中国囲碁ニュース

中国の著名な棋戦情報をお伝えします。
中国からの囲碁ニュースを皆様にお伝えします。

棋声人語 [ 2025年5月21日 ]

蘇泊爾杭州チーム、囲碁甲級リーグ6度目の優勝を達成

 2024年5月、浙江省湖州市長興県で開幕した「2024楽居楽杯中国囲碁甲級リーグ戦」は、15ラウンドのレギュラーシーズンが10月末に終了し、11月からプレーオフが順次行われた。そして12月30日、童夢成八段(28歳)がエースを務めた民生信用カード北京チームと、王楚軒五段(18歳)ら若手中心の上海清一チームが降格の憂き目にあった。

 一方、申真諝九段(24歳)、連笑九段(30歳)を中心とする蘇泊爾杭州チームと、柯潔九段(27歳)、朴廷桓九段(32歳)の布陣で戦う前年度王者の深圳龍華チームが決勝に進出した。なお、党毅飛九段(30歳)、謝爾豪九段(26歳)ら実力者をそろえる成都チームは悲願の初優勝を目指すもまたしても準決勝で敗退した。

 2025年1月11日と13日にかけて、海南省陵水県の清水湾で行われた決勝では、申真諝九段が朴廷桓九段、柯潔九段を連破する圧巻の内容で、蘇泊爾杭州チームが5対3で勝利。チームはこれで囲甲リーグ通算6度目の優勝を果たした。

 深圳龍華チームは惜しくも連覇を逃したが、中国囲甲リーグでは外国人選手に個人賞が与えられない規定のため、今季無敗だった申九段のチームメイトたちが際立った成績を残せなかったこともあり、最も好成績を残した時越九段(34歳)が最優秀棋士(MVP)に輝いた。彼は囲甲リーグ史上最年長でのMVP受賞となった。

 最多勝利賞・連勝賞は、王星昊九段(20歳)、楊鼎新九段(26歳)、李維清九段(24歳)の3名がそれぞれの活躍により受賞した。

図1:決勝戦会場。
図1:決勝戦会場。
図2:なお2024年シーズンより中国囲甲リーグは外国人選手の対戦回避ルールを撤廃。これにより、多くの韓国棋士が同一リーグ内で対局する機会が生まれた。決勝では、韓国の申真谞九段と朴廷桓九段が対局。申九段が朴九段に対する連勝記録をさらに伸ばす結果となった。ちなみにこの日は朴九段の32歳の誕生日。勝負の厳しさが、皮肉なタイミングで突きつけられた。
図2:なお2024年シーズンより中国囲甲リーグは外国人選手の対戦回避ルールを撤廃。これにより、多くの韓国棋士が同一リーグ内で対局する機会が生まれた。決勝では、韓国の申真谞九段と朴廷桓九段が対局。申九段が朴九段に対する連勝記録をさらに伸ばす結果となった。ちなみにこの日は朴九段の32歳の誕生日。勝負の厳しさが、皮肉なタイミングで突きつけられた。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年4月30日 ]

陳梓健八段、阿含・桐山杯で大活躍

 第25回阿含・桐山杯中国囲碁早碁オープン戦が、2024年10月11日から15日まで北京市で開催された。中国棋院の改装により、予選第1ラウンドから本戦準決勝まで、わずか5日間で9局を戦い抜く日程となった。

 これまでオンライン予選が採用された時期もあったが、今回は初めてすべてのプロ棋士に対面での予選出場が解禁され、従来から認められているアマチュア出場枠も含め、総勢226名がエントリーした。

 早碁は波乱が起きやすい上、連戦となればその傾向はさらに強まる。そんな中、この激戦を乗り越えたのは、陳梓健八段(24歳)と戎毅七段(30歳)の中堅棋士2人。両者は抜群の調子と運を味方に勝ち進んだ。

 陳八段は、廖行文七段(30歳)、李成森七段(25歳)、時越九段(33歳)、沈沛然八段(22歳)を連破して本戦進出。本戦では丁浩九段(24歳)、楊鼎新九段(26歳)、柯潔九段(27歳)といったトップ棋士を次々撃破し、“世界チャンピオンキラー” の異名を欲しいままにした。一方、戎七段も党毅飛九段(30歳)、謝科九段(24歳)といった実力者を下して決勝に進出。

