日本囲碁ニュース

日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。

囲碁ニュース [ 2019年12月24日 ]

仲邑菫初段、ジャーナリストクラブ賞受賞

 囲碁担当記者たちの投票によって決める「第37回日本囲碁ジャーナリストクラブ賞」に、仲邑菫初段(10)が選ばれた。英才特別採用推薦棋士の第一号として、今年4月、史上最年少で入段して注目を集めた仲邑初段は、期待どおりの活躍を見せ、対男性棋士に7勝2敗、対女性棋士に7勝4敗の成績を残した。あわせて14勝は、今年の新初段の中で最多勝の健闘ぶり。仲邑自身も「思ったより勝てた」と振り返る。12月17日、東京都千代田区の日本棋院で授賞式が行われ、記念品としてキャラクター「ライアン」の絵入りキャリーケースが送られると子供らしい笑顔で受け取っていた。

上野、女流棋士年間最多勝の新記録なるか

 12月19日、上野愛咲美女流本因坊が、第45期棋聖戦ファーストトーナメントで黒番中押し勝ちを収めた。年間43勝目(25敗)となり、藤沢里菜女流立葵杯の持つ女流棋士の年間最多勝記録「43勝(23敗)」に並んだ。上野は26日にも対局を残しており、勝てば新記録達成となる。なお、12月20日現在、全棋士の勝ち星ランキングは芝野虎丸名人が52勝(17敗)でトップ、二位は一力遼八段の46勝(14敗)で上野は三位につけている。

囲碁ニュース [ 2019年12月18日 ]

井山五連覇。史上二人目の「永世天元」

 井山裕太天元の「五連覇」か、許家元八段の「最年少天元」誕生か――。今年最後のタイトル戦となった第45期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第五局が、12月18日、徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル徳島」にて行われた。井山が敗れて「二冠」に後退すると、七大タイトルを5人で分け合うことになる。井山にとっては正念場の大一番であり、井山時代が続くのか、「群雄割拠」が進むのかという意味でも大いに注目された。
 序盤から、両者石の張った戦いに突入し、最初の右上の攻防では井山がややリードを奪った。その後、井山らしい厳しい着手が局面を多彩に動かしていく。井山の「打ちすぎ」と評された一手からは、許が挽回して、一時は「黒有望」の声も聞かれた。だが、難解な激しい攻防を井山が制し、最後は黒の大石を取って、白番井山の中押し勝ちとなった。価値ある一勝をあげた井山は「シリーズを通して、今の自分としてはうまく打てたと思います」と控え目に喜びを語り、「苦しい一年だっただけに、最後はいい結果で終われてホッとしています」と安堵した表情を見せた。許は「五局とも、押された局面が多く、この結果は仕方ありません」とのコメントを残した。
五連覇を達成した井山は、「名誉天元」の永世称号を獲得。天元戦では史上二人目で、棋聖、本因坊、碁聖に続く4つ目の永世称号獲得は、小林光一名誉三冠を抜く記録となった。

村川大介十段が、聖火ランナーに

 村川大介十段が、2020年東京五輪の聖火リレーの聖火ランナーとして、来年5月25日、故郷の兵庫県のコースを走行することが内定した。村川十段は「日本で開催されるオリンピックで地元を走れるのは感慨深いです。無事走り切れるように準備したい。いろいろな方々の目に触れ、囲碁界のアピールになればと思います」と語り、「十段戦を防衛して花を添えたい」と決意も表明した。
 その十段戦は、挑戦者争いが佳境に入っている。挑戦者決定戦には、井山裕太三冠が勝ち上がっており、12月19日に行われる芝野虎丸名人と大西竜平四段の勝者と戦う。

囲碁ニュース [ 2019年12月10日 ]

張栩、日中決戦を制す

 日本と中国の覇者による阿含・桐山杯第21期早碁オープン戦日中決戦(中国国際友好連絡会、中国棋院、日本棋院主催、阿含宗特別協賛)が、12月3日、中国広州市で打たれ、張栩九段が范廷鈺九段に白番1目半勝ちを収めた。日本勢の勝利は井山裕太九段以来4年ぶり。本棋戦で単独トップの5回目の優勝を果たした張自身は、初めて日中決戦を制した。「勝つのは難しい相手なので、打ちたい手を積極的に打とう」と臨んだ張だが、中盤までは苦戦を自覚したという。だが、范のわずかな乱れを捉えて形勢は不明に。難戦のなか、定石のない中央のヨセでリードを奪うと、そのまま逃げ切った。局後の張は「范廷鈺九段の碁はずっと研究しています。とても理想的で学ぶところが多い」、「AI世代には追いつけないと感じます。自分が日本で成績を残せるのはちょっと不思議な感じで、どの一局も奇跡だと思っています」と語り、今回の勝利については「勝てるとは思っていなかったので夢のようです。范廷鈺九段はとても強く、私とは1子ほど差があると感じます。彼に勝てる確率は低かったですが、彼が感じるプレッシャーも大きかったのでしょう。私は気楽に打てたので、その点ちょっと有利でした」と謙虚に分析。そして「中国の7目半のコミが心強かった」と終盤の心境を、「僕だけで4回も日中決戦で負けていて責任を感じており、いい結果を日本にもたらせてこれほどうれしい勝利はありません」という張らしい責任感のある真摯なコメントも残した。

鈴木、挑戦権を獲得

 上野愛咲美女流棋聖への挑戦権をかけた第23期女流棋聖戦(株式会社NTTドコモ協賛)の挑戦者決定戦が12月5日、東京都千代田区の「竜星スタジオ」で行われ、鈴木歩七段が牛栄子二段に白番中押し勝ちを収めた。鈴木のタイトル戦出場は2015年の女流名人戦以来で、女流棋聖戦では初挑戦となる。鈴木は今年、女流立葵杯、女流本因坊戦でも挑戦者決定戦まで勝ち上がっている。いずれも上野女流棋聖に敗れはしたが、実力者ぶりは大いに発揮され、女流棋聖戦でも藤沢里菜女流立葵杯ら強豪を降し決勝譜もほぼ完勝の好局だった。「久しぶりの挑戦手合ですし、女流棋聖戦は初めてですし、相手が愛咲美ちゃんなので、楽しみなことしかありません。愛咲美ちゃんは強いし、性格もピュアでかわいく誰からも愛されるキャラクターです。子育て中ですが、家族も協力してくれるので、甘えながら準備をして、楽しく打ちたいです」と喜びを語った。夫の林漢傑八段も名人戦リーグ入りを決めるなど、夫婦そろって充実している印象だ。三番勝負は、1月16日に、神奈川県平塚市の「ホテルサンライフガーデン」で開幕する。

井山が一勝を返し、最終局へ

 井山裕太天元に、許家元八段が挑戦中の第45期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)は、11月22日に福岡県久留米市「ホテルマリターレ創世 久留米」にて第三局が打たれ、許が黒番中押し勝ちを収めた。挑戦者の2勝1敗で迎えた第四局は、兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われた。序盤、最近実戦例が減っている大ナダレ定石から始まり、積極的な打ち回しを見せた井山が優勢を築く。許が反撃を開始し、勝負形に持ち込むも、残り1分となっていた許に疑問手があり、再び井山が優勢を奪うと猛追を振り切って勝敗を決し、177手まで、黒番井山の中押し勝ちとなった。立会人の円田秀樹九段は「井山天元が堅実に勝った印象。許八段は早々と時間を使いきったのが響いたのかもしれません」とコメント。局後の井山は「最終局を打てるのは非常にうれしい。最後なので悔いのないように打つだけです」、許は「今日の碁はかなり内容がまずかった。最後は持てる力を出してがんばりたい」とそれぞれ抱負を語った。決着のつく第五局は、18日、徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル徳島」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2019年12月3日 ]

平田智也七段、悲願の初優勝

 30歳以下・七段以下の若手棋戦、第14回広島アルミ杯・若鯉戦(日本棋院、日本棋院広島県本部主催。広島アルミニウム工業株式会社特別協賛)の本戦が、11月23日、24日に広島市で行われた。大会初日は1回戦と2回戦が行われ、二日目の決勝戦は、平田智也七段と六浦雄太七段のカードとなった。結果は平田の白番3目半勝ち。悲願の初優勝を果たした。現地の大盤解説会場に現れ、まず感想を尋ねられた平田は、感極まり、かすれた声で「ほんとに嬉しいです」。会場からは暖かく盛大な拍手が沸き起こっていた。
 解説の山田規三生九段は「準決勝戦も完勝の名局。平田七段は元々強いのですが、この大会は特に充実していた」と話す。決勝の譜は、黒番の六浦が優勢を築いた中盤で、白番の平田が「取れないシチョウを追いかけて逃げられた後に隣の黒石を取る」という大技を決めた。局後平田が「シチョウ読めないんですよ。一手目は取れると思ってカカエたのですが、逃げられて大変なことになったと思いました」と振り返れば、六浦も「平田先生、シチョウを読めてないなと思いました」と応え、集まった地元ファンの笑いを盛り上げていた。この攻防で白がややポイントをあげ、その後ヨセで逆転。平田は「中央の形が運よくできていました」と控え目に勝因を語った。

芝野、王座を獲って二冠に

 第67期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)の第4局が、11月29日に愛知県蒲郡市の「銀波荘」で行われ、挑戦者の芝野虎丸名人が、井山裕太王座に白番半目勝ちを収め、3勝1敗で王座を奪取した。序盤から形勢互角のまま進み、最後にヨセで芝野がかわした。芝野は「大変な碁が多く、勝てたのは運がよかったとしか言いようがありません」とシリーズを振り返り、「小さいころから目標にしていた井山先生と、こんな舞台で打てるとは思っていませんでした。勝てたことを自信にして、頑張っていきたいです」と笑顔で語った。敗れた井山は、3冠に後退したことを「逆にここまでこれほど長く、よく(4冠以上を)キープできたなというのが率直なところです」と話し、「結果は仕方ないですが、内容的には少しずつよくなってきている手応えもあるので、この舞台にまた戻ってこられるように努力したいです」と奪還に意欲を見せた。
 名人と合わせて二冠となった芝野は、他棋戦の戦績もよく、今年の勝ち星ランキングも現在トップを走っている。来年の活躍にも注目が集まりそうだ。

囲碁ニュース [ 2019年11月28日 ]

訃報 小川誠子六段

長年審判長を務めていただいたパンダネット月例大会での会員の皆様との記念写真(2019年3月)

 11月15日、棋士の小川誠子六段がご病気のためご逝去されました。
 女流本因坊などのタイトルを獲得され第一線で活躍されるかたわら、NHK杯テレビ囲碁トーナメントの聞き手を長年にわたり務められ、多くのファンに親しまれ愛され、優しく囲碁を広める草分け的存在となりました。文才もあり、新聞連載されたコラムの中の「忘れ得ぬ師の言葉」が、東京都世田谷区の小中学校の日本語教育の「哲学」の教科書に採用されたこともあります。
 アマチュア囲碁界にも貢献を惜しまれず、パンダネットでは、パンダネット月例大会の審判長を長年務めていただき、会員の皆さまとのご縁を大切にされておりました。また、「国際アマチュア・ペア碁選手権大会」では第一回大会から30年間審判長を務めていただきました。
 近年は日本棋院理事や棋士会長も歴任され、「一局一局、一瞬一瞬を大切にしていきたいなという思いと共に、本当に素晴らしい囲碁をもっともっと多くの方に知ってもらいたい、そのための何かお役に立ちたいと考えています。囲碁を通して素晴らしい方々にお目にかかるチャンスもたくさんありました。そういう意味でも、囲碁界に何か恩返ししたくて、どういう風に役に立てるのかな?ということを日々考えていますし、そういうふうにしていきたいと思っています」と語られていました。
 通夜・告別式は、近親者にて執り行われ、お別れの会などの詳細はまだ決まっていないとのことです。
 心よりご冥福をお祈りいたします。

囲碁ニュース [ 2019年11月27日 ]

アマ竜星戦森川さん初V 大関さん三冠ならず

 第18回囲碁アマチュア竜星戦全国大会が11月23日、24日に東京市ヶ谷の日本棋院において行われた。これまでのアマチュア竜星戦はケーブルテレビ杯予選やネット大会の勝ち上がり者が全国大会で戦うというものだったが、今年より世界アマチュア囲碁選手権と合併し、ネット予選とともに各都道府県代表を加えた62名で争われ、優勝者は日本代表となることになった。そのためアマチュア三大大会も名人・本因坊・竜星となる。
 今大会で最も注目を集めたのはアマ名人・本因坊の大関稔さんである。アマ三冠の偉業達成なるか。
 大関さんは1回戦からアマ竜星戦の優勝経験のある小野慎吾さんとの対戦となり強豪の多いブロックとなったが、順当に勝ち上がりベスト4に進出。二日目に残った。昨年の世界アマチュア選手権の優勝者である川口飛翔さん、アマ名人準優勝など各大会で実績を残す闇雲翼さん、そして昨年の中部棋士採用試験で次点だった森川舜弐さんの4名がベスト4進出となった。
 準決勝では大関さんが闇雲さんを、森川さんが川口さんを降し、決勝に進出した。決勝戦は日本棋院地下の竜星スタジオで収録、囲碁将棋チャンネルで放送される。大関さんは王者の貫禄を見せつけるように順当に勝ち上がってきたが、森川さんは初戦から接戦や逆転など粘り強さを見せての決勝進出となった。決勝戦は森川さんが大関さんを降し初優勝。大関さんは三冠目前で敗れてしまった。
 森川さんは来年の世界アマチュア選手権に日本代表として挑むことになった。「まさか優勝できるとは思わなかった。自分が日本代表でいいのかと思ってしまうが、日本のためにも頑張りたい」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2019年11月21日 ]

