12月 思い出の一局
ご自身の棋士生活で一番大きな対局という、女流棋聖戦挑戦者決定戦での思い出をご紹介していただきました。
女流棋士の思い出の一局では、担当の女流棋士の印象に残っている一局をご紹介します。対局当時の状況や気持ちを振り返っていただき、その当時の思いを皆さまにお伝えします。 続きを読む
青葉かおり四段 思い出の一局
- 2014年12月8日 第18期女流棋聖戦 挑戦者決定戦
- 黒番:小西和子八段 白番:青葉かおり四段
コミ6目半 219手完 黒中押し勝ち
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指導棋士プロフィール
昨年の今頃のこと。
私は第18期女流棋聖戦の挑戦者決定戦を控えていました。
私にとって18年目の棋士生活で一番大きな対局で、そういう時、人間は何をするかといいますと。
てきめんに舞い上がって、謎の行動をはじめました。
先ず考えたのは、運を貯めないといけないから、ものすごく品行方正な人格者になろうと思い立ちました。
毎日いかに正しいことをするか考え続けたという迷走ぶりです。
また女流棋聖戦にご協賛頂いている株式会社NTTドコモ様のドコモショップを見るたびに胸が高鳴り、このときめきは恋かと思いました。
前日の夜は遠足前日のような興奮で、寝付けず・・。
そして、迎えた当日。
「今日は天気も良いし、良い気分で打てる、打てる」と今まで一回も対局前にやったことのない自己暗示をはじめ、これまた今まで対局前に一回も通ったことのない道で日本棋院へ行きました。
対局が始まり・・・・
もう結果は言うまでもないような状況ですが、内容的にチャンスはありました。ただし、平常心で打っていられればです。
対局が終わった瞬間に、「未熟な碁を打って恥ずかしい」という思いが頭をよぎりました。対局場を後にして、坂を下りていると、涙が止まらなくなり、下を向きながら歩きました。
そしてその後、何と数ヶ月間にわたり碁に取り組めない、立ち直れないという、もうサボっているんだか何だか分からないというあるまじき事態に・・。
自分の未熟さに赤面するしかない思い出ですが、とても良い経験になりました。
最後に、昨年は本当に多くの方に激励のお言葉を頂きました。心から感謝の気持で一杯です。本当にありがとうございました。
棋士 青葉かおり