ヨーロッパ囲碁ニュース

ヨーロッパの囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。

囲碁ニュース [ 2019年11月18日 ]

第6回シルクロード大会、ウィーンで開催

第6回となるシルクロード大会が11月1-3日、オーストリア・ウィーン郊外において開催された。この大会は、過去5回は中国で開催されており、積極的に欧州選手を招待する方針を採ってきた。毎回10人を超える欧州の強豪プレーヤーが参加しており、このうち、2回は欧州選手が優勝している。現在「シルクロード」というと中国の「一帯一路構想(新シルクロード構想)」が頭に浮かぶ。政府ほどの野心はないかも知れないが、中国囲碁界が現在、欧州囲碁界との関係を深めようとしている、そのキーワードとして「シルクロード」が位置づけられているのかもしれない。

今回の大会の参加者総数は60人。中国から西安(中国での大会はシルクロードに縁の深い西安の囲碁団体が後援しており、彼らが今回の大会でも協賛したようだ)、北京などを中心に多くの参加者があったほか、マレーシア、タイからも参加者があった。また、欧州からも約15カ国からトッププレーヤー達が参加した。ハイレベルな戦いとなったが、これを制したのはウクライナのアルテム・カチャノフスキー2p。最終戦でそれまで全勝で突っ走っていた中国のリ・ジアシ7dを半目勝ちで倒し、賞金6万人民元(95万円弱)を獲得した。

参加者。閉会式にて(写真:欧州囲碁連盟)

最終結果は以下の通り。

順位 名前 段位 勝敗
1 アルテム・カチャノフスキー 2p ウクライナ 7-1
2 リ・ジアシ 7d 中国 7-1
3 イリヤ・シクシン 3p ロシア 7-1
4 アリ・ジャバリン 2p イスラエル 6-2
5 パヴォル・リジー 2p スロバキア 6-2
6 スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド 6-2
7 ズー・ヤン 6d 中国 6-2
8 タンギー・ルカルヴェ 1p フランス 6-2

来年のシルクロード大会は再び中国において開催されるという。

ドレアン=ゲナイジア6d、仏チャンピオンに

シルクロード大会がウィーンで開かれている間、フランス・トゥルーズでは、フランス・アマチュア選手権が開催された。フランス選手権はクラブ、リーグの地方での2段階に加え、プロおよび外国人が参加できる「オープン選手権」(8月末に開催)、そしてフランス人アマチュアのみが参加でき、世界アマチュア選手権のフランス代表選考大会の意味を持つ「フランス・アマチュア選手権」の4段階から構成されている。「フランス・アマチュア選手権」の参加者は16人で、オープン選手権の結果やランキングなどを考慮して招待される。

対局の様子。(写真:トゥルーズ囲碁クラブ、以下同)

ノックアウト方式の本選手権で決勝に勝ち上がったのは、昨年優勝のトマ・ドゥバール7dと一昨年優勝のバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d。予想通りの組み合わせとなった。なお、この二人と仏3強をなしていたタンギー・ルカルヴェさんは今年欧州囲碁連盟プロになったので、本選手権には参加できない。

決勝は息詰まる展開となったが、白番のドレアン=ゲナイジア6dが際どく半目勝ちし、2度目のチャンピオンとなった。なおドレアン=ゲナイジア6dは今夏に開かれたオープン選手権でも優勝しており、両選手権を併呑した初のプレーヤーとなった。

右が優勝のドレアン=ゲナイジア6d。左は準優勝のドゥバール7d。

グルノーブル、仏リム先生杯(クラブ選手権)6連覇

仏リヨンにおいて、11月9-10日の週末に「メットル・リム(リム先生)杯」が開催された。同選手権は仏国内のクラブの対抗戦で、今回が17回目となる。毎回参加者も多く、非常に人気の高い選手権で、欧州レベルでも最大のチーム大会の一つと言い切って間違いない。

今年は1部、2部あわせて全部で24チーム、約100人が参加する大きな大会となった。会場となったのはリヨン・オリンピック・チェスクラブの建物。1990年にカスパロフとカルポフというチェスのレジェンドが世界選手権の決勝を争ったテーブルなども置かれている。(写真:Olivier Dulac、以下同)

この大会のシステムは昨年から変更され、1部リーグと2部リーグに分割された。1部リーグは、前年のベスト3チームに加え、2部リーグから昇進した2チーム、さらにこれとは別にランキングを元に選抜された1チームの合計6チームから構成される。2部リーグは自由参加となっている。新システムが適用された昨年、1部リーグではグルノーブル・チームが5連覇を果たしたが、以下の順位ではやや異変があった。レンヌ、ストラスブールという地方の強豪チームが2部リーグ落ちした一方で、オルセー、アリーグルといったパリ及び首都圏のクラブが上位に入賞したのである。これは、専ら中国人の強いアマチュア学生がこれらのチームの原動力となったことに部分的に由来している。ところが、今年はこれらの学生は残念ながら参加できず、これらのチームの力は一気にガタ落ちすることになった。その一方で、2部リーグでは1部リーグへの昇進をかけて熱い戦いが繰り広げられ、一部では「1部よりもレベルが高いのではないか」との声すら聞かれた。

さて、1部リーグにおいてグルノーブルに立ちはだかったのがナント。タンギー・ルカルヴェ1pが主将、仏チャンピオンになったばかりのバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6dが副将、1985年の仏チャンピオンであるフレデリック・ドンゼ5dが三将、フランソワ・ミゼシン3dが四将というベテランと若い力を合わせた強力な布陣で気合を入れて選手権に臨んだ。対するグルノーブルは主将が仏囲碁連盟の講師である黄仁聖8d、筆者が副将、三将がフロラン・ラボレ5d、四将がデニス・カラダバン5dと、過去のチームと比べても最強のメンバーとなった。両クラブは、全勝のまま最終局で対決することになった。

最終局、ナント対グルノーブル。

すべての盤で緊迫した戦いが繰り広げられたが、終わってみればグルノーブルが4-0で勝利し、6連覇を果たした。

優勝したグルノーブル・チーム。

同選手権の過去の優勝チームを見ると、2003-2005、2007、2009年がトゥルーズ、2007年がトゥール、2006、2010-2013年がストラスブール、2014-2019年がグルノーブルとなっている。やはり、強力な主将がいて、士気が高いクラブに結果が偏りがちである。

囲碁ニュース [ 2019年10月30日 ]

シクシン3p、Mlily夢百合杯世界囲碁オープン戦で中国強豪プロを破る快挙

ロシアのイリヤ・シクシン3pが、第4回Mlily夢百合杯世界囲碁オープン戦本戦1回戦で中国の伊凌涛7pを破った。伊凌涛7pは非公式ながら世界ランキング(https://www.goratings.org/ja/)で60位以内につける強豪で、快挙に欧州囲碁界が湧いている。

本戦1回戦には世界から64人が参加。欧州からは、ポイント制に従って選ばれたシクシン3p、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)の2人が参加した。

シクシン3pと伊7pの対局。(写真:欧州囲碁連盟)

シクシン3pは序盤から気負わず見事な戦いぶりをみせ、中盤後半の勝負所で鋭い決め手を放って強敵を突き放した。対局はこちら(https://www.eurogofed.org/index.html?id=279)で閲覧できる。自分の対局を終え、シクシン3pの対局を観戦しに行ったカチャノフスキー2pは(カチャノフスキー2p自身は謝科7pと対局して破れた)「もう最後の秒読みに入っていたシクシン3pの対局時計をまず見て、次に盤上の状況を確認したところ、黒番のシクシン3pが負けようのない形勢だったので本当に自分の目が信じられなかった」。シクシン3pはもう10年も欧州のトッププレーヤーとして活躍。2013年には、台湾トッププレーヤーの一人である王元均6p(当時)をスポーツアコード世界マインドゲームズ大会で破っている。なお、シクシン3pは第2回戦で韓国の白現宇アマと対局、こちらは残念ながら破れた。白アマは一回戦で六浦雄太7pを破っている。

