序盤からリードを奪い、中盤の鈴木の勝負手から難解な勝負所を迎えるも、鈴木に悔やまれる一手があり、藤沢がそこで掴んだ流れを離さず盤石に勝ち切る一局となった。鈴木は「1局目に勝っていれば3局目もあったのかと思うので、そこは悔しい。里菜さんは強くて、なるほどなと思わされる手も多くて楽しかった」とシリーズを振り返った。藤沢は、総タイトル獲得数を13とし、本棋戦では来季、永世称号獲得の資格を得られる五連覇に挑戦する。「来年は福島で対局できればうれしい」と語った。

一力、二連勝で初の七大タイトル奪取に王手

 羽根直樹碁聖に、一力遼八段が挑戦する第45期碁聖戦挑戦手合五番勝負(新聞囲碁連盟主催)の第2局が、8月3日に愛知県名古屋市「日本棋院中部総本部」で行われた。181手で一力が黒番中押し勝ち、2連勝とし、悲願の七大タイトル獲得に王手をかけた。羽根は地元の声援も味方につけ、終盤にさしかかるころには、優勢を築いていた。一力も「コミを出すのは難しいと思っていました」と振り返る。しかし、右上の折衝で羽根に読み落としがあったようだ。ここで一力が抜き去り大きな一勝を手中にした。一力は「右上で正しく打たれていたらダメだったかもしれません。次局はもっといい内容の碁を打てるように頑張ります」と気を引き締め、羽根は「第3局は1局を通してしっかり打ち切りたい」と語った。一力が碁聖位を奪取するか、羽根が踏みとどまるか、注目の第3局は、8月14日、東京都千代田区の日本棋院にて打たれる。

井山、リーグ全勝で名人挑戦者に

 芝野虎丸名人への挑戦権をかけた第45期名人戦リーグ(朝日新聞社主催)の最終一斉対局が8月6日に打たれた。挑戦者争いは、ここまで全勝の井山裕太棋聖、1敗の一力遼八段に絞られており、井山が敗れて一力が勝った場合は10日のプレーオフが予定されていた。しかし、共に好調の両者が白星を重ねる結果となり、井山が堂々の8戦全勝で挑戦権を獲得した。井山は「芝野さんは勢いも実力もある棋士なので、今回は挑戦者という立場ですし、思い切ってぶつかっていきたい」と抱負を語った。なお、今期リーグ戦の結果は、残留が一力(7勝1敗)、河野臨九段(4勝4敗)、許家元八段(4勝4敗)、羽根直樹九段(3勝5敗)、山下敬吾九段(3勝5敗)、陥落が張栩九段(2勝6敗)、村川大介九段(2勝6敗)、林漢傑八段(3勝5敗)となった。

囲碁ニュース [ 2020年8月5日 ]

アマチュア碁界 栗田佳樹さんの活躍

 第45期棋聖戦Cリーグ入りをするなどアマチュア離れした活躍をしている栗田佳樹さん。棋聖戦Cリーグ二回戦で張豊猷八段に敗れたものの、7月30日に関西棋院において中野泰宏九段に黒番中押し勝ちを収め、リーグ成績を2勝1敗とした。あと1勝でリーグ残留、2勝でBリーグ昇格とアマチュアとしてはすごい記録になる。続く相手は結城聡九段である。厳しい相手ではあるが注目の一戦である。
 栗田さんは元院生でプロ入りまであと一歩と迫ったことがある実力者で、年齢制限により院生を辞めると、外来でプロ試験を受けることもなく学業の道へと進み、現在は東京理科大学の三年である。2年前にはアマ名人戦で優勝し、当時のアマ名人であった大関稔さんを降してアマ名人になる。昨年も学生大会で活躍し多くのタイトルを獲得している。これだけ活躍していると特別採用などでプロになることはないのかという声も聞かれるが、栗田さんはプロ試験を受験できる年齢制限(23歳未満)にも達しておらず、自身も現在のところプロになる気はないとのことである。
 現在ではコロナウイルスの影響によりアマチュア大会は中止となっており、活躍の場が他に無い状況である。棋聖戦での活躍に期待したいところだ。
 そんな栗田さんはアマチュアトップクラスの一人であることは間違いないが、1強というわけではない。現在ではアマツートップとして栗田さんと並ぶライバルの大関稔さんには昨年の公式戦では四戦して4敗している。大関さんも栗田さんに負けず劣らずの活躍をしている。
 アマチュア碁界も切磋琢磨して高め合っていって欲しい。

囲碁ニュース [ 2020年7月28日 ]

コロナ禍における再開と中止

 新型コロナウイルスの影響により世の中の生活は大きく変わってしまったが、囲碁界にも大きな影響を与えた。4月、5月の緊急事態宣言により、プロの公式戦、アマチュアの大会やイベントは延期・中止という状態になり、碁会所等の囲碁施設も休業になった。緊急事態宣言解除により、プロの公式戦は再開されたが、現在の囲碁界はどうなっているのであろうか。
 碁会所では営業再開にあたり、パーテーションの設置をしているところが増え、碁石の消毒や密を避けるために碁盤の数を減らし席数を少なくして営業しているところが多い。近年では碁会所等の囲碁施設は営業が苦しくなっているところも多く、このたびのコロナウイルスの影響は大きなダメージとなっている。そのため閉店を余儀なくされる店舗も多く、店舗を移転して縮小するところや少しでも低家賃の場所を選ぶ経営者も多い。
 囲碁大会やイベントに関しても開催や中止と様々である。緊急事態宣言中にアマ三大大会(名人・本因坊・竜星)はすでに中止を発表していたが、7月27日には宝酒造杯が全会場での開催中止を発表した。高校選手権や少年少女囲碁大会といった子供大会も中止となり、延期による再開日程を発表していた女流アマ選手権も中止と再度変更になった。なんとか開催を試みようとネットによる開催を行っている大会や現在も開催を未定としている大会・イベントもある。
 囲碁施設にしてもイベントにしても開催か中止かという選択は難しいところである。
 コロナが囲碁界に与えた影響は大きく、プロアマ問わず新しい試みを行っている。今後の囲碁界はコロナに合わせてスタイルが変化していくことになるであろう。イベントを待ち望んでいるファンたちのためにも一刻も早いコロナの収束を願うばかりである。

囲碁ニュース [ 2020年7月21日 ]

碁聖戦開幕。一力、先勝

 羽根直樹碁聖に、一力遼八段が挑戦する第45期碁聖戦挑戦手合五番勝負(新聞囲碁連盟主催)が開幕した。第1局は7月18日に石川県金沢市の「北國新聞会館」にて行われ、267手まで、一力が白番1目半勝ち。悲願の七大タイトル獲得に向けて幸先のよい一勝をあげた。一力は序盤でややリードを奪うが、中盤に入り、中央と右上、右下の石が複雑に絡む戦いで羽根が盛り返し、細かい形勢で終盤に突入した。その後も羽根はピッタリ追走して逆転の機をうかがったが、一力が隙を見せず寄り切った。局後の羽根は「序盤から苦しめでした。中盤で難しくなったかなという瞬間はあったのですが、黒が形勢がよくなる局面はありませんでした」ときっぱりしたコメント。第2局に向けての抱負を尋ねられると、少し間をあけた後に「精一杯やるしかないですね」と応えた。一力は「ミスが多かったので内容的には反省しています」と謙虚に振り返った後、「まずは1局勝つことができてよかったです。次局以降も、気を引き締めて頑張ります」と抱負を語った。第2局は、8月3日に愛知県名古屋市「日本棋院中部総本部」で行われる。

フィトラ初段と曽初段、そろってデビュー

 今年4月に「外国籍特別採用」で入段を果たしたフィトラ・R・S(フィトラ ラフィフ シドキ)初段と曽富康(チャン フーカン)初段が、7月20日行われた竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)予選で、そろってプロ手合いにデビューした。フィトラ初段は2002年生まれのインドネシア出身。本因坊リーグ経験もある横塚力七段との一戦に、「胸を借りる気持ち」で臨んだ。横塚は「序盤はここに打たれた嫌だなという所ばかりに打たれて、AIと打っているようでした。強い!という印象で、後半がんばらなければなと思って打っていました」と振り返る。結果は横塚の中押し勝ちとなった。フィトラは「ここ(対局場)にきて、どうすればいいかとか緊張しちゃったけど、対局がはじまると集中して打てた」とのこと。「自分なりの手を打てたのではないかと思いますけど、いい手かどうかはまた別なので。デビュー戦でしたので勝ちたかったけど、実力が足りなかったです」と、手応えと悔しさを感じさせるコメントだった。曽富康(チャン フーカン)初段は2003年生まれ。マレーシア出身で洪清泉四段門下だ。武宮陽光六段との一戦は惜しくも半目負けとなった。「中盤からチャンスがあったような気がするが、逃して、計算できなかったのが残念」と悔やんだが、「初めての手合いだし、楽しかった」、「思ったより緊張せず、普通に普段どおりに打てました」と堂々とデビュー戦を振り返っていた。

