おわりに
プロ棋士として活動して20年ほど経ちましたが、これまでは自分が強くなってタイトルを獲ることだけを考えてきました。プロとしては当然のことですが、最近になって自分のためだけに囲碁を打っていることに少し疑問を感じるようになりました。
アマの方からすると、強いプロを見て、その技芸や生き方に感動し、そして自分の囲碁の楽しみに何らかの影響を受けることを望まれているかもしれませんが、プロはその外野には目を向けず盤上のみに没頭しています。これはプロの活動として何か違うな。と感じたのがつい最近になってからです。
プロは自分のために生きているのは誰しも当然として、その中にも囲碁ファンを楽しませるために活動しているという視点をもつことが必要です。その一つとして、人生の大半をかけて高めてきた囲碁の技芸を、囲碁を楽しむ方のために提供していくことも重要ではないかと感じたのでこの本を書くことにしました。
拙い文章なので、うまく伝わらない点も多々あるかと思いますが、現時点での私の考えを精一杯まとめることにしました。恐らく、私の価値観も年を重ねるごとに変化していくでしょうから、その時には違った視点からみなさんに囲碁の楽しさを提供することになるかもしれません。その時にはまたご一読いただき、お付き合いくだされば幸いです。
囲碁は、いくつになっても楽しめるゲームで、尚且つ人生の縮図でもあります。
囲碁を嗜まれている方は、すごく良いご趣味を手に入れられたと思いますが、できましたらこの良いゲームを多くの方にご紹介していただき、もっと幸せな方を増やしていただけると、大変嬉しく思います。
そのためにも、目標を設定し、もっともっと囲碁を楽しんでください。
著者 勝間史朗(かつましろう)
1974年生まれ。(一財)関西棋院所属棋士として1992年にプロ入りし2006年から関西棋院常務理事にも就任。
パンダネット(関西棋院囲碁ネット まいど!)では「ネット指導碁」や「ネット囲碁教室(勝間教室)でアマの指導にも力を入れる。