欧州出身プロが世界大会でトッププロを破ったケースとしては、1997年の第1回LG杯において日本棋院のハンス・ピーチ1p(当時)が依田紀基9pに半目勝ち、また2003年の第8回LG杯において韓国棋院のアレクサンドル・ディナーシュタイン3pが王立誠9pに1目半勝ちした対局がある。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年10月7日 ]

欧州学生選手権、ポドペラ7dが優勝

欧州学生選手権が9月最終週末にウクライナのキエフで開催された。7カ国から23人が参加した。この大会は欧州規模の選手権であるにも関わらず例年参加者が少なく、記録を見てみると最近20人を超えたのは2012年のロシア大会以来である。ロシアおよびウクライナでの囲碁の普及ぶりと動員力を示すデータではないだろうか。

会場となったのはなんとキエフ市議会。豪華な空間である。(写真:欧州囲碁連盟)
地元のアルテム・カチャノフスキー2p(左)とクルシェルニツキー5dが若者を相手にペア碁。

一方、いわば「少数精鋭」であるのもこの大会の特徴で、チェコのルカシュ・ポドペラ7dをはじめとして5d以上が5人参加した。5回戦の結果、ポドペラ7dが全勝優勝を果たした。ポドペラ7dは昨年は準優勝に終わっており、雪辱を果たした。2位にはロシアの新鋭マトゥシュキン5dが、また3位にはウクライナのクルシェルニツキー5dが入賞した。

ポドペラ7d(右)とマトゥシュキン5dの対局。(写真:ロシア囲碁連盟)

最終結果は以下の通り。

順位 名前 段位 勝敗
1 ルカシュ・ポドペラ 7d チェコ 5-0
2 アレクサンドル・マトゥシュキン 5d ロシア 4-1
3 ヴァレリー・クルシェルニツキー 5d ウクライナ 3-2
4 ミハイ=ヴァレンティン・セルバン 5d ルーマニア 3-2
上位入賞者。右から2番目が優勝のポドペラ7d、右がマトゥシュキン5d、真ん中がクルシェルニツキー5d。一番左はヤツェンコ・ウクライナ囲碁協会会長、隣はスポンサーのコステリン氏。

ロシアの中国大使杯、盛大な大会に

9月21-22日にかけて、ロシアのモスクワで中国大使杯が開かれた。この大会はロシアでも例年最大の大会の一つで、200人近いプレーヤーが参加した。ロシアの大会には通常、ロシア人以外が参加することは珍しく、外国からの参加はハードルが高い印象があるのだが、今回はトップグループに欧州から多くの強豪が参加。大きな変化と共に、特別な盛り上がりを見せた。

金8d(右)とシクシン3pの対局。(写真:ミハイラ・クリロバ、ロシア囲碁連盟)
会場の様子。

優勝したのはドイツ・イエナ在住の金栄三8d。地元の欧州プロ勢を抑え、6戦全勝を収めた。2位はイリヤ・シクシン3p(ロシア)、3位はマテウシュ・スルマ2p(ポーランド)だった。

会場では習字教室も行われた。
左から優勝の金8d、張漢暉ロシア大使、2位のシクシン3p、3位のスルマ2p。(写真:ロシア囲碁連盟)

最終結果は以下の通り。

順位 名前 段位 勝敗
1 金栄三 8d 韓国 6-0
2 イリヤ・シクシン 3p ロシア 4-2
3 マテウシュ・スルマ 2p ポーランド 4-2
4 アルテム・カチャノフスキー 2p ウクライナ 4-2
5 アレクサンドル・ディナーシュタイン 3p ロシア 4-2
6 アントン・チェルニフ 7d ロシア 4-2
7 ニコラ・ミティッチ 7d セルビア 4-2
8 スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド 3-3

囲碁ニュース [ 2019年9月17日 ]

欧州女流選手権、ウジエ3dが初優勝

土曜日の会場となった豪華なトリーア選帝侯宮殿。(写真:欧州囲碁連盟、以下同)

9月6-8日にかけて、ドイツ西部のルクセンブルク、フランス国境にも近い都市トリーアにおいて欧州女流選手権が開催された。トリーアでは、孔子学院の院長を務めるマークオリヴァー・リーガー教授が積極的な普及活動を行っており、今回の欧州女流選手権も参加者36人と例年を大きく上回る大会となった。

トリーアはモーゼルワインで有名な地方でもあり、大会中にはワイナリーの訪問もあった。

昨年をはじめとしてこの大会に4度優勝しているナタリア・コヴァレヴァ5d、2014年の覇者で現在のロシア女流チャンピオンでもあるディナ・ブルタコヴァ5dのロシア勢や、2017年優勝のマーニャ・マルツ3d(ドイツ)が有力候補と見られた中、抜け出したのは昨年準優勝を収めたフランスのアリアーヌ・ウジエ3d。ブルタコヴァ5d、コヴァレヴァ5dや新鋭のヴィルジニア・シャルネヴァ4dといったロシア勢をなぎ倒し、更には最終戦でマルツ3dをも破って見事全勝優勝を果たした。

ブルタコヴァ5d(左)とウジエ3dの対局。ウジエ3dが白番1目半勝を収めた。

ウジエ3dは弟のギヨームさんも3dの腕前で、子供の頃からほとんど同じペースで上達してきた。強腕の弟さんに対してお姉さんは大人しくヨセで抜き去る棋風。しかし最近は力強さも身につけ、昨年からもはっきりと力をつけて堂々の優勝を飾った。

優勝したウジエ3d(左)。右はメインオーガナイザーであるトリーア囲碁クラブのリーガー氏。

フランスにとっては、タンギー・ルカルヴェ6dの欧州プロ入り、チームでの欧州選手権優勝に続く朗報で、豊作な1年となった。10年以上前から行ってきた連盟主導の若手育成策がようやく実り始めた、ということかもしれない。足元のプレーヤー人口は減少していて楽観はできないが、チェス文化などのおかげで囲碁が認められやすい東欧だけではなく、西欧でもチャンピオンが生まれる土壌がある、ということが示せたことは素晴らしいことだと思う。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年8月7日 ]

欧州囲碁コングレスが開催:欧州選手権はシクシン3pが優勝

欧州囲碁コングレスが7月20日から8月4日にかけてベルギーの首都ブリュッセルで開催された。今年のコングレスは準備段階でかなりの遅れが出ているとの話もあったが、無事開催にこぎつけた。ただし、メイン大会の参加者は合計で約670人。昨年(イタリア・ピサ)の900人、一昨年(ドイツ・オーバーホフ)の820人からかなり後退した。大会は肥大傾向にあるだけに、組織がかなりの負担になっている。

欧州32選手による欧州選手権では、アマチュア勢の活躍が目立った。ダブルエリミネーション方式(2敗で敗退)で行われた予選段階では、まず昨年優勝のパヴォル・リジー2pと、イリヤ・シクシン3p、マテウシュ・スルマ2pのプロ勢に加え、チェコのルカシュ・ポドペラ7dが負けなしで枠抜けを果たした。ポドペラ7dはアルテム・カチャノフスキー2pとタンギー・ルカルヴェ1pを下した星が光る。これに、1敗組からアリ・ジャバリン2p、カチャノフスキー2p、ヴィクトール・リン6d、スタニスワフ・フレイラック7dが決勝ステージに進出した。欧州プロ勢では先日プロ入りを果たしたルカルヴェ1pが脱落した。

フレイラック7d。(写真:Mikhail Krylov、欧州囲碁連盟)
予選ステージでのポドペラ7d(左)とルカルヴェ1pの対局。先日のプロ入段手合決勝以来の再戦となった。今度はポドペラ7dが雪辱を果たした。(写真:Mikhail Krylov、欧州囲碁連盟)

ベスト8では、ポドペラ7dがジャバリン2pを、フレイラック7dが昨年の覇者リジー2pをそれぞれ圧倒的な内容で下して、準決勝でシクシン、カチャノフスキーのプロ勢と激突した。しかし、ここはプロ勢の壁が厚く、決勝はお互いを知り尽くした二人の対局となった。

半目勝負となった決勝。(写真:Mikhail Krylov、欧州囲碁連盟)

決勝は激しい戦いもなく、ヨセ勝負となったが、シクシン3pが半目勝ちで2年ぶりの優勝を果たした。3位決定戦では、ポドペラ7dが4目半勝を収め、これまた2年ぶりに3位に入賞した。