フィトラ・R・S初段
曽富康初段

囲碁ニュース [ 2020年7月14日 ]

本因坊文裕、史上2位タイ、9連覇達成

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)が3勝、挑戦者の芝野虎丸名人が1勝で迎えた第75期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第5局が、7月8、9の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」にて行われた。243手まで、井山が白番4目半勝ちを収め、本因坊位を防衛。二十二世本坊秀格(高川格)に並ぶ史上2位タイの9連覇を達成した。序盤は互角の形勢で進行したが、下辺の白模様を広げられたあたりで、芝野に後悔があったようだ。芝野の封じ手は、その白模様に味をつける方針だったが、井山は「(下辺の黒1子から)直接動いてくる手を予想していた」と振り返り、展開に自信を持ったことが伺える。その後、下辺を大きくまとめて形勢が白に傾くと、最強手を打ち続ける井山の姿勢を貫き、つけ入る隙を与えず寄り切った。芝野は「(2日目の封じ手以降について)予定の進行でしたが、もうちょっと工夫しなければいけなかった気がします」と振り返り、「第3局までがかなり悪い内容だったので、しょうがないと思いますが、もう少しいい碁を打ちたかったという気持ちもあります」とシリーズの戦いぶりに反省の弁を残した。井山は今シリーズについて「最強の芝野さんを相手にベストを尽くして、いい結果を出せたのは嬉しく思います」、9連覇については「ひとつひとつ、ぎりぎりの勝負で、よくここまでこられたなと思う」と喜びを語った。そして「趙(治勲)先生の10連覇は子供の時に見ていて、チャンレンジできるとは夢にも思っていなかったです。せっかくのチャンスなので、レベルアップして臨めるようにしっかり準備したいと思います」と来期の記録達成を誓った。

囲碁ニュース [ 2020年7月8日 ]

芝野、史上最年少三冠

 村川大介十段を挑戦者の芝野虎丸名人がカド番に追い詰めて迎えた第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第4局は、26日に東京都千代田区の日本棋院で行われ、141手まで、黒番芝野が中押し勝ちを収めた。この瞬間、伊田篤史八段の持つ21歳1カ月の記録を塗り替える最年少十段が誕生した。また、20歳7カ月での「三冠」(名人・王座・十段)達成も、井山裕太棋聖の持つ「23歳1カ月」を大幅に更新する最年少記録となった。
 対局は、中盤に芝野のミスがあり村川が優勢に立った。しかし、その後に今度は村川にミスが出て逆転を許す。これが、タイトルを明け渡すつらい敗着となった。村川は「終盤はもっと粘り強く打たなければいけなかった」と悔やんだ。芝野は「結果については素直にうれしいですが、内容的には満足できないところがあるので、反省のほうが強い」と謙虚にシリーズを振り返り、「最年少記録についてはあまり考えていませんでしたが、こういう記録はうれしいことなので、それを励みに頑張ろうと思う」と語った。

一力が挑戦権獲得

 羽根直樹碁聖への挑戦権をかけた、第45期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)挑戦者決定戦が、6月29日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。この大一番に勝ち上がってきたのは、35期以来の五番勝負出場を期す張栩九段と、勝てば碁聖戦では初挑戦となる一力遼八段。張が勝って「四天王対決」再現となるのか、一力が悲願の七大タイトル獲得に向けて大きな一段を上るのか、大いに注目された。結果は、中盤の勝負所でリードを奪った一力の白番4目半勝ち。約1年半ぶりに一力がタイトル戦の舞台に登場することとなった。一力は、「(2年前の王座戦挑戦から)ずいぶん時間をあけたなというのが率直なところ。タイトル戦に帰ってこられたので、ぜひこのチャンスを生かしたい」と抱負を語った。一力の七大タイトル挑戦は6度目だが、井山裕太棋聖以外のタイトルホルダーに挑むのは初めてとなる。悲願達成はなるか。羽根碁聖との五番勝負第1局は、7月18日、石川県金沢市の「北國新聞会館」で行われる。

芝野、1勝を返す

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)の怒涛の三連勝で迎えた第75期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第4局が、6月30日、7月1日に静岡県河津町の「今井荘」にて行われ、166手まで、挑戦者の芝野虎丸名人が、白番中押し勝ちを収めて1勝を返した。十段を獲得し、井山と並ぶ「三冠」となった芝野は、対局前「井山先生を倒すということよりは、自分がもっと強くなって井山先生にとって良い相手になれるといいかなと思っています」と謙虚に語って本局に臨んだ。前3局はいずれも一日目から井山がリードを奪った。本局も「黒優勢」の局面となったが差はわずか。芝野の鋭い踏み込みから難解な戦いに突入した。終盤に入り、盤測の検討陣からは「いい勝負だが、黒が薄いので、黒のほうが打ち方が難しい」との声が聞かれた。互いに秒読みに突入する大熱戦の末、芝野がねじり合いを制した。「ヨセに入ったところでも足りないかと思っていました。一つ勝って安心しました」と芝野。井山は「途中まで流れは悪くないと思っていましたが、終盤でダメなコースに入ってしまった」と振り返った。注目の第5局は、7月8、9の両日、三重県鳥羽市の「戸田家」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年6月25日 ]

芝野、三冠に王手

 村川大介十段に芝野虎丸名人・王座が挑戦している第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)が、約3カ月ぶりに再開され、1勝1敗で迎えた第3局が、6月17日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。序盤から積極的な打ち回しを見せた村川が、下辺で芝野の後悔の一手を捉えてリードを奪う展開となったが、中盤の勝負所で、今度は芝野が村川の一瞬の隙を捉えて逆転。176手まで、芝野が白番中押し勝ちを収めた。角番に追い詰められた村川は、「右辺の白を攻めにいったのですが、黒も薄く、(白からの)見えていない手があった」と振り返る。対局中、中座してマスクを交換する時間があり、慣れない対局環境も心配された。かたや芝野は「下辺でうまくやられて、はっきり悪くなった。白は3カ所薄いので大変かなと思っていた」と振り返りつつ「その後しっかり粘り強く打てたので、この調子で次もがんばりたい」と語った。また、「(タイトル奪取まで)あと1勝ということより、6月に対局が再開して初めて勝てて、だいぶ安心しました」とも振り返った。本因坊戦七番勝負も同時進行するハードな日程の中、第4局は26日に東京都千代田区の日本棋院で打たれる。

鈴木歩女流棋聖、今年2棋戦目の挑戦者

 藤沢里菜女流立葵杯への挑戦権をかけた、第7期会津中央病院・女流立葵杯の本戦準決勝が6月20日、決勝が21日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。例年、福島県会津若松市にて和服姿での対局が恒例となっている同棋戦も、新型コロナウイルス感染予防のため、対局地が移された。準決勝2局は、共に大接戦となり、岩田沙絵加初段が牛栄子二段に、鈴木歩女流棋聖が謝依旻六段にそれぞれ半目勝ちして決勝に駒を進めた。岩田は、1回戦の上野愛咲美女流本因坊に続いての殊勲の星をあげ、台風の目となるか注目されたが、翌日の決勝戦では、実力者・鈴木の壁を越えられなかった。終局は14時8分。残り時間は岩田が4分。鈴木が38分残しての白番中押し勝ちとなった。鈴木は今年、女流棋聖戦に次ぐ挑戦権獲得で充実ぶりがうかがえる。藤沢との挑戦手合三番勝負は、7月27、29、31日に東京都千代田区の日本棋院にて打たれる。

本因坊文裕、三連勝

 本因坊文裕(井山裕太棋聖・本因坊・天元)に芝野虎丸名人・王座が挑戦する第75期本因坊戦挑戦手合(毎日新聞社主催)の第3局が、6月22、23日に、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われ、172手まで、白番井山が中押し勝ちを収めた。開幕からの3連勝で、史上2位タイとなる9連覇にあと1勝と迫った。井山は序盤から積極的な構想を見せ、1日目を終えた時点で解説の結城聡九段が「井山さんが一本取って、芝野さんがつらい戦いを強いられています」と評するように、優勢に立った。2日目に入り、芝野が盛り返して一時は互角となるが、右辺から仕掛けて右下の黒を大きく荒らすと、逆に左下に入ってきた白を正確に仕留めて勝負を決めた。井山は「2日目に中央を突き抜かれて悪くなっていてもおかしくなかった。左下を取りかけにいった時もはっきり読み切れていなかった。まずいミスもあったので修正して次局に臨みたい」、芝野は「1日目でかなり白地が多い展開になったので、ちょっと苦しいかなと。2日目に中央を突き抜いて難しくなったと思っていたが、右下隅を生かしてちょっと大変にしてしまい、攻めの打ち方をしないとダメだった。結果はそんなに気にせず、次局もいい碁が打てるようにがんばりたい」とそれぞれコメントを残した。第1、2局に続き、本局も井山の快勝譜。改めて、シリーズ前の「(対局休止・延期中に)いい充電ができた」という井山の言葉が思い返される。一気に防衛を決めるのか、芝野が反撃の狼煙をあげるのか、注目の第4局は、6月30日、7月1日に、静岡県河津町の「今井荘」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年6月18日 ]