 決勝戦は11月29日、江西省撫州市宜黄県の石巩古寺で開催された。歴史ある古寺の山岳風景に囲まれた荘厳な舞台で、陳八段が完勝し、初優勝を飾った。

 さらに12月26日、千年の古都・陝西省西安市で行われた日中チャンピオン対抗戦では、日本阿含・桐山杯優勝者の一力遼九段(27歳)との複雑な攻め合いを制し、名実ともに現在最も注目される若手棋士の一人となった。

図1:決勝戦の対局。左は陳梓健八段、右は戎毅七段。
図1:決勝戦の対局。左は陳梓健八段、右は戎毅七段。
図2:決勝戦の対局室は石巩禅寺内の書院で行われた。
図2:決勝戦の対局室は石巩禅寺内の書院で行われた。
図3:「八風不動」と刻まれた優勝トロフィーを手にする陳梓健八段。
図3:「八風不動」と刻まれた優勝トロフィーを手にする陳梓健八段。
図4:石巩寺内の扁額「放下」。
図4:石巩寺内の扁額「放下」。
図5:日中チャンピオン対抗戦の会場。
図5:日中チャンピオン対抗戦の会場。
図6:大盤解説には多くの西安の囲碁ファンが集まった。
図6:大盤解説には多くの西安の囲碁ファンが集まった。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年4月2日 ]

李軒豪九段、再び王中王の座に輝く

図1:決勝戦会場。
図1:決勝戦会場。

 2019年に創設された中国囲碁の「王中王争覇戦」は、前年に最も多くの賞金を獲得した8名のタイトル保持者を招待し、「王の中の王」を決定する非常に注目度の高い大会である。2023年の第4回では初めて8名による7回戦総当たり方式が採用され、中国国内でも最高レベルのリーグ戦として話題を集めた。

 2024年7月25日から30日にかけて、浙江省嵊州市で開催された第5回大会では、第1回大会と同じダブル・エリミネーション方式(二敗失格制)に戻し、以下の8名が100万元人民元(約2,160万円)の優勝賞金を懸けて競い合った。

 出場者は、夢百合杯優勝の李軒豪九段(29歳)、三星杯優勝の丁浩九段(24歳)、天元の連笑九段(30歳)、名人の羋昱廷九段(28歳)、大棋士戦優勝の楊楷文九段(27歳)、衢州爛柯杯優勝の党毅飛九段(30歳)、倡棋杯優勝の王星昊九段(20歳)、そして前回優勝の李維清九段(24歳)である。

 2024年に自身初の国際戦優勝を獲得した李軒豪九段は、本大会でも今大会でも抜群の安定感を見せた。丁浩九段、王星昊九段、羋昱廷九段を連破して勝者組の決勝へ進出。決勝では敗者復活から勝ち上がってきた王星昊九段を再び下し、2022年の第3回大会に続き、2度目の「王中王」戴冠を果たした。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年3月12日 ]

唐嘉雯、女子国手戦初優勝――中国女流囲碁界に新時代の到来

図1:優勝を飾った唐嘉雯女流国手。
図1:優勝を飾った唐嘉雯女流国手。

 中国女流囲碁の伝統的棋戦「女子国手戦」は、2012年に中国・陝西省西安市で創設され、2度開催された後、10年間中断していたが、2023年に陝西省渭南市白水県で第3回大会として復活。於之瑩八段(27歳)が優勝を果たした。そして2024年の第4回大会は、5月に浙江省杭州市で予選が行われ、16名による本戦は9月4日から7日にかけて白水県で開催された。優勝賞金は20万元人民元(約430万円)。

 今回の大会は、中国女子囲碁界の世代交代を象徴する結果となった。これまで長く20世紀生まれの棋士たちが覇権を握ってきたが、本大会をきっかけに、21世紀生まれの新鋭たちが主役へと躍り出た。

 中でも注目を集めたのが唐嘉雯六段(20歳)。本戦で最年少出場の劉子葭初段(13歳)、前回優勝者であり長年王者として君臨してきた於之瑩八段、同世代の最強ライバルである呉依銘六段(18歳)を次々に撃破し、決勝では過去15年にわたり第一線で活躍してきた李赫六段(32歳)を下して、自身初となる棋戦優勝を果たした。