ベスト8より

イリヤ・シクシン3p シクシン シクシン シクシン
ヴィクトール・リン6d
ルカシュ・ポドペラ7d ポドペラ
アリ・ジャバリン2p
マテウシュ・スルマ2p カチャノフスキー カチャノフスキー
アルテム・カチャノフスキー2p
パヴォル・リジー2p フレイラック
スタニスワフ・フレイラック7d
ベスト4。左から優勝のシクシン3p、準優勝のカチャノフスキー2p、3位のポドペラ7d、4位のフレイラック7d。(写真:Mikhail Krylov、欧州囲碁連盟)

オープン選手権では中国の孫騰宇7pが全勝優勝した。孫7pは2009年に阿含桐山杯に優勝している。

オープン選手権に優勝した孫騰宇7p。(写真:Judith van Dam、EurogoTV)

2位は昨年優勝のユン・ナムギ7d、3位は中国の賈罡璐2pだった。ヨーロッパ勢ではフレイラック7dが4位に入った。9回戦で賈2pを破る金星を上げ、見事な入賞を果たした。

来年の欧州囲碁コングレスは、ウクライナ南西部にあり、ルーマニア、モルドバ国境にも近いカームヤネツィ・ポジーリシクィイにおいて開かれる。ウェブサイトもすでにオープン(http://egc2020.org.ua/)している。現在のところ、2021年の開催場所は決定していない。

風光明媚なカームヤネツィ・ポジーリシクィイの街(コングレスサイトより)。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年7月23日 ]

欧州プロチーム、中国丙級リーグで初勝利

欧州囲碁連盟(EGF)のプロ4人がチームを組み、中国丙級リーグに参加した。大会は6月14-22日にかけて浙江省衢州において開かれた。EGFチームが丙級リーグに参加するのはこれが3回目。チームはこの大会参加にあたって清華大学囲碁財団の支援を得ており、チーム名も「清華紫荆隊」というものである。メンバーは主将がイリヤ・シクシン3p、副将パヴォル・リジー2p、三将マテウシュ・スルマ2p、四将アルテム・カチャノフスキー2pで、3月に行われた欧州プロ選手権の結果などを元に選抜された。

欧州チーム。右からカチャノフスキー2p、スルマ2p、リジー2p、シクシン3p。(写真:欧州囲碁連盟)

チームは1回戦、3回戦こそ0-4で敗退したものの、2回戦は引き分け。また4回戦では大連チーム相手に4-0の勝利を収めた。これが3度目の参加にして初勝利となった。5回戦も引き分け、6、7回戦は0-4の敗退だった。最後は「正直疲れた」とカチャノフスキー2p。来年以降もさらによい成績を上げることができるか。

パンダネット杯欧州チーム選手権決勝、フランスが優勝

ブリュッセルで7月20日から開催されている欧州囲碁コングレスの冒頭を飾る行事が、パンダネット杯欧州チーム選手権決勝である。先日お伝えしたように、オンライン・オフラインでの予選ステージを経て決勝ステージにはフランス、ルーマニア、ロシア、ウクライナが進出した。総当たりリーグ戦初日の2戦は、ロシアとフランスが共に3-1で勝利、最終戦で優勝をかけて戦うこととなった。

第1回戦、フランス(左)対ウクライナの対局。フランスが3-1で制した。(写真:欧州囲碁連盟、以下同)
第1回戦、ロシア(左)対ルーマニアの対局。ロシアが3-1で勝利。

引き分けの場合、オフライン予選における成績を優先してロシアが優勝、という規定の中、ロシアは主将のイリヤ・シクシン3pが早々と戴俊夫(ダイ・ジュンフ)8dを破ったものの、以下が敗れ、フランスの優勝が決まった。フランスは副将トマ・ドゥバール7dに加え、先日プロ入りを決めた三将タンギー・ルカルヴェ6d、四将バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6dが以前に比べて確実に力をつけ、フランスに2015年以来2度目の優勝をもたらした。2015年は、ロシアが決勝ステージに進出できないという「異常事態」の中で、ウクライナと同率ながら規定による優勝を果たしたフランスだが、今回はチャンピオンを破り、堂々たる優勝と言えるだろう。

今回は敗れたが、ロシアも確実に強い若手が育っており、来年からの巻き返しが見ものである。

優勝のフランスチーム。

最終結果は以下の通り。

順位 国名 勝敗
1 フランス 3-0
2 ロシア 2-1
3 ウクライナ 1-2
4 ルーマニア 0-3

欧州各地で夏季囲碁キャンプが開催

欧州各地で夏季囲碁キャンプが開催されている。今年の夏は、欧州囲碁連盟のスケジュールを見るだけでも以下のようなイベントが欧州囲碁コングレスをはさんで行われている。

クロアチアSEYGO Tour囲碁キャンプ(7月1-8日)

ウクライナ囲碁コングレス(7月6-14日)

フランス囲碁キャンプ(7月6-19日)

イエナ囲碁学校キャンプ(7月8-14日)

ポーランド囲碁キャンプ(8月10-25日)

ウィーンSEYGO Tour囲碁キャンプ(8月11-16日)

キャンプは本来フランスなどの国でもともと行われてきたが、最近他国にも広がりを見せてきた。内容はフランスのように指導を中心としたもの、ウクライナのように様々な大会を詰め込んだコングレスの縮小版まで様々である。「SEYGO ツアー」という若者向けの大会ツアーが開催されるようになったこともキャンプ形式の拡大に寄与している。週末の大会を前に、プロを招いて一週間ほど合宿をするというもので、クロアチアとウィーンがこれにあたる。

こうした中、先日筆者はドイツ・イエナ囲碁学校(JIGS)の合宿を訪問してきた。

丘の上から眺めるイエナの街並。(写真:筆者、以下同)

イエナは東部チューリンゲン州にあり、ライプツィヒ、ワイマールといった都市に近い大学都市である。JIGSはその郊外の一軒家にある。この地にJIGSが設置されたのは、イエナ大学教授で、元欧州女流チャンピオンでもあるマーニャ・マルツ4dのおかげだ。メインの講師として欧州ランキングトップの金永三8dを迎え、住み込みの生徒達に指導を行っている。家そのものは10人程度を受け入れることができる。短期滞在、長期滞在ともに可能で、長期滞在する場合、未成年の生徒達は、普段は地元の学校に通うことになる。特に、囲碁と共にドイツの高レベルの教育に関心を持つ東欧の青少年をターゲットとしている。

指導にあたる金永三8d(右)。左のシャコフ6dはロシア出身でイタリア在住。今後1年間、JIGSに住み込みで数学専門の高校に通いつつ囲碁修行に励む。

今回の合宿は2回目となるそうで、ドイツだけでなく、ロシア、イタリア、米国、ポーランドからも参加者があり、全体では10人弱。レベルは初心者から6dまでかなり幅が広かったが、皆金8dの指導のもと、対局、詰碁、棋譜並べ、色々なトレーニングなど、一日一生懸命囲碁に取り組んでいた。夜は映画、ボーリング、バーベキューなど、息抜きと交流の時間。参加者が自らお国自慢の料理を作る場面もあり、とても充実しつつ楽しい時間だった。

参加者の集合写真。

JIGSは秋からロシアの子どもたちを多く受け入れるそうで、マルツ4dはビザの手配でてんてこ舞いであった。今後はキャパシティの問題も出てくるかもしれない、とのことだった。立ち上げてまもないが、成長軌道に乗っているようだ。是非とも頑張ってほしいものである。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年7月18日 ]

パンダネット杯欧州チーム選手権予選、フランス、ルーマニア、ロシア、ウクライナが決勝ステージ進出

パンダネット杯欧州チーム(国別)選手権は今年で9年目を迎える。2010年の第1回大会では30カ国が参加、レベル別に3リーグ(1リーグ10カ国)に分かれて欧州チャンピオン国の座を争った。その後欧州囲碁連盟加盟国以外からもモロッコ、南アフリカといった国を受け入れるなど参加国が増加、リーグが一つ追加された。現在は、トップのAリーグに10カ国、Bも10カ国、CとDにはそれぞれ8、9カ国が参加して、参加国は全部で37カ国にまで増えた。