本因坊文裕、二連勝

 本因坊文裕(井山裕太棋聖・本因坊・天元)に芝野虎丸名人・王座が挑戦する第75期本因坊戦挑戦手合(毎日新聞社主催)の第2局が、6月12、13日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。結果は143手まで、井山が黒番中押し勝ちを収め、開幕二連勝とした。一日目から、井山が積極的な打ち回しを見せ、検討陣からは「黒持ち」の声が多く聞かれた。芝野は「右上の打ち方が重かったかなと。予想以上に形勢がよくなかった」と振り返った。二日目に入り、芝野は「ただ、黒もまとめ方が難しいので、粘り強く打てればいいと思っていた」というが、井山の充実の打ち回しで勝機が見えない。井山の「右下を生きて、中央がそんなにひどい目に合わなければ、少し地合いではリードしているかなとは思いました」の言葉通り、リードを維持したまま、午後4時14分という早い終局を迎えることとなった。芝野は「この2局目と1局目は少し一方的な内容になってしまっていると思うんですけど、切り替えてまたがんばりたいですね」と語り、井山は「まだまだこれからですので、これまで通り、自分の力を出し切れるように精一杯がんばりたいと思います」と気を引き締めた。第3局は、22、23日に、兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年6月12日 ]

アマ棋戦優勝経験者リーグ

 緊急事態宣言により多くのアマ大会やイベントが中止となる中、ネットを使用した活動がプロアマ問わず盛んに行われていた。その中で注目を集めていたのがアマ棋戦優勝経験者リーグである。昨年のアマ名人・本因坊の大関稔さんの発案により4月18日から開始され6月6日まで10人のトップアマによる総当たりリーグがインターネット囲碁対局サービス「野狐」で行われた。
 参加者は以下の通りである。

大関稔  (アマ名人・アマ本因坊)
栗田佳樹 (ネット棋聖・学生本因坊・学生十傑・棋聖戦Cリーグ入り)
李章元  (元中国棋院プロ棋士、2017年度宝酒造名人)
森川舜弐 (アマ竜星、世界アマ日本代表)
柳田朋哉 (赤旗名人、2016年度~4連覇中)
石田太郎 (学生王座、2017年度ネット棋聖)
星合真吾 (学生最強位、2017年度学生十傑)
岡田健斗 (宝酒造名人、2018年度学生本因坊)
山田真生 (2018年度学生最強位)
杉田俊太朗(2017年度学生最強位)

 これだけのメンバーの中でも大関さんや栗田さんは注目されたが、8連勝の無傷で最終局を迎えた山田真生さんと1敗の李章元さんによる直接対決を李さんが制し、同星の直接対決により李さんが優勝。元プロの意地を見せつけた。

 発案者の大関さんは「コロナ禍で今年度の主要大会が全て中止となってしまったので、私を含めたアマチュア上位層の、囲碁に対するモチベーション維持が目的」とアマチュア囲碁界を牽引する立場としての思いを見せた。さらに今回のリーグ戦を終え、「やった側としては、ネット対局ながらアマチュアの一流と対局できたということで満足度は高かった。参加者の方も日程の調整が大変だったと思いますが、真剣に打たれていましたし、楽しめていたのではないでしょうか」と達成感を語った。しかし、観せるという立場からは宣伝が足らなかったとも語っており、選手としてだけでなく企画者としての責任も感じさせた。
 第2回も開催されるということで、今回最下位であった岡田さんが陥落、都合により不参加となった星合さんと2人が抜け、最年少アマ本因坊の記録を持つ林隆羽さんと学生最強位優勝経験のある石村竜青さんが参加となる。

囲碁ニュース [ 2020年6月10日 ]

本因坊戦開幕。文裕が先勝

 第75期本因坊戦挑戦手合(毎日新聞社主催)がいよいよ開幕した。第1局は、6月2、3日に山梨県甲府市「常盤ホテル」で行われ、182手まで、本因坊文裕(井山裕太棋聖・本因坊・天元)が、挑戦者の芝野虎丸名人・王座に白番中押し勝ちを収めた。3冠対2冠という日本囲碁界の2強が激突するシリーズをファンは待ちわびていたことだろう。対局休止の期間を振り返り、井山は「いい充電はできた。相手がどうこうより、自分のベストを尽くすことを最優先に考える」、芝野は「久しぶりの手合いなので楽しみですが、碁盤対局も久しぶりで、持ち時間も長いのでなんとなく不安なところもあります。井山本因坊との対局はどれも難しい碁ばかりだったので、集中力を切らさず、最後まで打ち切りたい」と語って、それぞれ勝負に臨んだ。対局地は、昨年の王座戦五番勝負の第2局、第3局で両者が戦った場所でもある。今回は、対局室に入る関係者も含め、マスク着用と検温が義務づけられるなど、新型コロナウイルス感染予防が徹底されての対局となった。
 序盤、右上での険しい競り合いで、井山がややリードを奪ったようだ。二日目に入り、井山が「(下辺での黒の)ハネ出しが厳しい狙いだった」と振り返った芝野の一手から勝負所を迎える。芝野の厳しい攻めに対して、右下の白の大石を捨てて左辺に模様を築いた井山の大局観が素晴らしく、一気に白優勢の局面となる。その後、芝野が左辺に入り、手順を尽くして見事にシノぐ見せ場を作ったものの逆転には至らず、投了を告げるところとなった。井山は「七番勝負は始まったばかり。次も悔いのないように打つ」、芝野は「後悔する手はなかったので、次を頑張れれば」と落ち着いたコメントを残した。第2局は、12、13日に東京都千代田区の日本棋院にて行われる。開催地は北九州市「小倉城庭園」が予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大が続いているために変更された。7月13、14日の第6局を北九州市で行うことが検討されているという。

囲碁ニュース [ 2020年6月4日 ]

日本勢、1回戦で姿を消す

 政府の緊急事態宣言の解除を受け、日本棋院、関西棋院ともに公式棋戦の対局再開を発表し、再開初日の6月1日、第25回LG杯朝鮮日報棋王戦(朝鮮日報社主催)の本戦1回戦が打たれた。当初は、主催の韓国内で対面での対局予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により移動が制限され、インターネット対局に変更。日本勢は東京都千代田区の日本棋院にて、パソコンに向かっての公式戦となった。
 本棋戦・本戦には、日本、韓国、中国、中華台北(台湾)の32人が出場し、日本からの参戦は村川大介十段、一力遼八段、許家元八段、孫喆七段、大西竜平五段の5人。井山裕太棋聖、芝野虎丸名人は、翌2日に開幕の本因坊戦七番勝負に専念するため辞退した。
 非公式ながらランキング世界一位の常連、朴廷桓九段と一力遼八段の対戦が注目されたが、170手まで白番朴の中押し勝ち。一力は「朴さんとの対戦は楽しみにしていたのですが、残念です」と話し、対局が中断されていた期間の調整を「難しかった」と振り返った。他の日本勢4名も韓国選手との対戦が組まれたが、次々と敗れ、唯一人、細かい碁となった大西五段も惜しくも半目負け。日本勢は1回戦で姿を消すこととなった。

囲碁ニュース [ 2020年5月29日 ]

公式戦、対局再開!

