中国囲碁ニュース

中国の著名な棋戦情報をお伝えします。
中国からの囲碁ニュースを皆様にお伝えします。

棋声人語 [ 2025年2月12日 ]

成都銀行チーム、中国女子囲碁甲級リーグで無敵の優勝

図1:女子囲碁甲級リーグは広西省陽朔市で幕を閉じた。
図1:女子囲碁甲級リーグは広西省陽朔市で幕を閉じた。

 4月に開幕した第11回中信和業杯中国女子囲碁甲級リーグは、4月の安徽省蕪湖市、10月の四川省都江堰市、11月の広西省陽朔市での8ラウンドの集中対局と、10ラウンドのホーム&アウェー方式を経て、11月10日に幕を閉じた。

 陸敏全六段(25歳)、羅楚玥六段(23歳)、趙奕斐五段(24歳)、そして外国人助っ人の呉侑珍九段(26歳)という強力な布陣で挑んだ成都銀行チームは、17勝1敗というリーグ史上最高成績を記録し、初優勝を果たした。昨年の優勝チームである山西チームは大きく調子を崩し3勝15敗と低迷。前回王者から一転、最下位となり降格の憂き目にあった。

 61歳のベテラン・芮乃偉九段が率いる上海星小目チームは序盤こそ苦戦したものの、大会中盤から調子を取り戻し、最終的に準優勝を果たした。周泓余七段(22歳)が率いる杭州チームは3位となった。過去に8回の女子囲碁リーグ優勝経験を持つ江蘇チームは、主将の於之瑩八段(27歳)が不調で、王晨星五段(33歳)は育児に忙しく、若手の台頭不足が重なり、最終的に8位にとどまり、かろうじて残留を決めた。

 女子囲碁リーグの優勝賞金は60万元(約1300万円)、準優勝は30万元(約650万円)、3位は20万元(約430万円)である。羅楚玥六段は最優秀棋士賞と最多勝利賞を獲得し、呉依銘六段(18歳)は最優秀進歩賞、李思璇四段(18歳)は最優秀新人賞を受賞した。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年2月5日 ]

於之瑩八段、女子名人戦防衛

図1:決勝戦の様子
図1:決勝戦の様子

 人民日報が2019年に再開した中国女子囲碁名人戦は、四川省南充市閬中古城でで二度開催された後、2021年と2022年は中断。2023年には内モンゴル自治区オルドス市へと舞台を移し、於之瑩八段(27歳)が周泓余七段(22歳)を破り名人の座に就いた。2024年は江蘇省宿遷市で開催され、西南から塞北、そして江南へと、まるで中国を巡る形式となっている。ちなみに、優勝賞金は25万元(約540万円)、準優勝は10万元(約210万円)と、前年と同額である。

 第4回中国女子名人戦は、10月20日から30日にかけて浙江省杭州市と江蘇省宿遷市の2カ所で開催された。本戦では、陸敏全六段(25歳)が李思璇四段(18歳)、徐晶琦四段(20歳)、高星五段(28歳)、王晨星五段(33歳)、宋容慧五段(32歳)を次々と破り、初の挑戦権を獲得した。王晨星五段と宋容慧五段は中国女子囲碁界で20年近く活躍を続けており、新世代の台頭が著しい中で、今なお第一線で戦い続けるのは容易ではない。

 三番勝負の決勝戦では、タイトル保持者として待ち構えていた於之莹八段が、2勝0敗で陸六段の挑戦を退け、見事に防衛を果たした。2023年に女子国手戦、女子名人戦、女子個人戦の3冠を独占し、さらに杭州アジア大会の金メダルを獲得するという圧倒的な成績を残した彼女だったが、2024年は彼女の「王朝」が崩壊する年だった。約10年間にわたり中国女子囲碁界を支配してきた彼女は、年末にレーティング1位の座を、若手の唐嘉雯六段に譲ることとなった。現在、於之莹八段に残されたタイトルは、この女子名人戦のみとなっている。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年1月30日 ]