選手権の基本的なシステムは、1年を通じてパンダネット上でオンラインの予選を行い、Aリーグの決勝進出国4カ国を決めるほか、各リーグの入れ替え(毎年2チームずつが入れ替わる)を行う。Aリーグの決勝ステージは欧州囲碁コングレスの冒頭のイベントとして開かれ、オフラインの対局を総当たり戦で行う。1チームは4人編成で、勝てば2ポイント、引き分けの場合1ポイントを得るが、負けは0ポイントである。

以前にも触れたが、昨年は同選手権においてソフトを利用した不正と疑われるような対局が数局発生して問題となった。このため、今年はシステムに変更が加えられ、決勝ステージへの進出に向けて新たなオフラインの予選対局が加えられることとなった。具体的には、Aリーグ10チーム(上からロシア、ハンガリー、フランス、ウクライナ、イスラエル、ルーマニア、ポーランド、チェコ、ドイツ、イタリア)にBリーグ上位2チーム(セルビア、オーストリア)を加え、これを2つにわけて、6チームずつがリーグ戦を行い、上位2チームが決勝に進出することとなった。ただし、Aリーグのオンライン予選で上位4位に入ったチーム(ロシア、ハンガリー、フランス、ウクライナ)は2ポイントからスタート、というアドバンテージを得る。またAリーグの5-8位(イスラエル、ルーマニア、ポーランド、チェコ)は1ポイントから、Aリーグの9-10位およびBリーグ組(ドイツ、イタリア、セルビア、オーストリア)は0ポイントからスタートする、というシステムである。

第1組の対局は、6月14-16日にかけて、セルビアの、ハンガリー国境にも近いリゾート地であるパリッチにおいて開かれた。結果は、フランス(トマ・ドゥバール7d、タンギー・ルカルヴェ6d、バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア6d、レミ・カンパニー6d)が3勝2分と負け無しの悠々1位で枠抜けを果たした。2位は、オンライン予選ではほぼ対局がなかったカタリン・ツァラヌ5pを加えてメンバーを強化したルーマニア(クリスティアン・ポップ7d、カタリン・ツァラヌ5p、コルネル・ブルゾ7d、エリアン=ヨアン・グリゴリウ5d)。予選こそ6位で不調だったが、最終戦でハンガリーを破り、個人勝数で優って見事決勝に進んだ。

順位 国名 勝-引き分け-敗 ポイント 個人勝数
1 フランス 3-2-0 10 14
2 ルーマニア 3-1-1 8 13
3 ハンガリー 2-2-1 8 11
4 イスラエル 2-2-1 7 11
5 オーストリア 1-0-4 2 6
6 セルビア 0-1-4 1 5

一方、第2組は19-21日にかけてチェコ・プラハ近郊で開催された。こちらは、エース格のイリヤ・シクシン3p(ロシア)やアルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)が中国リーグ参加で不在の中、混戦が予想された。しかし結果は、ウクライナ(アンドリー・クラヴェッツ1p、ボーダン・ズーラコフスキー6d、ドミトロ・ボハツキー6d、コスティアンティン・ロパティウク5d)が4勝1分でトップ枠抜け。2位はロシア(アレクサンダー・ディナーシュタイン3p、ドミトリー・スリン6d、ティムール・サンキン6d、ヴィアチェスラフ・カイミン5d)と、囲碁の2大国が安定した強さを見せた。

ロシア(左)対ウクライナの対局。結果は引き分けだった。(写真:Adriana Tomsu、以下同)
第4局目のロシア(左)対チェコ。僅差が予想され、チェコが勝てば枠抜けの目も捨てきれなかったが、ロシアが3勝1敗で制した。
対局中はピリピリしているが、一度碁盤を離れれば皆仲間。各国選手が参加して友好サッカー大会が開かれた。
順位 国名 勝-引き分け-敗 ポイント 個人勝数
1 ウクライナ 4-1-0 11 16
2 ロシア 3-2-0 10 15
3 チェコ 2-1-2 6 10
4 ポーランド 1-2-2 5 8
5 ドイツ 1-2-2 4 8
6 イタリア 0-0-5 0 3

決勝ステージは、7月19-20日にかけてブリュッセルにおいて開催される。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年7月17日 ]

欧州・米国プロ対抗戦、欧州が勝利

先に、欧州囲碁連盟(EGF)と米国囲碁連盟(AGA)に所属するプロによる対抗戦が開始されたことをお伝えしたが、この度最終戦が打たれ、欧州側が勝利した。この対抗戦は各チーム5人、農心杯方式で行われた。

チームのメンバーは以下の通り。
EGF
イリヤ・シクシン3p、パヴォル・リジー2p、アルテム・カチャノフスキー2p、マテウシュ・スルマ2p、アリ・ジャバリン2p
AGA
アンディ・リウ1p、ウィリアム・ガンシェン・シ1p、カルヴィン・スン1p、ライアン・リー1p、エリック・ルイ1p

対抗戦はまずマテウシュ・スルマ2pの3連勝で始まった。スルマ2pは第4戦、エリック・ルイ1pとの対局も優勢に進めていたが、インターネットのラグに伴う痛恨の時間切れ負けを喫した。ルイ1pはこの後ジャバリン2p、リジー2pも破って3連勝。成績をタイに戻し、対抗戦は俄然盛り上がりを見せた。

第7戦ではアルテム・カチャノフスキー2pがルイ1pの連勝を止めた。第8戦、カチャノフスキー2pは自らの結婚式で対局できなかったため、特別ルールを利用してシクシン3pがAGA主将のライアン・リー1pと対局。苦しい碁をヨセで逆転、3目半勝ちを収め、第9戦を待たずに欧州チームが優勝した。欧州チームは優勝賞金1万ユーロを獲得した。

最終結果(太字が勝者)

対局日 4月7日 14日 21日 5月5日 6月2日 9日 30日 7月7日
欧州 スルマ スルマ スルマ スルマ ジャバリン リジー カチャノフスキー シクシン
米国 リウ スン ルイ ルイ ルイ ルイ リー
対局の様子はゲームストリーミングサイトのTwitchで中継された。これらのビデオはユーチューブ上で閲覧できる。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年6月17日 ]

Kidoカップ、カチャノフスキー2pが優勝

第11回となる独ハンブルクのKidoカップが6月8-10日にかけて開催された。同大会は欧州でも最大規模の大会で、今回も200人を超える人が参加した。

欧州国籍をもった強豪に限定されるトップ8には、欧州プロとしてはウクライナのアルテム・カチャノフスキー2p、アンドリー・クラヴェッツ1pの2人が参加した。

トップ8の対局の様子。カンパニー6d(右)が台風の目となった。(写真:Antonius Claasen、欧州囲碁連盟、以下同)

総当たりリーグの結果は以下の通り。

1 アルテム・カチャノフスキー 2p ウクライナ 6-1
2 スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド 4-3
3 レミ・カンパニー 6d フランス 4-3
4 アンドリー・クラヴェッツ 1p ウクライナ 4-3
5 ヴァレリー・クルシェルニツキー 5d ウクライナ 3-4
6 コルネル・ブルゾ 7d ルーマニア 3-4
7 エリアン=ヨアン・グリゴリウ 5d ルーマニア 2-5
8 ドミニク・ボヴィズ 6d ハンガリー 2-5

アルテム・カチャノフスキー2pが6勝1敗の好成績で2連覇を果たした。2位以降は混戦で、3人が4勝3敗で並んだが、ポーランドの実力者フレイラック7dが2位となった。フランスのカンパニー6dはカチャノフスキー2pとクラヴェッツ1pに土をつけ、前週のアムステルダム大会で2位に食い込んだのに続く好成績。4位はクラヴェッツ1pだった。

トッププレーヤーによる検討。

なお、メイン大会の優勝は昨年に続き金永三8d。2位には、関西学院大学OBで現在ドイツ在住の亀川恵二6dが入賞した。

同大会には毎年韓国棋院プロが指導に訪れる。右からハンブルク在住の尹暎善8p、都恩敎1p、金燦佑6p。
子供大会の様子。尹8pが見守る。
ペア碁大会も開催された。優勝はドイツのマーニャ・マルツ(左)、フェルディナンド・マルツ親子。
トップ8で2連覇を果たしたカチャノフスキー2p(右)。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年6月6日 ]

