11月 思い出の一局
王座戦予選での杉内雅男九段との対局を思い出の一局としてご紹介していただきました。
女流棋士の思い出の一局では、担当の女流棋士の印象に残っている一局をご紹介します。対局当時の状況や気持ちを振り返っていただき、その当時の思いを皆さまにお伝えします。 続きを読む
大澤奈留美四段 思い出の一局
- 2015年6月11日 王座戦予選C
- 黒番:杉内雅男九段 白番:大澤奈留美四段
コミ6目半 持ち時間3時間 134手完 白中押し勝ち
棋譜の拡大版は こちら
指導棋士プロフィール
杉内雅男先生は、大正9年生まれの御年96才。
「囲碁の神様」との異名を取る大先生です。(wikipediaより)
数年前に友人から、「杉内先生は、対局の時に日本棋院の階段を、いつも使ってらっしゃるんだよ」
と聞いてから自身を反省し、今でもなるべく階段を使うように心がけています。
この対局の朝も日本棋院の一階で颯爽と歩き、迷わず階段で向かった杉内先生をお見掛けしました。
(この日の手合いは、6階)
対局前、碁盤を挟んで座っていると、
「大澤さんは、確か海外へ囲碁普及に行かれてたんですよね?どちらへ?」
と話しかけて下さり、試合開始までの数分間、沢山お話して下さいました。
私が、海外で囲碁普及をしていた事までご存知な事にびっくりし、
また、色々お話出来て嬉しかったです。
序盤は、杉内先生ご愛用の中国流からの布石で始まり、黒はほぼノータイムで進みました。
黒15を決め17と、黒の伸びやかな若々しい攻めから局面は展開し、
黒が攻めながら地を持ち、黒に不満の無い分かれ。
その後、白も40から左辺を大きく広げて行き、白62と芯を入れ、左辺が大きく白地になり、互角か少し白良し。
そして、黒63から、厳しい追及。
白80と急所に打ち、黒の攻めをかわし、黒の石が取れたと思った瞬間、
白84と打ったのが大大大失着!!
黒85が凌ぎと、取りを兼ねた素晴らしい手で、しばし固まりながらも(30分以上)、感動する白の大澤四段。
なんとか気を取り直し白86と受けましたが、黒87とつなぎ中央の白4子を取られてしまっては、白ダメ。
白84では、素直にAと2子をアタリにしておけば、黒の2子(黒45、47)か、黒4子(黒63、65、15、73)
をただで取れるので、決め手になっていました。
Aで良いのは分かっていたのですが、少し筋が悪く、白84でも同じなら筋が良い方を、と安易に考えていたら大変な事になってしまいました。一路違いが20目程違いました。
チョコレートが二つ並んでいて、形が綺麗で美味しそうな方を選んだら、何故か毒キノコが入っていた!
くらいの衝撃でした。。?
そこからは、気分は死にかけながらヨセに入り、細かいながらも白少し負け。
白122に2目得の黒123を選び隅が薄くなり、手が発生し、白に残りました。
黒は、123で、Cに打っていれば、少し残っていたようです。
今回、杉内先生と対局出来た事が、嬉しかったです。
私も、自分が何才になっても、若々しく、感動するような手が打てる事を目標に頑張ります。
皆さんも、囲碁を打ちに行く時は、階段を使ってみてはいかがでしょうか。