河野が3期ぶりに棋聖挑戦

 井山裕太棋聖への挑戦権をかけた棋聖戦挑戦者決定トーナメント(読売新聞社主催)の最終局が11月14日に東京都千代田区の日本棋院にて打たれた。一力遼八段は、Aリーグ7戦全勝に挑戦者決定トーナメント戦の3勝を加えて10連勝。迎え撃つ河野臨九段は、Sリーグを3勝2敗で優勝し、前局の変則三番勝負第1局では一力に敗れた。一力の勢いに分があるかに思われたが、これがアダとなったようだ。黒番の一力が優勢に打ち進めながらも、中盤の中央の攻めが性急。局後、一力は「やりすぎた」と反省した。この機をとらえて逆転した河野が、その後は追い上げを寄せつけずに一力を投了に追い込んだ。河野が1勝のアドバンテージにものを言わせ、最終局で踏ん張った。棋聖戦は3期ぶり2度目の挑戦となる河野は「厳しい対局になると覚悟しています。しっかり体調を整えて臨みたいと思います」と新年から始まる七番勝負に気持ちを引き締めた。

18歳の新女流本因坊誕生。上野二冠に

 藤沢里菜女流本因坊が先勝した後、挑戦者の上野愛咲美女流棋聖が二連勝して王手をかけた第38期女流本因坊戦五番勝負(共同通信社主催)の第4局が、11月15日に、東京都千代田区の日本棋院で行われた。棋風どおり積極的に打つ上野が主導権を握るが、その後に緩着が出て藤沢が迫る。解説の鶴山淳志八段は、一時は黒番の藤沢に軍配をあげた。しかし、上野の勝負手からコウに突入し、藤沢の錯覚を誘った。200手まで、白番上野が中押し勝ちとし女流本因坊を奪取した。上野は「結果よりも内容を頑張ろうと思っていたのですが、予想外の結果で良かったです。2局目に勝っただけで満足していました」と控え目に喜びを語り、藤沢は「後半に読み間違いが多く、ちょっとまずいシリーズでした」と肩を落とした。これで女流タイトル5つを、藤沢が3、上野が2と分け合うことになり、2強時代がスタートした感じがある。

王座戦は、芝野が王手

 井山裕太王座に、芝野虎丸新名人が挑戦している第67期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)は、挑戦者の先勝に続いて、第2局が11月16日、第3局が18日に、いずれも山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われた。第2局は、芝野のわずかな緩みを逃さず井山が逆転し、厳しい打ち回しで大石を取って中押し勝ち。解説の山下敬吾九段が「ペースを奪ってからは相手にチャンスを与えず勝ち切った。王座の強さが光る一局」と評する快勝譜となった。第3局も井山がペースを握るが、解説の高尾九段は「形勢が苦しくなってからの芝野名人の粘りがすさまじく、勝負勘と判断力で逆転につなげた。互いの持ち味が出た大熱戦だった」と振り返る。芝野が乱戦を1目半制し、タイトル奪取にあと1勝と迫った。芝野は「大変なのは間違いないので、これまで通りがんばりたい」、井山は「内容的には自分なりにまずまずの感触があるので、しっかり準備して臨みたい」とそれぞれ次局への思いを語った。第4局は、29日に愛知県蒲郡市の「銀波荘」で行われる。

藤沢、名人リーグ入りならず

 王座戦第3局に負けないほど注目を集めたのが、18日に東京都千代田区の日本棋院で打たれた名人戦最終予選決勝だった。結果は、一力遼八段が藤沢里菜女流立葵杯を破り、多くのファンが期待した史上初の女流棋士リーグ入りは持ち越しとなった。初の名人リーグ入りを決めた一力は「初めて最終予選決勝まで進んだのが6年前。まさか6年かかるとは思わなかった」と安堵の表情とともに終始笑顔で記者団の質問に答え、藤沢は「序盤からずっと苦しく、チャンスがなく終わってしまいました。内容的に残念な碁でした」と振り返った後、「力をつけて、また来期リーグ入りをめざしてがんばりたい」と頼もしいコメントを残した。

囲碁ニュース [ 2019年11月13日 ]

女流本因坊戦は、上野が王手

 藤沢里菜女流本因坊の1勝、挑戦者の上野愛咲美女流棋聖の1勝で迎えた第38期女流本因坊戦五番勝負(共同通信社主催)の第3局が、11月6日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。結果は235手まで上野が黒番中押し勝ちとし、タイトル奪取に王手をかけた。世界戦で多く打たれている布石から立ち上がり、中盤に入るあたりでは藤沢が優勢を築いた。右上隅の白に対して上野が手筋を放ちコウ残りの形に持っていくものの、一手の緩着から藤沢が主導権を握り続けた。しかし、「中央の戦いに問題がありました。感じの悪い手を打ってしまい……もう少し工夫しないといけなかった」と藤沢。上野がコウを決行して逆転に成功した。上野は「右上のコウを解消して少しいいかと思いましたが、全然計算ができず、最後の方で形勢がいいとわかりました」と控え目なコメントを残した。カド番に追い詰められた藤沢は、「次は気持ちを入れ替えて、一生懸命打ちたい」と気合いを入れ直した。新女流本因坊誕生か、藤沢が踏みとどまるか。注目の第4局は、11月15日に日本棋院にて行われる。

一力、挑戦者に「あと一勝」

 井山裕太棋聖への挑戦権をかけた棋聖戦挑戦者決定トーナメント(読売新聞社主催)は、Aリーグ優勝の一力遼八段が快進撃を続けている。11月4日に、Sリーグ二位の高尾紳路九段を中押し勝ちで降し、11月11日には、Sリーグ優勝の河野臨九段との変則三番勝負第一局に、黒番2目半勝ちを収めた。河野に1勝のアドバンテージがあるため、これで1勝1敗となり、いよいよ挑戦権をかけた最終局に進む。今期棋聖戦無敗の一力がこのままかけあがるか、河野が意地を見せるか。注目の第三局は、間をおかず、11月14日に打たれる。

囲碁ニュース [ 2019年11月8日 ]

王座戦開幕。新名人が先勝

 永世称号を獲得できる五連覇をかけた井山裕太王座に、芝野虎丸新名人が挑戦する第67期王座戦五番勝負(日本経済新聞社主催)が開幕した。日本囲碁界の第一人者と史上最年少名人という、おそらく囲碁ファンにとって「今最も見たいカード」の第1局は、10月25日、大阪府大阪市の「ウェスティンホテル大阪」で打たれ、期待どおりの熱戦を繰り広げた。 両者が対局前に「見ている方に楽しんでいただける碁を」と語ったとおり、序盤から両者の構想がぶつかり合う一手一手が興味深い展開となった。互いに相手の言うことを聞かず、深い読みの入った巧手を放ってポイントをあげ合いつつ、どこまでいっても「いい勝負」という、密度の濃い内容で「名局」の呼び声が高い。寄せに入っても互角の形勢だったが、最後に挑戦者が半目を制した。芝野は「今回は勝てましたが、これからも厳しい戦いが続くと思います」と静かに語った。敗れた井山は「いろいろ分からないことだらけだった」と難戦を振り返り、「次の対局まで間があくので、いい状態で臨めるように精一杯準備したい」と巻き返しを誓った。第2局は、11月16日に、山梨県甲府市の「常盤ホテル」にて行われる。

女流本因坊戦、上野が1勝を返しタイに

 藤沢里菜女流本因坊に上野愛咲美女流棋聖が挑戦する第38期女流本因坊戦五番勝負(共同通信社主催)の第2局が、10月27日に秋田県能代市の「金勇」で行われ、上野が白番中押し勝ちを収めてスコアを1勝1敗のタイに戻した。序盤の藤沢の打ち回しが疑問だったようで、早くから上野がリードを奪ったが、中盤に藤沢が勝負手を放ち、相手の大石を取りかけに向かって本局のクライマックスを迎えた。しかし、最近は、攻めだけではなく、シノギにも定評のある上野が、検討陣を「強い!」とうならせる妙手ではね返した。上野は「ずっと攻められていたので、次はもうちょっと攻めたいなと思います」とシリーズを楽しんでいる様子。藤沢は「前半から苦しくしてしまい…勝負形になったと思ったのですが、(相手のシノギの手が)見えていなくて…」と振り返った後、「次局は自分らしく打ちたい」と抱負を語った。両者は現在、日本棋院の勝ち星ランキングで全棋士中3位と4位につけている。次局も好調どうしの好局が期待される。第3局は、11月6日に東京都千代田区の日本棋院本院で行われる。

第二回中庸戦は、黄翊祖九段が優勝

 第2回「SGW杯中庸戦」(株式会社セントグランテ協賛)の本戦が11月3、4日に東京都千代田区の日本棋院で行われた。本棋戦は、日本棋院所属の31歳以上60歳以下、かつ七大棋戦、竜星戦、阿含桐山杯の優勝経験のない棋士に出場資格があり、本戦に勝ち上がった16名がスイス方式で順位を決定する。全勝をかけた今村善彰九段と黄翊祖九段の一戦には、趙治勲名誉名人と第1回優勝者の林漢傑八段と吉原由香里六段による大盤解説会も行われ、多くのファンを集めた。優勢を築いた黄に今村が猛追したが、今村に一瞬の錯覚があり黄が勝利を収めた。「とてもうれしい」と笑顔の黄は、期間中に九段昇段も決め、花を添えた。今村は「勝負形になったところで、ひどい負け方をしてしまい…」と無念の表情だった。2位は三村智保九段、3位は大場惇也七段、ポイントの関係で今村は4位に入った。

囲碁ニュース [ 2019年11月7日 ]

秋季関東学生囲碁団体戦 早稲田V

 11月2日、東京市ヶ谷の日本棋院において秋季関東学生囲碁団体戦の最終戦が行われた。10月6日、27日と合わせて3日間に渡り関東の各大学が競った。当初開催予定だった10月13日は台風19号の影響で延期になるというアクシデントも起こった。
 近年では早稲田大学一強の状態であり、慶應義塾大学、東京大学、東京理科大学がそれを追う展開である。今回も早稲田大学は学生最強位の星合真吾さん、昨年の学生十傑の津田裕生さんなど隙のない布陣。四回戦が終わり、上位四校は4連勝となり直接対決の勝負となった。
 五回戦、早稲田大学と東京理科大学の対戦では学生本因坊の栗田佳樹さん(東京理科大)が主将戦を制するも早稲田の壁は崩せなかった。
 最終日も早稲田は磐石で東京大学を5-0で降した。しかし最終戦、慶應義塾大学が意地を見せ早稲田を3-2で降して混戦となった。一方の東京大学と東京理科大学は4-1で東京大学が制した。この結果、早稲田と東京大学が6勝1敗で並んだが個人の勝ち数で早稲田大学の優勝となった。
 早稲田大学は現在のレギュラーから2名が卒業するが来年は果たしてどうなるか。打倒早稲田を果たすのはどこの大学になるか注目である。
 同時に行われた2部は國學院大學、3部は明星大学、4部は東京農工大学がそれぞれ優勝した。
 女子の部は慶應義塾大学が早稲田大学を降し優勝。春季に続いて男女での早稲田大学優勝はならなかった。

囲碁ニュース [ 2019年10月30日 ]

第19回アマチュア囲碁団体戦

 第19回アマチュア囲碁団体戦が10月27日、東京市ヶ谷の日本棋院において開催され、1チーム3人、無差別クラス13チーム、クラス別4クラス64チームが熱戦を繰り広げた。今回はこれまでと変更された点があった。クラス別戦はこれまでオール互先であったが今回からハンデ戦となった。さらに無差別クラスは優勝チームが関西の優勝チームと決戦を行っていたが、それが無くなった。無差別クラスの参加者の中には関西との決戦が無くなって寂しいという声もあった。
 最近の無差別クラスは大学生チームが強く、どの団体戦も若手が活躍していたが、この日は秋季関東学生リーグと同日であり、大学生たちの参加が無かった。そのため企業チームや愛好団体チームも近年では年齢が少し高めに思える。そんな中でも若手と言える株式会社クレスコが3連勝した。社会人1年目のアマ名人本因坊である大関稔さんを主将に、大関さんと同年代の学生で活躍した石村竜青さん、渡邉達也さんという布陣。2連勝だった初台囲碁クラブが1勝1敗のTIS連合に敗れたことにより、3回戦終了時点で3連勝が1チームのみとなった。
 最終戦は株式会社クレスコと2勝1敗の中で一番勝ち数の多い日本酒愛好会の決勝になった。日本酒愛好会(笹子理紗・花巻未生・光永豊)は1回戦でNECに1-2で敗れたが、その後2回とも3-0で勝っており、最終戦に勝つと勝ち数で優勝となる。最後は株式会社クレスコが勝利した。
 株式会社クレスコは1回戦でメンバーの1人が遅れてしまうというアクシデントがあったもののチームワークで優勝を飾った。

会場の様子
優勝の株式会社クレスコ(左)

囲碁ニュース [ 2019年10月23日 ]

一力、世界戦で八強入り

 中国主催の世界戦、第4回夢百合杯世界オープン戦が北京の中国棋院で行われた。10月11日から三日連続の日程をこなし、一力遼八段が中国勢に3連勝して八強入りを決めた。主要な世界戦での日本勢ベスト8入りは、第22回LG杯朝鮮日報棋王戦で準優勝した井山裕太四冠以来2年ぶりとなる。また、本大会には主催者推薦枠にて仲邑菫初段も出場し、1回戦で敗退したものの世界戦の公式戦デビューを果たした。準々決勝は来年3月に予定されている。

井山天元、1勝を返し、タイに

 永世称号を獲得できる「五連覇」をかけた井山裕太天元に、許家元八段が挑戦する第45期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第二局が、10月21日、北海道虻田郡ニセコ町の「ニセコ温泉郷いこいの湯宿 いろは」で打たれた。連勝して勢いに乗りたい許と、流れを変えたい井山。穏やかな序盤から、先に厳しい手を繰り出したのは井山だった。立会人の趙治勲名誉名人は「井山天元の手に、許八段が少しひるんだように見え、それが最後まで響いた」とコメント。劣勢を意識した許が勝負手を放ち難解な戦いとなったが、井山が読み勝ち、黒番中押し勝ちを収め、スコアを一勝一敗のタイに戻した。許は「ここまで二局ともまずい手が多く出たので、三局目はよい碁を打ちたい」と気を引き締め直し、井山も「第三局も精一杯準備して臨みたい」と語った。第三局は、少し間があき、11月22日、福岡県久留米市「ホテルマリターレ創世 久留米」にて行われる。