欧州ペア碁選手権、コヴァレヴァ/スリン・ペアが優勝

5月最終週末、オランダ・フローニンゲンにおいて欧州ペア碁選手権が開催された。6カ国から13ペアが参加した。

ハンガリーペア(左)とロシアペアの対局。(写真:欧州囲碁連盟、以下同)
ベスト3。中央が優勝のコヴァレヴァ/スリン・ペア、右が2位のファズルジャノバ/ディナーシュタイン・ペア、左が3位のマルツ/クラメール・ペア。

6回戦の結果、優勝はロシアのナタリア・コヴァレヴァ5dとドミトリー・スリン6dのペア。昨年優勝のアイグル・ファズルジャノヴァ4dとアレクサンダー・ディナーシュタイン3pのペアを破り、2年ぶりの王座奪還となった。

上位の結果は以下の通り。

順位 女性 男性 段級位 勝数
1 コヴァレヴァ スリン 5d ロシア 6
2 ファズルジャノヴァ ディナーシュタイン 5d ロシア 5
3 マルツ クラメール 4d ドイツ 4
4 ボクレ ビルエ 3d フランス 4
5 ポチャイ フォディ 3d ハンガリー 3
6 ローロフス エークフート 1k オランダ 3

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年5月27日 ]

欧州囲碁連盟第7のプロはフランスのルカルヴェ選手

5月16-19日にかけて、フランス・ストラスブールにおいて第5回目となるプロ入段手合が開催された。

これまでに開催された入段手合とその結果をおさらいしておくと、以下のようになる。

開催地 参加人数 プロ入段者
第1回(2014年) ストラスブール
アムステルダム
ウィーン
16人 パヴォル・リジー(スロヴァキア)
アリ・ジャバリン(イスラエル)
第2回(2015年) ピサ 16人 イリヤ・シクシン(ロシア)
マテウシュ・スルマ(ポーランド)
第3回(2016年) バーデンバーデン 16人 アルテム・カチャノフスキー(ウクライナ)
第4回(2017年) ウィーン
パルドゥビツェ
16人 アンドリー・クラヴェッツ(ウクライナ)

これまで、6人がこのシステムを通じてプロとなった。今回の大会は、2017年以来2年ぶりとなる。昨年大会が開かれなかったのは、毎年入段手合を実施した場合、プロのレベルが年々低下する恐れがあるため、という話であるが、恐らくスポンサーの関係もあるのであろう。表を見ると分かるように、入段手合はこれまで複数の土地で2日ずつ数段階を経て行われる場合と、1ヶ所で4日ほどかけて実施するケースがあったが、今回は後者となった。参加者は毎回と同じく16人で、欧州ランク順では以下の通りである。

名前 段位 出身国
コルネル・ブルゾ 7d ルーマニア
ルカシュ・ポドペラ 7d チェコ
スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド
アントン・チェルニフ 6d ロシア
ヴィクトール・リン 6d オーストリア
タンギー・ルカルヴェ 6d フランス
ドミニク・ボヴィズ 6d ハンガリー
ロブ・ファンザイスト 6d オランダ
レミ・カンパニー 5d フランス
ヨナス・ヴェルティケ 5d ドイツ
ヴィアチェスラフ・カイミン 5d ロシア
シナン・ジェポフ 5d ブルガリア
オンドレイ・クルムル 5d チェコ
オスカル・ヴァスケス 5d スペイン
アミール・フラグマン 5d イスラエル
シャイアン・ハムラー 5d オーストリア

当然ながら、上位のブルゾ、ポドペラ、フレイラックの7d陣を有力候補として推す声が強かった。

いつでも場を明るくするブルゾ7d。(写真:筆者)
篤実なタイプのポドペラ7d。(写真:Adriana Tomsu)
集中力で圧倒するフレイラック7d。(写真:Adriana Tomsu

大会は、第3回戦まではダブルエリミネーション方式(2敗者敗退)で8人を選び、準々決勝以降はノックアウト方式で行われる。今回、参加者は5-6dが中心だったが、全体的に若手のレベルが上昇しているのが感じられた。韓国や中国でトレーニングを受けるケースも増えており、それが確実に好影響を与えているのだろう。

7d陣のうち、ブルゾ7dは準々決勝で脱落した。ベスト4には、ポドペラ7d、フレイラック7dに加え、ブルゾ7dを撃破したボヴィズ6dと、準々決勝でリン6dを苦しみながらも逆転で破ったルカルヴェ6dが進出した。準決勝では、ポドペラ、フレイラックの7d同士が対決。これはポドペラ7dが手厚く制し、第1回以来の決勝進出を果たした。もう一山は、ルカルヴェ6dが勝利を収めた。

碁も迫力いっぱいのボヴィズ6d。(写真:Adriana Tomsu)

決勝は、白番のポドペラ7dが手厚く戦い、優勢を築いた。しかし、ルカルヴェ6dも我慢に我慢を重ねてジワリと差を詰め、ポドペラ7dのミスをついて逆転。3目半勝ちを収め、欧州第7のプロとなった。西欧からプロとなったのはルカルヴェ6dが初めてである。

息詰まるような空気の中での決勝。(写真:Adriana Tomsu)
中国式の整地。勝者にも笑みはなく、厳しい勝負を物語る。(写真:Adriana Tomsu)

ルカルヴェ6dは24歳。その入段については、大番狂わせという声が強く、決勝前もポドペラ7d乗りの声が圧倒的だった。
筆者自身はルカルヴェ6dを子供のころから見てきたが、ここ3年ほどの成長ぶりが実に素晴らしかったので、もしかしたら…という予感はあった。これまで大一番を落とすことが多かったのだが、今回はダメ元で行ったのがよかったかもしれない。苦しい碁も多かったが、それを実によく我慢し逆転につなげたのは見事だった。
本人は、「12歳で『ヒカルの碁』を見てから、プロになるのが夢だったので、本当に嬉しい。現在は、囲碁を教えて生活しているが、教えるのはとても性に合っていると思う。しかし、プロになったからには、まずはほかのプロに追いつけるように、そしてさらに強くなれるように努力する」とコメントした。
フランスからプロが出るのは個人的には非常に感慨深い。なかなか生活も楽ではないと思うが、是非自分の道を見つけて頑張ってほしいものだ。

表彰式にて。(写真:筆者)

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年5月15日 ]

欧州青少年選手権、モスクワで開催

欧州青少年選手権が5月2-5日にかけてモスクワで開催された。選手権に先立って数日間にわたり青少年向けのキャンプが行われるなど(その様子はビデオhttps://eygc2019.com/en/video-about-go-training-camp/で見ることができる)、現在のロシアらしく豪華な大会となった。

(写真:Mikhail Krylov、ロシア囲碁連盟、以下同)
ホテルのロビーで検討する若者たち。
会場にて。胸の囲碁ワッペンが素敵!