 唐嘉雯六段は線の細い印象とは対照的に、意志の強さは誰にも引けを取らない。ネット上のプロフィールには「明日こそ天下無敵になる」と記されており、上海出身の往年の名手・芮乃偉九段(61歳)、楊暉八段(61歳)、華学明七段(62歳)の系譜を継ぐ有望な後継者と見られている。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年2月19日 ]

申眞諝九段、ついに衢州爛柯杯を制す

 中国が新たに創設した世界囲碁大会「衢州爛柯杯」。2023年に行われた第1回大会では、世界の頂点を目指して意気込んでいた韓国の申眞諝九段(24歳)が決勝で先勝しながらも辜梓豪九段(26歳)に逆転を許し、苦杯をなめた。

 そして迎えた2024年の第2回大会、本戦出場者数は前年の32名から48名に拡大。申九段は4月、趙晨宇九段(25歳)、張涛八段(33歳)を破り、6月には楊鼎新九段(26歳)、丁浩九段(24歳)を接戦の末に退け、再び辜梓豪九段との決勝戦に駒を進めた。前回優勝者の自動出場制度(いわゆる「シード」)が設けられておらず、2年連続で同じ顔ぶれによる決勝戦が実現するのは、実に30年ぶりのこととなる。

 8月19日と21日に行われた決勝では、申九段は昨年の雪辱を果たすべく落ち着いた打ち回しを見せ、2勝0敗で辜九段を下して初優勝。優勝賞金は180万元人民元(約3,900万円)を手にし、自身7つ目の国際戦優勝となった。

 今大会では、日本の棋士たちの活躍も際立った。井山裕太九段(35歳)は往年の力を取り戻し、ベスト4に進出した。また、女流棋士の上野愛咲美五段(23歳)は、韓国の朴珉奎九段(30歳)と中国の世界チャンピオンである謝爾豪九段(26歳)を連破し、日本囲碁界にとって2024年の躍進を象徴するような成果を残した。

図1:決勝戦の対局の様子。
図1:決勝戦の対局の様子。
図2:対局後、辜梓豪九段の夫人が申真諝九段にツーショットを申し出る様子。
図2:対局後、辜梓豪九段の夫人が申真諝九段にツーショットを申し出る様子。
図3:日本チーム(左から井山裕太九段、謝依旻七段、孔令文七段)が新疆アクス地区ウシュ県の天山烽火台の前で記念撮影。
図3:日本チーム(左から井山裕太九段、謝依旻七段、孔令文七段)が新疆アクス地区ウシュ県の天山烽火台の前で記念撮影。
図4:衢州市とウシュ県は対口支援(姉妹都市協力)関係にあり、「囲碁の聖地」づくりを目指す衢州は、新疆ウイグル族の子どもたちの学校にも囲碁を普及させている。
図4:衢州市とウシュ県は対口支援(姉妹都市協力)関係にあり、「囲碁の聖地」づくりを目指す衢州は、新疆ウイグル族の子どもたちの学校にも囲碁を普及させている。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年2月12日 ]

成都銀行チーム、中国女子囲碁甲級リーグで無敵の優勝

図1:女子囲碁甲級リーグは広西省陽朔市で幕を閉じた。
図1:女子囲碁甲級リーグは広西省陽朔市で幕を閉じた。

 4月に開幕した第11回中信和業杯中国女子囲碁甲級リーグは、4月の安徽省蕪湖市、10月の四川省都江堰市、11月の広西省陽朔市での8ラウンドの集中対局と、10ラウンドのホーム&アウェー方式を経て、11月10日に幕を閉じた。

 陸敏全六段(25歳)、羅楚玥六段(23歳)、趙奕斐五段(24歳)、そして外国人助っ人の呉侑珍九段(26歳)という強力な布陣で挑んだ成都銀行チームは、17勝1敗というリーグ史上最高成績を記録し、初優勝を果たした。昨年の優勝チームである山西チームは大きく調子を崩し3勝15敗と低迷。前回王者から一転、最下位となり降格の憂き目にあった。

 61歳のベテラン・芮乃偉九段が率いる上海星小目チームは序盤こそ苦戦したものの、大会中盤から調子を取り戻し、最終的に準優勝を果たした。周泓余七段(22歳)が率いる杭州チームは3位となった。過去に8回の女子囲碁リーグ優勝経験を持つ江蘇チームは、主将の於之瑩八段(27歳)が不調で、王晨星五段(33歳)は育児に忙しく、若手の台頭不足が重なり、最終的に8位にとどまり、かろうじて残留を決めた。