丁浩九段、三星杯ワールドマスターズで連覇

図1:対局会場
図1:対局会場

 2024年は5つの世界囲碁国際戦の優勝者が決まった。各大会の優勝者は以下の通り。

 1月:LG杯——申真諝九段(韓国・24歳)が卞相壹九段(韓国・27歳)を2-0で下し優勝。

 5月:夢百合杯——李軒豪九段(中国・29歳)が党毅飛九段(中国・30歳)を3-1で破り戴冠。

 8月:衢州爛柯杯——申真諝九段(韓国・24歳)が辜梓豪九段(中国・26歳)を2-0で撃破。

 9月:応氏杯——一力遼九段(日本・27歳)が謝科九段(中国・24歳)を3-0で圧勝し、悲願の世界一に。

 そして最後の戦いとなったのは、11月12日から22日に韓国高陽市で開催された三星杯ワールドマスターズである。

 群雄が集う三星杯は、世界で唯一、短期間で一発勝負のトーナメント形式で優勝者を決める国際戦。そのため、毎年ドラマティックな展開が繰り広げられる。1回戦では、韓国の2人の女流棋士、崔精九段(28歳)と金恩持九段(17歳)が注目を集めた。なんと彼女たちは、中国の世界チャンピオン、辜梓豪九段(26歳)と謝爾豪九段(26歳)を撃破するという快挙を成し遂げた。しかも、辜九段は今年の応氏杯で、謝九段は衢州爛柯杯で、それぞれ金恩持九段と上野愛咲美五段(23歳)に敗れており、2024年は女流棋士に苦杯を舐める一年となってしまった。しかし、大会が進むにつれ、崔九段と金九段は中国の丁浩九段(24歳)と謝科九段に阻まれ、結果として、ベスト8のうち中国7人、韓国が1人という圧倒的な構図に。開催国の韓国唯一の希望となった申真諝九段も、準々決勝で丁九段に敗れ、中国棋士がベスト4を独占した。これは三星杯の歴史上、2019年以来2度目の快挙だった。

 昨年の三星杯王者である丁浩九段は、姜東潤九段(35歳)、崔精九段、申真諝九段、金禹丞八段(20歳)を次々に破り、決勝進出を決めた。対するは党毅飛九段。5月の夢百合杯決勝で惜敗した党九段は、この大舞台で再びタイトルを狙った。

決勝三番勝負は接戦となり、両者1勝1敗で迎えた最終局。持ち前の冷静さと終盤の勝負強さを発揮した丁浩九段が、2-1で勝利し、三星杯2連覇を達成した。

 この結果、2024年の世界囲碁国際戦のタイトルは、韓国2勝(申真諝)、中国2勝(李軒豪・丁浩)、日本1勝(一力遼)と、三国が競い合う形となった。AI時代の囲碁は、かつてないほど熾烈な国際戦の時代を迎えている。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年1月21日 ]

胡耀宇八段、奇跡の戴冠——聶衛平杯を制す

 四川省成都市青羊区で開催された聶衛平杯中日韓囲碁マスターズは、2024年に第6回を迎えた。今年も昨年採用された革新的な方式を継続し、中年組(40歳以上)と青年組(20歳以下)に分かれてそれぞれ各8名が争い、両組の優勝者が最後に決勝戦で激突する方式だ。

 大会は11月16日、17日に、歴史ある杜甫草堂で行われた。11月12日に三星杯ワールドマスターズで敗退した前回優勝者の王星昊九段(20歳)が急にスケジュールが空いたため、最後の一枠として出場することが決まった。もし王九段が出場できない場合は、中国代表選抜戦4位の呉依銘六段(18歳)が繰り上げ出場する予定だった。

 大会が始まると、王星昊九段は福岡航太朗七段(19歳)、鄭載想六段(19歳)、韓友賑九段(19歳)を次々に破り、危なげなく青年組優勝を果たした。一方の中年組では、胡耀宇八段(42歳)が山下敬吾九段(46歳)、睦鎮磌九段(44歳)、古力九段(41歳)を連破し、頂点に立った。

 そして、決勝戦はまさかの「上海囲碁界の師弟対決」に。20歳の若きトップ棋士・王星昊九段と、その師匠的存在である世代の名手・胡耀宇八段の対決は、多くの人が「若手の王九段が勝つだろう」と思っていた。しかし結果は、胡耀宇八段が半目差の逆転勝利を収め、“師恩に報いる一局“となった。聶衛平杯の優勝賞金は20万元、準優勝賞金は15万元(約430万円、320万円)。まさに世代を超えた名勝負だった。

 「石仏」と呼ばれ、かつて囲碁界を席巻した李昌鎬九段(49歳)も出場したが、初戦で旧敵の周鶴洋九段(48歳)に敗北。周九段はここ5年以上、棋戦に出場しておらず、最近は雲南省で囲碁普及を行っている。また、長年韓国国家囲碁チームの総監督を務めた睦鎮碩九段も久々に現役復帰を果たし、初戦では羅洗河九段(47歳)を破り、存在感を示した。

 大会の合間には、聶衛平九段(72歳)と張璇八段(56歳)が、杜甫草堂の歴史ある大樹の下で大盤解説を行った。往年の名棋士たちが一堂に会する貴重な機会となった。

図1:決勝戦会場。
図1:決勝戦会場。
図2:周鶴洋九段は李昌鎬九段に勝利。
図2:周鶴洋九段は李昌鎬九段に勝利。
図3:久々の公式戦に挑んだ睦鎮碩九段、初戦で羅洗河九段に勝利。
図3:久々の公式戦に挑んだ睦鎮碩九段、初戦で羅洗河九段に勝利。
図4:聶衛平九段と張璇八段による大盤解説の様子。
図4:聶衛平九段と張璇八段による大盤解説の様子。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年1月15日 ]