 政府の緊急事態宣言が発令されたことを受け、4月8日から全ての公式対局が延期・休止されていたが、5月25日に左記発令が解除されたことを踏まえ、5月26日、公益財団法人日本棋院は、「感染防止対策をとってうえで、6月1日以降、対局を再開することを決定しました」と発表した。対局棋士の検温対応、対局棋士のマスク着用、対局室の換気、対局数を制限し密にならない対応などの対策をとるという。

タイトル戦も次々再開

 日本棋院の対局再開の決定を受け、延期されていたタイトル戦も次々対局日が決定している。
 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に芝野虎丸名人が挑む第75期本因坊戦挑戦手合第1局(毎日新聞社主催)は、6月2、3日に山梨県甲府市「常盤ホテル」で行われる。村川大介十段に芝野虎丸名人が挑戦している第58期十段戦(産経新聞社主催)も1勝1敗のまま中断されていたが、再開が決定。6月17日に第3局、26日に第4局が、それぞれ東京都千代田区の日本棋院で行われる予定だ。また、世界メジャー棋戦である第25回LG杯(朝鮮日報社主催)の1、2回戦は、コロナウイルスの感染を考慮して移動を制限し、ネット対局で行われることになった。日本代表はシードの村川大介十段、一力遼八段、許家元八段、国内予選を勝ち抜いた孫喆七段、大西竜平五段の5人。いずれも1回戦は主催国・韓国の棋士で、一力八段は朴廷桓九段との対戦が決まっている。1回戦は6月1日、2回戦は5日と8日に、いずれも東京都千代田区の日本棋院で打たれる。

囲碁ニュース [ 2020年5月27日 ]

緊急事態宣言解除

 5月25日、緊急事態宣言の解除が発表された。4月に発令された緊急事態宣言は囲碁界にも大きな影響を与えた。碁会所や囲碁サロン等は自粛により店を閉め、オンラインによる営業や教室、指導碁が行えるところは移行していったが、閉店を余儀なくされた店舗も少なくない。日本棋院においても営業自体は緊急事態宣言が出される前に3月頭から自粛していたが、緊急事態宣言によりプロの公式戦が延期になるなどした。それによりネットやオンラインによる様々なイベントが催された。それはプロのみならずアマチュア、囲碁ファンもネット中心に囲碁に触れてきた。
 そしてこの度、緊急事態宣言が解除されたが、これからの囲碁界はどのようになっていくのだろうか。
 6月よりプロの公式戦は再開され、碁会所や囲碁サロンも営業再開をしてくる。しかし、これまで通りの環境で打てるのだろうか。密にならないように一定の距離を保つということで飲食店等は席の数を減らしたりしているが、囲碁界でも同じことが行われていくのだろうか。対局のときは対面になるため他の業種のようにはいかないようでもある。囲碁では(将棋などもそうであるが)自粛期間に行われていたようにネットを活用するということが可能であるが、AIの登場によりネット対局もやり難い。さらに対面での対局がしたいという声も多く聞かれる。そんな中での活動再開。プロの公式戦のみでなく、延期となっていたアマチュアの大会を夏ごろに行う考えも出てきているようである。しかし、喜びの声とともに不安の声があるのも事実である。
 今後、囲碁界はどのような方針をとっていくのであろうか。また、どのようにしていくべきであろうか。囲碁界に明るい未来が来ることを願っている。

囲碁ニュース [ 2020年5月12日 ]

本因坊七番勝負の延期が決定

 新型コロナウイルス特措法に基づく政府の緊急事態宣言が延長されたことを受け、日本棋院と関西棋院は5月8日、第75期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第1局(12日、13日)と第2局(25日、26日)を延期すると発表した。9連覇を目指す本因坊文裕(井山裕太棋聖・本因坊・天元)と、本因坊戦は初の挑戦となる芝野虎丸二冠(名人・王座)との頂上決戦は、当初6月2日、3日に甲府市で行われるはずだった第3局を第1局として開幕する予定だという。

芝野チームが優勝! ゴールデンパンダ賞は六浦七段

 「囲碁ファン応援企画」としてスタートした日本トップ棋士によるスペシャルイベント「平成パンダ合戦~ゴールデンパンダは誰だ?~」(パンダネット主催)の後半戦が、5月7、8日に行われた。二連勝中の余正麒八段がさらに星を伸ばして四連勝とし、井山チームは早くも全滅。続いて広瀬優一四段が余の連勝を止め二連勝するも一力遼八段に敗れた。一力は二連勝して結局全員が舞台に登場することとなり、最終局は一力と芝野虎丸名人の決戦となった。激しい攻防のなか、一力が左下を捨てて鮮やかなフリカワリに。その後は一力の攻めと芝野のシノギという流れとなったが、見事にシノギきった芝野が中押し勝ちをおさめ、チームを優勝に導いた。また、ゴールデンパンダ(MVP)は、対井山裕太三冠戦を含めて四連勝を飾った六浦雄太七段に決まった。賞金は優勝チームに50万円、準優勝チームに25万円、第3位チームに15万円。ゴールデンパンダ賞には10万円が贈呈された。

囲碁ニュース [ 2020年5月7日 ]

井山、非公式の世界戦で準優勝

 中国の対局サイト「野狐囲碁」主催によるネット棋戦「第1回野狐人気争覇戦」(優勝賞金50万元=約800万円)決勝三番勝負の第3局が4月22日に打たれ、中国の童夢成八段が日本の井山裕太九段に黒番3目半勝ちを収め、非公式戦ながら世界一の座を勝ち取った。井山は惜しくも準優勝となった。同棋戦は32名による変則トーナメント戦で、同サイトのランキングが下位の棋士ほど対局数が多い。井山は1回戦からの参加で、決勝戦までに世界戦優勝経験者3名を含む7名の中国トップ棋士と対戦し8連勝(準決勝は三番勝負)。優勝は逃したものの存在感を示した。童は「井山さんは乱戦のなかで勝ちをつかみ取るタイプ。できるだけ相手のペースにならないように努力しました」と語り、「2局目は逆転できると思っていませんでしたので、幸運でした。今日の碁は割とよく打てた」と振り返った。勉強のつもりで参加したという井山は「強い相手ばかりの大会で決勝まで勝ち上がり自信になった。第三局は時間を使わされる展開になり…残念ですが、今の自分なりに精いっぱいやった結果ですので、受け止めて次につなげたい」と語った。

一力、ベスト4ならず

 第4回夢百合杯世界オープン戦(中国囲棋協会、中国棋院主催)の準々決勝が、予定されていた3月から延期され、4月27日に行われた。日本勢で唯一人ベスト8入りを果たしていた一力遼八段と中国の謝科八段の一戦のみ、ネットでの対局だった。「世界戦優勝」を常に目標に掲げる一力だが、黒番中押し負けとなり、準決勝に駒を進めることはかなわなかった。「序盤に悪くして大変な碁になりました。がんばって難しい形勢にしたと思ったのですが」と無念のコメントを残した。

「平成パンダ合戦」開幕!

 パンダネットで日本トップ棋士による夢の競演企画がスタート。ゴールデンウイークのスペシャルイベント「平成パンダ合戦からゴールデンパンダは誰だ?~」が5月3、4日に行われ、7、8日に引き継がれる。
井山裕太棋聖、村川大介十段、伊田篤史八段、鈴木伸二七段、謝依旻六段
一力遼八段、許家元八段、余正麒八段、本木克弥八段、藤沢里菜女流立葵杯
芝野虎丸名人、六浦雄太七段、大西竜平五段、広瀬優一四段、上野愛咲美女流本因坊
という豪華な15名による5名1チームの団体戦で、農心杯方式で争い、「パンダネット」のシステムを使ってライブ中継された。
 初戦は、伊田VS許。勝者の許が次局で六浦と対戦。勝者の六浦は、続いて謝、藤沢にも勝ち連勝を続けた。ここでチーム三番手に何と井山が登場。連勝を止めるかと思われたが、六浦は劇的な一戦を制して4連勝とした。六浦の連勝を止めたのは余だった。余は鈴木にも勝利して、2日目が終了した。また、対局の解説はYouTubeチャンネルで星合志保二段、柳沢理志五段が交代で務め、ここに余や下島陽平八段らが電話で参加するなどしてファンを楽しませた。2日間を終え、井山チームは村川の1人のみと苦しい状況に。一力チームは一力、余、本木の3名、芝野チームは芝野、大西、広瀬、上野の4名を残している。第8戦は、5月7日10時に開始される。

囲碁ニュース [ 2020年4月27日 ]

ネット、オンラインで活動

 新型コロナウイルスの影響により自粛で多くの囲碁イベントや碁会所が中止、休業を余儀なくされている。さらに緊急事態宣言の発令により日本棋院でもプロの公式戦が延期になっている。
 そんな中、ネットを使用した囲碁イベントが増加している。プロ棋士の対局や指導碁、ユーチューブによる棋士たちの動画投稿と活発に活動しているプロ棋士は多いが、この活動はアマチュアでも活発になっている。
 囲碁大会が中止になったことにより、腕を競い合うのみならず大会によって交流してきたトップアマたちが独自にネットでリーグ戦を開始し、ツイッター等のSNSで情報を公開するなど注目を集めている。また、普段は直接対面で打つことができない日本全国の愛好家たちがそれぞれ声をかけてネットやオンラインで繋がっている。碁会所もオンライン碁会所を行うなどして、店舗営業は行えないもののネットを通して常連のお客さんとのコミュニケーションを取っているところも出てきている。今回を機に今後も営業方法にオンラインを加えるところも出てきているようである。
 このようにネットを利用することによって外出自粛を乗り切ろうとする動きは多くなっているものの、やはり対面による対局ができないという辛さや不満の声も聞こえてくる。新型コロナウイルスによる外出自粛はいつまで続くのであろうか。現状を乗り切り、これまでのように碁盤を挟んで愛好者が楽しく向かいあう日が一日でも早く訪れることを祈るばかりである。