 女子囲碁リーグの優勝賞金は60万元(約1300万円)、準優勝は30万元(約650万円)、3位は20万元(約430万円)である。羅楚玥六段は最優秀棋士賞と最多勝利賞を獲得し、呉依銘六段(18歳)は最優秀進歩賞、李思璇四段(18歳)は最優秀新人賞を受賞した。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年2月5日 ]

於之瑩八段、女子名人戦防衛

図1:決勝戦の様子
図1:決勝戦の様子

 人民日報が2019年に再開した中国女子囲碁名人戦は、四川省南充市閬中古城でで二度開催された後、2021年と2022年は中断。2023年には内モンゴル自治区オルドス市へと舞台を移し、於之瑩八段(27歳)が周泓余七段(22歳)を破り名人の座に就いた。2024年は江蘇省宿遷市で開催され、西南から塞北、そして江南へと、まるで中国を巡る形式となっている。ちなみに、優勝賞金は25万元(約540万円)、準優勝は10万元(約210万円)と、前年と同額である。

 第4回中国女子名人戦は、10月20日から30日にかけて浙江省杭州市と江蘇省宿遷市の2カ所で開催された。本戦では、陸敏全六段(25歳)が李思璇四段(18歳)、徐晶琦四段(20歳)、高星五段(28歳)、王晨星五段(33歳)、宋容慧五段(32歳)を次々と破り、初の挑戦権を獲得した。王晨星五段と宋容慧五段は中国女子囲碁界で20年近く活躍を続けており、新世代の台頭が著しい中で、今なお第一線で戦い続けるのは容易ではない。

 三番勝負の決勝戦では、タイトル保持者として待ち構えていた於之莹八段が、2勝0敗で陸六段の挑戦を退け、見事に防衛を果たした。2023年に女子国手戦、女子名人戦、女子個人戦の3冠を独占し、さらに杭州アジア大会の金メダルを獲得するという圧倒的な成績を残した彼女だったが、2024年は彼女の「王朝」が崩壊する年だった。約10年間にわたり中国女子囲碁界を支配してきた彼女は、年末にレーティング1位の座を、若手の唐嘉雯六段に譲ることとなった。現在、於之莹八段に残されたタイトルは、この女子名人戦のみとなっている。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年1月30日 ]

丁浩九段、三星杯ワールドマスターズで連覇

図1:対局会場
図1:対局会場

 2024年は5つの世界囲碁国際戦の優勝者が決まった。各大会の優勝者は以下の通り。

 1月:LG杯——申真諝九段(韓国・24歳)が卞相壹九段(韓国・27歳)を2-0で下し優勝。

 5月:夢百合杯——李軒豪九段(中国・29歳)が党毅飛九段(中国・30歳)を3-1で破り戴冠。

 8月:衢州爛柯杯——申真諝九段(韓国・24歳)が辜梓豪九段(中国・26歳)を2-0で撃破。

 9月:応氏杯——一力遼九段(日本・27歳)が謝科九段(中国・24歳)を3-0で圧勝し、悲願の世界一に。

 そして最後の戦いとなったのは、11月12日から22日に韓国高陽市で開催された三星杯ワールドマスターズである。

 群雄が集う三星杯は、世界で唯一、短期間で一発勝負のトーナメント形式で優勝者を決める国際戦。そのため、毎年ドラマティックな展開が繰り広げられる。1回戦では、韓国の2人の女流棋士、崔精九段(28歳)と金恩持九段(17歳)が注目を集めた。なんと彼女たちは、中国の世界チャンピオン、辜梓豪九段(26歳)と謝爾豪九段(26歳)を撃破するという快挙を成し遂げた。しかも、辜九段は今年の応氏杯で、謝九段は衢州爛柯杯で、それぞれ金恩持九段と上野愛咲美五段(23歳)に敗れており、2024年は女流棋士に苦杯を舐める一年となってしまった。しかし、大会が進むにつれ、崔九段と金九段は中国の丁浩九段(24歳)と謝科九段に阻まれ、結果として、ベスト8のうち中国7人、韓国が1人という圧倒的な構図に。開催国の韓国唯一の希望となった申真諝九段も、準々決勝で丁九段に敗れ、中国棋士がベスト4を独占した。これは三星杯の歴史上、2019年以来2度目の快挙だった。