棋聖戦、挑戦者決定トーナメント始まる

 井山裕太棋聖への挑戦権をかけた棋聖戦挑戦者決定トーナメント(読売新聞社主催)がスタートしている。10月7日に行われた一局目、Bリーグ優勝の本木克弥八段とCリーグ優勝の鈴木伸二七段の一戦は、鈴木の黒番5目半勝ち。10月21日には、勝者、鈴木とAリーグ優勝の一力遼八段の一戦が打たれた。険しい競り合いから、鈴木の後悔の一手を咎めた一力が攻勢となり、そのまま流れを手放さずに早い終局となった。一力は、7月から9月に公式戦16連勝を記録し、10月にも世界戦で8強入りを決めるなど、充実した内容で快進撃を続けている。棋聖戦は現在のシステムになってから全て「Sリーグ優勝者」が挑戦者となっているが、好調の一力がこのジンクスを打ち破れるか注目される。Sリーグ2位の高尾紳路九段との次局は、11月4日に行われる。

囲碁ニュース [ 2019年10月16日 ]

女流2強のタイトル戦、初戦は藤沢が勝利

 藤沢里菜女流本因坊に、上野愛咲美女流棋聖が挑戦する第38期女流本因坊戦五番勝負(共同通信社主催)が開幕。10月9日、岩手県花巻市の「佳松園」にて第一局が打たれた。両者の対戦成績は藤沢の4勝、上野の3勝と拮抗し、今年に入ってからは、女流棋聖戦、女流立葵杯に続く三回目のタイトル戦となる。竜星戦決勝戦で一力遼八段を崖っぷちまで追い詰めた力強さが記憶に新しい上野だが、藤沢も女流四冠の「貫録」をまとい一般棋戦でも活躍を続けている。今まさに「打てている」女流2強の激突だ。とりわけ早碁が得意なイメージのある上野は、今回の持ち時間「4時間」は初体験。序盤は両者共に早いペースで進み、黒番の上野が力強い一着からリードを奪った。その後の戦いで、上野はシノギの強さも見せ、優勢を築く。藤沢は「左下の白模様も荒らされてはひどいです。開き治りの気分でした」と振り返る。だが、藤沢は辛抱して追走し、終盤に入っても集中力を切らさなかった。逆に上野にミスが出て、ヨセで藤沢が抜き去り、308手まで白番3目半勝ちを治めた。敗れた上野は「中盤まで考えすぎて集中力を欠いてしまい、最後のほうは5か所くらいで錯覚していました」と反省する。そして「3連敗すると悲しいので、ひとつは勝てるように」と前を見た。「最後のほうでようやく勝ちになったと思いました」と振り返る藤沢は「これからも精一杯がんばります」と語った。注目の第二局は、10月27日に秋田県能代市の旧料亭「金勇」で行われる。

天元戦が開幕。許が先勝

 井山裕太天元に許家元八段が挑戦する第45期天元戦五番勝負も開幕した。現在四冠の第一人者井山だが、碁聖戦、名人戦の舞台には現れず、久々のタイトル戦登場となった。白番の井山の実利と黒番の許の模様という展開から、黒模様の荒らしに成功した井山が主導権を奪った。ヨセに入った時点では地合いでリードする白が優勢だったが、粘る許の猛攻が始まり難解な戦いに突入。両者秒読みの中、許が中央の白の大石を仕留めて決着をつけた。許は、昨年の碁聖戦3連勝に続き、井山とのタイトル戦を4連勝としたが、「普通にヨセると悪いので無理気味に大石を取りにいきましたが、正しく打たれていたらシノがれていました。ずっと苦しかったので、とりあえず一局勝ててうれしい。次局は内容の良い碁を打ちたい」とホッとした表情で控え目に語った。井山は「最後は残念な形になったが、気持ちを切り替えて納得のいく碁を打ちたい」と巻き返しを誓った。立会人の小県真樹九段は「許八段が執念で逆転しました。次局も熱戦になるでしょう」と期待を寄せた。第二局は10月21日に、北海道虻田郡ニセコ町の「ニセコ温泉郷いこいの湯宿 いろは」で打たれる。

囲碁ニュース [ 2019年10月9日 ]

張栩、一力を降して早碁王者に

 10月5日、阿含・桐山杯第26期全日本早碁オープン戦(日本棋院主催。阿含宗特別協賛)の決勝戦が、京都市山科区の阿含宗釈迦山大菩提寺行われた。決勝の舞台に勝ち上がったのは、七番勝負の渦中にあった張栩名人と、竜星戦に続いて「連覇」を狙う一力遼八段。結果は204手まで、張の白番中押し勝ちとなった。張は「一力さんには久しぶりに勝てました。まさか優勝できるとは思っていなかったのでうれしい」と振り返り、予定されている日中決戦にも「精一杯自分の力を出し、勝ちをもぎとりたいですね」と笑顔で話した。敗れた一力は「今日の碁はミスが多かった。またこの舞台に戻ってこられるようにがんばります」と語った。張の本棋戦の優勝は7年ぶり。優勝回数は5回目とし、井山裕太四冠を抜いて単独トップとなった。

孫、二連勝で新人王獲得

 第44期新人王戦三番勝負(しんぶん赤旗主催)の第1局が9月30日に、第2局が10月7日に、いずれも東京・市ヶ谷の日本棋院で行われた。三番勝負に勝ち上がったのは、昨年名人リーグ入りを果たして昇段を決めたため今年が同棋戦出場のラストチャンスとなった孫喆七段と、昨年19連勝をあげるなどの活躍で注目された小池芳弘四段。第1局は難解な戦いの碁を孫が読み勝って、黒番5目半勝ちを収め、第2局も孫が大石を仕留めての白番中押し勝ちとなった。孫は「今日決めることができてよかった。結果を残せたので自信にし、他の棋戦もがんばりたいです」と気を引き締め、小池は「決勝まで残れたことを自分の実力だと自信にかえ、来期以降も優勝を目指したい」と抱負を語った。

芝野快挙達成。史上初「10代名人」誕生

 張栩名人に芝野虎丸八段が挑戦する第44期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第五局が、10月7、8の両日、静岡県熱海市の「あたみ石亭」で打たれた。8日午後7時7分、252手までで張が投了を告げ、白番中押し勝ち。芝野虎丸新名人が誕生した。19歳11カ月の七大タイトル獲得は、井山裕太四冠の20歳4カ月の記録を塗り替え、入段から5年1カ月での七大タイトル獲得は許家元八段の5年4カ月の最短記録を更新した。三代タイトル獲得者は規定により九段に昇段する。九段昇段も最年少・最速記録となる。
 張は本局を「苦しいと思う局面が多く、明らかに僕のほうがミスが多かった。内容的に完敗でした」と振り返った。局後、大勢の報道陣に囲まれ記者会見に臨んだ芝野は、「僕なんかが名人でいいのかなという気持ちはあります。でも、なかなか挑戦者になれず10代のうちは厳しいかなと思っていたので、勝ててよかったです」とはにかみながら答えた後、「これに満足せずに頑張りたいと思います。できれば、井山先生のようにタイトルを取っていきたい」と勝負師らしい表情で淡々と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2019年10月2日 ]

芝野、最年少名人に王手

 張栩名人に、芝野虎丸八段が挑戦している第44期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は、第三局が9月17、18の両日に岐阜県岐阜市の「岐阜グランドホテル」にて、第四局が25、26日の両日に兵庫県宝塚市の「宝塚ホテル」にて行われ、いずれも芝野が勝利した。対戦スコアは挑戦者の3勝1敗となり、史上最年少名人に王手をかけた。また、第六局目までに名人を獲得すると史上初の10代の名人が誕生する。芝野は「先に三勝できたのですが、もう一回勝たないとあまり意味がないので、これまでどおりがんばりたいです」と語り、追い詰められた張は、唇をかみ苦笑しながら「まあ諦めずにがんばるしかないですね」と語った。一気に芝野が駆け抜けるのか、張が踏ん張り巻き返すのか、注目の第五局は、10月7、8日に静岡県熱海市の「あたみ石亭」で行われる。

一力遼八段、カカトで残して「竜星」連覇

 全棋士が参加できる一般棋戦で史上初の女流棋士優勝なるか。CS放送の生中継もされる大注目の中、一力遼八段と上野愛咲美女流棋聖による、第28期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)の決勝戦が東京・市ヶ谷の日本棋院会館内スタジオで打たれた。序盤で優勢を築いた一力は、着実な足取りで打ち進めていき、このまま勝利を手中にするかと思われた。しかし、手堅い勝ちコースからはずれると、局面が次第に紛れていく。参考にされていたAI(人口知能)の勝率を示す黒番の上野の数字は、一ケタから20パーセント、40パーセント…と上昇していった。そして、上野の攻めが炸裂し、中央の白の大石を追い詰めていくと、AIの勝率も90パーセントを超えた。解説の王銘琬九段は「白のシノギが見えません」、対局場で観戦していた芝野虎丸八段、大西竜平四段ら検討陣も「黒が勝ちそう」と見守った。しかし、「取れないと思っていた石が取れそうになって動揺して……間違えちゃいました」と局後の上野。その一手を捉えた一力が、文字どおり必死のシノギから珍しい「カケメ生き」にこぎつけ、大逆転の優勝と自身初の二連覇を決めた。一力は、「負けも覚悟しながら打っていたので、勝つことができ、正直ホッとしています」と冷や汗の一局を振り返った。強者一力をここまで追い込んだ上野にも、見事に逆転を果たした一力にもたくさんの拍手が送られたこの大熱戦は、語り継がれる一局となるだろう。

囲碁ニュース [ 2019年9月30日 ]

過去から現代を知る 囲碁史会

 囲碁史会という組織をご存知だろうか。その名の通り囲碁の歴史を研究する会である。現在ではAIの登場で囲碁が大きく変わった。序盤の研究や対局した碁はAIにかければすぐ評価値を出してくれる。プロ棋士に限らずアマチュアも今ではAIを使って研究している。そして「AIはこう打つと言っている」という言葉が出てくる。そんな中でも古碁も注目されている。古碁は文字通り古い碁、江戸時代から明治もしくは大正までに打たれた碁であるが、AIが示している手が江戸時代の名手と言われる打ち手の手だったりする。碁聖といわれた本因坊道策などそうである。最近ではAIで江戸時代の碁を調べてみるとその強さが改めてわかったりする。さらに古碁を扱った囲碁の本も再び出版されはじめた。
 さて、囲碁史会という組織であるが、古碁の研究をするのではなく歴史的な出来事、その人物になどについての研究をする。囲碁史会は奇数月の最終金曜日に市ヶ谷の日本棋院で行われる。9月27日の会では幻庵因碩全集出版の打ち合わせが行われていた。幻庵因碩は本因坊丈和のライバルとして知られ、百田尚樹の小説「幻庵」の主人公になっている。
 「最近は皆AIばかりでこうした江戸時代の碁に目を向けてくれない。だからこそこういったものを作っていかないといけない」と出版の中心になっている方は語ってくれた。この日は他にも故・岩本薫九段の顕彰碑建立についても語られていた。
 囲碁史会は福井正明九段を顧問、十段戦などに対局場を提供している大阪商業大学の谷岡一郎学長を会長として囲碁文化の保存・研究を行っている。日本棋院の100周年には囲碁史会として何らかの成果を発表したいと意欲を燃やしている。

囲碁ニュース [ 2019年9月18日 ]

上野愛咲美女流棋聖、決勝進出の快挙

 全棋士が参加できる一般棋戦で、女性初のベスト4入りを果たした上野愛咲美女流棋聖が、さらに記録を更新。9月14日、第28期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)の準決勝戦が打たれ、上野が許家元八段に白番中押し勝ちを収め、決勝進出を決めた。注目を集めCS放送にて生中継される中、上野は普段通りの落ち着いた様子で対局に臨み、序盤から優勢を築き、中盤にもつれた後も冷静に立て直して競り勝つ堂々の勝利。SNSには棋士たちからも「強い!」「強いすぎる」の声があがった。許は「序盤から(苦しいどころか)はっきり駄目だと思っていました。途中、中央の石を取ったときには難しくなったと思ったのですが、その後正確に打てなかったので仕方ありません。はっきりした勝つチャンスはなかった。完敗です」と振り返った。上野は「許先生の読みになんとかついていけました。勝てたのは運がよかったです。せっかくのチャンスなので、決勝戦もこのまま気楽に打てればいいかなと思います」と、気負った様子もなく笑顔で話した。
 16日に打たれた一力遼八段と鈴木伸二七段の一戦は、鈴木が優勢を築くも、一力がぴったりと追走し、勝負所で力を発揮して抜き去った。連覇を期す一力と上野の大注目の決勝戦は、23日に打たれる。

仲邑菫初段、初めての男性棋士との公式戦に勝利

 最年少棋士として注目を集めている仲邑菫初段が、16日、大阪市北区の日本棋院関西総本部で打たれた第59期十段戦の予選で、古田直義四段に235手まで白番1目半勝ちを収めた。七大タイトル戦を打つのも男性棋士と打つのも初めてで、持ち時間3時間も初体験だった中、劣勢の碁を最後に抜き去る「ヨセ」の強さを見せた。仲邑は「ヨセで考えていたら時間を使い切ってしまい、結構疲れました。最後の方で勝ったと思いました」と笑顔で話した。デビュー戦で敗れたものの、その後に三連勝とし、今後の活躍に大きな期待が寄せられる。

囲碁ニュース [ 2019年9月12日 ]