囲碁ニュース [ 2020年4月22日 ]

「ペア碁ワールドカップ2020」延期決定

 プロ棋戦の延期が続くなか、日本ペア碁協会、世界ペア碁協会、ペア碁ワールドカップ2020ジャパン大会実行委員会は、4月10日、「ペア碁ワールドカップ2020ジャパン」の延期を発表した。新型コロナウイルスの感染状況と新型コロナウイルス感染症対策本部で示された方針などを鑑みた決定。2020年7月2日(木)~6日(月)に東京都渋谷区と静岡県熱海市での開催予定だったが、2021年6月~7月頃を目途に延期され、新たな開催日程などの詳細は、決定次第、日本ペア碁協会のホームページなどで告知される。新型コロナウイルスの終息と本大会の目的でもある「ペア碁で世界平和を叶える」時の実現が待たれる。

非公式の世界戦、井山敗れ1勝1敗に

 非公式戦ながら、井山裕太棋聖の優勝がかかる世界戦決勝三番勝負に注目が集まっている。中国の対局サイト「野狐囲碁」のランキング32位までの棋士が参加するネット棋戦「第1回野狐人気争覇戦」(優勝賞金50万元=約800万円)の決勝三番勝負の第2局が、予定されていた2月12日から延期され、4月14日に打たれた。同サイトランキングが30位の井山は1回戦から参戦して8連勝し、中国の童夢成八段(23)との決勝三番勝負に進出。1局目を半目勝ちで制して9連勝としていた。第2局は、井山が大阪、童が北京からネットで対局。中盤まで井山のペースでリードを奪っていたが、ヨセで逆転を許して惜しくも半目負けとなった。最終局となる第3局は、22日に打たれる。

囲碁ニュース [ 2020年4月14日 ]

緊急事態宣言を受け、各棋戦、挑戦手合が延期

 新型コロナウイルス特措法に基づく政府の緊急事態宣言が発令されたことを受け、日本棋院と関西棋院は、4月8日以降の対局を当面の間、延期・休止することを決めた。村川大介十段に、芝野虎丸名人・王座が挑戦する第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)も、4月16日に予定されていた第3局、ならびに第4局、第5局が延期されることとなった。実施時の日時、対局地については、現在は未定。今後の情勢を鑑み、主催の産経新聞社、日本棋院、関西棋院にて、協議するという。また、5月14~16日に予定されていた第11回おかげ杯囲碁トーナメント戦(株式会社濱田総業協賛)の延期も決まった。第68回NHK杯テレビ囲碁トーナメント戦(日本放送協会主催)の対局収録も休止となった。
 棋士たちの間では、井山裕太三冠の呼びかけによりネット上での研究会が開かれたり、若手トップ棋士15名による「平成生まれ 世代別対抗戦」と題された団体戦を開催するなど、研鑽とファンサービスのための企画が精力的に展開されている。

囲碁ニュース [ 2020年4月7日 ]

芝野、初の本因坊挑戦

 第75期本因坊リーグ戦(毎日新聞社主催)は、4月3日に最終一斉対局が行われ、芝野虎丸名人と許家元八段の2名が6勝1敗というトップの戦績でシリーズを終えた。そして、両名によるプレーオフが、4月6日、東京都千代田区の日本棋院で打たれ、芝野が黒番中押し勝ち。昨年(プレーオフにて河野臨九段に半目負け)の雪辱を遂げ、本因坊文裕(井山裕太本因坊)への挑戦権を獲得した。
 勝負は、「難しいながらも白ややよし」の声も聞かれたが、持ち時間を余していた芝野が最後には勝利を手繰り寄せた。惜敗の許は「ずっと入りたかった本因坊リーグで、自分なりに力を出せました」とシリーズを振り返り、「コウ争いの時は、正しく打てれば……と思っていましたが、難しかったです。挑戦はできませんでしたが、自分なりに精一杯打てました」とコメント。芝野は「途中で負けの図があったので、挑戦者になれたのは運がよかったです。井山先生とは大変な対局になりますが、楽しんでやりたい」と喜びを語った。
 井山は今季防衛すれば9連覇となり、趙治勲名誉名人の持つ10連覇の大記録にあと一歩と迫る。また、芝野が奪還すれば、現在進行中の十段と合わせて「四冠」となる可能性もある。囲碁界の歴史がどう動いていくのか、大いに注目される頂上決戦は、5月に開幕。七番勝負第1局が、5月12、13の両日に、群馬県高崎市の旧井上房一郎邸で打たれる予定だという。

囲碁ニュース [ 2020年3月31日 ]

アマチュア初、栗田佳樹さんが棋聖Cリーグに参戦

 昨年、アマチュアの「ネット棋聖戦」で二連覇を飾った栗田佳樹さんが、第45期棋聖戦(読売新聞社主催)のCリーグ入りを果たす快挙を達成した。
 「ネット棋聖戦」の上位4名が、棋聖戦FTへの出場資格を獲得できるシステムは、第40期棋聖戦からスタートした。以来、アマチュア勢は2回戦の壁を突破できず、昨年の第44期で杉田俊太朗さんが3回戦に勝って準決勝に進んだのが最高の戦績だった。
 栗田さんは「昨年は1回戦で小山空也さん(四段)にボコボコに負けているのに、まさか今年こんなところまで来られるとは全く思っていませんでした」と話す。三回戦で元本因坊の趙善津九段に「奇跡が起きて」(栗田)半目勝ちしてから勢いに乗ったようだ。
 Cリーグは、3敗した時点で陥落が決まり次局は打てないが、逆に言えば負け続けても3局打つことができる。「自分の力がどこまで通用するか、ということより、強い人と打って勉強したいという気持ちが大きい」と話し、今年4月には東京理科大学の3年生となるため「就職したら、こういう棋戦にはなかなか出られないと思うので、貴重な機会です」と喜ぶ。そして、「勝敗は意識せず、一局一局楽しみ、少しでも自分の将来の役に立つような碁を打てれば」と抱負を語った。
 注目の初陣は、4月2日に行われる。一局目の対戦相手は望月研一八段だ。

囲碁ニュース [ 2020年3月30日 ]

イベント・大会、延期・中止相つぐ

 2月より新型コロナウイルスの影響により囲碁界でもイベントや大会の延期・中止が相ついでいる。日本棋院や関連の施設でも3月より営業を休止、院生研修も休みとなっている。プロの手合いでも通常の対局室のみでなく、席を離し、階をわけるなど普段と違った様子となっている。ワールド碁チャンピオンシップ等の国際戦は日程未定の延期、プロペア碁戦やタイトル戦等、対局自体は行われたものの大盤解説会は中止となった。
 アマチュア大会に関しても2月末のジャンボ囲碁団体戦でマスク着用、アルコール消毒液設置という中で行われたが3月に入っては1日に行われたこどもチャンピオン戦の予選のみで全て延期・中止となっている。日本棋院を会場としたもののみならず宝酒造杯の各地区やジュニア本因坊戦の全国大会等も中止となっている。3月は大会やイベントが多く学生の大会やペア戦も中止となっている。全国大会では女流アマ選手権も予定されていたが、これら各大会に参加を予定していた方も中からは「残念でならない」という声も聞かれた。そんな中、こどもチャンピオン戦の全国大会のみが京都で行われたが、参加のこどもたちがマスクをつけてと異様な光景であった。
 大会等のイベントのみならず碁会所等の囲碁を打つ会場の営業が大変苦しくなっている。営業を自粛したりしなければならなくなり大きなダメージだという。これにより廃業に追い込まれるところは増えてくるのではと思われている。
 そんな中、ネットを使用した囲碁講座やイベントも行われるなど、新たな試みがはじまっている。
 コロナウイルスはいつまで続くのだろうか。この影響により囲碁界も苦しくなっているが、なんとか乗り越えて欲しい。早い終息を心から願うばかりである。

囲碁ニュース [ 2020年3月27日 ]

井山、三度目のNHK杯優勝

 3月22日、第67回NHK杯テレビ囲碁トーナメント戦(日本放送協会主催)の決勝戦が放映された。決勝戦に勝ち上がったのは、一力遼NHK杯選手権者と昨年準優勝の井山裕太三冠。二年連続の決勝戦同一カードは、NHK杯史上初で、両者の安定した強さを物語っている。注目の一戦は、序盤の左上の攻防で井山がポイントをあげると、その後も緩まず、一力に立て直す隙を与えない展開に。一力が無念の投了を告げるところとなった。井山は「一力さんは早碁の成績も抜群なので、今回はチャンレンジャーの気持ちで臨みました。決勝戦は自分らしく戦え、満足しています。4年連続でこの(決勝戦の)舞台で戦えていること自体が自分にとっては出来過ぎ。来期も一局一局精一杯打ち、少しでも大会を盛り上げられるようにベストを尽くしたいと思います」と優勝の喜びと抱負を語った。一力は「序盤で誤算があって、かなり内容的にまずい碁になってしまったので、悔いが残り、視聴者の方に申し訳ないという気持ちはあります」と振り返り、「来期は、一からのスタートになりますので、内容のいい碁を視聴者の皆さんにお見せできるように、またがんばりたいと思います」と抱負を語った。