結果は以下の通り。

名前 段位 勝敗
1 ヴセヴォロド・オフシエンコ 1d ウクライナ 5-1
2 アルテミー・ピシシャルニコフ 1d ロシア 5-1
3 アレクセイ・イゴニン 2k ロシア 4-2
12歳未満
中央が優勝のオフシエンコ1d。右が2位のピシシャルニコフ1d、左が3位のイゴニン2k。
名前 段位 勝敗
1 ヴィルジニア・シャルネヴァ 4d ロシア 5-1
2 アーヴェド・ピトナー 4d ドイツ 5-1
3 トゥ・リンヴ 3d フランス 5-1
16歳未満
中央が優勝のシャルネヴァ4d。右が2位のピトナー4d、3位がトゥ3d。シャルネヴァ4dは女性として3人目の青少年選手権勝者となった。
名前 段位 勝敗
1 アントン・シェルニフ 6d ロシア 5-1
2 グレゴリー・フィオニン 6d ロシア 5-1
3 エリアン=ヨアン・グリゴリウ 5d ルーマニア 4-2
20歳未満
左から2人目が優勝のシェルニフ6d。その右が2位のフィオニン6dと3位のグリゴリウ5d。
キャンプにて。欧州各国から参加者があった。中央(背中)はマテウシュ・スルマ2p。
会場アルト・ホテルの前での集合写真。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年5月2日 ]

スルマ2p、グランドスラム初優勝

欧州最強プレーヤーを集めたグランドスラム大会が4月25-28日にかけて例年通りベルリンにおいて開催された。様々な基準を通じて選抜された12人が参加した。

アマチュア勢で一回戦を突破したのはルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)のみで、そのポドペラ7dも二回戦でイリヤ・シクシン3p(ロシア)に屈した。ベスト4には昨年優勝のシクシン3pに加え、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)、アルテム・カチャノフスキー2pが進出した。

決勝はスルマ2pとカチャノフスキー2pの対決となった。黒番のカチャノフスキー2pが手厚く打ち進め、スルマ2pはシノギ一方で苦しい展開かと見られたが、黒の決め損ないを咎めて見事に逆転に成功、初優勝を収めた。現在進行中の欧州・米国プロが対局する大会においても快進撃を続けるスルマ2p、今後の爆発を予感させる勝利だった。

欧州プロ達のパネル。中央は左からシクシン3p、ジャバリン2p、スルマ2p。(写真:Misha Krylov、欧州囲碁連盟、以下同)
優勝したスルマ2p(左)。篤実な若者で、囲碁の著作も多数発表している。

グランドスラム大会の過去の5回の結果は以下の通り。最強のシクシン3pが第1回、4回に2回優勝し、第2回を除いてはベスト4に進出して安定しているが、そのほかでは上位が大きく変動しており、欧州プロ間の力の均衡を示すものだろう。

年度 優勝 準優勝 3位 4位
2015 第1回 イリヤ・シクシン マテウシュ・スルマ アリ・ジャバリン クリスティアン・ポップ
2016 第2回 アリ・ジャバリン アルテム・カチャノフスキー パヴォル・リジー マテウシュ・スルマ
2017 第3回 アルテム・カチャノフスキー アレクサンダー・ディナーシュタイン パヴォル・リジー イリヤ・シクシン
2018 第4回 イリヤ・シクシン パヴォル・リジー デュシャン・ミティッチ アンドリー・クラヴェッツ
2019 第5回 マテウシュ・スルマ アルテム・カチャノフスキー イリヤ・シクシン アンドリー・クラヴェッツ

ニシュ囲碁大会、リジー2pが優勝

セルビア南東部の都市、ニシュの囲碁大会が3月末の週末に開催された。同大会はセルビア最大の大会で、毎年100人前後を集める。また今年は15大会から構成される欧州のグランプリ大会の一つともなった。

強豪が多く集まったトップグループでは、パヴォル・リジー2pが全勝優勝を飾った。2位は地元のニコラ・ミティッチ7d、3位はオーストリアのヴィクトール・リン6d、4位はチェコのルカシュ・ポドペラ7dだった。

大会の様子。若者も多数参加。(写真:ニシュ囲碁クラブ)
優勝したリジー2p。プロの強さを見せつけた。(グランドスラム大会にて。写真:Misha Krylov、欧州囲碁連盟)

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年4月25日 ]

欧州・米国プロ対抗戦が開始

2連勝を飾ったスルマ2p。(写真:欧州囲碁連盟)

欧州囲碁連盟(EGF)と米国囲碁連盟(AGA)に所属するプロによる対抗戦が4月7日から始まった(https://transatlanticgo.org/)。各チーム5人ずつを擁し、農心杯方式で実施される。対局は日曜日に月2-3回のペースでオンラインで打たれ、ゲームストリーミングサイトのTwitchなどを通じて配信される。勝利チームは1万ユーロの賞金を獲得する。

両チームのメンバーは以下の通り。

EGF
イリヤ・シクシン3p(ロシア、2015年入段)、パヴォル・リジー2p(スロバキア、2014年入段)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ、2016年入段)、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド、2015年入段)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル、2014年入段)

AGA
アンディ・リウ1p(2012年入段)、ウィリアム・ガンシェン・シ1p(カナダ、2012年入段)、カルヴィン・スン1p(2013年入段)、ライアン・リー1p(2014年入段)、エリック・ルイ1p(2015年入段)

4月23日時点では3局が打たれ、欧州先鋒のスルマ2pがリウ1p、スン1p、シ1pを撃破して3連勝を達成、米国を圧倒している。スルマ2pの快進撃が続くか、米国勢が巻き返すか。米国は2017年に中国のトッププロである陳耀燁9pを倒した実績のあるリー1pを温存している。共に数年来プロ制度を実施してきた両連盟の成果を測る意味でも注目の対局である。

パリ囲碁大会、金永三8dが優勝

パリ囲碁大会がイースターの週末である4月20-22日にかけて開催された。同大会は昨年までの数年間パリ近郊のヌイイーで開催されていたが、今年は中心部への回帰を果たしたこともあり、昨年と比べて30人多い130人が参加した。6回戦の結果、ドイツ・イエナ在住の金永三8dが優勝を果たした。しかし、金8dは最終戦でルーマニアのコルネル・ブルゾ7dに半目負けする波乱があり、2位のブルゾ7d、3位の戴俊夫8d(フランス)を含め3人が1敗で並ぶ混戦だった。4位はフランスのトマ・ドゥバール7d、5位はスペインのオスカル・バスケス5dだった。

優勝した金8d。(写真:Jean-Pierre Tavan、以下同)
ブルゾ7dは殊勲の星を上げたが、ドゥバール7dに敗れたのが祟り2位に終わった。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年4月1日 ]

グランドスラム予選会、ルカルベ6dとニコラ・ミティッチ7dが勝ち抜き

3月15-16日にスロバキアのブラチスラバにおいてグランドスラム大会の予選会が開催された。欧州最高峰の大会であるグランドスラム大会は4月末にベルリンで開催される予定で、同大会に参加するのは欧州囲碁連盟のプロ(6人)、ボーナスポイント大会成績優秀者(2人)、欧州ランキングトップ(1人)、ワイルドカード(1人)に加え、今回の予選会上位者2人の全部で12人である。

予選会には5-7dの10人が参加。5回戦の結果、全勝のない大混戦となったが(最近の傾向である)、1敗で抜け出したのはタンギー・ルカルベ6d(フランス)とニコラ・ミティッチ7d(セルビア)の二人だった。

戦い抜くタイプのルカルベ6d。(写真:Sona Lisa、欧州囲碁連盟、以下同)
とても正統派な囲碁を打つミティッチ7d。
1 ニコラ・ミティッチ 7d セルビア 4-1
2 タンギー・ルカルベ 6d フランス 4-1
3 アントン・チェルニフ 6d ロシア 3-2
4 コルネル・ブルゾ 6d ルーマニア 3-2
5 オンドレイ・クルムル 5d チェコ 2-3
最終結果(上位2人が枠抜け)

今回は次点に泣いたものの、ロシアの新鋭チェルニフ6dは上位二人に負けたのみで健闘した。

今年のグランドスラム参加者は以下の通り。ワイルドカードとしてはスペインのオスカル・バスケス5dが選ばれた。
イリヤ・シクシン3p(ロシア)
アリ・ジャバリン2p(イスラエル)
アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)
マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)
パヴォル・リジー2p(スロバキア)
アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)
ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)
デュシャン・ミティッチ7d(セルビア)
アレクサンダー・ディナーシュタイン3p(ロシア)
ニコラ・ミティッチ7d(セルビア)
タンギー・ルカルベ6d(フランス)
オスカル・バスケス5d(スペイン)

なお、グランドスラム予選会に続く週末(16-17日)には第2回となるKedrosカップが開かれ、70人が参加した。

こちらは5回戦の結果、コルネル・ブルゾ6dが見事全勝で優勝を収めた。2位はルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)、3位はデュシャン・ミティッチ7d(セルビア)、4位はスタニスワフ・フレイラック7d(ポーランド)だった。ちなみに予選会で枠抜けしたルカルベ6d、ニコラ・ミティッチ7dはともに3敗を喫して不振に終わっており、このレベルでコンスタントに勝つことの難しさを教えてくれる。