 昨年の三星杯王者である丁浩九段は、姜東潤九段(35歳)、崔精九段、申真諝九段、金禹丞八段(20歳)を次々に破り、決勝進出を決めた。対するは党毅飛九段。5月の夢百合杯決勝で惜敗した党九段は、この大舞台で再びタイトルを狙った。

決勝三番勝負は接戦となり、両者1勝1敗で迎えた最終局。持ち前の冷静さと終盤の勝負強さを発揮した丁浩九段が、2-1で勝利し、三星杯2連覇を達成した。

 この結果、2024年の世界囲碁国際戦のタイトルは、韓国2勝(申真諝)、中国2勝(李軒豪・丁浩)、日本1勝(一力遼)と、三国が競い合う形となった。AI時代の囲碁は、かつてないほど熾烈な国際戦の時代を迎えている。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年1月21日 ]

胡耀宇八段、奇跡の戴冠——聶衛平杯を制す

 四川省成都市青羊区で開催された聶衛平杯中日韓囲碁マスターズは、2024年に第6回を迎えた。今年も昨年採用された革新的な方式を継続し、中年組(40歳以上)と青年組(20歳以下)に分かれてそれぞれ各8名が争い、両組の優勝者が最後に決勝戦で激突する方式だ。

 大会は11月16日、17日に、歴史ある杜甫草堂で行われた。11月12日に三星杯ワールドマスターズで敗退した前回優勝者の王星昊九段(20歳)が急にスケジュールが空いたため、最後の一枠として出場することが決まった。もし王九段が出場できない場合は、中国代表選抜戦4位の呉依銘六段(18歳)が繰り上げ出場する予定だった。

 大会が始まると、王星昊九段は福岡航太朗七段(19歳)、鄭載想六段(19歳)、韓友賑九段(19歳)を次々に破り、危なげなく青年組優勝を果たした。一方の中年組では、胡耀宇八段(42歳)が山下敬吾九段(46歳)、睦鎮磌九段(44歳)、古力九段(41歳)を連破し、頂点に立った。

 そして、決勝戦はまさかの「上海囲碁界の師弟対決」に。20歳の若きトップ棋士・王星昊九段と、その師匠的存在である世代の名手・胡耀宇八段の対決は、多くの人が「若手の王九段が勝つだろう」と思っていた。しかし結果は、胡耀宇八段が半目差の逆転勝利を収め、“師恩に報いる一局“となった。聶衛平杯の優勝賞金は20万元、準優勝賞金は15万元(約430万円、320万円)。まさに世代を超えた名勝負だった。

 「石仏」と呼ばれ、かつて囲碁界を席巻した李昌鎬九段(49歳)も出場したが、初戦で旧敵の周鶴洋九段(48歳)に敗北。周九段はここ5年以上、棋戦に出場しておらず、最近は雲南省で囲碁普及を行っている。また、長年韓国国家囲碁チームの総監督を務めた睦鎮碩九段も久々に現役復帰を果たし、初戦では羅洗河九段(47歳)を破り、存在感を示した。

 大会の合間には、聶衛平九段(72歳)と張璇八段(56歳)が、杜甫草堂の歴史ある大樹の下で大盤解説を行った。往年の名棋士たちが一堂に会する貴重な機会となった。

図1:決勝戦会場。
図1:決勝戦会場。
図2:周鶴洋九段は李昌鎬九段に勝利。
図2:周鶴洋九段は李昌鎬九段に勝利。
図3:久々の公式戦に挑んだ睦鎮碩九段、初戦で羅洗河九段に勝利。
図3:久々の公式戦に挑んだ睦鎮碩九段、初戦で羅洗河九段に勝利。
図4:聶衛平九段と張璇八段による大盤解説の様子。
図4:聶衛平九段と張璇八段による大盤解説の様子。

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2025年1月15日 ]