村川十段、一勝を返しタイに

 村川大介十段に芝野虎丸名人・王座が挑戦する第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第2局が、3月26日、大阪府大阪市の「関西棋院」で行われた。310手の熱戦は、村川十段が白番2目半勝ちを収め、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した。対局は、黒の実利と白の模様という立ち上がりから、上辺で両者の気合いがぶつかる険しい競り合いに突入した。互いの死活が絡む複雑な戦いが続き、形勢互角のまま終盤戦へと進んだ。その後、村川が、芝野の一瞬の隙を突いてリードを奪ったようだ。村川は「中盤にもっと厳しく打つべきところもありました。半目勝負と思っていましたが、とりあえず一つ勝ててホッとしました」と安堵の笑顔を見せた。芝野は「経験したことのない布石で中盤以降は苦しかった」と振り返り、「まだ負け越しているわけではないので、次も今まで通り打ちたいです」と淡々と語った。第3局は、4月16日に長野県大町市「ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2020年3月18日 ]

本因坊リーグ戦、許が一歩リード

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)への挑戦権をかけた第75期本因坊リーグ戦(毎日新聞社主催)が、佳境に入っている。8名の総当たり戦で争われる本リーグは、5回戦を終えた時点で、「令和三羽烏」と呼ばれる芝野虎丸名人、一力遼八段、許家元八段が1敗でトップを並走。3月12日に、一力と許の直接対決が組まれた。両者の対戦成績は、ここまで一力の8勝1敗と偏っている。この偏りについて、一力は「成績ほど差があるとは全然思っていない。逆の成績でも全然おかしくはない」、許は「そんなに気にはしていないが、やはり壁を感じています。どう克服するのかが当面の課題」と語っていた。本局は、中盤、一力に珍しく失着があり、白番の許が優勢となった。その後一力が必死の追い上げを見せ、終盤の死活がからむ勝負所を迎えた。ここで一力が決め手を逃し許の中押し勝ち。許が1敗を守り、挑戦者争いのトップに躍り出た。最終局の相手は許が志田達哉八段、一力は河野臨九段。そして芝野の残り二局の相手は、山下敬吾九段と横塚力七段。最終的には誰が挑戦権を掴むのか、今後の進展が注目される。

囲碁ニュース [ 2020年3月11日 ]

井山棋聖、8連覇達成

 井山裕太棋聖の三連勝に続いて河野臨九段が二連勝して迎えた第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第6局が、3月5、6日の両日に山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われた。序盤から戦いの碁となった本局は、形勢互角のまま一日目を終えた。二日目、最大の勝負所となった中央で、井山が最強手を放つと、その後、河野に読み落としがあり、一気に形勢が傾いた。井山が、敗れた二局も含め、一貫して最強手を選択する姿勢を貫いたシリーズとなった。262手まで、白番の井山が3目半勝ちを収め、棋聖防衛を果たした。棋聖8連覇は、小林光一名誉棋聖の持つ連覇記録に並んだ。河野は、「勝負所で読み落としがあるようでは、勝てません」と言葉少な。連勝してシリーズの流れを呼び込みたかったが、無念の敗退となった。対局前、「記録は意識していない」と話した井山だが、「光一先生の記録に並べたことは光栄です。シリーズの途中は、連覇のことを考える余裕はなかったのですが、8年間を振り返ると、よくできたものだなと思います」としみじみ語った。また、「最近は若手が台頭して碁界が盛り上がっている。若い人たちと先輩たちとも、共に高め合っていけるよう、これからも精一杯がんばります」と、第一人者としての抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2020年3月4日 ]

河野、二勝目

 井山裕太棋聖三連勝の後、挑戦者の河野臨九段が一勝を返して迎えた第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が、2月26、27日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、現地の大盤解説会は中止されたが、盤上は熱戦が繰り広げられた。一日目に井山がわずかにリードを奪い、二日目の開始早々の河野の緩着でその差が大きく開く展開に。しかし、河野は勝負手を繰り出し、辛抱強くチャンスをうかがい、最後は読みの正確さで井山を上回って逆転を果たして白番中押し勝ちをおさめた。井山は「負けた二局はいずれも、打ちやすくなってからの打ち方に問題が多かった。次局はいいパフォーマンスができるよう努力したい」と反省のコメント。河野は「七番勝負の後半戦と呼べるところまでつなげることができてホッとしています」と笑顔を見せ、「今までどおり、一生懸命やるしかありません」と語った。井山が8連覇を決めるのか、シリーズの流れを引き寄せ河野が3勝目をあげるのか――注目の第6局は、3月5、6日の両日に山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われる。

奥田あや四段・村川大介十段ペアが優勝

 「プロ棋士ペア碁選手権2020」(公益財団法人日本ペア碁協会主催)の準決勝戦、決勝戦が、3月1日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、大盤解説会と公開対局は残念ながら中止されたが、大盤解説などがネット上でライブ中継され(現在も配信中)、数々のドラマが生まれる熱い一日となった。決勝に勝ち上がったのは、鈴木歩女流棋聖・余正麒八段ペアと奥田あや四段・村川大介十段ペア。鈴木は優勝経験もあり、決勝進出は7回目。棋士の間でも「ペア碁も強い」と定評がある。ところが余は「ペア碁に勝ったことがない」という大のペア碁苦手棋士。そこで今回は、余が、親しい林漢傑八段(鈴木の夫)宅に泊まり込んで、ペア碁の練習をしたという。決勝戦の模様を奥田に振り返ってもらうと「相手ペアがとにかく強くて、序盤から苦しい展開になり、全然ダメ、勝つのは大変と思いました。ただ、悪いなりに粘り強く冷静に打ち、チャンスがやってきて、運よく形にできました」とのこと。大会を通じては「全局とも、いつ負けてもおかしくない碁。特に2局目の向井千瑛五段・小林覚九段ペア碁との一戦は、相手ペアが投了した時点で、相手が勝つ手があったんです。村川先生だけが気付かれていて、局後に示されて三人で悲鳴をあげました」。勝因は、「ペアがいつも落ち着いていたので、いつもより冷静に打てたこと」。そして、「夏の世界戦が実現すれば、日本代表としてがんばりたい。世界の強いペアと対戦できるのはとても楽しみです」と語った。

十段戦開幕。芝野が先勝

 村川大介十段に、芝野虎丸名人・王座が挑戦する第58期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)が開幕した。第1局は、3月3日、大阪府東大阪市の大阪商業大学で打たれ、芝野が白番3目半勝ち。初の十段獲得に向け、好スタートを切った。序盤は村川が優位に立ったという。その後、芝野が下辺で戦いを仕掛け、村川の妥協の一手から形勢不明に。さらに芝野が上辺に踏み込んだ一手で流れを引き寄せると、粘る村川を振り切った。村川は「読みをしっかり鍛え直し、次局からをがんばりたい」、芝野は「後半乱れた部分もあったので、少しでもいい碁をうてるようにがんばりたい」とそれぞれ次局への抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2020年2月25日 ]

ジャンボ大会 バトリアヌス帝国連覇

会場の様子

 2月23日、東京市ヶ谷の日本棋院において1チーム15名の第49回ジャンボ囲碁団体戦月組がおこなわれた。新型ウイルスの影響で辞退チームもあり開催自体がどうなるのかという中で34ものチームが集まった。参加者にマスクが配られ、アルコール消毒液が会場に設置されるなどこれまでの囲碁大会にない異様な風景となった。さらに持ち時間を通常の40分から30分に減らし時間を短縮するなどの措置も見られた。
 そんな中、1回戦から優勝候補同士が早くも激突。アマ名人本因坊の大関稔さんをはじめ20代後半から30代の元院生を中心とする大熊義塾と元アマ本因坊の瀧澤雄太さんをようする多岐技会、現役学生のトップクラスを集めたバトリアヌス帝国と数々のアマタイトルを獲得した平岡聡さんなど40代から50代の強豪を中心とした団碁汁特盛が対戦し、それぞれ若手チームが勝利を収めた。
 今回は大熊義塾、バトリアヌス帝国、バトリアンチ帝国、アマ竜星戦優勝の森川舜弐さん、学生トップの星合真吾さん、川口飛翔さんをようする天野おじさんファンクラブといった比較的若手のチームの活躍が目立った。対して団碁汁、多岐技会、新宿囲碁センターといったベテラン名門チームは勝ち星をなかなか伸ばせなかった。
 決勝は大熊義塾とバトリアヌス帝国で行われ9-6でバトリアヌス帝国が大熊義塾を降し二連覇を果たした。
 Aクラス16チームの他にBクラスも18チームで行われ、アマ強豪の永代和盛さん率いる永代塾囲碁サロンが優勝した。