名人戦・台湾対局にて、芝野が一勝を返す

 張栩名人が先勝して迎えた第44期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)の第二局は、9月10、11日の両日、台湾・台北市の「シャングリ・ラ ファーイースタン プラザホテル台北」にて行われ、芝野虎丸八段が195手黒番中押し勝ちを収めてスコアを一勝一敗のタイに戻した。母国開催となった張は、前夜祭で「感無量。感謝の気持ちを力に変えて、明日はいい碁を打ちたい」とあいさつし、芝野虎丸八段は「アウェイの対局で、張先生を応援されている方がほとんどでしょうが、いつもどおりがんばります」と臨んだ。一日目は、芝野の研究をはずし、柔軟で積極的な攻めに向かった張が攻勢に立つものの、妥協をしない一手に芝野が反発して難戦に突入。一日目の長手数新記録となる120手目を張が封じた。二日目は、張が、黒に地を与えて厚みを築く封じ手から、中央の黒を取りかけに向かい、「取るかしのぐか」の難しい激戦となった。白にチャンスはあったようだが、芝野が粘り抜き、大石をしのいで勝利をつかんだ。地元の大盤解説会場には、150名の集客を予定していたところに400名が集まり、終局後に会場に現れた両対局者に大きな拍手が送られたという。芝野は「一回勝てたのでホッとした部分があります。次も自分らしく打てたらと思います」、張は「結果を残せなかったのは残念ですが、まずい碁でもなさそうだったので。まだまだこれから長期戦ですから、次局以降もがんばりたいと思います」と語った。
 第三局は9月17、18の両日、岐阜県岐阜市の「岐阜グランドホテル」にて行われる。

竜星戦、上野愛咲美女流棋聖らベスト4が出揃う

 第28期竜星戦(株式会社囲碁将棋チャンネル主催)のベスト4が出揃った。4名は、連覇(通算三期目)を狙う一力遼竜星、碁聖位を失ったものの天元戦挑戦者に名乗りを上げている許家元八段、「井山キラー」の本領を発揮して井山裕太四冠を降した鈴木伸二七段、そして、17歳の上野愛咲美女流棋聖だ。堂々の内容で元名人の高尾紳地九段、現タイトルホルダーの村川大介十段を退けての快挙で、全棋士が参加できる一般棋戦で女性棋士がベスト4に入るのは史上初となる。準決勝の許対上野戦は9月14日、一力対鈴木戦は16日、決勝戦は23日に、それぞれ午後8時からCS放送で生中継される。上野は「場違いな感じで夢のよう。準決勝は生中継なので早く終わらないようにがんばります」と、盤上の厳しさとは大きなギャップのあるおっとりした口調で抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2019年9月6日 ]

名人戦が開幕。張名人が大逆転で先勝

 史上最年少の名人誕生なるか――。張栩名人に芝野虎丸八段が挑戦する第44期名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)が開幕した。「自分が碁を始めたころに活躍されていた張名人の相手になるとは不思議」と語る19歳の芝野に対して、張は「海外では10代の活躍は当たり前。もうすぐ40になる僕のタイトル保持のほうがすごい記録」と語る。8月27、28の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で打たれた第一局は、張栩名人が辛抱の末、大逆転で黒番6目半勝ちを収めた。一日目は、張が気合いのこもった手を繰り出すなか、芝野が攻めを巧みにかわしながら右辺でポイントをあげ優勢を築き、芝野が封じて終了した。二日目に入り、「左上一帯の白模様を無難にまとめれば挑戦者の勝ち」と評される状況で芝野は妥協せずに打ち進めたが、その打ち過ぎを捉え、「勝負手気味に打った手がうまくいった」と張は振り返る。難解な手所を制し白模様を大きく荒らした張が逆に優勢に立ち、そのまま逃げ切った。「中盤で失敗しました」と芝野。初めての二日制の洗礼を受けたかっこうだ。先勝した張も、「もっといい碁を打たなければ」と気を引き締めた。第二局は、張の故郷である台湾・台北市の「シャングリ・ラ ファーイースタン プラザホテル台北」にて、9月10日、11日に行われる。

囲碁ニュース [ 2019年8月29日 ]

許、天元戦挑戦者に

 井山裕太天元への挑戦権をかけた第45期天元戦(新聞三社主催)の挑戦者決定戦が、8月15日に、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。許家元碁聖が余正麒八段を、佐田篤史四段は河野臨九段をそれぞれ準決勝で降して本局に臨んだ。佐田は、最近急成長の関西棋院のホープ。本戦に入ってから、本木克弥八段、張栩名人、河野九段と強敵を倒す快進撃で初のタイトル挑戦に大きな期待がかかったが、序盤のミスで優勢を奪われ、そのまま寄り切られる流れとなった。結果は許の白番中押し勝ち。佐田は「本戦を通じて、強くなる手応えをつかめたのが収穫です。次の機会を目指して頑張りたい」と前向きなコメントを残した。許は「天元戦は相性の良さを感じていて、挑戦者になれて嬉しい」と笑顔で語った。井山天元の五連覇なるか、許が阻むか、注目の五番勝負は、10月11日、岐阜県岐阜市「都ホテル岐阜長良川」にて開幕する。

羽根、8期ぶりに碁聖位を奪取

 挑戦者の羽根直樹九段二連勝の後、許碁聖が二連勝を返して迎えた第44期碁聖戦挑戦手合(新聞囲碁連盟主催)の第5局が、8月23日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。序盤、羽根の果敢なツケから中央で競り合いが始まり、以降も羽根が主導権を握り続けた。コウ争いが絡む険しい攻防の末、150手まで、羽根が白番中押し勝ちを収め、8期ぶりに碁聖位を奪還。許の初防衛はならなかった。敗れた許は「布石の構想がおかしかったのかもしれない」と本局を振り返り、「内容的にはいい碁も悪い碁もあった。精一杯打てたので、結果は仕方ありません」とシリーズを振り返った。羽根は「難しい戦いで、全く読み切れていませんでした。シノギがあったのは運がよかったです。最後、力を出し切れ、中部にタイトルを一つ持ってこられたのはよかった」と笑顔で語った。昨年、井山裕太六冠(当時)から名人位を奪った張栩名人のがんばりに「刺激を受けた」と語り、「井山さんの一強時代から、賑やかな群雄割拠の時代にしたい。自分はこの一、二年が勝負」と語っていた羽根。見事に張栩名人に続き、その言葉通り、日本囲碁界が賑やかになってきた。

囲碁ニュース [ 2019年8月21日 ]

アマ本因坊 大関さん二度目V

会場の様子

 第65回全日本アマチュア本因坊決定戦全国大会が8月17日、18日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院で行われた。アマ名人戦では20代の若手の活躍が目立ったが、アマ本因坊戦では昨年の優勝者平岡聡さんを中心とするベテランの巻き返しがあるのかというところも注目された。
 1日目は64人を8つのリーグにわけ、各1人が決勝トーナメントに進む。各ブロック順当に実力者が勝ち上がった。やはり若手の活躍が目立ったが、平岡さんがアマ名人戦でベスト4に入った早稲田大学の津田裕生さんを破るなど意地を見せつけた。ベスト8は平岡さん1人が40代で残る7人が20代という結果になった。その平岡さんもベスト8で姿を消した。
 決勝に進出したのはアマ名人戦で全国優勝、それに続きアマ名人三番勝負でも勝利した大関稔さん(神奈川)と昨年のアマ名人で今年学生本因坊になった栗田佳樹さん(東京)の2人。大関さんは安定した内容で勝ち進んできた。栗田さんは難しい内容の碁もあったが持ち前の終盤の強さを発揮し決勝進出となった。両者は7月末のアマ名人戦三番勝負でも戦っており、大関さんが2-0でアマ名人に返り咲き昨年のリベンジを果たしている。栗田さんとしては今度は自分がという思いもあったであろう。両者ともに終盤に自信を持っており息の長い碁になることが予測された。最後まで打たれたが途中から大関さんが優勢になるとそのままヨセで追いつかせず二度目の優勝を果たした。

囲碁ニュース [ 2019年8月15日 ]

芝野が名人戦挑戦者。プロ入り後、史上最短記録

 第44期名人戦(朝日新聞社主催)の挑戦者決定リーグ戦・プレーオフが、8月8日に打たれ、芝野虎丸七段が河野臨九段に黒番半目勝ちを収め、張栩名人への挑戦権を獲得した。規定により、八段昇段も決めた。19歳9カ月での7大タイトル挑戦は、井山裕太四冠の持つ19歳3カ月、一力遼八段の19歳3カ月に続く史上三番目の若さ。プロ入り4年11カ月での7大タイトル挑戦は、史上最速記録となる。また、第6局までに名人を獲得すれば、史上初の10代の名人が誕生する。初の7大タイトル挑戦をかなえた芝野は「なぜ挑戦者になれないのかと周りに言われていたので、とりあえず安心しました。10代初タイトルの記録は気にせず、自分の力を出し切りたい」と語った。終盤まで粘り続けた河野は「リーグ終盤は碁の内容がものすごく悪かった」と振り返り、「今日はいい碁を打ちたいと思っていましたが……仕方がないです。また腕を磨いて来期もがんばります」と語った。
 張栩名人と芝野の対戦成績は、張の1勝4敗と、芝野が勝ち越している。注目の七番勝負は、8月27日、28日に東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」にて開幕する。

許碁聖、スコアをタイに戻す

 許家元碁聖に羽根直樹九段が挑戦する第44期碁聖戦挑戦手合(新聞囲碁連盟主催)の第4局が、8月9日、愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で打たれた。許は、初戦から二連敗の苦しい展開となったが、黒番中押し勝ちを収め、前局に続いて二連勝でスコアをタイに戻した。許は「自分らしい碁を打ちたい」、羽根は「第3、4局は内容が悪かった。第5局はいい碁を打ちたい」と、それぞれ抱負を語った。決着のつく最終局は、8月23日、東京都千代田区の日本棋院で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年8月8日 ]

許家元碁聖、一勝を返す

 挑戦者の羽根直樹九段の二連勝で迎えた第44期碁聖戦挑戦手合(新聞囲碁連盟主催)の第3局が、7月27日に石川県金沢市の「北國新聞会館」で打たれた。白番の許家元碁聖が難解な大斜定石を仕掛け、羽根が受けて立った序盤は、検討陣からはやや白よしの評価。中盤に入ると羽根に後悔の一手があり、その後「絶好点だった」と羽根が振り返る白86のボウシから許が一気に優勢を築くと、そのまま押し切る形で羽根を投了に追い込んだ。一勝を返した許は「カド番というのは変わらないので、次局も精一杯がんばりたい」と語り、羽根も「次も精一杯打つだけ」と語った。第4局は8月9日、羽根の地元、愛知県名古屋市の日本棋院中部総本部で行われる。

名人戦リーグは、芝野と河野のプレーオフに

 張栩名人への挑戦権をかけた第44期名人戦リーグ(朝日新聞社主催)は、最終一斉対局が8月1日に東京と大阪で行われた。ここまで、リーグ内の順位上位から、井山裕太四冠、芝野虎丸七段、河野臨九段が2敗で並ぶ混戦レース。三者はそれぞれ羽根直樹九段、鈴木伸二七段、山下敬吾九段との対戦で、全員が勝てば、順位上位の井山と芝野がプレーオフを戦うという状況だった。まず、劣勢だった芝野が逆転で勝利を収め、プレーオフ以上を確定させた。続いて優勢だった井山が、緩めず最強を追及した一手から逆に主導権を奪われ、逆転負け。最後に残った河野は、劣勢から我慢を重ねて終盤に逆転。本因坊リーグに続いて、芝野と河野のプレーオフに進むこととなった。挑戦者をかけた大一番は、8月8日に行われる。

囲碁ニュース [ 2019年7月26日 ]

高校選手権全国大会

 7月22日から14日にかけて東京市ヶ谷の日本棋院で第43回全国高校囲碁選手権全国大会が行われ、全国から集まった高校生が熱戦を繰り広げた。22日、23日には団体戦、23日の午後から24日は個人戦が行われた。
 男子団体戦では今年の世界アマ選手権で日本代表として戦った川口飛翔さんが主将を務める筑波大附属駒場高校(東京)と開成高校(東京)の東京同士の決勝となった。筑波大附属駒場は川口さんという絶対的エースに信頼を寄せ、自分が勝てばチームが勝てると副将、三将は優勝に闘士を燃やしていた。開成も過去に3連覇するなど三人とも実力が拮抗しており非常にバランスが取れたチームになっている。途中から主将戦は筑波大附属駒場の川口さんに形勢が傾き両者ともにあとの二人に注目することになった。主将戦を筑波大附属駒場が、三将戦を開成が取り、副将を半目差で制した開成が6度目優勝を果たした。
 女子団体戦は洛南高校が安定した戦いぶりで2連覇を果たした。
 23日午後からは個人戦が行われ、男女とも注目選手が多く登場した。男子では昨年準優勝の鈴木智大さん(神奈川)、世界アマ選手権全国大会でベスト4経験のある北芝礼さん(愛知)、中学生名人経験のある森田拳さん(京都)など高校の大会におさまらず全国で活躍する選手が多く登場した。予選リーグが終わり16名が決勝トーナメントに進出するが、この3名が同じブロックに入ることになった。鈴木さんが昨年の雪辱を果たし見事優勝した。
 女子は岩井温子さん(京都)が3連覇なるかということが注目を集めた。岩井さんは安定した戦いぶりで決勝に進出。もう一方は昨年準々決勝で岩井さんに敗れた加藤優希さん(愛知)が勝ち上がった。熱戦の末、加藤さんが昨年の雪辱を果たし優勝、岩井さんの3連覇はならなかった。

囲碁ニュース [ 2019年7月24日 ]

羽根、二連勝で碁聖奪取に王手

 許家元碁聖に、挑戦者の羽根直樹九段が先勝してスタートした第44期碁聖戦挑戦手合(新聞囲碁連盟主催)の第2局が、7月19日、東京の日本棋院本院で行われた。中盤、黒番の許が左下の白の大石に襲いかかったシーンは、シノギを得意とする羽根が冷静に対処。終盤の難解なコウ争いで羽根がリードを奪い、そのまま押し切った。216手まで、白番中押し勝ちを収め、羽根が8期ぶりの碁聖位に王手をかけた。許は「ミスがいくつかあったので、次局は内容のいい碁を打ちたい」と巻き返しを誓い、羽根は「いい流れが来ているので、この流れが途切れないように一生懸命打ちたい」と語った。第3局は、27日に石川県金沢市の北國新聞会館で打たれる。