党毅飛九段、誕生日に衢州爛柯杯で栄冠を手にする

図1:決勝戦会場
図1:決勝戦会場

 世界囲碁の聖地を目指す中国浙江省衢州市が、2022年に創設した衢州爛柯杯世界囲碁オープン戦。それ以前から続く国内大会もなお健在だ。2006年に始まり、2年に1度開催されてきた同名の国内版・衢州爛柯杯が、2024年6月12日から17日にかけて第10回大会を迎えた。中国ランキング上位32名の棋士が衢州に集結し、6日間で5回戦のトーナメントを戦い、50万元(約1000万円)の高額賞金をかけた熱戦が繰り広げられた。

 年初の中国天元戦では連笑九段(30歳)が優勝し、夢百合杯世界オープン戦では李軒豪九段(29歳)が制覇するなど、ベテラン棋士たちが囲碁界の主役となっている。そして今回も、党毅飛九段(30歳)と連笑九段の二人がそれぞれ4連勝し、決勝進出を決めた。ここ20年、囲碁界は若手棋士の台頭が著しかったが、この世代が再び頂点を争う展開は、AI時代の進化がもたらした大きな変化として注目された。

 決勝戦が行われた6月17日は、党毅飛九段の30歳の誕生日という特別な一日。夢百合杯で準優勝に甘んじた彼は、雪辱を果たすべく、粘り強く戦い抜いた。終盤、連笑九段の痛恨のミスを見逃さず、半目差という僅差で逆転勝利を飾った。また、所属する四川省囲碁協会からも30万元(約600万円)の特別報奨が贈られ、30歳という節目の誕生日は栄光とともに祝われた。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年1月7日 ]

姜堰女子囲碁戦が奇跡の復活

 過去に中国で開催されていた女流の世界大会は、江蘇省姜堰市の勝ち抜き戦、浙江省天台市の団体戦、江蘇省蘇州市と福建省福州市の個人戦(穹窿山兵聖杯、呉清源杯)の4大会があった。しかし、コロナ禍の影響により、2020年から2023年までいずれも中断を余儀なくされた。2024年、そのうちの江蘇省姜堰市の「黄竜士杯」が先陣を切って大会を再開することを決め、さらに蘇州市や天台市の世界女子戦も復活に向けて準備が進められているという。

 姜堰市で開催された黄竜士杯は、創設当初は中国・日本・韓国・中華台北の4ヵ国による団体戦として行われ、2012年から2019年までは中国、韓国、日本の各国から5人ずつ参加する勝ち抜き戦形式に変更。2022年に韓国の湖盤社が三国女子勝ち抜き戦を企画し、一度だけ開催されたが、その後、明確な中止の発表はなかった。そして2024年、第10回黄竜士杯世界女子囲碁戦が復活。形式は大きく変更され、中国4名、日本2名、韓国2名の計8名による7回戦の総当たり戦が採用された。優勝賞金は30万元、準優勝賞金は10万元(約600万円、200万円相当)となっている。

 大会は、女子囲碁界で絶対女王とされてきた韓国の崔精九段(27歳)の独壇場になると思われていたが、意外なことに、彼女は初戦で同胞の許瑞玹四段(22歳)に勝利した後、突如として調子を大きく崩し、6連敗という結果で最下位に沈んだ。一方、中国のエース於之瑩八段(26歳)は、国内の代表選抜戦で敗退し、本戦に進むことができなかった。女子囲碁界の勢力図は、大きく変わる兆しを見せている。

 優勝は中国の周泓余七段(22歳)。6勝1敗の好成績で堂々の戴冠となった。唯一、周七段に土をつけたのは日本の上野愛咲美五段(22歳)だったが、最終局で既に優勝争いから脱落していた中国の陸敏全六段(25歳)に敗北。惜しくも優勝を逃した。

最終順位は以下の通り。
1位:中国 周泓余七段(22歳)(6勝1敗)
2位:日本 上野愛咲美五段(22歳)(5勝2敗)
3位:中国 李赫五段(32歳)(4勝3敗)
4位:中国 李小溪四段(18歳)(3勝4敗)
5位:韓国 許瑞玹四段(22歳)(3勝4敗)
6位:日本 藤沢里菜七段(25歳)(2勝5敗)
7位:中国 陸敏全六段(25歳)(2勝5敗)
8位:韓国 崔精九段(27歳)(1勝6敗)

図1:熱戦が繰り広げられた対局会場の様子。
図1:熱戦が繰り広げられた対局会場の様子。
図2:優勝者と準優勝者の記念写真。
図2:優勝者と準優勝者の記念写真。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

バックナンバー