成績優秀者。左から3位のデュシャン・ミティッチ7d、優勝のブルゾ6d、2位のポドペラ7d、4位のフレイラック7d。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年3月26日 ]

仏グルノーブルでペア碁選手権+ペアチェス大会が開催

開会式にて。囲碁クラブ代表、チェスクラブ代表、グルノーブル市代表による挨拶。(写真:筆者、以下同)

3月16-17日にかけて、仏ペア碁オープン選手権がグルノーブルで開催された。今年は色々な意味で特殊な大会となった。まず、グルノーブル囲碁クラブがグルノーブルのチェスクラブとタイアップして、ペア碁選手権にあわせて「ペアチェス」大会を開いた。なんと、チェスではペアでのゲームというのはほとんど行われたことがないのだそうである(チェスクラブの方は「世界初の試み」と言っておられた)。ゲームの性格上の問題なのかもしれないが、興味深い。フランスでは囲碁界の女性の率が2割とされているが、チェス界もこの割合はほぼ同様で、女性への浸透が課題なのは同じだそうだ。

ペアチェス大会は土曜日のみ、3回戦で行われ、6ペアが出場した。基本的な大会のルール(着手順、時間など)についてはペア碁に従った。囲碁と違うのは、着手順で間違えた場合のペナルティが時間で払われること(相手側に2分が追加される)、また対局者が相談してよいケースに「引き分けの提案」があることである。 大会前は懐疑的な声も少なくなかったというが、結果は上々で、皆新たな発見に満足していたようである。まったく偶然ながら、フランスチェス連盟は男女平等を促進する観点から今年夏のフランス選手権の機会にやはり非公式のペアチェス大会を実施するのだそうだ。

ペアチェスの様子。
チェスの上位入賞者。

さて、ペア碁オープン選手権の方にはフランス中から12ペアが集った。「オープン」と名前がついているのは、私のような外国人でも参加できる、という意味である。実は毎年行われるペア碁選手権はそれこそ「オープン」なのだが、今年わざわざそう断りをいれている、というのは、「オープン」でなくフランス国籍保有者のみが参加できるもうひとつの選手権が9月に開かれるからである。なぜ2つ目のペア碁選手権が開かれることになったか、というと、来年2020年のオリンピックイヤーに、日本で大規模なペア碁選手権が開催される見込みであるためである。その選考を2大会を通じて行おう、というわけである。

4回戦の末、優勝したのはドミニク・コルニュエジョルス1dとデニス・カラダバン5dのペア。これまでは「永遠の2位」だったが、見事全勝で嬉しい初優勝を果たした。

フランスでは、「個人の大会はあまり出る気がないが、ペア碁だったら出たい」という人も多い。今年は特別なケースではあるが、今後も2つのペア碁選手権を併存させる可能性も検討されているようで、楽しみである。

右奥のゾエさんは15歳。昨年10月に囲碁を始めたばかりだが、すでにフランスの9級程度の実力で、見事2勝を上げ、段のペアも苦しめて「天才少女出現か」と話題になった。
土曜日には地元の子どもたちの連碁大会も開かれた。
子供連碁大会の表彰式にて。
布石段階では和気あいあいだが…
中盤以降、部屋の空気はいっぺんに緊張する。
ラウンドの合間に練習対局。
屋外での検討。AI流がかなり浸透してきた。
決勝の様子。
優勝ペア。コルニュエジョルスさんは同大会のメインオーガナイザーでもあった。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年3月18日 ]

第4回欧州プロ選手権、カチャノフスキー2pが優勝

欧州プロ達の検討。(写真:欧州囲碁連盟、以下同)

第4回欧州プロ選手権および欧州囲碁連盟のボーナスCレベルの大会が独東部イエナにおいて3月6-10日にかけて開催された。イエナには最近囲碁スクール「JIGS」が開設され、金栄三8dとマーニャ・マルツ4dが指導を行っている。今回の「囲碁ウィーク」とも言うべき大会開催も、こうした流れに乗ったものとなっている。

プロ選手権は6-8日にかけて開催され、欧州囲碁連盟プロであるイリヤ・シクシン3p(ロシア)、パヴォル・リジー2p(スロバキア)、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)、マテウシュ・スルマ2p(ポーランド)、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)、アンドリー・クラヴェッツ1p(ウクライナ)の6人が参加、総当たり戦で覇を争った。

ここ数年同様、全勝がない混戦となったが、優勝を飾ったのはカチャノフスキー2pで、スルマ2pに敗れたのみの4勝1敗だった。シクシン3p、スルマ2p、クラヴェッツ1pの3者が3勝2敗で同率2位となった。中でもクラヴェッツ1pは初日2連勝するなど気を吐いた。入段以来目立った活躍がなかっただけに、特筆に値するだろう。昨年優勝のリジー2p、またジャバリン2pは共に1勝4敗の大ブレーキだった。

続く週末(9-10日)のボーナスCレベル大会には、プロ選手権参加組、ドイツ在住の韓国アマ強豪を含め50人強が参加した。 5回戦の末優勝したのはベルリン在住の金成進7d。決勝ではマテウシュ・スルマ2pに辛勝した。スルマ2pは準決勝で欧州囲碁コングレスで複数回の優勝がある金栄三8dを下すなど、プロ選手権での好調を維持した。

優勝したカチャノフスキー2p。
上位入賞者。中央が優勝の金成進7d、右が2位のスルマ2p、左が3位の金栄三8d。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年2月26日 ]

ルーマニア囲碁キャンプが開催

SEYGOツアー大会の対局。左が優勝のジェポフ5d、右が2位のバスケス5d。(写真:Judith van Dam, EurogoTV)

ルーマニア囲碁キャンプが2月3-10日にかけてヴァトラ・ドルネイにおいて開催された。このキャンプはルーマニア出身のツァラヌ・カタリン5pなどが中心となって組織しているもので、今年で3回目となる。ルーマニア女性選手権、ペア碁選手権といった国内向け行事から、欧州の若者向けのトレーニング・キャンプと大会、第2回となる「VADOカップ」のような国際行事までを詰め込んだ盛り沢山の内容となった。欧州各地から多くの参加者が集まったほか、北京からも囲碁道場のメンバーが訪れ、賑やかな大会となった。

今年の新行事としては、欧州若者向けに「SEYGOツアー」と名付けられた一連の大会が設立され、ヴァトラ・ドルネイでその第1段階となる大会が開かれたことがある。「SEYGOツアー」とは「Saijo European Youth Goツアー」の略で、ツァラヌ5pの師であり、欧州における囲碁普及を長きにわたり行った日本棋院中部総本部の西条雅孝9pの名を冠している。この大会は20歳未満、16歳未満、12歳未満の3カテゴリーが設けられ、全部で100人近い参加者があった。20歳未満ではブルガリアの新鋭シナン・ジェポフ5dとスペインのオスカル・バスケス5dが1敗で並んだが、直接対決の結果でジェポフ5dが優勝となった。ジェポフ5dは若いながらEブックを出版するなど積極的な活動をしている。16歳未満ではヨアン=アレクサンドル・アルシノアイア2d、12歳未満ではドラゴシュ・ボルデアヌ1dと共にルーマニアのプレーヤーが優勝した。

SEYGOツアー大会の様子。(写真:Judith van Dam, EurogoTV)
ペア碁大会。(写真:Judith van Dam, EurogoTV)

また、欧州グランプリCレベル大会のVADOカップには140人近くが参加。うち6D以上のプレーヤーは10人を数え、プロもアルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)とマテウシュ・スルマ2p(ポーランド)の2人が参加した。6回戦の本大会は第5回戦までポーランドのスタニスワフ・フレイラック7dが同郷のスルマ2pを倒すなど5連勝したが、最終戦でデュシャン・ミティッチ7d(セルビア)に敗れた。ミティッチ7dはすでにスルマ2pに敗れており、1敗でこの三者が並ぶ三つ巴となったが、スルマ2pが優勝となり、昨年に続き2連覇を果たした。