趙治勲名誉名人、マスターズカップ4回目の優勝

 50歳以上の七大タイトルホルダー経験者(16名に満たない場合は予選を行う)のトーナメント戦で行われる第9回フマキラー 囲碁マスターズカップの決勝戦が7月20日、東京の日本棋院本院で行われた。決勝に勝ち上がったのは、趙治勲名誉名人と小松英樹九段。序盤から黒番の趙が「らしさ」を見せる打ち回しでファンを楽しませる内容。形勢は、白の一手の緩着で逆転したようだ。149手まで、黒番中押し勝ち。趙が4年ぶり4回目の優勝を果たし、タイトル総獲得数の記録を75に伸ばした。大盤解説会場で解説と聞き手をつとめた河野臨九段と謝依旻六段を前に、局後の趙は「活躍できるのはシニア棋戦だけになりましたが、河野さんにも謝さんにも勝てるように、これからも精進していきたい」と話し会場を沸かせた。

囲碁ニュース [ 2019年7月17日 ]

井山、本因坊戦8連覇達成

 本因坊文裕(井山裕太四冠)3勝、挑戦者の河野臨九段2勝で迎えた第74期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第6局が、7月3日、4日に大阪府吹田市の「ホテル阪急エキスパーク」で行われ、黒番の文裕が171手まで中押し勝ち。歴代単独3位の本因坊戦8連覇を達成した。序盤、河野が力強く切りを入れ、戦いに突入するも、この切りが「後々まで負担になってしまった」と河野は振り返る。井山の打ち手が上回り、その後は流れを渡さずゴールに向かった。二連敗からの四連勝とシリーズの流れも渡さぬ見事な防衛となった。敗れた河野は「自分なりに頑張った結果。仕方ありません」と語った。文裕は「チャンスのあった2局目を落とし、好調な河野さんに押されるスタートで、失冠も覚悟した」という。しかし、「第3局は運がよかっただけですが、4局目以降は自分なりに今の力を出し切れました。防衛できて素直に嬉しいです」とシリーズを振り返った。

仲邑菫初段、最年少白星

 今年四月に史上最年少でプロ棋士になった仲邑菫初段が、7月8日、公式戦2局目となる女流棋聖戦の予選で、田中智恵子四段に勝利した。10歳4カ月は、最年少勝利記録。藤沢里菜女流本因坊が持っていた11歳8カ月の記録を大きく塗り替えた。仲邑は、大勢の記者に囲まれて、はにかみながら「嬉しい」と喜びを語った。

藤沢、扇興杯を制し、女流四冠に

 藤沢里菜女流本因坊と謝依旻六段による第4回扇興杯女流最強位戦の決勝が、14日、滋賀県東近江市で行われ、281手まで、大激戦の末、最終盤に逆転して、黒番の藤沢が1目半勝ちを収めた。第2回以来の2度目の優勝で、平成29年11月以来、自身二度目の女流棋戦四冠達成となった。準決勝で上野愛咲美女流棋聖を降し、無冠返上を期した謝は「また一から頑張ります」とコメント。藤沢は「二転三転、四転五転する難しい対局でしたが、また来年、この場で成長した姿を見せられたらと思います」と前を向き続ける抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2019年7月10日 ]

アマ名人戦 大関さんV

 第14回朝日アマチュア囲碁名人戦全国大会が7月6日、7日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において行われた。招待選手を含む各57名が栗田佳樹アマ名人への挑戦権を目指した。
 1回戦から世界アマチュア選手権で今年日本代表として出場した川口飛翔さん、何度もアマチュア日本一になっている平岡聡さんが敗退する中、招待選手が順当に勝ち上がった。2日目のベスト8の内6名が招待選手となった。その中でアマ名人準優勝経験のある夏冰さん(招待)を破って2日目に進出した片山浩之さん(東京)の活躍が注目を集めた。
 ベスト4は全員が20代、前アマ名人の大関稔さんと学生十傑戦全国優勝の津田裕生さん、元アマ名人の平野翔大さんと昨年準優勝の星合真吾さんの対戦となり、大関さんと平野さんが決勝進出となった。
 大関さんと平野さんは一昨年のアマ名人戦挑戦三番勝負と同じ顔合わせであり、学生大会の決勝で何度も優勝を争っている。白熱の熱戦を大関さんが半目差で制し、全国優勝となり栗田佳樹アマ名人への挑戦権を獲得した。昨年は栗田さんが大関アマ名人に挑戦、勝利をおさめている。立場を変えての二年連続の対戦となる。
 大関さんは学生大会で大活躍し多くの学生タイトルを獲得、さらにアマ名人、アマ本因坊でも全国優勝するなどした。大関さんは「今年から社会人になり囲碁に割く時間は少なくなるが、これからも活躍できるように頑張りたい」と語っていた。
 栗田アマ名人との三番勝負は7月27日、28日に行われる。栗田アマ名人防衛か、大関挑戦者返り咲きなるか、注目の三番勝負である。

囲碁ニュース [ 2019年7月3日 ]

碁聖戦、羽根直樹九段が先勝

 許家元碁聖に、羽根直樹九段が挑戦する第44期碁聖戦挑戦手合(新聞囲碁連盟主催)が開幕した。井山裕太四冠が七大タイトルの挑戦手合に出場しないのは4年ぶりとなる。許が勝てば初防衛、羽根が勝てば8期ぶり二度目の碁聖位で、新旧対決としても大いに注目が集まるシリーズだ。羽根は「久しぶりの大舞台なので、しっかり準備していい碁を打ちたい」と語り、迎え撃つ許も「羽根先生は最近調子がいいですよね。僕も自分なりに準備をして、力を出し切り、いいパフォーマンスを発揮したい」と臨んだ。
 五番勝負の第1局は、6月30日に京都市左京区の「金戒光明寺」で打たれた。対局室となった「松の間」は枯山水の庭園に接しており、冷房設備がないため、重さ35キロの氷柱が2本持ち込まれ、扇風機の風を氷に当てたその冷風で両対局者は暑さをしのいだという。
 序盤、左上の数子を捨てて右下に先着し、逆に白への攻めを見たのが好判断で、ここで羽根が少しポイントをあげた。以降は、許にやや焦りも出たようだ。羽根は下辺で30子もの白の大石を仕留める力を出して勝負を決め、155手まで中押し勝ちを収めた。第2局は、7月19日に日本棋院東京本院にて行われる。

囲碁ニュース [ 2019年6月26日 ]

テレビ囲碁アジア選手権、韓国選手の三連覇

 第31回テレビ囲碁アジア選手権(主催:NHK、CCTV、KBS、日本棋院、中国棋院、韓国棋院)が、6月21日から23日までの3日間、東京都文京区「ホテル椿山荘 東京」で行われた。日本、中国、韓国から各2名と前年度優勝者によるトーナメント戦で、日本からはNHK杯で優勝した一力遼八段と、準優勝の井山裕太九段が参戦。久々の日本勢優勝に期待がかかったが、一力は中国の丁浩六段に、井山は韓国の申旻埈九段に惜敗し、一回戦で姿を消した。決勝戦には、丁と韓国の申眞諝九段が勝ち上がり、非公式ながら世界ランキング1位とされる申が、粘り強さを発揮して優勝を決めた。「終盤までは劣勢でしたが、相手のミスに助けられて勝つことができました。内容的には不満が残りますが、優勝できたことはとてもうれしい」と申。なかなか笑顔を見せなかったが、ゲスト棋士として招かれていた仲邑菫初段から花束を手渡されると、ひざをかがめて受け取りながら、思わず優しい笑みがこぼれていた。一力からは「結果が残せませんでしたので何も言えませんが、戦った感触としては、チャンスもありました。来年もまずNHK杯で結果を残し、この舞台に戻って一つでも多く勝てるようにがんばりたいです。自分が中心となり、若手皆で強くなっていきたいと思います」と頼もしい決意が聞けた。

囲碁ニュース [ 2019年6月20日 ]

本因坊戦、文裕スコアを逆転に3-2に

 挑戦者・河野臨九段の二連勝に、本因坊文裕(井山裕太四冠)が一勝を返してシリーズ前半を終えた第74期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)は、第4局と第5局が時間をおかず行われ、いずれも井山が勝利。スコアを3勝2敗と逆転し、本因坊8連覇に王手をかけた。
 6月13日、14日に静岡県沼津市の「旧沼津御用邸」で打たれた第4局は、序盤で河野がコウを仕掛けたまではよかったものの、コウ材の選択に問題があったと振り返る。コウ争いの振り替わりでリードを築いた井山が、主導権を譲らず黒番中押し勝ちを収めた。6月18日、19日に長野県松本市の「松本ホテル花月」で打たれた第5局も、一日目で井山がやや打ちやすい流れとなったようだ。二日目も優勢を意識した井山が河野の猛追を冷静に振り切り、白番4目半勝ちとなった。河野は、第3局で「勝勢」とも言われた好局を大逆転された終局後も、笑顔で検討を続け、周囲の関係者を感動させたという。しかし、この一局でシリーズの流れを変えたのは、七番勝負の経験が豊かな井山ならではの精神力。ここから河野がどう立て直すか。第6局は7月3日、4日に大阪府吹田市の「ホテル阪急エキスポパーク」にて行われる。河野は「ずっと苦しかった。次戦は少し間があくので、少しでも状態がよくなるよう努力したい」、井山は「勝負はこれからだと思って一生懸命打ちたい」と語った。

藤沢2連勝で女流立葵杯を防衛

 第6期会津中央病院・女流立葵杯三番勝負は、6月14日に第1局、16日に第2局が、いずれも福島県会津若松市「今昔亭」にて打たれた。藤沢里菜女流立葵杯が、上野愛咲美女流棋聖の挑戦を二連勝で退け、前身の会津中央病院杯から合わせて通算4期目となる三連覇を果たした。藤沢は、女流本因坊、女流名人と合わせた三冠を堅持し、女流棋戦の通算優勝回数を11と伸ばした。上野は1局目、2局目共に、布石で悪くしたと振り返る。「1局目は、なんとか難しい局面まで持っていけたのですが、里菜先生のいい手に対応できませんでした。2局目は、1時間以上長考して、いい手を打てず、もう長考はやめようと思いました」と笑顔で振り返りつつも「もう一局打ちたかったのですが」と無念さものぞかせた。今年に入り、上野はここまで21勝11敗だが、国内戦に限ると17勝3敗と一般棋戦でも大活躍している。最強の挑戦者を圧巻の強さで降した藤沢に、小林覚九段は「防衛戦は固くなりがちですが、挑戦者の気持ちで積極的に伸び伸び打っていた」とコメントを寄せた。藤沢は「今は碁を打ちたくてたまらない」と言う。女流界をリードする二人の成長と活躍に、今後も期待したい。

囲碁ニュース [ 2019年6月12日 ]

本因坊文裕(井山裕太)、大逆転で一勝を返す

 ここまで挑戦者、河野臨九段の二連勝となっている第74期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第3局が、北海道函館市の「五稜郭・函館奉行所」で行われ、本因坊文裕(井山裕太)が白番半目勝ちを収めて一勝を返した。本局は、序盤から黒番の河野が自信の打ち回しを見せ、優勢を築いて一日目を終えた。井山は「一日目のフリカワリの時点では全然ダメ。二日目はさらに悪くなってしまった。投了も考えた」と振り返る。現地検討陣からは「河野の名局」の声もあがったという。しかし、井山は諦めずに追いかけ、一方の河野にはわずかな油断があったようだ。最後の最後に井山が抜き去り、大逆転での勝利となった。河野は「1目計算間違いをしていて、安易に打ってしまった」とまさかの敗戦を悔やんだ。井山は26回目の七番勝負となるが、連敗スタートは初めて。河野は他棋戦でも充実した内容で好調を維持している。だが、長期戦の七番勝負は精神的なコントロールが難しいと言われ、流れが一気に変わることもある。井山が本シリーズの流れを掴むのか、河野が気持ちを立て直すのか。注目の第4局は、6月13日、14日に、静岡県沼津市の「旧沼津御用邸」にて行われる。

囲碁ニュース [ 2019年6月6日 ]

関東甲信越静囲碁大会

 第64回関東甲信越静囲碁大会が静岡県函南町の富士箱根ランドにおいて6月1日、2日の両日おこなわれた。函南町は神奈川県から芦ノ湖、箱根峠を越えた県境に位置する。そこに1都9県からそれぞれの代表が集まった。1チーム5名の団体戦で東京、神奈川、埼玉、山梨と地元静岡からは2チームが参加、理事監督連合を加えた16チームが交流と優勝を目指した。
 1回戦で埼玉Aと神奈川ミドルの強豪チームが対戦した。埼玉Aは元院生で埼玉県代表の伊藤裕介さんを主将に昨年学生十傑である津田裕生さんなど若手メンバーである。対する神奈川ミドルは木下暢暁さんを主将にした神奈川の県代表メンバーを集めたチーム。これを神奈川ミドルが3-2で制した。神奈川ミドルは3回戦でこれまた強豪の東京タワーと対戦した。これも神奈川ミドルが3-2で制し決勝に進出した。もう一方の山は神奈川の若手を中心とした神奈川ヤングが下馬評通り3回戦ともに5-0の圧倒的な成績で勝ち上がった。
 決勝は神奈川ミドル(木下暢暁・窪庭孝・佐々木慶・府川浩二・片岸完次郎)と神奈川ヤング(大関稔・稲葉一宇・石村竜青・硯川俊正・高根宏之)という神奈川同士の対戦となった。若さの神奈川ヤングが勝つか、神奈川ミドルがベテランの意地を見せつけるかという対戦になったが、5-0で神奈川ヤングが勝利し、20-0の完全優勝となり、神奈川の2連覇となった。

決勝戦 優勝の神奈川ヤング(右)
会場の様子

囲碁ニュース [ 2019年5月31日 ]

本因坊戦、河野が連勝

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に、河野臨九段が挑戦する第74期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第2局が、5月22、23日に、山梨県甲府市の「山梨県立文学館」で行われ、166手まで河野が白番中押し勝ちを収め二連勝とした。第1局で充実の打ち回しを見せ先勝した河野は「少しでもいい碁を残せるよう努力したい」、井山は「20代最後の対局をいい形で締めくくれるようベストを尽くしたい」と語って臨んだ。穏やかな立ち上がりから井山が戦いを仕掛け、白番の河野がやや打ちやすく、「黒は一手一手が難しい」と評される局面へ。その難しい勝負所で井山が封じて一日目を終えた。しかし、二日目に河野が疑問手を放ち、主導権は黒の手に渡る。その後、「黒が勝負を決めにいった」と検討陣が見守るも、井山がさらに厳しい手を繰り出したところから局面は混沌とし、最後は井山らしくないミスで急な終局を迎えた。二連敗の井山は「考えていた変化にならず、よく分からなかった」と肩を落とした後、「苦しい状況になりましたが、精一杯自分の納得がいく碁を打ちたい」と巻き返しを誓い、河野は「苦しい時間が長かった。黒にいい手があれば一気に差が開いても文句は言えないと思っていました。勝てると思ったのは最後の最後」と振り返った後、「次局もいい碁を残せるように」と語った。第3局は、6月4、5日に、北海道函館市の「五稜郭・函館奉行所」で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年5月22日 ]