囲碁ニュース [ 2020年2月18日 ]

河野、一勝を返す

 井山裕太棋聖の三連勝で迎えた第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第4局が、2月14、15日に、福岡県太宰府市の九州国立博物館で行われた。形勢が何度も入れ替わる大熱戦の末、231手まで、黒番河野臨九段が中押し勝ちを収め、待望の一勝を返した。1日目は、右上の攻防で白の打ちやすい形勢となり、井山も「封じ手のあたりでは、(上辺と左辺の弱い)二つの石を逃げだせば、いけるかなと思っていたのですが」と振り返る。「でも、二日目に入り、打っているといろいろ難しく…もう少しいい手があったかもしれませんが…」と井山。その難戦のなか、次第に河野が流れを掴み、ヨセで勝ちを引き寄せた。局後の河野は、「一つ勝つことができてよかったです」と小さな声で語り、ホッとした表情を見せていた。「依然として厳しい状況ですので、悔いのないようにがんばりたい」と河野。井山も「悔いのないように準備したい」と語った。第5局は、26、27日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われる。

新棋戦、カマチ杯が開幕

 女流の新棋戦「博多・カマチ杯 女流オープン戦」(医療法人社団埼玉巨樹の会協賛)が開幕し、本戦1回戦、2回戦が2月15、16日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。本戦は、シードの女流タイトルホルダー、ランキング上位棋士、ワイルドカード棋士がシードされ、ここに予選から勝ち上がった棋士が加わった総勢16名によるトーナメント戦。ワイルドカードで招かれた中華台北の黒嘉嘉七段の参加も大きな注目を集めた。対局前日、「お姉さんのように慕っている謝さん、最近仲良くしている上野さんもいて安心感があります。ベスト4に入るのが目標です」と語っていた黒七段は、惜しくも2回戦で牛栄子二段に半目敗れ、「負けたのは残念ですが、この大会に参加できてうれしい」と話した。ベスト4には、上野愛咲美女流本因坊、藤沢里菜女流立葵杯、向井千瑛五段、牛栄子二段が勝ち上がった。準決勝は4月13日、決勝戦と3位決定戦は14日に福岡県福岡市の「ヒルトン福岡シーホーク」で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年2月12日 ]

鈴木、女流棋聖位を奪取

 上野愛咲美女流棋聖が1勝を返し、1勝1敗で迎えた第23期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)の第3局が、2月10日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。結果は285手まで、鈴木歩七段が黒番3目半勝ちを収め、初の女流棋聖位を獲得した。序盤、黒番の鈴木が左上で戦いを仕掛け、やや打ち過ぎの上野の手を的確にとがめてペースを握った。中盤までは黒好調だったが、上野が鋭い勝負手から黒を分断すると難解な局面に。中央の黒を攻めながら巻き返し、ヨセに入るころには「半目勝負」の声も聞かれる接戦となった。その後、上野に逸機があったか、難解なヨセを鈴木が制してゴールインした。
 鈴木自身は13年ぶりのタイトル獲得となる。若い上野と藤沢里菜女流三冠の「二強時代」に割って入り、実力者としての存在感を見せた。「まさか上野さんに勝てるとは思っていませんでした。無欲で戦ったのがよかったのかもしれません」と喜び、また、夫の林漢傑八段への感謝の言葉も忘れず、「(育児など)生活環境が変わったことで無心に打てるようになったのかもしれません」と謙虚なコメントを続けた。最後に「タイトルを取ったこともあり、これからも恥ずかしくない碁を打てるように精進していきたいです」と笑顔で抱負を語った。

日本棋院初、親子四代棋士誕生

 張栩九段、泉美六段夫妻の長女、心澄(こすみ)さんが、2月8日、女流特別採用試験をトップの成績で終了して入段が内定し、故木谷實九段からの親子4代棋士(故木谷九段→故禮子七段→泉美六段→心澄さん)が日本棋院史上初めて誕生することになった。祖母、母はそれぞれタイトル10を獲得して女流囲碁界のトップに立った。さらに祖父、小林光一名誉三冠、父、張栩九段も第一人者として囲碁界に君臨した。心澄さんの活躍に期待が集まらないはずはないが、温かく見守っていきたい。対局時とは全く違い頬が緩みっぱなしの父と祖父に挟まれて記者会見に臨んだ心済さんは、「(プロになれることは)本当に嬉しいです。でも、まだまだ弱いので、これから一生懸命がんばりたいです」と泉美六段似の笑顔も見せながら、はきはきインタビューに応えていた。

囲碁ニュース [ 2020年2月4日 ]

芝野、井山を破り十段戦挑戦者に

 村川大介十段への挑戦権をかけた第58期十段戦本戦決勝(産経新聞主催)が、1月30日、大阪府梅田の日本棋院関西総本部で打たれた。井山裕太棋聖と芝野虎丸名人という日本囲碁界2強が対する注目の一戦は、両者の工夫が見られる立ち上がりから、右上で井山が仕掛けて険しい競り合いが始まった。互角の戦いが続くなか、芝野がコウを仕掛けたところで、井山に錯覚があったようだ。一手の疑問手で形勢は一気に白番の芝野に傾いた。その後も芝野にスキはなく、210手まで、芝野の中押し勝ちとなり、同棋戦史上最年少の挑戦者となった。井山は「後悔する手がいくつかあり、内容的には少し残念」とコメント。十段奪還は持ち越されることとなった。芝野は「村川十段は戦いが強い印象。大変な戦いになると思いますが頑張りたい」と三冠奪取に向け、静かに抱負を語った。

井山、棋聖8連覇に王手

 第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第3局が、2月1、2日に長崎県西海市の「オリーブベイホテル」で行われ、井山裕太棋聖が黒番中押し勝ちを収め、シリーズ3連勝とした。二日目に入り、河野臨九段が右辺の大石を捨てる選択をした時点で、形勢は大きく黒に傾いた。「見ていない黒の作戦があった。右辺を取られた状況は、明らかに白が悪化している」と河野は振り返る。井山も「封じ手のあたりでは難しいと思っていたが、右辺の白を取る展開になって、元から思えば仕方ないと思った」と手応えをつかんだようだ。その後、左辺から上辺にかけた戦いで、河野が必死に勝機を探るが、逆に井山にリードを広げられていった。「中盤は打つ手打つ手が筋に入ってきた」と井山自身も振り返る完勝譜となり、午後5時5分、153手までという早い終局を迎えた。河野は「悔いのないよう、一生懸命準備します」、井山は「まだまだ大変だと思っている。しっかり準備したい」とそれぞれ次局への抱負を語った。河野の巻き返しなるか、井山の8連覇が決まるのか――注目の第4局は、14、15日に、福岡県太宰府市の九州国立博物館で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年1月31日 ]

東日本OB 慶應が3連覇

 1月19日、東京市ヶ谷の日本棋院において第30回東日本OBOG囲碁大会が行われ全40チームが出身校のために競った。Aブロック(16チーム)とBブロック(18チーム)は13人、Cブロック(6チーム)は5人の団体戦である。
 Aブロックでは1回戦で早稲田大学と慶應義塾大学が対戦した。早稲田大学は現役の関東学生リーグではここしばらく最強といってよく、慶應義塾大学もそれと争っている。現役でも関東トップをめぐって争った両チーム、早稲田は世界アマ日本代表経験のある坂本修作さんや現役時多くの学生タイトルを獲得した加畑陽一さんと各世代の代表が、慶應は主将に学生王座経験のある丹羽準也さんなど二十代、三十代を中心にベテランが後方を固める布陣。この早慶戦を慶應が7-6で制した。
 慶應はその後この勢いに乗り二桁の勝ち星を上げAブロック優勝となり3連覇を果たした。3連覇の達成は早稲田大学、中央大学に次ぐ3チーム目で自身としては初である。2位が中央大学、3位が横浜国立大学、4位が東京大学となった。
 Bブロックは成績上位が翌年Aブロックに参加できる。今回優勝を果たしたのが法政大学である。法政大学の主将は学生本因坊経験のある若手の神谷祐樹さんであるが、幾度もアマチュア日本一に輝いたことがある中園清三さんが副将となった。「そろそろ若い人に主将をやってもらわないと」と中園さんは語られた。
 5人制のCブロックは早稲田大学理工学部が優勝となった。

囲碁ニュース [ 2020年1月28日 ]