VADOカップの上位入賞者。左から3位のデュシャン・ミティッチ7d、2位のスタニスワフ・フレイラック7d、優勝のマテウシュ・スルマ2p。(写真:Judith van Dam, EurogoTV)

ロシア中国公使杯、シクシン3pが優勝

ロシア・サンクトペテルブルクにおいて、2月16-17日に第10回となる中国公使杯が開催された。総勢では200人が参加する大きな大会となった。また上位も、ロシアからイリヤ・シクシン3p、アレクサンダー・ディナーシュタイン3pのほか、ポーランド出身で現在ロシア在住のマテウシュ・スルマ2p、中国から女流の仇丹雲2pが参加するハイレベルなものとなった。

トップグループでは、シクシン3pが決勝で仇2pを下し見事優勝した。

大会の様子。(写真:ロシア囲碁協会)
上位入賞者。左から4位のスルマ2p、2位の仇2p、優勝のシクシン3p、サンクトペテルブルク副領事、3位のディナーシュタイン3p。(写真:ロシア囲碁協会)

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年2月10日 ]

第2回グランプリファイナル、シクシン2pが優勝

1月24-27日にかけて、第2回となるグランプリファイナル大会が行われた。場所は昨年と同じく、チェコ・モラビア地方のオロモウツである。この大会のシステムについては昨年のレポートに詳述したので、そちらを参考にしていただきたい。今年の大会は、2018年に欧州グランプリを構成した13大会における成績優秀者16人が参加した。欧州グランプリ構成大会は前年に比べて3大会増えた。

予選4リーグの結果は以下の通り。上位2人が決勝トーナメントに駒を進める。

Aグループ

順位 名前 段位 勝 - 負
1 パヴォル・リジー 2p スロバキア 3-0
2 アリ・ジャバリン 2p イスラエル 2-1
3 ニコラ・ミティッチ 7d セルビア 1-2
4 アミール・フラグマン 5d イスラエル 0-3

Bグループ

順位 名前 段位 勝 - 負
1 イリヤ・シクシン 2p ロシア 3-0
2 アルテム・カチャノフスキー 2p ウクライナ 2-1
3 オンドジェイ・クルムル 5d チェコ 1-2
4 ヨナス・ヴェルティケ 6d ドイツ 0-3

Cグループ

順位 名前 段位 勝 - 負
1 マテウシュ・スルマ 1p ポーランド 3-0
2 アレクサンダー・ディナーシュタイン 3p ロシア 2-1
3 レミ・カンパニー 6d フランス 1-2
4 タンギー・ルカルベ 6d フランス 0-3

Dグループ

順位 名前 段位 勝 - 負
1 スタニスワフ・フレイラック 7d ポーランド 2-1
2 ルカシュ・ポドペラ 7d チェコ 2-1
3 デュシャン・ミティッチ 7d セルビア 2-1
4 ルカ・ネイリンク 5d ベルギー 0-3

リジー、ジャバリン、シクシン、カチャノフスキー、スルマの欧州プロ陣はすべて枠抜けしてその力を見せつけた(ウクライナのアンドリー・クラベッツ1pは不参加)。韓国棋院のディナーシュタイン3pも枠抜けを果たした。プロが入らなかったDグループは大混戦となったが、フレイラック、ポドペラの両者が1、2位を占めた。

決勝トーナメント

リジー リジー リジー シクシン
ディナーシュタイン
カチャノフスキー カチャノフスキー
フレイラック
スルマ スルマ シクシン
ジャバリン
シクシン シクシン
ポドペラ

決勝トーナメント1回戦では、アマ勢に加え、昨年優勝のジャバリン2pも脱落、準決勝は欧州プロ4人の争いとなった。決勝に残ったのはパヴォル・リジーおよびイリヤ・シクシンの両2pで、昨年の欧州コングレスにおける欧州選手権決勝の再現となった。この二人らしく、序盤から複雑怪奇なねじり合いとなったが、今回はシクシン2pが手厚く局面を動かして勝利を収めた。

シクシン・プロは、今回の勝利により3pへの昇進を果たした。(写真:欧州囲碁連盟)

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2019年1月18日 ]

欧州のプロ昇段システム、2年目を迎える

欧州囲碁連盟サイト(https://www.eurogofed.org/)には定期的に様々なプレーヤーによる記事が投稿されている。昨年末に、アルテム・カチャノフスキー2p(ウクライナ)による「欧州囲碁連盟の昇段システム」という記事が公表されたので、その内容を大まかに紹介したい。

欧州囲碁連盟でプロシステムが導入されたのは2014年で、現在までのところこのシステムを通じて6人が入段した。一方、プロの昇段システムが提案され、運用が開始されたのは2018年に入ってからのことである。このシステムはポーランドのマテウシュ・スルマ1pが中心になって考案したもの。その骨子は以下の通りである。

     
  • ・1-4pまでは「低段ポイント(LDP)」、5-8pまでは「高段ポイント(HDP)」と呼ばれるポイントを稼ぐことで昇段できる。昇段すると、0からの再スタートとなる。
  • ・1-4pでは、昇段に必要なポイントは、2p=40、3p=50、4p=60。
  • ・LDPに関しては、欧州および欧州外での大会(オンライン除く)において、アジア、欧州、北米などほかのプロに勝つことで得られる。基本的に1勝=1ポイントだが、世界戦本戦で勝った場合は、1勝=2ポイントが得られる。
  • ・これに加え、欧州選手権など大きな大会、また欧州外のプロが参加する大会に勝利すると、10ポイントが加算される。このほか、欧州のレベルB大会の優勝は2ポイント、レベルC大会の優勝は1ポイントが加算される。
  • ・5pに達すると、昇段基準が厳しくなり、HDPが必要となる。
  • ・HDP獲得は、世界大会の本戦入りが条件。ベスト16で1ポイント、ベスト8で2ポイント、ベスト4で8ポイント、決勝進出で16ポイントが得られる。昇段に必要なポイントは、5p= 5、6p=10、7p=15、8p=20。
  • ・9p昇段には、世界大会優勝が必要となる。

2019年頭時点での欧州プロのポイントは以下の通りである。

    段位 年齢 欧州囲碁連盟
レーティング
低段ポイント
(LDP)
1 イリヤ・シクシン 2p 28 2786 43
2 パヴォル・リジー 2p 23 2772 16
3 アルテム・カチャノフスキー 2p 26 2744 0
4 アリ・ジャバリン 2p 25 2737 9
5 マテウシュ・スルマ 1p 23 2729 39
6 アンドリー・クラヴェッツ 1p 28 2656 2

昇段ポイントは、プロシステムが始まった2014年に遡って計算された。ただし、皆が自ら計算して申告する、というシステムだったそうである。その結果、シクシン・プロは、すでに2017年時点で2pに昇段していたことが判明。見事2p昇段第1号となった。以来43LDPを集め、3pも目の前である。
欧州プロ第1号だったリジー・プロは、2018年3月に2pに昇段した。その後も欧州選手権に優勝するなど好調である。

欧州囲碁トップを走り続けるシクシン2p。(写真:欧州囲碁連盟)
現在2位につけるリジー2p。(写真:欧州囲碁連盟)

このほか、カチャノフスキー・プロ、ジャバリン・プロも2pに昇段した。ジャバリン・プロについては「彼は怠けていて2018年秋になってようやく点数を計算したところ、2018年1月時点で2pに昇段していたことが判明した」そうである。大胆不敵な(?)彼らしい逸話である。
スルマ1pは2pまであと1ポイント。今年中の昇段は間違いないであろう。最新のプロであるクラヴェッツ1pは苦戦しているが、こちらも是非頑張ってほしい。

左から欧州プロを指導する中国のバオ・ルン・プロ、ジャバリン1p、カチャノフスキー2p、クラヴェッツ1p。(写真:欧州囲碁連盟)
昇段システムを考案したスルマ1p。(写真:Olivier Dulac)

記事を執筆したカチャノフスキー2pによると、「制度は実験的なもので、将来的には変更も必要かもしれないが、現在のところ結果は上々だと思う」とのこと。

なお、2019年には2年ぶりに入段手合が開催される。5月半ば、仏ストラスブールにおいて、7人目のプロが決定することになる。

[ 記事:野口基樹 ]

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