早稲田 令和初のV

 平成から令和に元号が変わり初めての春季関東学生囲碁団体戦が東京の青山学院大学において5月3日から5日にかけて行われた。
 優勝候補は近年安定した成績を誇る早稲田大学。東京大学、東京理科大学、慶応義塾大学が打倒早稲田、そして優勝を目指し熱戦を繰り広げた。一部リーグの8校は前半の四回戦で4勝と4敗で明暗がわかれ、上位4校の争いとなった。
 アマ大会で活躍する星合真吾さんを主将に昨年の学生十傑である津田裕生さん、ネット棋聖戦でも優勝経験のある石田太郎さんと昨年と主力が変わらぬ早稲田大学が東京大学、東京理科大学、慶応義塾大学の4校の争いを全て3-2で制し、令和初の優勝を果たした。
 主将の星合さんは就職活動などで囲碁に集中できる環境ではなかったが後輩たちが頑張ってくれたと語った。

宝酒造杯東京大会

 第12回宝酒造杯囲碁クラス別チャンピオン戦が4月の京都大会より各地区ではじまった。宝酒造杯は全国12地区13大会(東京2回)が行われる。名人戦から級位戦と各段と級位者の全国1位を決める大会とあり毎年多くの方が参加している。
 5月18日、19日の両日に行われた東京大会は市ヶ谷の日本棋院に合わせて千人以上の参加者が集まった。県代表クラスの名人戦だけでなく各クラス大いに盛り上がった。
 名人戦はアマチュア大会で活躍する強豪が勝ち上がっていったがその中で女性の笹子理紗さんが決勝まで進んだ。しかし決勝で敗退してしまい名人戦初の女性優勝とはならなかった。
 宝酒造杯は一年かけて全国各地で予選を行い、来年の1月に京都において全国大会が行われる。

囲碁ニュース [ 2019年5月15日 ]

本因坊戦、七番勝負開幕戦は河野が制す

 本因坊文裕(井山裕太本因坊)に河野臨九段が挑戦する第74期本因坊戦七番勝負(毎日新聞社主催)の第1局が、5月11、12日、岩手県大船渡市の「おおふなぽーと(防災観光交流センター)」で行われ、黒番の河野が169手まで中押し勝ちを収めた。井山は「一日目で少し悪くした」と振り返る。45分長考して井山が封じた手に対して、二日目に河野が的確に対応してはっきりリードを奪ったようだ。その後、河野が手堅く打ち進めて際どい勝負となったが、「黒155のハネ出しが読みの入った絶妙な手だった」と新聞解説の趙善津九段は話す。今年に入って15勝2敗の河野の充実ぶりが出た一局となった。河野は「最後に中央を手にするまでは、分からなかった。いい手が見つかり勝ちになったと思いました。第2局も体調を整えて一生懸命打ちたい」、井山は「最後は際どくなったと思ったが、黒155に打たれて、その後を正しく打たれたら負けだと思いました。第2局は少しでもいい状態で迎えられるようにしたい」と話した。第2局は、22、23日に、山梨県甲府市の「山梨県立文学館」で打たれる。

羽根、有言実行。碁聖戦挑戦者に勝ち上がる

 許家元碁聖への挑戦権をかけ、5月9日、第44期碁聖戦(新聞囲碁連盟主催)挑戦者決定戦が打たれた。決勝の舞台に勝ち上がったのは、準決勝で余正麒八段を降した羽根直樹九段と、井山裕太四冠を降した一力遼八段だった。中盤までは白番の一力が優勢との評だったが、勝機を求めた羽根の強手からコウ争いへと進み、一力が微妙なミスを重ねたようだ。261手まで、黒番の羽根が中押し勝ちを収め、挑戦者に名乗りをあげた。羽根が七大タイトルの挑戦手合に臨むのは、2012年の名人戦以来7年ぶりとなる。「昨年、張栩さんが名人位を奪還したことに刺激を受けた。井山さんを中心に、平成四天王の世代と若手との群雄割拠の時代を作りたい。そのために、自分はここ数年が勝負。必死にがんばりたい」と語った羽根が、言葉どおりの結果を残した。挑戦権を獲得した羽根は「負けの図はいろいろあったが、幸運にも勝つことができた。久しぶりの大舞台なので、しっかり準備していい碁を打ちたい」と五番勝負への抱負を話した。

囲碁ニュース [ 2019年5月10日 ]

第15回オールアマ囲碁団体戦

決勝戦 優勝の山田と愉快な仲間たち(左)

 4月28日、東京市ヶ谷の日本棋院において第15回オールアマ囲碁団体戦が行われ、無差別クラス24チーム、クラス別103チーム、635名もの人数が参加した。多いところでは6チームエントリーしたところもあった。
 無差別クラスは毎年、全国レベルの強豪が集まり優勝を狙うチームは全員が全国トップクラスの実力者である。
 前回優勝の星研も学生トップクラスの星合真吾さんを筆頭に今年も学生のトップクラスを揃えていたが2回戦で精濃運輸囲碁部に4-1で敗れた。精濃運輸囲碁部はアマ名人、本因坊で優勝経験のある大関稔さんや元院生Aクラスの村上裕貴さんなど星研に比べて一世代前の元学生強豪チームである。その精濃運輸囲碁部も3回戦で敗退するなどハイレベルである。
 そんな中、優勝を果たしたのが山田と愉快な仲間たちである。同チームは昨年の内閣総理大臣杯でも優勝したチームで、昨年、プロ試験本戦で好成績をおさめていた山田凌馬さんを主将に現アマ名人の栗田佳樹さん、院生1位経験があり今年も外来からプロ試験を受ける予定の近藤登志希さん、院生A経験のある西山喬紘さん、同じく院生A経験があり少年少女囲碁大会でも全国優勝の経験がある高嶋渓吾さんと元院生トップクラスの若手メンバーである。本来なら今年の6月に行われる世界アマ選手権で日本代表として戦う川口飛翔さんも参加予定であったが、埼玉県のアマ名人戦県大会と同日だったためメンバーを外れたそうだ。4回戦合わせて19-1という圧倒的な成績であった。1敗をしてしまった近藤さんは「自分のせいで完全優勝を逃した」と悔しがっていたが、主将の山田さんは「この成績は上出来」と満足そうであった。

囲碁ニュース [ 2019年5月7日 ]

芝野虎丸七段がグランドチャンピオン

 タイトルホルダーと賞金ランキング上位者16名による第6回(2018年)グランドチャンピオン戦(日本棋院、関西棋院主催。内閣府、文部科学省後援)の準決勝と決勝戦が、5月6日、日本棋院で行われた。
 準決勝は、井山裕太グランドチャンピオン(シードにより準決勝から参戦)VS 一力遼阿含桐山杯・竜星と、許家元碁聖・おかげ杯 VS 芝野虎丸七段(賞金ランキング七位)のカードが組まれ、それぞれ井山と芝野が制して決勝に勝ち上がった。本棋戦の決勝戦は、公開対局で、すぐ隣では大盤解説も同時進行する趣向。会場には、大勢のファンが集まり、片岡聡九段と吉原由香里六段による大盤解説に耳を傾けながら熱戦を見守った。序盤から下辺で戦いが始まり、両者必死に読み合う険しい攻防が展開された。「出だしの戦いで苦しくしてしまって」と井山は振り返る。「その後、難しくなったかなとは思ったのですが、はっきりよくなったと思った場面はなかったですね」。中盤に入り、劣勢を意識した井山が、少しがんばった手を繰り出した機を、芝野が的確にとがめて勝負を決め、152手まで白番中押し勝ちを収めた。井山は「最近は厳しい後輩ばかりで全然先輩を敬ってくれなくて大変です」と笑顔で敗北宣言。芝野は「最近あまり囲碁の内容がよくないことが多くて、正直優勝できるとは全然思っていなかったので、嬉しいです」と照れながら話し、会場のファンからの拍手を集めていた。

囲碁ニュース [ 2019年4月23日 ]

村川新十段誕生。井山四冠に。

 井山裕太十段に村川大介八段が挑戦する第57期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第四局が、4月19日、大阪市の日本棋院関西総本部で行われた。初戦に敗れた後に二連勝して臨んだ村川が、「超」がつく難解な戦いの碁を制し、白番中押し勝ち。井山に流れを渡さず、三連勝で一気にタイトルを奪取した。対井山戦で12連敗を喫していた村川は、連敗を止めた二局目の勝利が一番嬉しかったと振り返り、「信じられない。まだ実感がわきません」と笑顔で話した。結婚後、体重が10キロ増えたそうで、「幸せ太りですか?」と尋ねられて「はい」と正直に答える様子からも、心身ともに充実していることがうかがえる。2014年の第62期王座以来、二つ目の七大タイトル獲得により、九段への昇段も決めた。「前回七大タイトルを取ったときは、それだけで満足してしまったので、今回は気を引き締めて精進します」と抱負を語った。敗れた井山は2015年11月以来の四冠に後退し、「これが今の自分の実力です。一から出直して、またこの舞台に戻ってきたい」と語った。

仲邑菫新初段、デビュー戦は白星おあずけ

 注目の「菫ちゃん」が、いよいよプロとして歩み始めた。英才特別採用推薦棋士の第一号、史上最年少棋士の仲邑菫初段(10歳)のデビュー戦、竜星戦の予選が4月22日に打たれた。対戦相手は同じく今年四月に入段した大森らん初段(16歳)。たくさんの報道陣に緊張した様子もなく、両者は盤面に集中して熱戦を繰り広げた。仲邑は中盤の中央の折衝で遅れをとったようだ。中盤以降は、大森が緩まず押し切り、白番中押し勝ちとなった。解説の三村智保九段は「大森さんの試合巧者ぶりがでた見事な一局でした」と総評。仲邑の白星発進はならなかった。大森は「緊張してこわかったのですが、勝てて嬉しいです」と笑顔でプロ初白星をかみしめていた。

囲碁ニュース [ 2019年4月9日 ]

十段戦、村川が連勝で王手

 井山裕太十段が先勝し、挑戦者の村川大介八段が一勝を返して迎えた第57期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第三局が、4月11日に長野県大町市の「くろよんロイヤルホテル」で行われた。序盤、右上の折衝で白番の井山がリードを奪うが、その後「勘違いしていた」という井山の失着があり、さらに読み合う険しい戦いの中で井山に読み落としがあったようだ。逆転を許した井山は、左下の黒の大石を取りかけに向かうものの、村川の正確な応手に阻まれて投了を告げた。村川は連勝で、タイトル奪取に王手をかけた。第4局は、4月19日、大阪の日本棋院関西総本部で行われる。

河野、本因坊挑戦を決める

 第74期本因坊戦(毎日新聞社主催)の挑戦者決定プレーオフ第2戦――河野臨九段対芝野虎丸七段の一戦が、4月10日に、東京都千代田区の日本棋院で行われた。どちらが勝っても本因坊戦初挑戦となる大一番に、河野は落ち着いた様子で、芝野はやや緊張した表情で臨んだ。芝野が勝てば、最年少記録と史上最短の八段昇段記録を塗り替えることとなる。局面は、中盤過ぎまで互角の形勢のまま進み、大フリカワリとなるも、やはり形勢は細かく、神経をすり減らすヨセ勝負となった。河野は「少し足りないと思っていた」と振り返るが、巧みに打ち回して白番1目半勝ちを収めた。リーグ戦二連敗スタートからの大逆転で挑戦者に駆け上がった河野は「陥落しないようにと頑張っていたので、まさかここまで来られるとは思いませんでした」と笑顔を見せ、5月11日に開幕する七番勝負に向けて「精一杯自分の力を出し切りたい」と抱負を語った。

囲碁ニュース [ 2019年4月9日 ]

本因坊戦リーグ、三者のプレーオフへ!