党毅飛九段、誕生日に衢州爛柯杯で栄冠を手にする

図1:決勝戦会場
図1:決勝戦会場

 世界囲碁の聖地を目指す中国浙江省衢州市が、2022年に創設した衢州爛柯杯世界囲碁オープン戦。それ以前から続く国内大会もなお健在だ。2006年に始まり、2年に1度開催されてきた同名の国内版・衢州爛柯杯が、2024年6月12日から17日にかけて第10回大会を迎えた。中国ランキング上位32名の棋士が衢州に集結し、6日間で5回戦のトーナメントを戦い、50万元(約1000万円)の高額賞金をかけた熱戦が繰り広げられた。

 年初の中国天元戦では連笑九段(30歳)が優勝し、夢百合杯世界オープン戦では李軒豪九段(29歳)が制覇するなど、ベテラン棋士たちが囲碁界の主役となっている。そして今回も、党毅飛九段(30歳)と連笑九段の二人がそれぞれ4連勝し、決勝進出を決めた。ここ20年、囲碁界は若手棋士の台頭が著しかったが、この世代が再び頂点を争う展開は、AI時代の進化がもたらした大きな変化として注目された。

 決勝戦が行われた6月17日は、党毅飛九段の30歳の誕生日という特別な一日。夢百合杯で準優勝に甘んじた彼は、雪辱を果たすべく、粘り強く戦い抜いた。終盤、連笑九段の痛恨のミスを見逃さず、半目差という僅差で逆転勝利を飾った。また、所属する四川省囲碁協会からも30万元(約600万円)の特別報奨が贈られ、30歳という節目の誕生日は栄光とともに祝われた。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2025年1月7日 ]

姜堰女子囲碁戦が奇跡の復活

 過去に中国で開催されていた女流の世界大会は、江蘇省姜堰市の勝ち抜き戦、浙江省天台市の団体戦、江蘇省蘇州市と福建省福州市の個人戦(穹窿山兵聖杯、呉清源杯)の4大会があった。しかし、コロナ禍の影響により、2020年から2023年までいずれも中断を余儀なくされた。2024年、そのうちの江蘇省姜堰市の「黄竜士杯」が先陣を切って大会を再開することを決め、さらに蘇州市や天台市の世界女子戦も復活に向けて準備が進められているという。

 姜堰市で開催された黄竜士杯は、創設当初は中国・日本・韓国・中華台北の4ヵ国による団体戦として行われ、2012年から2019年までは中国、韓国、日本の各国から5人ずつ参加する勝ち抜き戦形式に変更。2022年に韓国の湖盤社が三国女子勝ち抜き戦を企画し、一度だけ開催されたが、その後、明確な中止の発表はなかった。そして2024年、第10回黄竜士杯世界女子囲碁戦が復活。形式は大きく変更され、中国4名、日本2名、韓国2名の計8名による7回戦の総当たり戦が採用された。優勝賞金は30万元、準優勝賞金は10万元(約600万円、200万円相当)となっている。

 大会は、女子囲碁界で絶対女王とされてきた韓国の崔精九段(27歳)の独壇場になると思われていたが、意外なことに、彼女は初戦で同胞の許瑞玹四段(22歳)に勝利した後、突如として調子を大きく崩し、6連敗という結果で最下位に沈んだ。一方、中国のエース於之瑩八段(26歳)は、国内の代表選抜戦で敗退し、本戦に進むことができなかった。女子囲碁界の勢力図は、大きく変わる兆しを見せている。

 優勝は中国の周泓余七段(22歳)。6勝1敗の好成績で堂々の戴冠となった。唯一、周七段に土をつけたのは日本の上野愛咲美五段(22歳)だったが、最終局で既に優勝争いから脱落していた中国の陸敏全六段(25歳)に敗北。惜しくも優勝を逃した。

最終順位は以下の通り。
1位:中国 周泓余七段(22歳)(6勝1敗)
2位:日本 上野愛咲美五段(22歳)(5勝2敗)
3位:中国 李赫五段(32歳)(4勝3敗)
4位:中国 李小溪四段(18歳)(3勝4敗)
5位:韓国 許瑞玹四段(22歳)(3勝4敗)
6位:日本 藤沢里菜七段(25歳)(2勝5敗)
7位:中国 陸敏全六段(25歳)(2勝5敗)
8位:韓国 崔精九段(27歳)(1勝6敗)

図1:熱戦が繰り広げられた対局会場の様子。
図1:熱戦が繰り広げられた対局会場の様子。
図2:優勝者と準優勝者の記念写真。
図2:優勝者と準優勝者の記念写真。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

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