芝野、二年連続惜敗

 第8回CCTV賀歳杯中日韓新春囲碁争覇戦(CCTV、中国囲棋協会主催)が1月20日から22日にかけて中国の成都市で行われた。この棋戦は、中国のCCTVから日本、中国、韓国の代表が招待され、3名による変則トーナメント戦が行われる。非公式戦だった第5回までに、井山裕太九段や村川大介九段が二位になったことがあるが、日本勢の優勝はまだない。中国代表は柯潔九段、韓国代表は朴廷桓九段が、いずれも公式戦となった第6回から連続出場。日本からは第6回には一力遼八段が出場し、第7回の今年は芝野虎丸九段が出場した。
 抽選の結果、1回戦は柯と朴が戦い、敗れた柯と芝野が2回戦で戦った。黒番の芝野は、序盤は巧みに打ち回し、下辺、上辺、右辺とポイントを重ねていった。だが、柯の挑発気味の一手が芝野の疑問手を誘い、形勢は不明に。その後も芝野にチャンスは訪れるもこれを逃して柯に押し切られたようだ。1回戦の勝者、朴と、2回戦の勝者、柯による決勝戦は、22日に打たれ、序盤で優勢を築いた朴が柯の追撃を冷静にかわして3年連続の優勝を決めた。芝野は「相手が強いのでこの結果も仕方ない。一局しか打てなかったのは残念ですが、いい経験になりました」と話した。

上野、パンチを繰り出し1勝を返す

 上野愛咲美女流棋聖に、鈴木歩七段が先勝して迎えた、第23期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)の第2局が、1月27日に東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われた。序盤、まず、左下で黒番の鈴木の高い両ガカリから両者の研究がぶつかり合った。上野は難解定石を黒有利と見て避け、簡明な進行を選択し互角に分かれる。続いて右上の折衝では読みがぶつかり合った。一時は鈴木の読みが勝り、上野の石を仕留めて優勢を築いたかに思われたが、一手の打ち過ぎをすかさず上野がとらえて、重いパンチが入り、黒ツブレといってよい結末に。その後、勝機を求めて打ち進めたが、序盤の損があまりにも大きく144手まで、上野の白番中押し勝ち。鈴木には悔やまれる一手と一局となった。決戦となる第3局は、2月10日、第2局と同じ「竜星スタジオ」にて行われる。

井山、世界一まであと一局

 非公式戦ながら、井山裕太三冠が「世界一」まで、あと一勝に迫っている。中国の対局サイト「野狐囲碁」が、野狐囲碁ランキング32位までの棋士が参加するネット棋戦、優勝賞金は50万元(約800万円)という「第1回野狐人気争覇戦」を開催。ランキング30位の井山が参戦し、中国の強豪を6名下してベスト4入りし、準決勝三番勝負では井山が幼少時からライバルと意識している陳耀燁九段に二連勝して決勝に進んだ。1月16日、決勝第1局が打たれ、童夢成八段に接戦の末白番半目勝ちを収め、優勝に王手をかけた。第2局は2月12日に行われる予定だという。

囲碁ニュース [ 2020年1月21日 ]

女流棋聖戦・開幕戦は鈴木が勝利

 三連覇を期す上野愛咲美女流棋聖に、鈴木歩七段が挑戦する第23期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負(株式会社NTTドコモ協賛)が開幕。第1局が1月16日、神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」にて行われ、鈴木が白番3目半勝ちを収めた。昨年、女流本因坊位も奪取して二冠となった上野は、一般棋戦の竜星戦で準優勝という快挙も見せ、女流年間最多勝も新記録を達成し、まさに日の出の勢い。対する鈴木は、「まだまだ若手に負けていられない。またタイトル戦に出たい」と語っていた。対上野戦は2戦2敗で、いずれもタイトル戦の挑戦者決定戦という大一番で負かされているが、苦手意識があるかと思いきや、挑戦者に名乗りをあげて「何しろ愛咲美ちゃんと打てるのが楽しみ」とのコメントだった。上野の力の強さはもちろん、鈴木の読みの速さと正確さも定評がある。期待どおりの目の離せない戦いの碁となった。左下から左辺にかけての攻防では、上野が打った「時間つなぎ」に対して「手を抜ける」と素早く判断した鈴木が要所に連打し一本取る。その後上野も本領の力を発揮して挽回したが、右下の攻防で鈴木の判断力が上回り、再びポイントを上げるとそのまま逃げ切った。上野は「自分らしい碁を打ちたい」、鈴木は「ヨセ負けないようにしたい」と、それぞれ次局への抱負を語った。第2局は1月27日に東京都千代田区の「竜星スタジオ」で打たれる。

井山棋聖、二連勝

 井山裕太棋聖が挑戦者の河野臨九段に先勝してスタートした第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第2局が、1月20、21日に埼玉県川越市の「蓮馨寺」で行われた。序盤、井山の左辺への積極的な一着から始まった折衝でポイントをあげると、河野の下辺での仕掛けに手を抜く機敏な打ち回しもあり、リードを広げていった。二日目に入り、「白よし」の評価が多い進行のなか、手堅く進める井山に対して、河野は右辺から中央にかけて戦いを仕掛け、難しい局面へと導いた。河野らしい柔軟な発想の意表をつく手も見られたが、井山が時間をかけて冷静に読み切り追撃を振り切り、198手目まで白番中押し勝ちを収めた。井山は「流れは悪くないと思っていましたが、中盤の大事なところで見損じがあるなど反省点も多い一局でした」と振り返り、「これからも大事な戦いが続くので、いい内容の碁を打っていきたい」と気を引き締めた。苦しい連敗スタートとなった河野は「1日目から悔いが多すぎる碁でした。次局は少しでもいい状態でベストを尽くしたい」と語った。河野の巻き返しが期待される第3局は、2月1、2日に長崎県西海市の「オリーブベイホテル」で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年1月14日 ]

棋聖戦開幕。井山が先勝

対局に勝利した井山棋聖

 井山裕太棋聖に河野臨九段が挑戦する第44期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕した。第1局は、1月9、10日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて打たれ、黒番の井山が5目半勝ちを収めた。
 一日目は、井山の厚みと河野の実利という碁形となり、黒模様に深く入った河野が打ち回して「白優勢」の声が多かった。だが、二日目に入り、中央の難解な折衝のなか河野が「判断が甘かった」と振り返る手をとらえ、井山が逆転。さらに河野の疑問手が続き、黒が優勢を築いた。その後、河野は勝負手を繰り出し粘るが、井山が冷静に対処して寄せ付けなかった。井山は「二日目も苦しいかなと思っていました」と、白星にも反省が多い表情。河野は「次局は悔いのない碁を打てるよう頑張りたい」と語った。
 棋聖位7連覇中の井山は、今期防衛を果たすと、小林光一名誉棋聖の持つ8連覇の記録と並ぶ。小林名誉棋聖の弟子である河野がこれを阻止し、初の棋聖奪取を実現できるか。井山が第一人者の座を守るのか、群雄割拠の時代に突入していくのかという意味でも注目が集まるシリーズ。第2局は、1月20、21日に埼玉県川越市の「蓮馨寺」で行われる。

囲碁ニュース [ 2020年1月7日 ]

全日本大学選手権 立命館V

 12月23日から26日の四日間、東京市ヶ谷の日本棋院において全日本大学囲碁選手権が行われた。全国各ブロックより8つの大学が集まった。
 優勝の最有力は関東の早稲田大学と見られ対抗馬として関西の立命館大学が挙げられていた。下馬評では早稲田の層が厚いとされ6回戦終了まで早稲田が全てを5-0で勝利した。立命館も接戦ながら6回戦全てを勝利して早稲田との最終戦に臨むことになった。
 早稲田のメンバーは主将の昨年度の学生十傑優勝の津田裕生さんをはじめ、今年度の学生最強位である星合真吾さん、学生王座を優勝したばかりの石田太郎さんなど磐石の布陣。立命館は学生タイトルで関東勢と激戦を演じていた世代とは代替わりをし、一線級で戦っていたメンバーがいなくなり戦力ダウンと言われていた。
 メンバー的に早稲田が全て5-0の完全優勝をするのではと思われる中おこなわれた最終戦、副将戦、四将戦と早稲田の星合さん、石田さんが制し早稲田が優勝に王手をかけた。このまま早稲田が優勝すると思われたが、主将戦を立命館の西村遼太郎さんが半目勝ちすると流れが変わった。三将戦を2目半勝ちし2-2となり、五将戦を立命館の平松さんが1目半勝ちとなり、大接戦を立命館が制し2年ぶり8回目の優勝となった。
 どの日も接戦となった立命館大学はチームワークの良さを発揮した。一方の早稲田大学は個人戦では2人の優勝者を出したものの悔しい結果となった。

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