 大混戦の第74期本因坊戦(毎日新聞社主催)リーグ一斉最終対局が、4月5日(金)に東京都千代田区の日本棋院で打たれた。まず注目されたのは、山下敬吾九段と羽根直樹九段の一戦。ここまで5勝1敗の羽根が勝てば挑戦者決定、敗れるとプレーオフが必至という状況だった。3敗の山下は挑戦者争いからははずれていたが、勝てば残留、負ければ陥落が決定する大一番。結果は山下が白の大石を仕留めての黒番中押し勝ちとなった。
 リーグ内序列が一位の山下の勝利によって、2敗同士の河野臨九段と一力遼九段の一戦は、勝者がプレーオフ進出、敗者が陥落という、文字通り「明暗」を分けることとなった。戦いに次ぐ戦いの結果、河野が白番1目半勝ちを収めた。同じく2敗だった芝野虎丸七段も勝利し、三者によるプレーオフが確定した。
 山下と芝野が勝利したことで、余正麒八段は最終局に勝利したが陥落が決定。4勝3敗という勝ち越しの成績でプレーオフなしに2名が陥落するのは20期ぶりのこと。「一勝」があまりにも大きい今期のリーグ戦となった。
 三者による挑戦者決定プレーオフは、まず序列が下の羽根と河野が戦い、勝者が芝野と戦う。

本因坊戦挑戦者決定プレーオフ第一局は、河野が勝利

 井山裕太本因坊への挑戦権をかけて、熾烈な戦いがクライマックスを迎えている。第74期本因坊戦(毎日新聞社主催)の挑戦者決定プレーオフの第1戦――羽根直樹九段と河野臨九段の一局が、4月8日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。羽根は今年に入り14勝6敗で、本因坊戦リーグの最終局で山下敬吾九段に敗れるまでは11連勝を記録していた。対する河野も今年12勝1敗。まさに絶好調同士の一戦となった。結果は河野が黒番中押し勝ち。リーグ内序列が上位の芝野虎丸七段との決戦に駒を進めた。いよいよ、挑戦者が決定するプレーオフ第2戦は、10日に、千代田区の日本棋院で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年4月4日 ]

十段戦、一勝一敗のタイに

 井山裕太十段に、村川大介八段が挑戦する第57期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)の第二局が、3月29日、東京都千代田区の日本棋院で打たれた。村川は第一局に敗れ、対井山戦「13連敗」と苦しい対戦成績となっていた。だが、本局では持ち味の明るい打ち回しを見せた。中盤、白番の村川がやや優勢な局面の中、井山が左辺の弱い石を放置したまま、あえて中央の黒石を切断させる手を選択し、難解な戦いに突入。井山は「普通に打っては足りないと思って仕掛けたが、どうだったか」と振り返った。その後、互いに秒読みとなりながら、必死の読み合いが続くが、村川が井山の強手に冷静に的確に対応し、逆転の機を与えず、粘る井山を振り切って154手まで白番中押し勝ちを収めた。立会人の中小野田智己九段は「村川八段の快勝譜」とコメントを残した。村川は「ようやく連敗が止められ、ホッとしています」と緊張した面持ちで、井山も厳しい表情で「次も精一杯打つだけ」と語った。一勝一敗とスコアをタイにして迎える第三局は、4月11日に、長野県大町市の「くろよんロイヤルホテル」で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年3月28日 ]

井山、壮絶な戦いの末に、棋聖位七連覇

 第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)は、3月14、15日に、新潟県南魚沼市「温泉御宿 龍言」にて第七局が打たれた。「歴史に残る壮絶な名局」と評される313手の激戦の末、白番の井山裕太棋聖が、挑戦者の山下敬吾九段に6目半勝ちを収め、最終局までもつれる長い戦いが幕を閉じた。序盤、右辺の攻防では、井山が全ての白石を助けようとした手を、山下の剛腕が許さず、全ての白石が取られる結末に。一時は、「地合いで黒が60目リード」とも言われ、山下必勝と思われた。しかし、中盤以降、紛れを求める井山の打ち回しと、山下のわずかな迷いが重なり、攻め取りの形に持っていきながら、各所の白地を増やして井山が大逆転を果たした。井山は「ミスの多いシリーズで、最終局に勝てたことも幸運だった」、山下は「形勢を悲観しすぎ、無謀な手を打って崩れた局があったことが惜しまれる」と振り返った。平成最後の七番勝負にふさわしい、記憶に残る激戦だった。井山は来期、小林光一名誉棋聖の持つ「八連覇」のタイ記録をかけて七番勝負に臨むこととなる。

藤沢、女流名人位を逆転防衛

 藤沢里菜女流名人に、謝依旻六段が挑戦する第31期女流名人戦三番勝負は、挑戦者の先勝に続いて、第二局が3月14日に京都市平安女学院大学「有栖館」にて、第三局が22日に東京都千代田区の日本棋院にて行われた。 第二局は、難戦から白番の謝が優勢を築いたが、謝に失着があり藤沢が逆転。その後の険しい攻め合いも制して藤沢が一勝を返した。第四局は藤沢が「自分らしく打てた」と振り返る満足の一局となり、白番中押し勝ちで防衛し、三連覇を決めた。謝の無冠返上はならなかった。

一力、悲願のNHK杯初優勝

 3月24日に第66回NHK杯テレビ囲碁トーナメント戦の決勝戦が放映され、一力遼七段が、井山裕太五冠を降して悲願の初優勝をとげた。井山のNHK杯三連覇はならなかった。  一力は過去に二回決勝戦に進みながら敗れており「今年こそ」と臨んだ一局だった。「優勝できホッとしている」と笑顔を見せた一力は、優勝・準優勝者が出場する「テレビアジア選手権でも結果を出したい」と意欲を見せた。井山は「三年連続で決勝戦に勝ち上がれたことは上出来。前回テレビアジア選手権で優勝したときは、NHK杯は準優勝でしたので、今回もと、ポジティブに考えたい」と語った。

囲碁ニュース [ 2019年3月15日 ]

女流アマ 吉田さん二度目V

 第61回女流アマチュア囲碁選手権が3月9日、10日の両日、東京市ヶ谷の日本棋院において行われた。各6人が16のブロックにわかれて3回戦を行い、1人が決勝トーナメントに進出する。
 予選リーグは順当な勝ち上がりが多い中、過去2回の優勝経験があり毎年好成績をおさめている大沢摩耶さんが予選敗退となった。大沢さんを破った松本実優さんは今年度の女流棋士採用試験で本戦まで進んだ実力である。女流アマ選手権では近年、元院生でプロ志望者、またはプロを目指していた10代後半から20代前半の優勝者や上位入賞者が多い。松本さんもそんな選手として注目を集めた。
 ベスト4に進んだのは松本さん、藤原彰子さん、吉田美穂さん、久代迎春さんとなった。松本さん以外は優勝経験者。久代さんは2連覇を目指す。
 準決勝は吉田さんと久代さん、藤原さんと松本さんというベテラン同士、若手同士の対戦となり、吉田さんと藤原さんの決勝となった。決勝戦はお互いの大石の目がなく、盤上全体に及ぶ大激戦を吉田さんが制し、第51回以来10年ぶりの優勝となった。若手が活躍する中、昨年の久代さんに続きベテランの優勝となった。久代さんと松本さんの3位決戦は松本さんが制した。

囲碁ニュース [ 2019年3月13日 ]

女流名人戦、謝依旻六段が先勝

 藤沢里菜女流名人に、謝依旻六段が挑戦する第31期女流名人戦三番勝負(産経新聞社主催)が開幕した。昨年、11年ぶりの無冠となった謝だが、すぐにタイトル戦挑戦者に名乗りをあげて実力者ぶりを示した。両者が、女流タイトル戦の番碁、または決勝戦で頂点を争うのは8回目。女流囲碁界を盛り上げる両雄でもある。
 第一局は、3月6日に、大阪府東大阪市の大阪商業大学で行われた。序盤、白番の藤沢が、上辺で思い切った「二段バネ」を見せ、その後の折衝で優勢を築いたが、終盤に入り、謝が勝負手を繰り出す。藤沢の打ち過ぎをとがめた謝が逆転に成功して、黒番中押し勝ちを治めた。藤沢は「気持ちを切り替えて次に臨みたいです」、謝は「次も一生懸命打つだけ」とコメントを残した。第二局は、14日に、京都市上京区の平安女学院大学で行われる。

棋聖戦、山下逆転勝利で最終局へ

 井山裕太棋聖の3勝2敗で迎えた第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第六局が、3月7、8日の両日、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われた。前局で逆転負けを喫し防衛を逃した井山は、ここで決めたいところ。だが「スコアは意識せずに」と臨んだ。山下は「目の前の一局に集中するだけ」と気合いを入れた。
 序盤の右辺の攻防で黒番井山の実利と白番山下の厚みという分かれとなるが、「実利が大きい」との評価が多く、黒優勢となった。その後山下が下辺の黒に襲いかかるしかなく、「黒がしのげば黒勝ち」という流れになる。難しい戦いの中、井山がしのぎ切り、誰もが「棋聖防衛」を確信したが、井山の一瞬のスキを捉えた山下が、左辺の黒を仕留めての逆転勝ちとなった。対戦成績は3勝3敗のタイとなり、決戦の場は最終局に持ち越された。注目の大一番は、3月14、15日に、新潟県南魚沼市「温泉御宿 龍言」で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年3月8日 ]

十段戦五番勝負が開幕。井山十段が先勝

 第57期十段戦五番勝負(産経新聞社主催)が開幕した。四連覇をかける井山裕太十段への挑戦者には、村川大介八段が二年連続で名乗りをあげた。二人が七大棋戦の挑戦手合を戦うのは5回目で、2014年には村川が3勝2敗で井山から王座を獲得した。だが、その後は挑戦手合で村川に勝ち星がなく、昨年の十段戦も0 - 3のストレート負けを喫している。村川は、「子供の頃から尊敬している井山さんですが、今回は強い気持ちで戦いたい」と決意を新たに臨んだ。その第一局は、3月5日、大阪府東大阪市の「大阪商業大学」で打たれた。結果は、難解な戦いの碁を制して井山十段が白番中押し勝ち。村川の巻き返しに期待したい。第二局は、29日に東京都千代田区の日本棋院で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年3月5日 ]

棋聖戦七番勝負、山下踏み止まる

 井山裕太棋聖の三勝一敗で迎えた第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第五局が、2月27、28日の両日、山梨県甲府市の「常盤ホテル」で行われた。一日目は、山下敬吾九段が形勢を損ね、うなだれる時間が長かったが、二日目、中央の戦いに入り、優勢に進めていた井山のたった一手を境に形勢が入れ換わる。その後は井山の追い上げに山下が的確に応じて、山下の黒番6目半勝ち。一勝を返してカド番をしのいだ。井山は「途中まで難しいと思っていたのですが……中央は、実戦よりいい形があったと思います」と振り返り、次局に向けては「がんばりたい」とだけコメントした。山下は「まだカド番であることは変わりないですが、もう一局打てるのは嬉しい」と笑顔がこぼれ、「なんとか最終局までいけるように、体調を整えます」と前向きに語った。
 昨年名人戦で、一勝三敗のスコアから三連勝してタイトルを手中にした張栩名人の巻き返しは、記憶に新しい。今週から十段戦挑戦手合いもスタートする井山棋聖の過密スケジュールも、名人戦の記憶と重なる。厳しい戦いとなることは必至だが、その中での名勝負を期待したい。第六局は、3月7、8日に神奈川県箱根町の「ホテル花月園」で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年2月26日 ]

日本勢、入賞ならず

 SENCO CUP ワールド碁女流最強戦2019(センコーグループホールディングズ株式会社特別協賛)が、22日、23日、24日に行われた。昨年スタートした本大会は、日本から、万波奈穂扇興杯ら扇興杯女流最強戦の上位4名、中国、韓国、中華台北、欧米からそれぞれ一位の棋士が参戦し8名のトーナメントで争われる。日本勢は奮闘したものの、世界の壁は厚く、昨年に続いて3位入賞はならなかった。決勝に勝ち上がったのは、女流二強と言われる韓国の崔精九段と中国の於之瑩六段。大混戦を制し、於六段が大会二連覇を果たした。
 期待のかかった上野愛咲美二段は、一回戦で中華台北の黒嘉嘉七段と互角の形勢だったが一手を境に流れを渡して惜敗。黒七段は「序盤から悪く、運よく勝てた」と振り返った。黒七段との三位決定戦に臨んだ佃亜紀子五段は、劣勢から必死の追い上げを見せ、「攻めまくっている」と検討陣がエールを送りつつ見守ったが、惜しくも届かなかった。於六段と崔七段は「来年も出場したい」と抱負を語り、佃五段は「日本が勝つまでこの大会を続けてください」と巻き返し宣言。若い新初段らと共に切磋琢磨して、近い将来の「日本が勝つ」日を期待したい。

囲碁ニュース [ 2019年2月23日 ]

上野、謝、棋聖戦Cリーグ入り決定

 第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負(読売新聞社主催)が佳境に入る中、次期挑戦者を目指す戦いも進行している。第44期棋聖戦のCリーグ入りをかけたファーストトーナメント予選は、決勝に進出した三人の女流棋士が注目を集めた。2月14日は、藤沢里菜女流本因坊と上野愛咲美女流棋聖がそれぞれ決勝戦に臨んだ。藤沢は広瀬優一二段に惜敗したが、上野は橋本雄二郎九段に黒番中押し勝ちを収め、現在の制度になってから女性棋士として鈴木歩七段に続く二人目のCリーグ入りを果たした。局後、上野はおっとりと「決勝は意識せず、いつもどおりに打てました。でも、負けそうになったときは悔しかったです」と独特のコメントで周囲を笑わせていた。
 翌15日には、女流史上3番目に若い12歳でプロ入りを決めた妹の上野梨紗さんの記者会見が行われ、姉妹そろって明るい話題を囲碁界に運んだ。
 21日は、謝依旻六段が、大竹英雄名誉碁聖を降してCリーグ入りを決めた。女性棋士2名がCリーグに参戦するのは史上初。活躍が期待される。

仲邑菫さん「うまく打てた」

 2月20日、週刊碁企画の「新初段シリーズ」の特別対局として、今年4月に史上最年少の棋士となる仲邑菫さんが、台湾最強の女流棋士、黒嘉嘉七段に挑戦した。22日から始まる「SENCO CUP」に出場する黒七段の来日に合わせて実現したものだ。仲邑さんは中盤までは優勢を築く健闘ぶりだったが、ヨセで逆転されて中押し負けとなった。大盤解説を担当した小林覚九段は「昨年の張栩さんとの試験碁に始まり、井山裕太五冠、韓国女流ナンバーワンの崔精九段、曺薫鉉九段らトップ棋士との記念対局を見てきましたが、今回の碁が一番面白い。よく打てています」と成長を評価。仲邑さんも「うまく打てた」と自信をのぞかせた。

囲碁ニュース [ 2019年2月16日 ]

井山裕太棋聖、七連覇にリーチ

 井山裕太棋聖に山下敬吾九段が挑戦している第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負(読売新聞社主催)の第三局が2月2、3日に長崎県西海市の「オリーブベイホテル」で、第四局が13、14日に埼玉県川口市「旧田中家住宅」で行われ、ともに井山棋聖が勝利。対戦成績を3勝1敗とし、棋聖位七連覇にあと1勝と迫った。
 第三局は、序盤から競り合いが始まり、戦い続ける展開となった。上辺で白番井山の大石が花見コウとなるものの山下が期待していたほどの成果は得られず、その後も「ところどころに誤算があった」と山下は振り返る。最後は黒の大石を仕留めて井山の中押し勝ちとなった。
 第四局は、序盤の右上隅の振り替わりで白番の山下が隅を制し、黒番の井山が厚みを築く展開となった。その後の右辺の変化や封じ手後の打ち方に山下は納得いかなかったようで、やや無理気味に仕掛けていき右下隅から激しい戦いに突入した。厳しい態度で応戦した井山が隙を与えず押し切り、中押し勝ちを収めた。
 井山は「後半、左辺を切断したときに、白にいい手がなければ(相手に時間がないので)いけると思った」、山下は「序盤の分かれが少し悪く、右下隅も予定の行動ではなかった」と振り返った。
 井山は「自分なりに精一杯準備して臨みたい」、山下は「一局でも多く打てるように頑張りたい」と次局への豊富を語った。第五局は、27、28日に山梨県甲府市の「常盤ホテル」で行われる。

囲碁ニュース [ 2019年2月9日 ]

ジャンボ月組 バトリアヌス帝国V

 2月2日、東京市ヶ谷の日本棋院において第48回ジャンボ大会月組が行われ1チーム15人、33チームが2ブロックにわかれて熱戦を繰り広げた。Aブロックは15人が強力なメンバーで構成され日本一の団体を目指し、Bブロックは仲間たちと参加し他の団体との対戦・交流に楽しんだ。
 Aブロックは毎年のように優勝争いに関わっている多岐技会と大熊義塾、近年現役の学生を中心に構成されたバトリアヌス帝国、洪道場のOBを中心に構成されたパンダ道場が2連勝し、前評判通りの勝ち上がりとなった。
 3回戦では前回決勝を争った多岐技会と大熊義塾、バトリアヌス帝国とパンダ道場の対戦となった。多岐技会は元アマ本因坊の瀧澤雄太さんを中心に世界アマ日本代表経験のある坂本修作さん、小学生から大学生まで活躍した癸生川聡さん等アマチュア強豪を集めた。大熊義塾は関西棋院の大熊悠人初段が学生のころからの仲間を集めたチームで、大関稔さんを筆頭に元学生タイトルクラスで構成されている。今大会において両チームは10年続けて対戦しておりまさにライバル同士である。昨年は多岐技会が大熊義塾を降し優勝したが、今回は大熊義塾が制した。大熊初段は昨年のリベンジをしたかったと語った。
 一方のバトリアヌス帝国はアマ名人の栗田佳樹さん等現役学生を中心に構成された。チーム名はメンバーを集めた幹事の馬鳥さんからとったもの。パンダ道場も今年の世界アマ日本代表である川口飛翔さんを主将にしているチーム。これはバトリアヌス帝国が制した。
 決勝は大熊義塾とバトリアヌス帝国になり、数年前まで学生囲碁界を引っ張ってきたチームと現役学生トップという先輩後輩と言える対決となった。昨年も対戦しており、そのときは大熊義塾が先輩の貫禄を見せたが、今年はバトリアヌス帝国が若手の勢いを見せ9-6で勝利、見事初優勝を果たした。

囲碁ニュース [ 2019年2月1日 ]

山下九段、会心の勝利でスコアはタイに

 井山裕太棋聖に山下敬吾九段が挑戦している第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第二局が、1月21、22日の両日、鳥取県境港市「夢みなとタワー」で行われた。結果は山下九段の白番中押し勝ちとなり、スコアを一勝一敗のタイに戻した。序盤の左下の攻防で山下九段がリードを奪い、流れを渡さぬまま二日目に入る。井山棋聖の猛追に難しい局面となったが、山下九段が冷静に対処し左辺の大きな白地をまとめきった快勝の譜だった。局後、山下九段は「一勝一敗になったので、次も思い切り打ちたい」、井山棋聖は「一日目でダメにしました。次はもう少しいい碁を」と語った。第三局は2月2、3日に長崎県西海市「オリーブベイホテル」にて行われる。

藤沢里菜四段、初の本戦勝利

 昨年女流三冠を達成した藤沢里菜四段が、一般棋戦でも快挙の記録を残した。1月21日、第45期天元戦の本戦1回戦で、藤沢四段が勝利。史上初の女流棋士「本戦」初勝利となった。女流棋士は、藤沢自身も含め過去10人、のべ13回が本戦入りを果たしたことがあるが、初戦の壁を越えることはできなかった。藤沢四段は、韓国の女流ナンバーワン、崔精九段が「世界戦ベスト4が目標」と公言していることに刺激を受け、「男性にも負けていない。気構えを見習わなければ」と語る。今回も「女流本戦初勝利は光栄です」としながらも「ふだんと変わらず対局に臨みました。せっかく本戦に入れたので、一局でも多く打ち、勝ちたい」と話した。

上野愛咲美女流棋聖、最強挑戦者を退け防衛

 上野愛咲美女流棋聖に、藤沢里菜三冠が挑戦する第22期女流棋聖戦(株式会社NTTドコモ協賛)の挑戦手合三番勝負が行われ、上野女流棋聖が二連勝のストレート勝ちで初防衛を果たした。第一局は、1月17日に神奈川県平塚市「ホテルサンライフガーデン」で打たれ、白番2目半勝ち。第二局は、1月28日に東京都千代田区の「竜星スタジオ」で打たれ、持ち前のパワーで圧倒して黒番中押し勝ちを収めた。上野女流棋聖は、昨年、16歳3カ月という女流棋聖戦史上の最年少記録で初タイトルを手にしたときも、謝依旻女流棋聖(当時)に二連勝。タイトル戦では負け知らずの勝負強さを発揮した。上野は、藤沢女流三冠を「あこがれの棋士」と呼び、「一勝できればと思っていたので驚いています。気負いがなかったのがよかったのかも。これから国際棋戦の出場機会が増えるので結果を残したいです」と前向きなコメントと共に喜びを語った。

囲碁ニュース [ 2019年1月29日 ]

第29回東日本大学OB・OG団体戦

 1月20日、東京市ヶ谷の日本棋院において東日本大学OB・OG囲碁大会が行われた。東日本の大学OB・OG 13人の団体戦で、36チームが3ブロックにわかれて母校のために競い合った。
 一番上のAブロックは一昨年優勝の早稲田大学は世界アマ日本代表経験のある坂本修作さんを主将に2年ぶりの優勝を目指したが、1回戦で明治大学に7-6で敗れた。連覇を狙う昨年優勝の慶應義塾大学は学生王座経験のある丹羽隼也さんを筆頭に20代の若手を若手中心のメンバー構成で1回戦を13-0で快勝。
 2回戦では早稲田大学が1回戦で敗退したことにより、事実上の優勝争いと前評判が高かった慶應義塾大学と東京大学の対戦となり、6-6と最後に残る1局まで勝敗が決まらない大熱戦となったが、慶應が制し7-6と2回戦を制した。慶應は3回戦も一橋大学戦を13-0で制した。
 決勝は慶應と1回戦で早稲田を破った明治大学との対戦となり、7-6で慶應義塾大学が連覇を果たした。
 1回戦で敗れた早稲田も3位を決める4回戦で村上深さん率いる中央大学を破り3位となった。
 来年のAブロックへの繰り上がりを目指すBブロックは北海道大学が優勝、東北大学が2位となった。
 5人制のCブロックは5チームが参加し、東京外国語大学が優勝した。Cブロックの参加者からは「チーム数がどんどん減ってきて寂しい」という声があった。

囲碁ニュース [ 2019年1月21日 ]

棋聖戦が開幕。井山棋聖が先勝

 七連覇を目指す井山裕太棋聖に、十期ぶりの奪還を期す山下敬吾九段が挑戦する第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕した。第一局は、新春の10、11日の両日、東京都文京区の「ホテル椿山荘」で打たれ、172手まで、井山棋聖が白番中押し勝ちを収めた。序盤から「井山棋聖優勢」の評価が多かったが、二日目に入り山下九段が強手を放って巻き返し、一時は長期戦が予想された。だが、再び井山棋聖が黒模様で仕掛けていき、局面は険しくなる。「この白は取れなさそうだね」と、現地検討会場では、新聞解説の高尾紳路九段、金秀俊九段、村川大介八段らが推移を見守るなか、逆に井山が黒石を取って勝負をつけた。井山棋聖は「終始難しい碁だったが、下辺の黒を切断して行けると思った」と振り返り、山下九段は「一日目の時点で苦しくしてしまった」と反省の弁。二局目に向けて気を引き締めていた。第二局は、21、22日に鳥取県境港市の「夢みなとタワー」で行われる。

 
 

第44期棋聖戦、女流棋士Cリーグ入りなるか

 第43期棋聖戦七番勝負が開幕するなか、第44期棋聖戦のCリーグ入りをかけたファーストトーナメント予選が佳境に入りつつある。1月10日は、上野愛咲美二段が大場惇也七段を破って決勝進出を決めた他、藤沢里菜四段が武宮正樹九段を破って準決勝に進出。また、杉内寿子八段と謝依旻六段もそれぞれ準々決勝に駒を進めるなど女流棋士の進出が目立った。とりわけ杉内八段は昭和2年3月生まれ。90歳を越えられてのご活躍に、ネット上でも多くの棋士たちが称賛と敬意と応援の思いを書き綴っていた。女流棋士のリーガー誕生なるか、七番勝負とともに、こちらの戦いからも目が離せない。

囲碁ニュース [ 2019年1月16日 ]

ジャンボ雪組 横浜本因坊優勝

 1月12日、東京市ヶ谷の日本棋院において第48回ジャンボ囲碁大会雪組が行われた。1チーム11人の団体戦で、企業、日本棋院支部が参加できる。この日は16チームが出場した。
 今回注目を集めたのは初出場の全碁協中野坂上支部である。全日本囲碁協会のメンバーと中野坂上の囲碁サロンたつみに集まるメンバーで構成されている。元アマ本因坊の村上深さんを主将にアマ碁界のレジェンド菊池康郎さん、学生強豪の星合真吾さんなど豪華メンバーである。観戦者の数も多かったが2回戦で彩の国連合に5-6で敗れた。
 優勝決定戦に進出したのは昨年優勝の横浜本因坊支部と彩の国連合である。
 横浜本因坊は神奈川県の関内にある碁会所で、主将に府川浩二さん、副将に石村竜青さんなどベテランから若手まで神奈川県の県代表クラスを中心に集まっている。1回戦から3回戦まで11-0と隙のない勝利で優勝決定戦に駒を進めた。
 彩の国連合は埼玉県の支部で浦和から川口にかけてあたりの強豪が集まっている。主将に曽我部敏行さん、副将に田熊秀行さんなど埼玉県代表に何度もなったことのあるベテランを中心に構成されている。
 昨年も優勝争いをした両チームで、接戦が予想されたがスコアは9-2で横浜本因坊が勝利し見事優勝を果たした。

大会の様子
優勝決定戦 2列にかけて右が横浜本因坊

囲碁ニュース [ 2019年1月10日 ]

史上最年少の女流棋士誕生

 日本棋院は、5日、英才特別採用推薦棋士の第一号として、小学校4年生の仲邑菫さん(9歳)の入段が決定したと発表した。「英才特別採用推薦棋士制度」は、世界戦の優勝を目指すなど、最高レベルの棋士となるために昨年12月に新設され、原則として採用は小学生に限るという。仲邑さんは今年4月1日から、国内では藤沢里菜女流三冠の11歳6カ月を抜き、10歳0カ月の史上最年少のプロ棋士となる。
 仲邑さんの父は、日本棋院所属の棋士・仲邑信也九段、母はアマチュア強豪の幸さん。3歳のとき幸さんに手ほどきを受けた後、韓国への囲碁留学などで才能を伸ばしてきた。2016年には第11回関西ジュニアペア碁大会にお母さんと出場して優勝、昨年に行われた第4回パンダネットレディース囲碁トーナメントでも優勝するなど、数々の実績もあげている。取材陣に囲まれて、はにかむ様子はまだあどけないが、「目標にする棋士は井山裕太棋聖。中学生のうちにタイトルを取りたい」と話すときには勝負師の表情ものぞかせた。昨年、仲邑さんと対局をした張栩名人は「衝撃でした。必ず世界で戦える棋士になると強く思いました」、今年6日にイベントで公開対局をした井山裕太五冠は「男性棋士とまじって、天下を獲れる才能」と、それぞれ仲邑さんの強さを高く評価している。仲邑さんのプロ入りは、テレビや新聞、外国のBBCニュースなどでも取り上げられ、注目度は抜群。囲碁界が大きく盛り上がりそうだ。

第4回パンダネットレディース囲碁トーナメント 決勝戦
第4回パンダネットレディース囲碁トーナメント 表彰式
第11回関西ジュニアペア碁大会 決勝戦
第11回関西ジュニアペア碁大会 表彰式

囲碁ニュース [ 2019年1月4日 ]

井山、五冠を堅守

 昨年最後の挑戦手合い、第44期天元戦五番勝負(新聞三社連合主催)の第五局は、12月19日に徳島県徳島市の「徳島グランヴィリオホテル」で打たれた。先に王手をかけた井山裕太天元に対して、挑戦者の山下敬吾九段も簡単には土俵を割らず、2勝2敗とシリーズを盛り上げたが、最終局は中盤の鋭い打ち回しでリードを奪った白番の井山天元がそのまま押し切り中押し勝ちを収め、通算7期の4連覇を決めた。昨年は2つのタイトルを明け渡した井山だが、五冠を堅守。七大タイトル獲得数「43」の新記録も達成した。井山は「一つ一つの積み重ねの結果です。これからも励みにしたい」と語った。
 新春は、1月10日から第43期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕する。天元戦に続いて挑戦する山下九段の雪辱がなるか、井山時代が続くのか、今年の囲碁界の熱い幕開けに期待したい。

藤沢、新記録を達成

 2018年の年間最多勝ち星などが発表された。最多勝利は2年連続で、46勝(23敗)をあげた芝野虎丸七段。最多対局、69局と合わせてトップとなった。勝率一位は富士田明彦六段が8.37割(41勝8敗)の驚異的な数字で一位。連勝は小池芳弘三段の19連勝が一位にランキングされた。なお、藤沢里菜女流本因坊は、43勝(23敗)をあげ、2001年の小林泉美女流名人の41勝(18敗)を抜いて女流最多勝記録を更新し、一般でも一力遼八段(43勝23敗)と並んで勝ち星2位タイとした。こちらも2007年の謝依旻女流本因坊の3位を抜き、女流棋士の最高位を記録した。

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